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需給動向 1 (野菜情報 2017年1月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成28年11月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万580トン、前年同月比94.5%、価格はキログラム当たり290円、同149.1となった。 
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は万6365トン、同89.9、価格は、キログラム当たり283円、同159.0となった。 
 入荷量は、これまでの天候不順による生育の遅れなどにより、前年を下回る品目が多く見られた。価格は、両市場ともに、さといもを除くすべての主要品目で前年を上回った。

(1)気象概況

上旬は、大陸の高気圧が日本付近に張り出すことが多かった一方、北日本では低気圧が数日の周期で通過し、低気圧の通過後は冬型の気圧配置となった。このため、全国的に天気は数日の周期で変わり、北日本では低気圧や寒気の影響で曇りや雨または雪の日が多かった。特に、日ごろは冬型の気圧配置が強まり、強い寒気が流れ込んだため、札幌の日最深積雪が23センチメートルとなるなど、この時期としては大雪となった。一方、西日本では高気圧に覆われ晴れの日が多かった。気温は、大陸からの寒気が流れ込みやすかったため、北日本から西日本で低く、特に北日本では平年差マイナス4.1度となり、旬の統計を開始した昭和36年以降で最低を記録した。

中旬は、本州付近は低気圧と高気圧が交互に通過したため、北・東・西日本の天気は数日の周期で変わった。北日本では低気圧の通過後は、大陸からの寒気が流れ込み、日本海側を中心に曇りや雨または雪の日があったものの、気温は平年並となった。一方、日本の南海上の高気圧が強く、西日本を中心に南から暖かく湿った空気が流れ込んだため、西日本と東日本太平洋側の降水量は多く、気温は西日本でかなり高く東日本でも高かった。沖縄・奄美では、日本の南海上の暖かい高気圧に覆われて晴れの日が多く気温はかなり高かった。

下旬は、シベリア高気圧が強かった一方、日本付近は低気圧や前線が短い周期で通過した。このため、全国的に曇りや雨または雪の日が多かった。特に、24日は日本付近に非常に強い寒気が流れ込み、本州の南岸を低気圧が東進したため、関東甲信地方の広い範囲で季節はずれの雪となった。東京では11月としては明治年の統計開始以来初めて積雪を観測したほか、宇都宮、千葉など関東甲信地方の地点で11月としての日最深積雪の記録を更新した。また、25日にかけて気温が低く、特に24日から25日は全国931地点中69地点で11月の日最低気温が統計開始以来最低を記録した(タイ記録地点を含む)。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図)。

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(2)東京都中央卸売市場

11月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が12万580トン、前年同月比94.5、価格はキログラム当たり290円、同149.1となった(表)。

関東産に加え、西南暖地からの出荷が増加してくる時期であるが、多くの品目で月の曇雨天による生育遅れ、定植遅れなどの影響が残った。一部の品目では、10月以降の天候の回復に伴い、生育状況は回復したものの、価格は、前月からの全般的な高値が続き、さといも以外の主要品目で前年を上回った。総入荷量は前年をやや下回り、価格は前年を大幅に上回った。

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類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

主な品目のうち、にんじんは、北海道産の出荷が11月上旬でおおむね終了し、後続産地である千葉産を中心とした出荷となったが、月の曇雨天の影響で生育が遅れたことから、入荷量は前年をかなりの程度下回り、価格は前年を大幅に上回った(図)。

イ 葉茎菜類

主な品目のうち、はくさいは、月の曇雨天の影響を受けたものの、入荷量は曇雨天の影響で少なかった前年を大幅に上回った。一方、ほうれんそうは、前月に引き続き月の曇雨天の影響による生育遅れが大きく残り、入荷量は前年を大幅に下回った。価格は、はくさい、ほうれんそうともに前年を大幅に上回った(図)。

ウ 果菜類

主な品目すべてで入荷量は前年を下回った。特にトマトは、月の曇雨天の影響を受けて着果不良および生育遅れとなり、主産地である熊本産および愛知産は、前年を大幅に下回った。価格は、すべての品目で前年を大幅に上回った(図)。

