8月上旬は全国的に晴れの日が多く、各地で猛暑日となった。気温の上昇に伴い大気が不安定となり、群馬県や長野県で激しい雷雨や降雹に見舞われた。中旬以降は、大幅に気温が下がり低温に加え、降雨も続いたことから、日照時間が全国的に平年を下回った。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、果菜類については、上旬は順調であったが下旬は日照不足により減少した。葉茎菜類は、上旬に降雹の被害があったものの下旬には回復し、前年同月をわずかに上回った。価格は、土物類が値を下げたが、根菜類が高く、野菜全体では、前年同月をわずかに上回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、輸入物の品質低下からさといもの入荷が大きく減少したほか、葉茎菜類で台風や降雹の被害を受けた品目もあったが前年同月をわずかに上回った。
価格は、根菜類や土物類およびねぎが前年をかなり上回り、野菜全体では前年をわずかに上回った。
上旬は、太平洋高気圧が本州付近に張り出し、北日本から西日本にかけて晴れて気温が高くなった日が多く、各地で猛暑日となった。気温の上昇に伴い、大気の状態が不安定となって内陸部を中心に所々で雷雨となり、埼玉県や和歌山県など大雨となった所もあった。また、突風による被害も発生した。北海道では、旬の後半は前線が南下し、太平洋側を中心に局地的に大雨となった。
中旬は、本州付近が気圧の谷となり、北日本から西日本にかけて低気圧や前線の影響を受けやすく、11日には北海道で、12日には長崎県で大雨となった。特に、西日本では日本海側を中心に降水量が多く、平均気温が低くなった。また、大気の状態が不安定となって所々で雷雨となり、北海道や埼玉県、神奈川県などで竜巻などの突風による被害が発生した。
下旬は、非常に強い台風15号が沖縄・奄美に接近し、25日に熊本県に上陸した後、日本海へ進み、26日に温帯低気圧に変わった。このため、沖縄・奄美や西日本では暴風雨となり、各地で猛烈な風と雨による被害が発生した。旬の後半も前線や湿った気流の影響で大気の状態が不安定となり、局地的に大雨となって、高知県や和歌山県などでは突風による被害も発生した。北・東日本では、台風16号から変わった温帯低気圧の影響で、冷たく湿った空気が流れ込んだため、気温がかなり低く、東北太平洋側や関東甲信地方を中心に曇りや雨の日が多かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。
8月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が12万5384トン、前年同月比102.3%、価格はキログラム当たり267円、同104.3%となった。
入荷量は、関東産、北海道産および東北産を主体に出回り、上旬は前月から引き続き高温・干ばつの影響で、東北産を中心とした果菜類や8月初旬に降った雹により供給不足が懸念されたものの、前年同月並みの入荷となった。中旬以降は低温・曇雨天が続いたものの、前年同月を上回ったことから、野菜全体では少なかった前年同月をわずかに上回って推移した。
価格は、上旬は前月からの高温・干ばつなどの影響から、多くの品目で前年同月を上回る高値基調で推移し、中旬も低温・曇天が続いたことによる影響で、引き続き高値基調で推移した。下旬は多くの品目で値を下げたものの、野菜全体では前年同月をやや上回って推移した。
入荷量は、だいこんが、主産地において6月から7月にかけての天候不順の影響から肥大不足などがあったものの、その後の天候の回復もあり生育が回復したことから、月を通して前年並みの入荷となった。にんじんは、主産地において、上旬はこれまでの前進出荷により、後続産地の出荷との谷間となり前年を下回る入荷となり、中旬は前年をわずかに上回る入荷はあったものの、下旬は生育期の干ばつの影響により、小ぶり傾向となったため、入荷が伸びず前年をやや下回った。
価格は、だいこんおよびにんじんが、月を通して前年を大幅に上回って推移し、特に、にんじんは8月上旬は7月からの産地の端境による品薄もあり、高値で推移した。
入荷量は、はくさい、キャベツおよびレタスが、初旬に主要産地において降雹被害により一部出荷ができなかったものや小玉での出荷となった影響で、一時的に入荷は減少したものの、下旬にはほぼ回復傾向となったことから、月計では前年を上回る入荷となった。ほうれんそうは、主要産地において、上中旬は梅雨明け後の急激な気温上昇に伴って、病害の発生が見受けられ前年を下回る入荷となったが、下旬は入荷が伸び前年をやや上回る入荷となった。ねぎは、主要産地において上旬は7月の降雨による収穫の遅れの影響はあったものの、少なかった前年をやや上回った。中旬は一時減少したものの、生育は順調であったことから、下旬は入荷が伸び、前年をやや上回る入荷となった。
