東京都中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量が12万375トン、前年同月比101.1%、価格は1キログラム当たり260円、同105.7%となった。
大阪市中央卸売市場における野菜の入荷は、入荷量は3万7779トン、同110.3%、価格は、1キログラム当たり230円、同104.1%となった。
1月下旬以降の急激な冷え込みの影響で、一部の品目に入荷の谷間ができたものの、全体ではおおむね前年並みの入荷となった。価格は前年をやや上回る水準で推移した。
上旬は、旬のはじめに冬型の気圧配置で、北・東・西日本の日本海側では雪や雨の日が多かった一方で、太平洋側では晴れた日が多かった。旬の中頃には日本付近を気圧の谷が通過し、太平洋側でも曇りの日があった。その後、大陸から寒気が流れ込み、西日本と沖縄・奄美を中心に低温となった。旬の終わりには大陸から高気圧が移動し、太平洋側だけでなく西日本日本海側や沖縄・奄美でもおおむね晴れた。
中旬は、冬型の気圧配置は長続きせず、天気は数日の周期で変化した。期間のはじめは大陸から高気圧が移動し、太平洋側だけではなく、東・西日本の日本海側でも晴れた日があった。13日から14日にかけては低気圧が発達し、全国的に荒れた天気となり、低気圧に向かって暖かい空気が流れ込んだため、気温は全国的に平年を大幅に上回り、各地で春一番が吹いた。低気圧の通過後は一時的に冬型の気圧配置となり、全国的に気温が低くなった。その後は大陸から本州付近へ高気圧が移動し、東日本以西では太平洋側・日本海側ともおおむね晴れた一方、北日本では気圧の谷の影響で曇りや雪または雨となった。20日は低気圧が日本付近を発達しながら北東進し、全国的に天気が崩れ、東・西日本太平洋側では大雨となった所もあった。西日本太平洋側では、旬降水量が平年比297%となり、昭和36年の統計開始以来の最も多い値を更新した。
下旬は、日本付近では冬型の気圧配置が長続きせず、短い周期で高気圧と低気圧が交互に通過した。21日は日本付近を発達しながら北東進した低気圧が北海道の東海上に達し、北日本では暴風雪や大雪となった所があった。低気圧の通過前は南から暖かい空気が流れ込み北・東日本を中心に気温が平年を大幅に上回った一方、低気圧の通過後は西日本を中心に寒気が流れ込み、気温が低くなった。また、24日から26日も大陸からの寒気の影響で全国的に低温となり、北日本日本海側と沖縄・奄美では曇りや雨または雪となった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
2月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が12万375トン、前年同月比101.1%、価格はキログラム当たり260円、同105.7%となった(表1)。
入荷量は、関東産、西南暖地の四国産および九州産を主体に出回り、これまでの暖冬による影響から全般的に生育が前進傾向で推移していたが、1月下旬以降の急激な冷え込みにより生育の停滞が見られたことから一部の品目で入荷の谷間ができたものの、全体ではおおむね前年並みの入荷となった。
価格は、多くの品目で前年を上回って推移し、特にはくさいは中旬以降入荷量の減少に伴って価格が高騰した。ばれいしょは、九州の産地において天候不順の影響で掘り取り作業の遅れから入荷が減少し、前年を大幅に下回ったことから、高値で推移した。一方、キャベツおよびだいこんは、主要産地において天候に恵まれ潤沢な入荷となったことから、前年を大幅に下回ったものの、野菜全体では前年をやや上回る水準で推移した。
類別の動向は以下の通り。
入荷量は、にんじんは主産地において適度な降雨と気温高から肥大が進み、生育は順調だったことから、上旬は前年を大幅に上回る入荷となったが、中旬以降は多かった前年並みの入荷となったものの、月計ではかなりの程度上回る入荷となった。だいこんも同様に順調な入荷となり、中下旬で産地で自主調整を行ったこともあり、前年を下回ったものの月計では前年並みとなった。
