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需給動向 1 (野菜情報 2016年9月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成28年7月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が11万9621トン、前年同月比97.6%、価格は1キログラム当たり265円、同96.6%となった。
 大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7781トン、同104.2%、価格は、 1キログラム当たり241円、同95.3%となった。
 入荷量は、東京都中央卸売市場では果菜類や根菜類を中心に生育の遅れなどが発生した影響で前年をやや下回り、大阪市中央卸売市場では入荷量が少なかった前年をやや上回った。価格は、ともに前年をやや下回った。

(1)気象概況

上旬は、旬の中ごろまでは梅雨前線が日本海に停滞し、前線上の低気圧が発達しながら北日本を通過した。このため、北日本から東日本日本海側では曇りや雨の日が多く、~3日や日は北日本の所々で大雨となった。一方、日本の南では太平洋高気圧が強まり、沖縄・奄美付近から本州南岸を覆ったため、東日本太平洋側、西日本、沖縄・奄美では晴れの日が多かった。旬の終わりごろは、梅雨前線が東・西日本付近に停滞し、台風第号が~8日にかけて沖縄の南を西北西に進み、日に台湾に上陸した後、日には華南に進み消滅した。このため本州付近には南から暖かく湿った空気が流れ込み、全国的に雨が降り西日本太平洋側では九州を中心に大雨となった所があった。西日本と沖縄・奄美の気温は、強い日射や南からの暖かい空気に覆われたためかなり高かった。

中旬は、東・西日本では、旬の中ごろまで梅雨前線が本州付近に停滞したため曇りや雨の日が多く、西日本付近で前線活動が活発化したため、九州を中心に大雨となった所があった。旬の終わりごろは、梅雨前線の活動が弱まり、西日本を中心に高気圧に覆われたが、湿った気流や上空の寒気の影響で、にわか雨や雷雨となった所があった。北日本では、低気圧と高気圧が交互に通過したため、天気は数日の周期で変わった。沖縄・奄美では、太平洋高気圧に覆われて晴れの日が多かったが、南からの暖かく湿った気流の影響で、旬の初めと終わりごろは曇りや雨の所があった。

なお、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、東海の各地方では、18日ごろに梅雨明けした(速報値)。

下旬は、旬の中ごろまでは本州付近は北に偏った高気圧に覆われたため、北日本日本海側で晴れの日が多かったが、26日27日は気圧の谷の影響で、東日本日本海側では記録的な大雨となった所があった。一方、北・東日本太平洋側では冷たく湿った東よりの風の影響で曇りの日が多く低温となった。旬の終わりごろは、本州付近は太平洋高気圧に覆われ、東北以南では晴れて猛暑日となった所があったが、北海道では前線や低気圧の影響で雨が降り、所により大雨となった。沖縄・奄美では太平洋高気圧に覆われたため、晴れの日が多く気温がかなり高かった。なお、北陸地方では22日ごろ、関東甲信地方は28日ごろ、東北地方は29日ごろに梅雨明けした(速報値)。

旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図)。



(2)東京都中央卸売市場

月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷状況は、北海道産、東北産、関東産を主体に出回り、一部の品目では中四国産、九州産なども出回った。入荷量は11万9621トン、前年同月比97.6、価格はキログラム当たり265円、同96.6となった(表)。



入荷量は、北海道および東北において天候不順となったことから、果菜類や根菜類を中心に生育の遅れなどが発生し、上旬は前年をかなりの程度下回った。中旬は天候の回復や適度な降雨によりはくさい、レタスなどが順調な生育となり、前年を大幅に上回る入荷となるも、下旬は天候に恵まれ葉茎菜類および果菜類を中心に入荷が多かった前年をかなり大きく下回る入荷となったことから、月計では前年をやや下回った。

価格は、上旬は前年をわずかに上回って推移したものの、中下旬は葉茎菜類を中心に月末に向けて価格を下げた品目が多かったことから、月間では前年をやや下回った。

類別の動向は以下の通り。

ア 根菜類

入荷量は、主な品目のうち、だいこんは主産地の天候不順により、上旬は大幅に前年を下回る入荷となり、中旬は天候の回復により大幅に前年を上回る入荷となるも、下旬は再び前年を大幅に下回る入荷となったことから、月計では前年をかなり大きく下回った。にんじんは、月の長雨などの天候不順により生育が遅れ、月を通して前年を下回る入荷となったことから、月計では前年をかなりの程度下回った。

価格は、だいこんは、上旬半ばまで上げ基調で推移し、上旬半ば以降は下げ基調で推移したものの、月を通して高値基調で推移したことから、月間では前年をかなり大きく上回った。にんじんは、上旬半ばまでの安値基調から、上旬半ば以降から中旬にかけて上げ基調で推移し、下旬は高値もちあいで推移したことから、月間では前年をかなり大きく上回った(図)。