価格は、各品目において、上旬から中旬にかけて前年同月を上回る高値基調で推移し、下旬は各品目で下げに転じたものの、ねぎは前年同月を上回る水準で推移し、レタスは高値であった前年の半値と安値で推移した。
入荷量は、きゅうりおよびなすが、主要産地の生育がおおむね順調であったことから、上中旬は前年を上回る入荷となったが、下旬はこれまでの高温干ばつの影響による花落ちなどから、入荷が伸びなかったものの、少なかった前年並みもしくは前年を上回る入荷となった。トマトは、主要産地において上旬は7月上旬の低温・日照不足などの影響から生育の遅れがあり、前年を下回る入荷で、中旬は入荷が増加し前年を上回ったものの、下旬は8月上中旬の高温による花落ちの影響で入荷が伸びず、前年を大幅に下回る入荷となった。ピーマンは、主要産地において、上中旬は7月中旬までの曇天などの天候不順とその後の高温により花落ちや実の焼けの影響から前年を下回る入荷となったが、下旬は入荷が伸びたことから、長雨・日照不足で少なかった前年を大幅に上回る入荷となった。
価格は、きゅうりおよびなすは、上旬から中旬にかけて値を下げたが、下旬は上げに転じたものの、高値だった前年を大幅に下回る水準で推移した。トマトは、月を通して安値だった前年を上回って推移した。ピーマンは、上中旬は前年を大幅に上回る価格水準で推移したが、下旬は値を下げたものの高値だった前年並みで推移した。
入荷量は、さといもが主要産地の生育期の曇雨天、日照不足などの影響から小玉傾向に加え、病害の発生も見受けられたことから、月を通して前年を下回る入荷となった。ばれいしょは、主要産地の生育期の天候に恵まれ生育は順調で収穫作業も順調に進んだことから、月を通して前年を上回る入荷となった。たまねぎは、上旬は前年を下回る入荷であったが、その後は北海道産の本格的な入荷に伴い、中下旬は前年を上回る入荷となった。
価格は、さといもが上旬から中旬にかけて値を上げたものの、下旬は下げに転じたが、前年を上回る水準で推移した。ばれいしょおよびたまねぎは、高値基調で推移していたが、旬を追うごとに値を下げ、下旬には前年を下回る価格水準で推移した。
8月下旬からの低温と降雨によりトマトは着色が悪く、入荷量が減少したことから値を上げた(図2)。きゅうりは、下旬の曇天と低温の影響で入荷量が伸びず高騰した(図3)。はくさいは、主産地の長野産で高温や降雹で小玉傾向であったが下旬にかけて出荷が回復し、価格は平年並みに近づいた(図4)。レタスについては、下旬にかけて主産地の長野産、群馬産の出荷が回復し、一時的に値を下げたが、雨天が続き収穫が進まなかったことから9月上旬は上昇した(図5)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
8月の大阪中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が3万8720トン、前年同月比103.4%、価格はキログラム当たり246円、同103.8%となった。
野菜全体の入荷量は、降雹や台風の影響に加え日照不足も響き、特に、果菜類、葉茎菜類で動きが激しかったものの、下旬にかけて生育が回復したこともあり前年同月をわずかに上回った。価格は、北海道産の品目で高値が目立ち、高値だった前年同月をわずかに上回った。
入荷量は、主要産地である北海道産の天候不順からにんじんの入荷量がかなり減少した。価格は、安値傾向であった前年をかなり大きく上回り、にんじんで前年同月比144.7%となった。
入荷量は、はくさい、レタス、キャベツについては降雹の影響から上旬は減少したが、中旬以降は回復し前年を上回った。一方、ねぎは台風の影響により前年を下回った。価格は、盆需要と重なったねぎとキャベツで前年を上回った。
入荷量は、なすが順調に入荷し、前年比119.6%と大幅に増加した。価格は、きゅうりが前年同月比86%と低かったのに対し、ピーマンが主産地の福島産の入荷が少なく、同118.7%となった。
入荷量は、さといもが輸入物の品質悪化からかなり減少した。価格は、高騰していたばれいしょの入荷が順調だったことから下がったものの、前年を大きく上回った。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
10月の市場開市は23日で、休市日数は8日となっている。
10月は、秋の味覚が出そろい店頭もにぎやかになる。また、気温の低下とともに鍋物需要も本格化する。秋の運動会をはじめ、紅葉狩りなど行楽シーズン向けの商材も人気が高まる時期である。
秋本番を迎え、はくさいやきのこなどの加熱調理用の野菜の動きが活発化してくる時期である。春以降の天候不順により、全国的に野菜の出回りが減り、市場価格は9月に入っても高い水準を保っている。
