(1)気象概況
上旬は、冬型の気圧配置が弱く、寒気の南下が弱かったため、全国的に気温の高い日が多かった。低気圧や前線の影響も受けにくかったため、北日本太平洋側を除き日照時間が多かったが、7日から9日にかけては低気圧が発達しながら東シナ海から関東の東へ進み、東日本・西日本太平洋側を中心にまとまった雨や雪となった。特に、河口湖では8日に42センチメートルの積雪となるなど、関東甲信地方では内陸部を中心に大雪となった。
中旬は、冬型の気圧配置が強く、全国的に寒気が流れ込んだため、日本海側では雪の日が多く、太平洋側では晴れた日が多かった。特に14日から17日にかけてはさらに強い寒気が南下し、日本海側では東北地方から山陰にかけて大雪となったほか、広島で15日に19センチメートルの積雪となるなど、太平洋側でも大雪となった所があった。このため、各地で交通障害や農作物・農業施設などへの被害が発生した。
下旬は、旬の前半は、22日に北日本を低気圧が通過した後、冬型の気圧配置が強まり、全国的に強い寒気が流れ込んだ。特に西日本日本海側では鳥取県の智頭で24日に111センチメートルの積雪となるなど大雪となった。旬の後半は冬型の気圧配置が緩み、日本付近には南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、全国的に気温が高い日が多かった。29日は西日本、30日は東日本を中心に、日最高気温が20度を超えて平年より10度以上高くなった所もあった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
(2)東京都中央卸売市場
1月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万3907トン、前年同月比103.0%、価格は1キログラム当たり252円、同106.3%となった(表1)。
関東産および四国、九州を中心とした西南暖地産が主体に出回り、にんじんやばれいしょなどは、8月の台風や9月の天候不順による影響が残ったものの、好天が続き、多くの品目で生育はおおむね順調であったことから、野菜全体の入荷量は前年をやや上回った。価格は、果菜類などでは前年を下回った一方で、根菜類などは引き続き高値で推移した。野菜全体では前年をかなりの程度上回った。
類別の動向は以下の通り。
ア 根菜類
主な品目のうち、だいこんは12月の気温高など天候に恵まれ生育は順調で、入荷量は前年をわずかに上回った。にんじんは、出荷の中心となった千葉産において8月と9月の天候不順の影響が残り、入荷量は前年をかなりの程度下回った。価格は、だいこん、にんじんともに前年を大幅に上回った(図2)。
イ 葉茎菜類
主な品目のうち、レタスは、1月中旬の気温の低下の影響はみられるものの、12月の気温高で前進出荷となったこともあり、入荷量は前年を大幅に上回り、価格は前年を大幅に下回った。一方、キャベツは、天候に恵まれ適度な降雨もあったことから生育は順調であったものの、入荷量は多かった前年をわずかに下回り、価格は前年を大幅に上回った(図3)。
ウ 果菜類
主な品目のすべてにおいて、入荷量は前年を上回り、価格は前年を下回った。特になすは、12月を中心に天候に恵まれ順調な生育となり、入荷量は、少なかった前年を大幅に上回り、価格は前年を大幅に下回った(図4)。
エ 土物類
主な品目のうち、たまねぎは、北海道産において作柄が良かったことから、入荷量は前年をかなりの程度上回り、価格は安かった前年を大幅に上回った。一方、ばれいしょは、北海道産においては6月以降の天候不順、長崎産においては定植期の天候不順の影響で作柄があまり良くなかったことから、入荷量は前年をやや下回り、価格は前年を大幅に上回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
(3)大阪市中央卸売市場
1月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万5037トン、前年同月比100.7%、価格は1キログラム当たり236円、同114.0%となった(表3)。
年末年始の天候が良く、年明け上旬に入荷量がまとまった品目も見受けられたが、1月の全体の入荷量は予想外に少なかった。果菜類は樹勢の回復が見られ、前年を上回る入荷量となったことから、価格は前年を下回った。一方、入荷量が前年をやや上回る中、価格が安値の前年を大幅に上回る品目も見られた。
ア 根菜類
にんじんは、鹿児島産や愛知産などの入荷量が前年を上回ったため、総入荷量は前年をわずかに上回った。だいこんの総入荷量は、鹿児島産の大幅な減少などにより、前年をわずかに下回った。価格は、にんじんが前年を大幅に上回り、だいこんも前年を大幅に上回った。
イ 葉茎菜類
ねぎは、白ねぎの静岡産および群馬産の入荷量が前年を上回ったことなどにより、総入荷量は前年をかなりの程度上回った。キャベツは、和歌山産、三重産および兵庫産の春キャベツの入荷量が前年を大幅に下回ったことなどにより、総入荷量は前年を大幅に下回った。価格は、ねぎが前年を大幅に上回り、キャベツも前年を大幅に上回った。
ウ 果菜類
果菜類は、主な品目のすべてにおいて、総入荷量は前年を上回った。中でもなすは、高知産および岡山産、九州の熊本産、福岡産、佐賀産などの順調な入荷により、総入荷量は前年を大幅に上回った。なすの価格は、前年をかなり大きく下回った。
