東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万3409トン、前年同月比95.5%、価格は1キログラム当たり277円、同108.3%となった。
大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万9618トン、同106.2%、価格は、1キログラム当たり241円、同103.0%となった。
入荷量は、東京都中央卸売市場では一部の品目で端境となったため、前年をやや下回り、大阪市中央卸売市場では順調な入荷により、前年をかなりの程度上回った。価格は、東京都中央卸売市場では前年をかなりの程度上回り、大阪市中央卸売市場では前年をやや上回った。
上旬は、日本付近は高気圧と低気圧が交互に通過し、全国的に天気は数日の周期で変わった。南から暖かい空気が流れ込みやすかったため、気温は全国的に高く、東・西日本ではかなり高かった。特に東日本では、旬平均気温が平年差プラス2.8度となり、昭和36年の統計開始以来3月上旬として1位の高温となった。北日本日本海側、東・西日本太平洋側、沖縄・奄美では、低気圧や前線の影響で旬降水量が多かった一方、東日本日本海側では、低気圧などの影響が小さく旬降水量はかなり少なかった。
中旬は、高気圧が大陸から日本付近に張り出した一方、日本の南海上を低気圧が数日の周期で通過した。このため、高気圧に覆われることが多かった北日本では晴れの日が多かったが、東・西日本太平洋側や沖縄・奄美では、低気圧や湿った気流の影響で旬降水量が多かった。旬の前半は、大陸から高気圧が張り出したため、北からの寒気の影響を受けて、東日本から沖縄・奄美を中心に低温となったが、旬の後半は、北からの寒気の影響を受けにくかったため、全国的に高温となり、特に北・東日本で明瞭となった。
下旬は、北・東・西日本では、大陸から張り出す高気圧に覆われて晴れの日が多かったため、旬間日照時間はかなり多かった。特に北日本太平洋側、東日本日本海側では、旬間日照時間がそれぞれ平年比136%、157%となり、昭和36年の統計開始以来3月下旬として最も多くなった。また、低気圧の影響が小さかったため、全国的に旬降水量は少なかった。寒気の影響を受けて、沖縄・奄美ではかなりの低温となった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
3月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が12万3409トン、前年同月比95.5%、価格はキログラム当たり277円、同108.3%となった(表1)。
入荷量は、関東産および西南暖地の四国産、九州産を主体に出回り、これまでの暖冬による影響から全般的に生育が前進傾向で推移し、一部の品目で端境となったこともあり、全体では前年をやや下回る入荷となった。
価格は、多くの品目で前年を上回って推移し、特に、はくさいは前進出荷により入荷が減少したため、中旬以降価格が高騰した。ばれいしょは、九州産において天候不順の影響で小玉傾向および掘り取り作業の遅れから入荷が減少し、前年を大幅に下回ったことから、高値で推移した。一方、きゅうりは主産地において天候に恵まれ入荷が増加したことから、前年を大幅に下回ったものの、野菜全体ではかなりの程度上回って推移した。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、だいこんは前進出荷の影響および天候不順による収穫の遅れにより、上中旬は前年を大幅に下回る入荷となったことから、下旬はおおむね前年並みの入荷となったものの、月計では前年をかなり大きく下回った。にんじんは天候に恵まれ生育は順調で、月を通して前年を上回る入荷となった。
価格は、だいこんは中旬に上げ基調となり、下旬は高値もちあいで推移した。にんじんは月を通して安値もちあいで推移したものの、月間では安値だった前年をやや上回った(図2)。
主な品目の入荷量は、ほうれんそうは前進出荷の影響により上中旬は前年を大幅に下回ったものの、下旬は産地の切り替わりなどもあり、前年並みの入荷となった。ねぎは主要産地において、中旬に前年をかなり大きく下回る入荷となったものの、下旬は春ねぎの出荷が始まったこともあり、前年をかなり大きく上回る入荷となったことから、月間では前年並みとなった。
価格は、ほうれんそうは中旬に一度やや値を下げたものの、月を通して高値基調で推移したため、月間では前年を大幅に上回った。ねぎは中旬にやや値を上げたが、おおむねもちあいで推移し、月間では安値だった前年を大幅に上回った(図3)。
主な品目の入荷量は、ピーマンが主産地において天候に恵まれ生育は順調で、月を通して前年を上回る入荷となった。トマトは一部の産地において12月下旬から1月上旬における曇天などの影響を受け、中旬は前年を大幅に下回る入荷となったものの、上旬、下旬は前年を上回る入荷となったことから、月間ではわずかに前年を下回った。
価格は、ピーマンは潤沢な入荷となったこともあり、月を通して安値基調で推移した。トマトは上旬から下旬半ばにかけて緩やかな上げ基調で推移し、下旬の後半以降は下げ基調となったものの、月間では高値であった前年並みの価格水準となった(図4)。
主な品目の入荷量は、たまねぎが上旬は前年をかなり大きく上回ったものの、中旬は前年をかなり大きく下回り、下旬に再び前年を大幅に上回った。ばれいしょは月を通して前年を下回る入荷となった。
価格は、たまねぎは月を通しておおむね安値もちあいで推移し、月間においても安値だった前年を大幅に下回った。ばれいしょは前月に引き続き高値基調で推移する中で、上中旬はさらに緩やかな上げ基調となり、下旬は高値もちあいで推移したことから、月間では前年を大幅に上回った(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
3月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万9618トン、前年同月比106.2%、価格は、1キログラム当たり241円、同103.0%となった(表3)。
