(1)気象概況
上旬は、日本の南東海上で高気圧の勢力が強く、東日本はおおむね晴れた一方、北・西日本と沖縄・奄美では、低気圧や湿った気流の影響で曇りや雨の日が多かった。旬の前半は、九州や北海道では湿った空気が入りやすく、天気がぐずついた。1日に沖縄の南で発生した台風12号は、沖縄の東から東シナ海へと北上し、5日未明に長崎市付近に上陸し、九州では大雨となったところもあった。旬の後半は、北日本では北海道を中心に低気圧の影響により、天気がぐずついた。北海道では6日から7日に低気圧による大雨で河川が氾濫し浸水害が発生した。また、台風13号が6日に先島諸島、7日に九州の南に進み、8日から9日には温帯低気圧となって本州の太平洋岸沿いを北上し、10日には北海道付近に達した。このため8日から9日は、北日本太平洋側では大雨となり、各地で浸水害や土砂災害が発生した。日本付近には暖かい空気が流れ込みやすかったため、西日本を除き気温は高く、東日本ではかなり高くなった。
中旬は、北日本から西日本にかけては、本州南岸沿いに停滞した前線や台風16号の影響で、曇りや雨の日が続き、大雨となる日もあった。旬間日照時間は、東日本日本海側で平年比38%、東日本太平洋側で平年比26%、西日本日本海側で平年比44%といずれも統計開始(昭和36年)以降最も少なかった。また。西日本日本海側では旬降水量が平年比348%と統計開始(36年)以降最も多かった。台風16号は、17日に先島諸島付近を通り、18日から19日には東シナ海を北上し、20日0時過ぎに鹿児島県大隅半島に上陸した。その後、高知県室戸岬付近を通過し、20日13時半ごろ和歌山県田辺市付近に再上陸した。この台風16号や前線の影響により各地で大雨となり、九州や四国では17日から20日の総降水量が400ミリメートルを超えたところもあった。この大雨により土砂災害や河川の増水、浸水害などが発生した。気温は、全国的に旬の中ごろまでは平年を上回ったが、旬の終わり頃は北・東日本を中心に北からの寒気が流れ込み、平年を下回ったところが多かった。
下旬は、前線が、旬の前半は本州南岸付近に、旬の後半は日本海から東北地方に停滞したため、東北地方以南では曇りや雨の日が多かった。28日から29日にかけては、九州北部では前線の影響で大雨となり、日降水量が400ミリメートルを超えたところもあった。また、九州各地で突風災害が発生した。一方、北海道は、移動性高気圧に覆われおおむね晴れた。27日には台風17号が沖縄地方に接近したため、先島諸島では暴風や大雨となった。全国的に暖かい空気が流れ込みやすかったため、気温が高く、北・西日本ではかなり高かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
(2)東京都中央卸売市場
9月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、入荷量が13万1610トン、前年同月比98.7%、価格は1キログラム当たり270円、同95.0%となった(表1)。
北海道および東北地方を中心に8月の相次ぐ台風の襲来の影響が残り、根菜類、土物類などを中心に前年を下回る入荷となった。また、台風に続いて前線の停滞により広い地域で曇雨天が続いたことから日照不足などの影響を受けた品目も多く、特にほうれんそうは月を通して前年を下回る入荷となった。一方で果菜類は全品目で前年を上回る入荷となった。総入荷量は前年をわずかに下回り、価格は高かった前年をやや下回った。
類別の動向は以下の通り。
ア 根菜類
主産地である北海道、青森県を中心に相次いで襲来した台風の影響が残り、収穫遅れおよび歩留まりの低下が発生したことから、だいこん、にんじんともに入荷量は前年を大幅に下回り、価格は前年を大幅に上回った(図2)。
イ 葉茎菜類
主な品目のうち、レタスは前月に続き順調な生育となり前進出荷となったことから、入荷量は前年を大幅に上回った一方で、曇雨天の影響を大きく受けたほうれんそうは生育が不良となり、入荷量は前年を大幅に下回った。価格は、レタスは前年を大幅に下回り、ほうれんそうは前年をかなりの程度上回った(図3)。
ウ 果菜類