エ 土物類
さといもは、国内産、輸入物とも入荷量が前年を上回ったため、総入荷量は前年を大幅に上回った。ばれいしょの総入荷量は、北海道産および長崎産が前年を下回ったため、前年をかなりの程度下回った。価格は、さといもが前年をかなり大きく下回り、ばれいしょは前年を大幅に上回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
(4)需要を中心とした3月の見通し
ア 市場開市および休市
3月の開市は23日で、休市日数は8日となっている。
3月は、ひな祭り、卒業、進学、就職など、お祝い事が多く、家庭消費や外食向けの需要が活発となる月である。
イ 市場担当者から
主産地からの報告によると、1月までは出荷量が前年を下回る品目が目についたが、2月は前年並みの100%となってきている。定植時期の天候の乱れで生育が遅れていた圃場も回復してきたと見るべきで、3月に出荷される予定の露地野菜の作付面積は、前年を上回ると予想している。また、昨年11月以降の天候の安定により、それらの作柄は総じて安定しているが、今後の天候に左右される可能性もある。
天候に関して警戒するべき点は、関東の産地で言えば、干ばつと強風である。それに日照不足にも注意が必要で、それらの影響は、今後の春野菜や夏の果菜類にも及ぶであろう。さらに、降雪があれば、葉物野菜に影響が出る。概して関東の生産者は、この時期になると慌てることなく、淡々と出荷してくる傾向があり、価格は上げ基調となることが多い。
個々の品目を見ていくと、だいこんは、千葉産が作付けをやり直したこともあり、3月から4月にかけては前年を上回る入荷が期待できる。今後の天候にも左右されるが、価格は平年を下回る展開が予想される。
にんじんは、3月になると徳島産が急増してくるであろう。価格は、2月までは千葉産の入荷が少なく高値傾向で推移したが、3月には下げ基調となり、平年並みに落ち着く見込みである。
キャベツは、愛知産が中心となるが、定植後の天候不順をくぐり抜け、その後は順調にきている。業務需要は旺盛である。神奈川産をはじめ千葉産などの関東産も今後も順調な入荷が見込まれる。この時期、冬キャベツと春キャベツが徐々に入れ替わる。それぞれの特徴を消費者に伝え、需要を促したい。
はくさいは、茨城産の入荷が平年より少なめと予想している。春はくさいは前進化しているものの本格的な入荷は4月からとなり、3月後半の価格はやや高めと見込まれる。さらに干ばつとなれば、春はくさいが遅れて高騰する場面も考えられる。
ねぎは、関東産の春ねぎが中心となるが、秋冬物も多く残っているため、価格は平年を下回るであろう。
ほうれんそうは、関東産を中心に生育は順調であるが、降雪による影響に注意が必要である。
レタスは、静岡産は順調で、やや前進化気味の生育である。兵庫産および茨城産は、1月下旬の寒波で生育が遅れたが2月には回復し、3月には前年並みに入荷するであろう。価格は、平年並みを予想している。
ブロッコリーは愛知産が中心となるが、定植が問題なく行われたこともあり、順調な入荷によって価格は平年並みと見込まれる。
きゅうりは、前年は2月まで高値で推移し、3月には入荷が急増して安値となった。今年は入荷量が多く安値で推移しているが、3月に入って予定したほどの入荷がなく、一転高値となる可能性もある。価格は、前年を上回る展開を予想している。
トマトは、全国的に生育の遅れも回復し、3月が入荷のピークとなる産地もある。関東産は前年並みに入荷量が多く、生育が遅れてこれまで少なかった熊本産も前年より多くなる見込みである。価格は、高めとなった前年を下回るであろう。
ピーマンは、前年は2月が好天で3月の入荷量が伸びた。きゅうりと同様で、ピーマンは2月の天候に左右される傾向がある。今年は、昨年と違って2月の低温の影響により、3月の入荷量は少なくなると予想している。価格はやや高めとなろう。
ばれいしょは、前年に続く出回り不足で価格は高い見込みである。3月も、2月の高値を維持すると思われる。また、島しょ部の産地の作柄は、それほど良くないと予想している。
たまねぎは、前年は静岡産の切り上がりが早く、後半に高くなった。今年の静岡産は順調で、潤沢な入荷が見込まれる。3月には静岡産の比率が下がって北海道産が主体となるため、価格は前年並みに落ち着くと予想している。
季節商品のたけのこは、熊本産が地震の影響からか、今年は入荷が早めである。九州産は3月がピークであり、出回り量が多くなる。春を告げる季節の野菜類を早めに売場で展開し、消費者の購買意欲を盛り上げたいものである。
鹿児島産のグリーンピースやそらまめは、天候不順によって入荷が少なかった昨年のような状況ではなく、平年並みと予想される。しかし、被害がなかったものの1月には薩摩半島にも霜が降りており、油断はできない状況にある。
2月に入り中国地方の大雪被害や、九州でも降雪などが報告されている。荷物は中央に集まる傾向となり、全般的には東京や大阪の中央卸売市場が価格を引っ張り、平年より高めの展開となろう。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)
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