3月は、出荷の端境期となる品目が多く見込まれたが、順調な天候推移から生育が追いつき、総入荷量は前年をかなりの程度上回った。価格は、端境によって上旬に高値となったり、これまでの前進出荷の影響で秋冬産地が早期に切り上がったために後半に上伸するなどの動きがあり、月間では前年をやや上回った。
だいこんの入荷量は、香川産および鹿児島産は順調であったものの、徳島産がこれまでの前進出荷の影響で減少したため、前年をわずかに下回った。にんじんは、徳島産が前年を上回ったが、鹿児島産の入荷がこれまでの前進出荷の影響で減少したため、前年をわずかに下回った。価格は、だいこんが前年をやや上回り、にんじんは前年をかなり大きく上回った。
キャベツは、寒玉の入荷が順調だったものの、兵庫産を中心に春系の入荷量が減少し、前年をかなりの程度下回った。レタスは、兵庫産および徳島産は減少したが、長崎産など加工向けの入荷が大幅増となり、前年をかなりの程度上回った。価格は、キャベツが安値だった前年をかなり大きく上回り、レタスも前年をかなり大きく上回った。
果菜類は、日照量が多かったため、すべての品目で入荷量が前年より多かった。その中でもきゅうりは、宮崎産、高知産および徳島産が順調な入荷となり、前年を大幅に上回った。きゅうりの価格は、下げ基調が続いたため前年を大幅に下回った。
ばれいしょの入荷量は、北海道産の集約出荷により、前年を大幅に上回った。たまねぎも、北海道産および長崎産の入荷が順調で、前年を大幅に上回った。価格は、ばれいしょが北海道産および新物の価格上昇で、前年を大幅に上回り、たまねぎは北海道産の潤沢な入荷により前年を大幅に下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
5月の開市は21日で、休市日数は10日となっている。
5月は、ゴールデンウイークや母の日などを中心に、レジャーや外食を楽しむ機会が多い月である。量販店や外食店などがさまざまな販売企画を準備することから、野菜も活発な需要が期待される。また、春野菜から初夏の野菜へと切り替わる時期でもある。
3月は晴天の合間に適度の降雨があり、関東によくある砂塵を巻き上げるような強風もなかった。おだやかに季節は変わり、北日本各地の雪解けは例年より1週間以上早く、関東や西日本各地の桜の開花も平年より早まった。野菜の価格は、学校給食が休みに入った3月下旬まで高値が続いた。
4月末から5月にかけてのゴールデンウィークは、消費者の外出機会が増え、外食による野菜需要の高まりが期待できる。また、行楽地へ出かける際の弁当など、家庭調理用の需要も見込める時期である。5月の第2日曜日は母の日なので、ホームパーティー需要、特にサラダ需要などが見込める。なお、5月は市場の休市日が多くなるので、品目によっては調達が難しい時期となる。
5月は、春野菜から初夏の野菜への切り替わり時期でもある。静岡産の三方原の男爵、佐賀産や兵庫産の新たまねぎは、この季節を代表する味覚だ。初夏物としては、沖縄産や九州各県産のゴーヤ、熊本産の新ごぼう、茨城産のねぎ、埼玉産のブロッコリー、長野産の準高冷地レタス、鹿児島産のかぼちゃなどが、この時期を代表するおいしい野菜である。熊本産のトマトも、上段の収穫となって、ますます味が乗ってくる。低温の時期に生育した、味のはっきりしたおいしい野菜を食べて、気候の変わり目を健康で乗り切りたいものである。
平成27年の春は全国的に日照時間が少なく、全般的な野菜の出回り不足を招いた。今年の5月は、野菜の入荷が大きく減少するような天候の激変はなく、通常通りの入荷と予想される。また、青森産のだいこんや準高冷地のレタス、群馬産のキャベツの出回りは早いと予想している。
5月の天候の乱れで特に警戒すべきは異常高温であり、果菜類の生育にダメージを与える。メロンやすいかは、急な高温によって肥大に影響が出やすい。なすは、一見ダメージがないように見えるが、夜温が高ければ実が着きにくくなる。
根菜類では、東北のだいこんは雪解けが早いため、5月下旬には入荷が本格化するであろう。27年に不作であった熊本産を始めとするごぼうは、前年を上回る入荷となる見込みである。
葉茎菜類では、27年のねぎやほうれんそうが曇天が続いたために病気が発生して高値となったが、今年は順調で問題ないと予想される。レタスは27年に、関東産が天候不順で不作気味となったが、今年は順調で価格も平年並みか安い見込みである。レタスは味が充実する時期となり、歯触りが軟らかく適度な甘さもある。キャベツも群馬産が順調で、潤沢な入荷が予想される。
果菜類では、きゅうりが全国的に順調で、入荷は前年を上回り、トマトも耐病性品種の普及などにより、前年を上回ると予想している。なすは福岡産が回復に向かい、前年比ではやや多いと予想している。ピーマンも平年作を期待している。
土物類では、天候不順で27年に入荷が少なかった佐賀産のたまねぎが、今年は平年に戻る見込みである。ばれいしょは4月に続き鹿児島産が少なく、長崎産は前年並みと予想される。新もののばれいしょを使い、カレーやサラダだけでなく煮ものや炒めものなど、多様な料理を楽しんでいただきたい。また、ばれいしょは新品種の「アイユタカ」「さんじゅう丸」が登場する。積極的に話題作りをしながら、販売に取り組んでいただきたい。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)
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(単位:円/kg)
資料:農林水産省「青果物卸物売市場調査」
注:平年とは、過去5カ年(平成23~27年)の旬別価格の平均値である。
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資料:農林水産省「青果物卸物売市場調査」
注:平年とは、過去5カ年(平成23~27年)の旬別価格の平均値である。