入荷量は、すべての品目で前年を上回った。主な品目のうち、トマトは各主産地において順調な生育となり、台風による大きな影響もなく産地によっては大玉傾向となっていたことから、前年を大幅に上回る入荷となった。価格はすべての品目で前年を下回った(図4)。
エ 土物類
入荷量は、すべての品目で前年を下回った。主な品目のうち、ばれいしょは相次いで襲来した台風の影響が残り、歩留まりの低下および輸送網への影響により、前年をかなりの程度下回る入荷となった。価格はさといもがおおむね前年並みとなったものの、ばれいしょおよびたまねぎは前年を大幅に上回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
(3)大阪市中央卸売市場
9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万13トン、前年同月比97.1%、価格は1キログラム当たり255円、同98.1%となった(表3)。
9月は、前年の異常なほどの高値推移に比べ、入荷量が前年をわずかに下回る中、価格は前年をわずかに下回った。昨年は、長野県および群馬県にまたがる地域でひょう害が見られ、レタスを中心にはくさいおよびキャベツに大きな被害があり、やや落ち着きかけていた野菜の価格を一気に押し上げる要因となった。本年は、台風により北海道などでにんじんを中心にばれいしょやたまねぎなどに大きな被害が出た。しかし、品目としては限定的で、入荷が途切れて価格が高騰した局面もあったが、野菜全般に影響が広がることはなかった。
月の後半は連日の降雨や曇天続きで、日照量が不足したり、病気を予防する消毒ができなかったために入荷量の減少が見られた品目もあった。また、今後の入荷への影響が懸念され、10月の市況展開が気になるところであり、実際、9月末には一部の品目が急騰する場面も見られた。
ア 根菜類
だいこんおよびにんじんは、天候不順などの影響により、入荷量が前年を大幅に下回った。その中でもにんじんは、主産地である北海道産が台風による被害などが大きく、総入荷量は前年を大幅に下回った。にんじんの価格は、前年を大幅に上回った。
イ 葉茎菜類
レタスは、長野産が降雨や曇天続きで品質の低下などが見られたが、総入荷量はひょう害の影響で少なかった前年をかなりの程度上回った。ほうれんそうの総入荷量は、岐阜産の生育不良などにより、前年をかなりの程度下回った。価格は、レタスが前年を大幅に下回り、ほうれんそうは前年をやや上回った。
ウ 果菜類
ピーマンは、福島産、岩手産および茨城産の順調な入荷により、総入荷量は前年を大幅に上回った。なすは、山梨産および福島産の入荷量が減少したため、総入荷量は前年をやや下回った。価格は、ピーマンが前年を大幅に下回り、なすも前年をかなり大きく下回った。
エ 土物類
たまねぎは、北海道産の集約出荷などにより、総入荷量は前年をかなりの程度上回った。さといもは、宮崎産などの作柄が悪く、総入荷量は前年をかなり大きく下回った。価格は、たまねぎが前年を大幅に上回り、さといもも前年をわずかに上回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
(4)需要を中心とした11月の見通し
ア 市場開市および休市
11月の開市は22日で、休市日数は8日となっている。
11月は、関東近在の秋冬野菜の入荷が本格化し、野菜を使ったメニューも煮物や鍋物がメインとなる。紅葉などの行楽や祝日の需要を見込み、10月に続いて量販店などの特売が活発に展開される。
イ 市場担当者から
秋冬野菜の播種・定植時期である8月に台風7号、11号、10号などが東北地方や北海道、千葉県などに上陸し、それぞれ大きな被害を残した。また、台風は本州に長く伸びた秋雨前線を刺激し、各地に大雨をもたらした。圃場によっては播種や定植のやり直しが必要となり、秋冬野菜については出回り不足の状態が長く続くと予想している。
昨年は10月下旬になって価格が平年を下回るようになり、12月中旬まで安値が続いた。これは、9月にかなり高値となったことの反動で安値を招いたこと、さらに暖秋暖冬の影響で秋冬野菜が大幅に前進出荷され、出回り量が多くなったことによる。