エ 土物類

主な品目すべてで入荷量は前年を上回った。特にたまねぎは、台風の被害はあったものの、作柄が良かったことから、前年をかなり大きく上回る入荷となり、価格は前年並みであった(図)。

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なお、品目別の詳細については表の通り。

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(3)大阪市中央卸売市場

11月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が万6365トン、前年同月比89.9、価格はキログラム当たり283円、同159.0となった(表)。

10月下旬に比べて11月上旬には気温が急激に下がり、回復傾向にあった野菜も生育が鈍り、入荷量が減少する品目が多く見られた。潤沢な入荷から安値推移となった前年を大幅に上回る価格となった品目が多数見られ、全体として高単価となった。

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ア 根菜類

だいこんおよびにんじんは、これまでの天候不順などの影響で、入荷量は前年を下回った。中でもにんじんは、北海道産が早期切り上がりとなったことなどにより、総入荷量は前年を大幅に下回った。にんじんの価格は、前年を大幅に上回った。

イ 葉茎菜類

はくさいは、各産地が生育の遅れなどの影響で入荷量が前年を下回る中、茨城産が前年を大きく上回ったため、総入荷量は前年並みとなった。レタスの総入荷量は、これまでの天候不順の影響で、前年を大幅に下回った。価格は、はくさいが前年を大幅に上回り、レタスも前年を大幅に上回った。

ウ 果菜類

きゅうりは、群馬産や高知産などの順調な入荷により、総入荷量は前年をわずかに上回った。トマトの総入荷量は、熊本産が小玉傾向の入荷が続き前年を下回ったことなどにより、前年を大幅に下回った。価格は、ともに前年を大幅に上回った。

エ 土物類

土物類は、主な品目すべてにおいて、総入荷量は前年を上回った。中でもさといもは、愛媛産の生育が回復したことなどにより、総入荷量は前年を大幅に上回った。さといもの価格は、前年をわずかに下回った。

なお、品目別の詳細については表の通り。

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(4)需要を中心とした1月の見通し

ア 市場開市および休市

月の開市は20日で、休市日数は11日となっている。

平成29年の大寒は月20日であり、一年で最も寒い時季とされている。寒さ対策の企画として、量販店などでは野菜をたっぷり使った鍋物のセールを展開するなど、はくさい、ねぎ、だいこんなどを中心に活発な荷動きが期待できる。

イ 市場担当者から

12月に続いて年明けの月も、野菜は総じて供給が少ない状況が続くと予想している。量的に重要なキャベツは、12月までの小玉傾向から回復できるであろうが、仮に降雪などがあれば、葉物野菜を中心に価格高騰の場面も予想される。逆に、クリスマスから正月までが穏やかな天候となれば、果菜類を中心に一気に出荷が早まり、価格を下げる場面もあろう。

ここ10年程度の各野菜の伸長度を社内の統計で見てみると、香菜(パクチー)や豆苗が伸びている。この数年に絞り込むと、ケールが数量以上に価格面での伸びが著しい。これは主に、都会の業務筋からの引き合いが強まっているためであろう。

ブロッコリーは平成になって入荷量が伸びた野菜で、平成25、26年には伸び悩んだものの、最近は価格が急騰する場面が多く、まだまだ伸びしろがあると思われる。ブロッコリーの派生系商材として「スティックセニョール」があるが、調理のしやすさからか、これも伸びている。

今、健康ブームに新しい流れが入ってきている。プレーンヨーグルトの売れ行きがすごいらしい。乳業各社は牛乳でもうけることが期待できず、収益性の高い加工分野を伸ばす方針だ。その流れで、ヨーグルトにマッチする果実が伸びている。野菜では、栄養面に優れるカラフルな野菜がブームで、野菜、果実、たんぱく質素材のつの要素が入ったサラダを表す「パワーサラダ」という新語が登場している。消費者の健康志向に応える野菜売場の展開を考えたい。

