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需給動向 1 (野菜情報 2015年11月号)


1 東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成27年9月)

野菜需給部 調査情報部


【要約】

 8月下旬以降9月上旬までの低温、曇雨天による日照不足に加え、関東、東北を襲った豪雨などから、特に葉茎菜類および果菜類の入荷が伸びず、また、西日本、九州では台風の影響もあり北海道産を除いて全国的に9月上、中旬は入荷が伸び悩んだ。
 同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、果菜類、葉茎菜類の減少から前年同月を下回った。価格は、前年をやや上回って推移した。
 同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、なす、ピーマン、さといもなどが大きく減少したものの、総量では前年同月をわずかに上回った。価格は、果菜類とねぎがかなり上回った。

(1) 気象概況

 上旬は、低気圧や前線が日本付近を通過することが多く、東北地方から奄美地方にかけては、8月下旬から引き続いて曇りや雨の日が多く、低温となった。9日には台風18号が東海地方に上陸し、東日本太平洋側を中心に広い範囲で大雨となった。さらに、日本の東海上を台風17号が北上した影響も加わって、関東地方から東北地方では南から湿った空気が長時間にわたって流れ込んだため、11日にかけて記録的な大雨となり、河川の氾濫など大きな被害が生じた(平成27年9月関東・東北豪雨)。東日本太平洋側では旬降水量が平年の418%となり、1961年の統計開始以来、9月上旬としては最も多い記録を更新した。また、東日本の日本海側の旬別日照時間は平年の36%となり、1961年の統計開始以来、9月上旬としては最も少ない記録を更新した。

 中旬は、高気圧と低気圧が交互に通過し、北日本から東日本では天気は数日の周期で変化したが、西日本中心に、大陸からの冷涼で乾いた高気圧に覆われた日が多く、東日本以西では低温となり、西日本ではかなり低かった。

 下旬は、本州付近を高気圧と低気圧が交互に通過し、北・東・西日本では天気は数日の周期で変わった。

 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。

図1 気象概況

(2) 東京都中央卸売市場

 9月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が13万3300トン、前年同月比99.6%、価格はキログラム当たり284円、同104.8%となった。

 入荷量は、関東産、北海道産および東北産を主体に出回り、8月下旬以降の曇雨天による日照不足や低温などの天候不順により、果菜類を中心に多くの品目で生育遅延が見られた。特に中旬は前年同月と比べかなりの程度下回ったものの、下旬には天候の回復もあり、前年同月をかなりの程度上回ったことから、野菜全体では前年同月並みに推移した。

 価格は、天候不順の影響から多くの品目で入荷が減少したことから、上旬から中旬にかけて大きく値を上げ、特に中旬は前年同月をかなりの程度上回る高値基調で推移した。下旬は天候の回復により入荷が増加したことから、多くの品目で値を下げたものの、前年同月をかなりの程度上回ったことから、野菜全体では前年同月をやや上回って推移した。

ア 根菜類

 入荷量は、だいこんが主産地において、上中旬は生育期の天候不順の影響と8月下旬からの適度な降雨で、干ばつによる生育の遅れから回復し、生育は順調となったことから入荷は増加した。下旬は中旬に比べて入荷が伸びず減少したものの、前年をかなり大きく上回ったことから、月計では前年をやや上回る入荷となった。にんじんは、主産地において、上中旬は干ばつの影響から小ぶり傾向となったことから、前年を下回る入荷となったものの、下旬は適度な降雨により肥大が促進され、前年をやや上回った。

 価格は、だいこんは月を通して前年を下回って推移した。にんじんは月を通して前年を上回って推移した。

イ 葉茎菜類

 入荷量は、はくさいは8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足と低温の影響で生育の停滞が見られたものの、月を通して長雨により少なかった前年を上回る入荷となった。キャベツおよびレタスは、主要産地において8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足と低温の影響で生育に停滞が見られ、中旬にかけて入荷は減少し前年を下回ったが、下旬は天候の回復により入荷は増加し、前年を上回る入荷となった。ほうれんそうは、主要産地において8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足と低温の影響で生育に停滞が見られ、上旬は前年を上回る入荷も、中旬以降は多かった前年を下回る入荷となった。ねぎは、主要産地において8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足により、上中旬は多かった前年を下回り、下旬は天候に恵まれ生育はおおむね順調で、入荷が伸び前年を上回る入荷となったが、月計では前年をかなりの程度下回る入荷となった。