野菜の価格高騰についてニュースになることも多いが、特に、給食などへの納入については予算が決まっていることもあり、メニュー変更が発生したり、場合によっては単価を上げずに納入せざるを得ない場合もあり、青果商の苦悩が続いている。
解決策としては、地域間連携とか学校給食用として行き先を特定した取引などが考えられる。
野菜がメニューから外されるといったリスクを減らすとともに、野菜に付随する形で米や酪農製品への拡大、さらには、田んぼの草とりや収穫体験などのグリーンツーリズムへと輪が広がることも期待できる。
野菜や果実は、一旦、不作になると価格が高騰する。特に、手のかかる果菜類は作付けの増加は当面期待できない。かつての市場の格言「半年高ければ半年安い」というルールが通用しなくなって、「8カ月高くて4カ月安い」とか「8カ月高くて2カ月安い」に変化してきている。
9月から10月は、全国的に稲刈りのシーズンであるが、米中心の作業システムのなかでは、野菜はどうしても後回しになる。さらに、生育期の天候を見ると、西日本は台風15号や日照不足、関東は6月~7月中旬の晴れ間のない梅雨に加え、その後の猛暑、梅雨明け後の低温と秋の長雨とシーズンを通して順調とは言い難い状況であった。このため、少なくとも10月については、入荷量が不安定と見込まれ、市場価格の低迷により農家が泣くといったシーンはないであろう。しかし、少しの作業の遅れが12月から翌3月までの不作につながることになるので注意が必要である。
だいこんは、仮に暖秋になれば東北産、北海道産の切り上がりが遅れて関東産と競合する恐れがあるが、北海道の切り上がりは早いと見込まれる。中間の青森産は、生育時期の干ばつで全般に小ぶりで不作と予想している。関東産は、盆明けの低温と米の収穫作業の影響で出荷が遅れると見込まれ、競合する産地がないため価格は9月に続き平年を上回る展開が予想される。にんじんは、隔年で価格の高安を繰り返す傾向があり、今年は昨年が安かったので高い見込みである。現状は北海道産中心だが、市場での品質のばらつきが大きい。
ごぼうは、九州産の新ごぼうが不作であったが、最大産地で貯蔵品を長期に渡って出荷する青森産が順調と予想される。続く茨城産は特別に多いといった情報がなく、西日本の高値に影響されて価格は当面高い見込みである。
キャベツは9月まで高値だった場合、10月も高値で推移する傾向がある。ほうれんそうは9月は高値であったが関東産の生育が回復し、10月後半には価格が下がってくるとみている。はくさいは長野産が引き続き不作気味で高値傾向と予想される。ねぎは遅れた東北産が急増し、価格は平年並の見込み。レタスは茨城産が順調に始まってくるが、作業の遅れから10月は平年並みかやや高いと思われる。
果菜類は、盆明け後の気温の低下できゅうり、トマトともに東北産中心に花が1~2段飛ぶなどの影響が出て、9月に入っても通常入荷するものが大幅に少なく、価格は大幅高になった。きゅうりの回復は早いが、トマトについても大きな山は来ない見込みである。ピーマンは茨城産は順調に増えるが東北産が少なく、また、高知産などまだまだ入荷は期待できず、価格は高めと思われる。
いも類では、九州産のさといもが不作であったため、埼玉産の本格出荷が待たれるが、稲の作業優先でやや遅いペースで当面、高値傾向と予想される。かんしょは当初の豊作予想が修正され、全国的に平年作が予想される。徳島産は2Lや3Lといった大振りのものが多く、関東はL中心の小ぶり傾向との情報が入っている。また、各産地からシンガポールへ輸出されたり、「ベニアズマ」が加工筋に振り向けられる傾向にあることなどから、市場入荷量はそれ程多くなく、価格はしっかり推移すると予想される。
10月のハロウィンといえばかぼちゃだが、北海道からはレギュラー品を中心に、こだわり系では「ET」「雪化粧」「九重栗」などが出荷される。形に特長のあるかぼちゃでは「
地域特産品では、愛媛の「
9月上旬に愛知県に上陸した台風18号は低気圧に変わったあとも勢力が衰えず、北関東中心に大雨がもたらされた。このため、11月以降に本格出荷が始まるレタス、はくさい、いちごへの被害が大きく、特にいちごは深刻な苗不足になると予想される。この時期は、丁度稲刈りの時期であるが、今年は天候不順で思うように進んでいなかった。好天が続くうちは稲刈りを優先し、その後に野菜のは種のやり直しといった作業になるため、例年の70~80%程度の定植に留まると見込んでいる。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)
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指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
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