ばれいしょでは「とうや」が伸びているが、特に新じゃがの段階での味が好評だ。また、かんしょでは「シルクスート」がここ2~3年で急増している。10年の期間で見ると「べにはるか」も伸びている。「ベニアズマ」の需要も依然としてある。スーパー店頭に機械を設置して香りを漂わせて販売する焼きいもは、売れ筋商品となっている。ねっとり系の「べにまさり」にこだわっている店では、出来上がり時間にお客様が並ぶこともある。多様な品種の持つそれぞれの特徴をお客様にしっかり伝え、消費拡大に結びつけたい。

個々の品目を見ていくと、だいこんは、千葉産や神奈川産が中心だが、徳島からの入荷も見込まれる。全般的な遅れは回復できず、全国的に出回り不足が予想される。好天が続いて月に入荷が急増しても、供給体制が脆弱なため、月かは少なくなるといった懸念が残る。

にんじんは千葉産中心の入荷となるが、だいこんと同様に12月よりも量的に回復してくるものの、それでも平年を下回ると予想している。

はくさいは、定植時期の天候不順の影響で苗は万全な状態ではなかったが、その後の天候で遅れは回復し、月の入荷物は質的に充実してくると思われる。12月に前進化された部分もあり、1月に遅れた分が急増するといった流れはなく、基本的に高値の傾向で安定して推移しよう。

ねぎは千葉産や埼玉産の入荷となるが、秋の台風による強風で若干の被害が出ている。そのため、例年のような豊作はないと予想される。さらに排水の悪い圃場などでの病気の発生もあって、トータルの出回り量は減少し、価格は平年より高めと見込んでいる。

ほうれんそうは、厳冬になる予想の中で、干ばつになれば生育は鈍化し、逆に降雪となるケースも予想される。そうなると、農家はあわてて出荷しないであろう。価格は、平年を上回る展開が予想される。

レタスは、12月に入って価格高騰の場面はなくなった。月も特別に高値ではなく、12月の価格水準で横ばいの推移が見込まれる。長崎など九州に降雪があると、再び高騰の場面も想定される。

きゅうりは西南暖地の加温物が中心となるが、定植後の寒暖の差が激しく、樹はそれほど元気ではない。そうした状況に天候の影響も加わり、ある時期には入荷が多く、その後に急減といったような、量的に読みにくいシーズンになると予想している。全体的には、年明けの入荷は少なめと見込んでいる。

なすは、10月、11月にとりわけ夜温が高かった影響で、年内は着果不足となり、不作気味であった。12月からは寒暖の差がはっきりして着果も増え、年末ごろから量的に安定してくると予想している。

トマトは、11月から12月前半までは着果悪かったため、出回り量が激減し、市場価格はかつてないほどの高値になった。12月後半から年初には、量的に回復してくるであろう。年内より小玉になるが、それでもLM中心と予想している。

ピーマンは、宮崎産が12月に入ってからの好天により順調で、入荷は年内よりも増えると見込んでいる。ただ、トランプ大統領就任で円安が進むことが予想され、さらにOPEC(石油輸出国機構)の動向次第で重油価格が高まれば、量的に伸びを欠く時期が長くなることも想定しておくべきであろう。カラーピーマンの栄養効果が高いことなど、栄養を重視するような情報が広まれば、ピーマンの価格は高めに推移することも予想される。

さといもは最大の需要期をすぎるが、高品質物中心の入荷が続き、価格は前年並みの高値で推移すると思われる。

ばれいしょは、青果用に関しては元々道南産が多く、台風などによる品不足の心配は解消したが、それでも平年に比べて高い。今期は最悪に近い天候不順の中での生産であり、品種に関して言えば、「男爵」「ニシユタカ」「メークイン」以外のスターとなる品種を見出すチャンスの年ととらえるべきであろう。今期のような天候の中で、新品種がどのような特徴を見せたか、しっかりとつかんでおきたい。新品種にストーリーを用意してお客様を振り向かせることで、新しいばれいしょのデビューを促したい。

いちごは、九州産の遅れから入荷は少ないと予想している。関東産も前年を上回るとは予想しにくい状況である。長崎県が25年度から本格的に取り組んだ「ゆめのか」は、今期から「さちのかを追い越して県内1位の品種となった

(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)

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