 価格は、キャベツは旬を追うごとに値を上げ、長雨の影響により高値だった前年並みの水準で推移した。はくさいは、上旬から中旬にかけて値を上げ、中旬は前年同月を上回る高値基調で推移したものの、下旬は下げに転じ前年同月を大幅に下回った。その他の品目においても、上旬から中旬にかけて値を上げ、前年同月を上回る高値基調で推移し、下旬は下げに転じたものの、月計では前年同月を上回る価格水準で推移した。

ウ 果菜類

 入荷量は、きゅうり、トマトおよびピーマンは主要産地において8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足と低温の影響で生育に停滞が見られ、上中旬は前年を大幅に下回る入荷となった。その後の天候の回復により入荷が伸び、下旬は前年を上回ったものの、月計では前年を下回る入荷となった。なすは、主要産地において8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足と低温に加え、台風の風害による擦れ果で品質の低下が見られたことから、入荷が大きく減少し、中旬は前年を大幅に下回る入荷となった。下旬は天候の回復により入荷は増加したものの、前年をやや下回ったことから、月を通して前年を下回る少なめの入荷となった。

 価格は、きゅうりは、旬を追うごとに値を下げたものの、月を通して前年を上回る水準で推移した。なすは、旬を追うごとに値を上げ、月を通して前年を上回る高値基調で推移した。トマトは、上旬から中旬にかけて値を下げたものの前年を上回る水準となり、下旬は値を上げたものの、日照不足、低温などの影響で高値だった前年を大幅に下回る水準で推移した。ピーマンは、上旬から中旬にかけて値を上げ、前年を大幅に上回る高値で推移し、下旬は下げに転じたものの、引き続き高値基調で推移した。

エ 土物類

 入荷量は、さといもが主要産地において、8月下旬から9月中旬までの曇雨天による日照不足と低温により上中旬は多かった前年を大幅に下回る入荷となり、下旬は増加したものの少なかった前年並みの入荷となったことから、月計では前年を大幅に下回る入荷となった。ばれいしょは、主要産地が生育期の天候に恵まれ、生育は順調で収穫作業も順調に進んだことから、月を通して前年を上回る入荷となった。たまねぎは、生育期の天候に恵まれたことから、生育は全般的に順調で、中旬は降雨による収穫遅れにより前年をやや下回ったものの、月計では前年をやや上回る入荷となった。

 価格は、さといもは旬を追うごとに値を下げたものの、前月までの高値基調もあり、月を通して前年を上回る水準で推移した。ばれいしょは、中下旬に前年を上回ったものの、月を通して大きな変動もなく前年並みに推移した。たまねぎは、旬を追うごとに値を下げ、月を通して前年を下回る価格水準で推移した。

(3)9月の値動きで注目される品目

 日照不足と低温で生育が遅れていたキャベツは下旬にかけて入荷は安定していたものの旬を追うごとに値を上げた(図2)。

 高値で推移しているさといもは下旬にかけて入荷が回復し、下げ基調となった(図3)。
北海道の出荷が本格的に始まった、たまねぎ、ばれいしょは入荷量は月計では前年を上回っており、価格はたまねぎは下落傾向、ばれいしょは平年並みに推移した(図4、5)

 なお、品目別の詳細については以下の通り。

(4)大阪市中央卸売市場

 9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万1208トン、前年同月比102.3%、価格はキログラム当たり260円、同102.8%となった。

 入荷量は、台風や降雨の影響で前年同月を下回る品目が多くみられた。

 価格は、全体的に堅調であった。

ア 根菜類

 入荷量は、生育期の天候不良から北海道、東北地方の産地で作業が遅れたが、前年並みとなた。

 価格は、にんじんが安値だった前年同月比132.4%と大きく上回った。

イ 葉茎菜類

 入荷量は、台風や上旬の連続した降雨により生育不良となった品目が多く、特にほうれんそうは主産地の岐阜産が大幅に前年を下回った。価格は、はくさいが前年同月をかなり下回る中、ねぎが高く、前年同月比127.9%となった。