イ 葉茎菜類

入荷量は、主な品目のうち、レタスは、天候に恵まれ適度な降雨もあり生育は順調で、上中旬は前年を上回る入荷となったことから、月計では前年をかなり大きく上回った。ほうれんそうは、干ばつの影響により上旬は前年を下回る入荷となり、中旬は適度な降雨もあり、前年を大幅に上回るも、下旬には再び前年をかなり大きく下回ったことから、月計では前年をかなりの程度下回った。

価格は、レタスは、月を通して安値基調で推移したことから、月間では前年を大幅に下回った。ほうれんそうは、上旬はやや高値基調で推移し、中旬にやや値を下げ、下旬はやや安値基調で推移した。月間では前年をかなりの程度下回った(図)。

ウ 果菜類

入荷量は、すべての品目で前年を下回った。主な品目のうち、トマトは、上旬はやや前年を下回る入荷となるも、天候の回復により中旬は前年を大幅に上回り、下旬は順調な生育で多かった前年を大幅に下回ったことから、月計では前年をかなり大きく下回った。

価格は、トマトは、中旬半ばまでは緩やかな上げ基調で推移し、中旬半ば以降はやや高値もちあいで推移したことから、月間では前年をかなりの程度上回った(図)。

エ 土物類

入荷量は、すべての品目で前年を下回った。主な品目のうち、たまねぎは、各地でべと病が発生しており、上旬は前年を大幅に下回り、中旬は貯蔵用を出荷するなどの対応をしたことにより前年をかなりの程度上回る入荷となるも、下旬は再び前年を大幅に下回ったことから、月計では前年をかなり大きく下回った。

価格は、月を通して高値基調で推移し、中旬半ばまでは緩やかな上げ基調となり、中旬半ば以降は高値もちあいで推移したことから、月間では高かった前年をやや上回った(図)。



※1 卸売価格とは、東京都中央卸売市場の平均卸売価格で、平均価格、保証基準額および最低基準額とは、関東ブロックにおける価格である。

※2 平均価格とは、指定野菜価格安定対策事業(以下「事業」という)における、過去6カ年の卸売市場を平均した価格を基に物価指数等を加味した価格である。

※3 事業における価格差補給交付金は、平均販売価額(出荷された野菜の旬別およびブロック別の平均価額)を下回った場合に交付されるため、上記の各表で卸売価格が保証基準額を下回ったからといって、交付されるとは限らない。

なお、品目別の詳細については表の通り。



(3)大阪市中央卸売市場

月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が万7781トン、前年同月比104.2、価格はキログラム当たり241円、同95.3となった(表)。



きゅうりは、福島産が生育期の天候不順などで上中旬の入荷が少なく、トマトは、冬春トマトの早期切り上がりにより上旬は高単価で推移した。レタスは生育が良好で、前年を上回る入荷となった。全般的には前年をやや上回る入荷量の中で、価格は前年をやや下回ったものの、平年をかなりの程度上回った。しかし、大阪では天神祭(月25日)が終わって夏本番となると平年は荷動きが活発となるが、本年は消費が鈍く、値を下げる品目が多く見られた。

ア 根菜類

にんじんは、北海道の道南地区産と青森産の順調な入荷により、前年をかなり大きく上回った。だいこんは、北海道産および岐阜産の入荷が前年を下回ったため、総入荷量は前年をわずかに下回った。価格は、にんじんが北海道十勝地区および富良野地区の生育懸念などにより、前年をかなり大きく上回り、だいこんも前年をかなり大きく上回った。

イ 葉茎菜類

キャベツは、長野産および群馬産の生育が良好で、総入荷量は前年をかなり大きく上回った。ほうれんそうは、岐阜産がこれまでの前進出荷の影響で入荷量が減少したため、前年をやや下回った。価格は、キャベツが前年を大幅に下回り、ほうれんそうは前年をわずかに下回った。

ウ 果菜類

ピーマンの入荷量は、福島産、愛媛産、大分産、広島産などの生育の前進化により、前年をわずかに上回った。トマトの入荷量は、熊本産および愛知産の切り上がりが早かったことから、前年をやや下回った。価格は、ピーマンが前年をかなりの程度下回り、トマトは前年をかなり大きく上回った。

エ 土物類

ばれいしょは、茨城産や千葉産などの生産が良好で順調な入荷となり、前年をかなり大きく上回った。たまねぎは、兵庫産、佐賀産などにべと病などによる入荷量の減少が見られ、前年をわずかに下回った。価格は、ばれいしょが前年を大幅に下回り、たまねぎは前年を大幅に上回った。

なお、品目別の詳細については表の通り。




(4)需要を中心とした9月の見通し

ア 市場開市および休市

月の開市は22日で、休市日数は日となっている。

中旬以降に十五夜、敬老の日、秋の彼岸と季節行事が続き、秋の収穫に感謝し、食欲の秋を盛り上げる企画が展開される。また、行楽シーズンを迎え、外食や中食での野菜の需要も増えてくる。下旬には量販店などで、はくさいやだいこん、ねぎなど鍋物商材の展開も開始される。