価格は、にんじんは月を通して安値基調で推移したものの、月を通して豊作基調で安値だった前年を上回って推移した。だいこんは、月を通して安値基調で推移した(図2)。
主な品目の入荷量は、キャベツは主産地において適度な降雨と気温高により前進出荷傾向で推移したことから、上旬は前年を大幅に上回る入荷となったが、中旬以降は前進出荷の影響により入荷が徐々に減少していき、下旬には前年をやや下回る入荷となった。一方、ほうれんそうは、これまでが前進出荷傾向であったことに加え、1月下旬からの急激な冷え込みにより、生育に停滞が見られ入荷が減少したことから、月を通して前年を下回る入荷となった。
価格は、キャベツは潤沢な入荷となったこともあり、月を通して前年を大幅に下回る安値基調で推移した。一方、ほうれんそうは、上旬は前年を大幅に上回る高値基調で推移し、中旬以降は値を下げたものの、月間では前年をかなりの程度上回った(図3)。
各品目で前年を上回る入荷となったが、特に増加の大きかったなすは、主産地で11月から12月の曇天による日照不足などの影響が残っていたものの、上中旬は低温などの影響で少なかった前年を大幅に上回り、下旬は前年並みの入荷となった。
価格は、なすは上旬から中旬にかけて入荷が増加したことに伴い、大きく値を下げ前年を下回った。下旬はやや値を上げ前年をかなりの程度上回ったものの、月間では前年をわずかに下回る水準となった(図4)。
主な品目の入荷量は、たまねぎが上旬は前年を大幅に上回る入荷で、その後旬を追うごとに入荷が減少したものの、月計では前年をやや上回る入荷となった。一方、ばれいしょは、九州産の入荷が天候不順の影響で掘り取り作業の遅れから全般的に少なめであったこともあり、月を通して前年を下回る入荷となった。
価格は、たまねぎは月を通して前年を下回る安値基調で推移した。一方、ばれいしょは九州産の入荷が少なめであったことから、旬を追うごとに値を上げ、月間では前年を大幅に上回る高値基調で推移した(図5)。
なお、品目別の詳細については表2の通り。
2月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万7779トン、前年同月比110.3%、価格は、1キログラム当たり230円、同104.1%となった(表3)。
2月は、冬型の気圧配置が時々現れて強い寒気の南下がみられたものの、月間の平均気温は大阪管内では平年を1.1度上回り、降水量や日照時間も平年を上回った。前進出荷に次ぐ前進出荷で入荷量が大幅な増加となったキャベツのような品目もあれば、はくさいのように出荷の端境期となって入荷量が減少した品目もあった。キャベツ、だいこん、ばれいしょ、たまねぎなどを中心に、前年をかなり上回る入荷量となった品目が多く、総入荷量は前年を1割上回った。価格は、寒暖の差が大きく不安定な入荷となる中で、ひな祭りなどに向けての引き合いが強かったことから、前月をやや上回った。
入荷量は、だいこんが鹿児島産、徳島産および長崎産の肥大が良好であったことから、前年をかなり大きく上回った。にんじんは、鹿児島産の肥大が良好で、愛知産も太物を中心に入荷したため、前年をやや上回った。価格は、だいこんが前年をやや下回り、にんじんは前年を大幅に上回ったが、平年に比べると安値となった。
キャベツ類は、寒玉、春キャベツともに大玉傾向で潤沢な入荷となり、前年をかなり大きく上回った。はくさいは、茨城産、長崎産および大分産の入荷が多かったものの、兵庫産の減少により前年をかなりの程度下回った。価格は、入荷量が少なかったはくさいが前年を大幅に上回り、潤沢な入荷が続いたキャベツ類は平年と比べてほぼ半値となった。
トマトの入荷量は、豊富な日照量などによって熊本産を中心に増加し、前年を大幅に上回った。ピーマンは、生育期の天候不順の影響で、前年をわずかに下回った。価格は、トマトが前年をわずかに上回り、ピーマンは前年をかなりの程度上回った。