ウ 果菜類

 入荷量は、天候不順によりトマト以外の品目で入荷量が前年同月を下回った。

 価格は、入荷量が少なかった品目で高値となり、きゅうりで前年同月比116%、なすで同114.1%、ピーマンで同111.8%となった。

エ 土物類

 入荷量は、さといもが台風などの影響で作柄不良であったため前年同月比80.5%となった。一方、北海道産の入荷が本格化したたまねぎは前年同月比106.6%となった。
価格は、宮崎産の不作が響いたさといもは高値基調で前年同月比116.1%と大きく上回った。

 なお、品目別の詳細については以下の通り。

(5)市場担当者から

ア 11月の市場開市および休市

 11月の市場開市は21日で、休市日数は9日となっている。

 立冬を迎え、早いところでは上旬にもクリスマス商戦がスタートする。はくさい、かぶといった冬野菜をたっぷり使ったシチューや鍋物など温かいメニューの人気が高まる。

イ 需要を中心とした11月の見通し

 9月の価格高の局面から10月にはようやく各産地とも生産体制が整って、11月の卸売価格は例年並の水準に落ち着くと予想される。

 8月の台風15号でメロン類のハウスが被害を受けた九州だが、11月から出荷が本格化する秋冬野菜のは種や定植は間に合い、当初の予想よりも立ち直りは早い模様。冬トマトの主要産地である熊本県の果菜類は通常の展開が予想される。残暑もなく苗作りの段階から順調に推移し、台風以降は冷涼で野菜にとっては適温続き、11月中旬以降は潤沢な出荷が予想される。

 一方、関東は9月上旬の台風18号による降雨の影響で、稲刈りのスケジュールがずれるなどして露地野菜の定植に遅れが出た地域もある。関東、東海、四国のレタスについては、品薄が見込まれ、出荷量の変動が激しい状況が4月まで続くと予想している。

 2015年は年明けから一貫して野菜が高く、9月まで9カ月連続で前年比高と供給不足が顕著である。産地では高齢化で農家が毎年1~2%減ってきており、供給過剰の時代から、均衡の時期を経て過小供給の時代に入って来たと感じる。

 品目別に見ると、青森産のにんにくが本格化するが、加工需要の増大で前年は大幅価格高となった。そのため各農家とも面積拡大に努力している。ただ、市場到着後のダメージが出やすくなっている。これは優良な種子が足りず、自家製の種子を作付した影響とみられている。

 だいこんは東北地方では寒さが早く来て10月に続き少なく、関東産も前年のような前進はないと予想され11月も堅調な価格が見込まれる。業界紙によると、さんまが不漁でだいこんの需要がどこまで盛り上がるか心配はあるが、価格は低迷した前年比よりは大幅に高い見込みである。

 キャベツは関東産が遅れると予想され、堅調な価格が見込まれる。

 にんじんは前年が安値の年であったことから、作付を減らした生産者が多く、今年は反動で高値になると思われる。

 はくさいも茨城産の遅れによる不足から価格は引き続き高値で推移すると見込んでいる。本格的需要期を迎え引き合いも強まる。高原産の切り上がりは昨年よりも早いと予想している。

 ねぎも関東産は遅れが心配される。東北は終盤を迎えるがやや細めで、本格的に増えるのは11月中旬からとなる。

 ほうれんそうは10月には回復し、価格は平年並に戻る見込み。

 レタスは高原産が終了し、茨城産のピークである。年末にかけて中心になる兵庫産や香川産はほ場が乾かず、一部定植が終わらず11月は例年を下回る出荷が予測される。今年は、9月の天候の乱れから全国的に遅れが予想され、価格は前年比高めが見込まれる。

 きゅうりは、心配された残暑の影響はなかったが品種選定に問題があり9月は入荷が少なかったが、重油代に影響されることはなく通常通りと予想され、価格はやや安めであった前年を上回る見込み。

 トマトは熊本の始まりは例年並だが、東海、関東は9月前半の天候不順が影響し遅れが予想され入荷減の価格高の展開が見込まれる。

 ピーマンは東北産の切り上がり早く、そのため全国的にも出回り少なく、価格はやや高めを見込む。

 さといもは、関東産は問題ないが九州産が少なく、全国的な出回りの減少からやや高めの11月になると予想している。

 ばれいしょ、たまねぎは北海道産となるが、ほぼ平年作であり、価格も平年並の見込み。

 当初は豊作と予想されたが、小玉傾向の産地もありやや下方修正された。

(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)

 

指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

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指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場

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