イ 市場担当者から

夏休みも終わって東京に学生が戻り、学校給食も始まるなど、野菜の流通をめぐる状況は再び通常の状態に戻ってくる。月はオリンピック観戦に気を取られ、外食の機会が多くなり、野菜の摂取量が減少したかもしれない。食欲の秋を迎え、野菜が多めの食生活を送ってもらいたいところである。

遅い梅雨明けは東北や北海道に不安定な気象をもたらし、その後に不作や生育の遅れをもたらすかもしれない。かぼちゃなどは、定植を度行った生産者もあると種苗会社から情報が入った。長期予報では、猛暑の夏を予想した。東日本では、月上旬の前半までは暑くても平年並みであったが、上旬の後半からは40度近くまで気温が上がるなど、猛暑となった。

昨年は旧盆前後から涼しくなり、残暑に見舞われることもなく初秋を迎えた。また、月中旬から関東以北は各地で集中豪雨に見舞われ、作柄は乱れて野菜価格は高騰した。月には北関東で大洪水もあった。今年はそのような災害が起きぬことを祈るが、いざという時のための備えは必要である。

景気の動向を見ると、雇用情勢の改善により、多くの産業分野で人手不足が明らかになっている。円高ではあるが、100円台にとどまっている。景況感を示す指標は悪くないのに、景気は悪いと感じる。このことを、あるエコノミストは「鍋は熱しているのに、湯が沸かない」と例えている。主要な原因は、人口の27を占める65歳以上の高齢者が極端にお金を使わなくなっているためではないかと推論している。政府はインフレ経済を待ち望んでいるが、ことは簡単ではない。同じことが、青果のマーケットにも言えるかもしれない。「野菜価格は高まっているのに、供給が増えない」状況なっており、生産者から、作付増の情報を聞くことは少ない。団塊世代の生産者が70歳にさしかかって、離農が増えつつあるためであると思われる

根菜類では、だいこんは北海道産がピークとなるが、天候不順で前年に続いて不作気味である。月には、寒暖の差が激しくて病気も出ている。月は、コンビニエンスストアがおでんの販売を強化する時期である。だいこんを市場から調達するケースが多くなれば、価格が高騰する場面も考えられる。総じて、価格は前年を上回ると予想される。家族全員が忙しく、ご飯は家で炊いても、おかずはコンビニでそれぞれ好きなおでんを買ってくる。その際、だいこんだけは欠かすことがない。そんな家庭も多いかもしれない。

にんじんは生育の遅れから、不作年と予想される。品種や栽培方法の違いによって、ほ場によるバラツキも大きい。は種にシーダーテープを使った畑は、気象災害に弱いという話も聞く。価格は、高かった前年並みとなろう。

葉茎菜類では、キャベツは、前年と同様に北海道産および東北産の不作で、群馬産のシェアが高まっている。はくさいは引き続き長野産の高原物が中心であるが、梅雨明け後の月上旬に雷雨を受けて、終盤の作に乱れが出ることも予想される。レタスは、昨年に続いて月の豪雨の被害で十分な状況ではない。高原地帯の天候の乱れが大きく、入荷が少なくて高値の年になろう。ほうれんそうは、月の価格はやや低迷しているが、一転して月は高値となろう。ねぎは、天候不順の影響で東北産などが不作気味である。学校給食の再開などで需要が急増し、前年並みの高値になると予想される。

果菜類では、きゅうりは遅れていた福島産、岩手産、秋田産が月に多く入荷し、量的には前年を上回る見込みである。前年が高値となったことから、やや安いと予想される。なすは、昨年は不作となったが、今年は適度の降水で豊作と予想される。トマトは、月に遅れて着果した分の入荷が月上旬にピークとなり、北海道産を中心に前年を上回る見込みである。価格の大きな変動はなく、月後半になって量が減ってきても、平年並みの価格をキープできるであろう。ピーマンは、岩手産を中心に茨城産および福島産の入荷となるが、価格はやや安めを予想している。かぼちゃは出回り量が少なく、高値で推移しよう。

土物類では、ばれいしょは北海道産が中心だが、当面は道南地区の男爵が中心となろう。静岡などの産地の入荷が早まり、東北も不作で、北海道産も生育が遅れて量が少ないため、価格は高めと予想される。たまねぎも北海道産は遅れ気味で、本州産も不作傾向であり、価格は平年を上回ろう。

新物の入荷が本格化するさといもは月から底値が高いが、西日本の産地の不作が原因である。今後、千葉産の石川早生が本格化してやや買いやすくはなるが、全般的な雨不足で小ぶりの仕上がりと予想される。かんしょ、れんこんなどとともに、おいしい新物の販促企画を実現していただきたい。

季節商材のえだまめは、月の猛暑の影響により入荷は少なめで、価格は前年比で高くなろう。北海道産のメロンは、結実時期である月や月前半の天候不順により、小ぶりで少なめと予想される。スイートコーンは北海道産が主力となるが、やや遅れぎみで月の入荷が多くなる。祭りの需要もあり、月よりも価格は上がってくるであろう。

(執筆者東京青果株式会社 加藤 宏一)

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