野菜需給部 調査情報部
上旬は、本州付近は高気圧と低気圧が交互に通過し、旬の後半は冬型の気圧配置となった。このため、全国的に天気は数日の周期で変わり、旬の後半を中心に気温が低くなったが、一方、降水量は、低気圧の影響が小さかったため、西日本を中心に少なかった。
中旬は、北日本から西日本にかけては、大陸からの高気圧に覆われて晴れた日が多く、北日本日本海側の旬間日照時間は、平年比174%で3月中旬としては旬の統計を開始した昭和36年以降で50年と並んで最も多かった。旬の中頃と旬の終わり頃は、気圧の谷や低気圧の影響を受け曇りの所が多く、雨の降った所もあったが、本州付近では低気圧の影響が小さかったため、降水量は少なかった。
下旬は、日本の南海上を低気圧が数日の周期で通過し、低気圧の通過後は大陸からの冷涼な高気圧が本州付近を通過した。このため、全国的に天気は数日の周期で変わり、東・西日本の気温は低かった。特に、25日から27日にかけては、本州の南海上を発達しながら低気圧が通過し、北からの強い寒気が流れ込んだため、東日本から沖縄・奄美にかけての広い範囲で天気が崩れ、関東甲信地方の山地を中心に大雪となった所があった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
2月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万7734トン、前年同月比103.5%、価格は1キログラム当たり261円、同94.3%となった(表1)。
四国、九州を中心とした西南暖地産および関東産が主体に出回った。2月まで好天が続いたことから、順調な生育となった品目が多いものの、中には干ばつの影響を受けた品目や産地もあったが、3月の降雨が恵みの雨となり、生育が回復して出荷が増えた品目もあった。にんじん、ねぎなどの品目は昨年秋の天候不順による影響などが引き続き残ったものの、多くの品目で前年を上回る入荷となり、野菜全体の入荷量は前年をやや上回った。価格は、一部の品目で前年を大幅に上回ったものの、果菜類を中心に多くの品目で前年を下回ったことから、野菜全体では前年をやや下回った。
類別の動向は以下の通り。
主な品目のうち、だいこんは、天候に恵まれ太りも良好であったことから、入荷量は前年をやや上回り、価格はおおむね前年並みとなった。一方、にんじんは、天候に恵まれ生育は順調であるものの、千葉産は昨年秋の天候不順の影響が残り、入荷量は前年をやや下回り、価格は前年を大幅に上回った(図2)。
主な品目のうち、ほうれんそうは、天候に恵まれ生育は順調で、入荷量は前年を大幅に上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、ねぎは、昨年秋の天候不順の影響と年明け以降の強風や低温の影響による品質の低下もあり、入荷量は前年をかなりの程度下回り、価格は前年をかなりの程度上回った(図3)。
主な品目のうち、ほとんどの品目で入荷量は前年を上回り、価格は前年を下回った。特にトマトは天候に恵まれ日照も多く、小玉傾向ではあるものの生育が順調であったことから、入荷量は前年を大幅に上回り、価格は前年を大幅に下回った(図4)。
主な品目のうち、ばれいしょは、鹿児島産において多少の遅れはあるも、生育は順調であることから、入荷量は天候不順で小玉傾向となり少なかった前年をかなり大きく上回ったものの、価格は前年をやや上回った。一方、たまねぎは、北海道産において出荷の終盤を迎え、入荷量は多かった前年をやや下回り、価格は安かった前年を大幅に上回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
3月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万7474トン、前年同月比94.6%、価格は1キログラム当たり242円、同100.4%となった(表3)。
年明け以降の天候は平年に比べて大きな変動もなく、3月の気温もほぼ平年並みとなり、やや干ばつ傾向に推移したものの生育自体は総じて順調であった。前年に雪害や霜害で入荷量が激減した豆類は、生育が良く入荷量が大幅に増えて単価安となったが、全体の入荷量は前年をやや下回り、価格はほぼ前年並みとなった。
類別の動向は以下の通り。
だいこんは、鹿児島産や長崎産などの入荷量が前年を上回ったため、総入荷量は前年をやや上回った。にんじんの総入荷量は、徳島産や鹿児島産、愛知産などの減少により、前年をやや下回った。価格は、だいこんが前年をわずかに下回り、にんじんは前年を大幅に上回った。
ほうれんそうは、徳島産や福岡産の生育が良好で、総入荷量は前年をかなり大きく上回った。キャベツの総入荷量は、寒玉、春キャベツともに干ばつなどの影響により、前年をかなりの程度下回った。価格は、ほうれんそうが前年を大幅に下回り、キャベツは前年を大幅に上回った。
トマトは、熊本産や福岡産、愛知産などの順調な入荷により、総入荷量は前年を大幅に上回った。きゅうりは、各産地とも日照量が多く入荷は順調だったものの、集約出荷された前年をわずかに下回った。価格は、トマトが前年を大幅に下回り、きゅうりは前年をかなり大きく下回った。