今年は、全国的に出回り不足の感があり、引き合いが強まって価格は堅調に推移するであろう。ただし、店頭の野菜価格が高くなりすぎると、消費者がもやしなどの廉売品を中心に購入するようになったり、外食産業のメニューから野菜が外れることになる。野菜の消費拡大のためにも、そうはならないことを希望している。
秋も深まるこの時期、おいしい野菜をたっぷり食べて冬を乗り切れるように、店頭でしっかりアピールしていただきたい。またこの秋、ファストフードや牛丼の大手が再び低価格メニューによる集客努力をしている。基礎素材であるたまねぎやねぎは、今後輸入がさらに増えるかもしれない。
個々の品目を見ていくと、根菜類のだいこんは、東北産や北海道産から千葉産へと産地が移る。北の産地の切り上がりは早い見込みである。また、関東地方の9月の日照不足が甚だしく、だいこんは全般に小ぶりのものが多い。そのため、箱数が伸び悩むことが予想される。価格はバラツキが大きくなるであろう。10月の価格高に続き、11月も平年を上回る推移が予想される。にんじんも千葉産が中心となる。10月に好天が続けば、北海道のような不作とはならないであろう。
葉茎菜類では、キャベツは千葉産が中心となるが、11月出荷分については、降雨続きで計画通りの作付けができなかった。群馬産の終盤の入荷が多く、8月に定植した物が入荷するため、価格の高騰といった状況にはならないであろうが、その後の影響が心配される。加工業務筋からは、品質面での歩留まりの悪さについて悲鳴が聞かれそうだ。
はくさいは茨城産が主体となるが、相場は家庭需要次第である。8月と9月の天候が万全でなく、入荷は少なめの状況が続く見込みだが、前半は長野産の入荷が多く、価格は平年並みの展開となろう。
ほうれんそうは、関東平野の産地の稲刈りが遅れ気味のため、ほうれんそうの作業に手が回らず、月の前半は入荷が少なく、価格は平年より高いと予想される。
ブロッコリーは、定植後の降雨が多かった影響で圃場によっては病気の発生などが見られ、昨年と同様に11月の出回り量は少なめで高値の推移となるであろう。
ねぎは、関東産が天候不順の影響で万全ではなく、これまでに続いて価格は平年を上回る見込みである。家庭での鍋物需要の本格化により、引き合いは強まるであろう。
レタスは、茨城産が品質の乱れから回復し、11月後半には静岡産や兵庫産、香川産などの入荷も始まるため、平年並みの価格に落ち着くと予想される。
果菜類では、きゅうりは、主力の関東産が順調に増え、価格は平年並みかやや安い見込みである。
トマトは、東北産および北海道産が早めに切り上がり、関東産の抑制物が中心となる。9月の天候不順の影響で、11月の入荷量は少ない見込みである。熊本産は育苗時期の高温の影響で生育の遅れが予想され、入荷が増えるのは12月に入ってからとなる。関西市場からの要望も強く、出回り不足が予想される。
ピーマンは関東産が本格化するが、東北産の残りの入荷もまだ多く、出回り量は多い。価格は、平年並みかやや安めと予想している。
なすは関東産の露地物の切り上がりが早く、高知産は生育が遅れぎみである。価格は、前半は高めと予想される。
土物類では、さといもは11月の入荷は順調で、全国の特選物が集まる東京市場の価格は高値安定となるであろう。お節料理の仕入れも始まり、引き合いは強まる。厳しく選別された埼玉産や、石川早生、えびいもの静岡産、女早生の愛媛産など、各産地の自慢のさといもが入荷するこの時期、その特色などを消費者にしっかり伝え、需要を喚起していただきたい。
ばれいしょは、北海道の道南地区の産地は例年に近い出来であるが、十勝地区は不作気味である。年内は例年並みの出回り量となろう。たまねぎは、北海道産は当面、平年並みの入荷が予想される。
いちご類は、8月に定植した年内出荷物については問題ない。その後の定植が遅れたため、それらの収穫が始まる年初からは出回り量が少なくなると予想される。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)
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