たまねぎは、北海道産の残量が多いことから、入荷量は前年を大幅に上回った。さといもの入荷量は、国内産の生産量が減少したため、前年をかなりの程度下回った。価格は、さといもが前年を大幅に上回り、たまねぎは前年を大幅に下回った。
なお、品目別の詳細については表4の通り。
4月の開市は22日で、休市日数は8日となっている。4月は、鍋商材からサラダ商材へと売れ筋が変化する月である。また、年度の切り替えとなることから、一人暮らしなどの新生活を迎える消費者に対する提案が活発に行われる時期である。さらに、お花見などの行楽も行われることから、レジャー向けのサラダ需要も期待される時期である。
1月中旬から本格的な寒波が襲来して東京都や埼玉県などで積雪となり、露地野菜の出荷などに影響が出た。さらに1月下旬には鹿児島県を中心に、歴史的とされるほどの強い寒波が襲来し、豆野菜や新物のばれいしょが大きな減収を余儀なくされた。この冬はエルニーニョ現象の影響で全国的に例年ほどの寒さはなく、生育が1カ月ほど前進したが、急激に温度が下がったことで生育が遅れ、全国的に野菜の入荷量が減った。2月に入ってようやく晴れの日が続くようになったが、3月から4月にかけても干ばつ気味で地温が上がらず、生育は遅れ気味になると予想される。
そうした入荷不足から、市場価格は2月は平年を上回り、さらに3月も引き続き高めと予想される。特にほうれんそうは積雪の影響を強く受けて高値となった。3月から始まる春はくさいも、急増は見込めない状況である。果菜類は、前年の11月の異例の高温で花芽形成が遅れ、全般に結実量が少なく、さらに急激な気温の低下で花落ちするなど、入荷不足の解消のめどが立たず、高値傾向が続くと予想される。野菜全体の価格は1キログラム当たり250円を超える高い水準で推移した。こうしたなか、キャベツ、たまねぎは順調な入荷で、価格は前年を下回り、高値のムードを落ち着かせた。
4月に入ると鍋商材からサラダ商材へと売れ筋が変化する。2月から3月にかけての寒暖の繰り返しの中で仕上がってきた、春キャベツやレタスの味が特に良い。果菜類ではトマトが上段近くの収穫となり、日照量も十分なため甘味が増してくる。静岡産のアメーラや熊本産の塩トマト、佐賀産の光樹などが味の最高期を迎える。トマトなどは、厳冬期よりも春本番を迎えるこの時期が、野菜の栄養価も高まる。
外食産業では、ブロッコリーやアスパラガスをメインに春のメニューを提案する時期である。野菜の味が年間で一番充実する季節を迎え、「豚カツには春キャベツ」などといった季節の野菜をとり入れた提案も、説得力をもつ。メディアなどを通じ、それぞれの野菜の味が一番良い時期をお客様に知らせていきたいものである。
根菜類では、新物のばれいしょを使った「肉じゃが」なども、春の味わいを感じさせる。新物のばれいしょは、鹿児島県の寒害などの影響で3月までは入荷が少なかったが、主力産地が長崎県などに北上するため、出回り不足の解消が予想される。
4月は日中の温度が高くなるため、アブラナ科野菜が抽苔を迎える時期で、キャベツの生育の限界時期でもある。わが国では、キャベツの優れた品種が数多く育成されている。それは、限界時期にも販売できるような品種および系統の選抜に関する研究を重ねてきた結果である。地道に研究を重ねられた種苗会社のブリーダーに感謝したい。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)
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(単位:円/kg)
資料:農林水産省「青果物卸物売市場調査」
注:平年とは、過去5カ年(平成23~27年)の旬別価格の平均値である。
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資料:農林水産省「青果物卸物売市場調査」
注:平年とは、過去5カ年(平成23~27年)の旬別価格の平均値である。