さといもの総入荷量は、愛媛産の順調な入荷などにより、前年をかなりの程度上回った。ばれいしょは、北海道産や鹿児島産の入荷が前年を下回ったため、総入荷量は前年を大幅に下回った。価格は、さといもが前年を大幅に下回り、ばれいしょは前年をやや下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
5月の開市は22日で、休市日数は9日となっている。
5月は大型連休や母の日などがあり、量販店などではさまざまな販売企画が実施される。家庭用のサラダ商材なども含め、活発な需要が期待される。
3月は、露地野菜を中心に全般的な生育の遅れから、平年より高い価格を維持した。今後も出回り不足の影響で、市場価格はしっかりとした推移になるであろう。
桜の開花は平年並みであったが、満開は例年よりやや遅れた観があり、宮崎県の満開時期の遅れがニュースになった。それだけ低温傾向であったということで、長野県の高原地帯では3月末まで本格的な降雪があった。関東では、3月の後半に入ってようやく降雨日が多くなり、干ばつによる生育の遅れは解消しつつある。
個々の品目を見ていくと、だいこんは、降雪量が少なく入荷が早まると予想されていた青森産が、山間部の融雪が遅くなり、地域によっては入荷の遅れも予想されている。神奈川産などは生育が遅れたが、そうした不作の影響が今後も残り、価格は平年並みかやや高めと予想される。
にんじんは関東産の春にんじんが中心となるが、地温の上がりが遅く、全般に小ぶりである。後半には茨城産も入荷が始まるが、生育初期の強風の影響もあり、総じて小ぶりで箱数は伸びないと予想される。
キャベツは、神奈川産をはじめとする春キャベツは4月前半まで小玉で箱数が伸びず、価格高が続いた。4月後半には本格的に増量していったんは下げに向かうも、後続の産地も小ぶりで入荷量は少なく、平年より高めの推移となろう。
はくさいは、茨城産の春はくさいがピークとなるが、4月に続いて全国的な出回り不足から、価格は平年より高いと予想される。
ほうれんそうは、5月前半は関東全域で田植えや果樹の受粉作業などに忙しく、ほうれんそうの作業は後手になりがちである。後続の東北産や群馬産の高原物の前進出荷はなく、価格は平年並みかやや高めとなろう。
ねぎは、千葉産の春ねぎの後半物と茨城産の初夏ねぎの出始めの物となるが、関東産は全般的に強風の影響が残り、正品率の低下が懸念される。そのため、価格のバラツキは大きいと予想している。本来的には端境の時期でもあり、全般的に出回り量は少なく、価格は4月に続いて高いと予想される。
レタスは、茨城産から高原産への橋渡しの時期を迎える。茨城産は品質が良好で、価格的にも買いやすい時期が長く続いた。高原産地の遅い降雪などの影響により、4月には価格が上昇気味に推移し、5月は高値傾向となろう。
ブロッコリーは、年明けからの好天に助けられ、埼玉産を中心に引続き順調である。5月後半には入荷量が減ってきて、価格は上昇に向かう見込みである。
きゅうりは、主力の群馬産がピークとなるが、3月、4月は例年より生育に日数がかかったものの、徐々に数量が伸びてきた。そのため5月も順調に生育し、生産者は6月の前半までしっかり出荷できる。
なすは、高知産が終盤に近くなるが、この時期の課題はハウスの夜の温度管理で、高温にならないような注意が必要だ。関東産も始まってくるが、育苗時期に好天に恵まれ、初期生育は順調である。5月後半は品質の良いなすの入荷が期待できる。
トマトは、4月に続き味の充実したものが多く出回り、フルーツ系の完熟品が全体の価格を引っ張ると思われる。実の締まったフルーツ系トマトでサンドウィッチを提供するなど、本来のトマトのおいしさをアピールする企画を展開していただきたい。箱売りで特売セールなども試みてはいかがだろう。
ピーマンは、茨城産の春ピーマンがピークを迎える。生育状況も良く、順調である。1月から3月の価格は前年を下回ったが、生産者の意欲は衰えていないようである。
ばれいしょは、静岡産の男爵が5月中旬から本格化する。3月、4月は九州産のニシユタカの入荷がそれほど多くなく、引続き価格は高めで、静岡産や関東産にリレーされよう。
たまねぎは、佐賀産がピークとなるが、生育は順調で、昨年や一昨年の不作をカバーできるような入荷が予想される。関東産のたまねぎは6月にピークとなるが、入荷量は平年並みかやや少ないと予想される。
いちごは、3月から4月はゆっくりとしたペースで入荷している。果物店には、5月の上旬まで品質の良いいちごが並ぶであろう。
メロン類は、大型連休ごろから熊本産や茨城産がピークとなる。下旬にはかなり売りやすい価格となる見込みである。
こだますいかは、茨城産を中心に群馬産や熊本産となるが、今年は大型連休から5月前半までに最大のピークが来ると予想される。生育は全国的に順調である。積極的な販売を期待したい。
(執筆者:元東京青果株式会社 加藤 宏一)
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