7月は、北日本、東日本で気温が高く降水量が多かったが、日照時間は平年を上回って推移した。一方、西日本では、降水量が多く日照時間も平年並みから平年を下回って推移した。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、天候不順による生育不良などから前年同月をやや下回った。価格は、多くの品目で入荷量が減少したため、野菜全体では前年同月を大幅に上回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、天候不良や台風の影響などから特に果菜類と土物類を中心に入荷が少なく前年同月をわずかに下回った。価格は、すべての品目で前年同月を上回り、野菜全体では前年同月を大幅に上回った。
上旬は、梅雨前線が本州南岸に停滞することが多く、東・西日本太平洋側では、曇りや雨の日が多く、低温となった。北日本では前線の影響を受けにくく、日照時間は多かった。北日本では冷たい移動性高気圧に覆われることが多く、気温は低かった。
中旬は、日本の南東海上で太平洋高気圧の勢力が強まり、北・東日本では高気圧に覆われて、晴れた日が多かったため、気温が高くなった。台風9号の影響で、沖縄・奄美では暴風雨となったほか、南からの暖かく湿った気流の影響で九州南部を中心に降水量が多くなった。また、台風11号の影響で、東・西日本では太平洋側を中心に大雨となった。なお、九州南部は17日ごろ、関東甲信地方は19日ごろ、東海、近畿、中国地方は20日ごろ梅雨明けした。
下旬は、北日本では前線や気圧の谷の影響で曇りや雨となった日が多かった。一方、東日本では太平洋高気圧に覆われ晴れた日が多かった。西日本は晴れた日はあったものの、南からの湿った気流や台風12号の影響で曇りや雨となり、九州を中心に大雨となった所があった。気温は、北・東日本でかなり高く、北日本から西日本の広い範囲で猛暑日となった所があった。なお、北陸地方は21日ごろ、四国地方は24日ごろ、東北南部は26日ごろ、九州北部地方と東北北部は29 日ごろ梅雨明けした。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
7月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が12万2625トン、前年同月比96.4%、価格はキログラム当たり274円、同119.6%となった。
入荷量は、関東産、北海道産および東北産を主体に出回り、上旬の曇雨天続きから一転して中旬は高温と干ばつ傾向となり、下旬は高冷地などで引き続き高温であったことから品質の低下がみられたことや、干ばつ傾向であった北海道、東北産など、産地により生育環境はまちまちであったことから、前年同月をやや下回って推移した。
価格は、高温・干ばつの影響で入荷量が減少した品目が多くあったことから、野菜全体では前年同月大幅に上回って推移した。
入荷量は、だいこんが主産地において6月の干ばつなどの影響から、上中旬は前年を下回る入荷となったが、下旬は天候に恵まれ適度な降雨もあったことから、入荷は伸び前年を上回った。にんじんは、上旬は主産地において天候に恵まれ生育順調で、前進出荷傾向となったことから、前年を大幅に上回る入荷となったものの、中旬以降はこれまでの前進出荷により、後続産地の出荷との谷間となり前年を下回る入荷となった。
価格は、だいこんは月を通して前年を上回って推移した。にんじんは、上旬は前年をかなりの程度下回ったものの、その後値を上げ下旬は前年を大幅に上回る高値で推移した。
入荷量は、はくさい、キャベツおよびほうれんそうは、上旬は主産地において降雨により6月からの干ばつ傾向から回復し、前年を上回る入荷となったが、中旬は上旬の曇天や長雨などの影響から入荷は伸びず、前年を下回ったものの、下旬は入荷が増加し前年を上回った。ねぎおよびレタスは、上中旬は、長雨などの影響で一部のほ場で病害の発生が見受けられたこともあり前年を下回る入荷となったが、下旬は入荷が増加し、前年を上回った。
価格は、すべての品目おいて、月を通して前年同月を上回る高値基調で推移し、特にはくさい、キャベツは下旬に大幅に値を上げた。
入荷量は、きゅうり、なすおよびピーマンが主産地において6月下旬からの干ばつ傾向の影響により生育に若干の停滞が見られ、トマトは主要産地において低温、干ばつの影響により着色に遅れが見られたことから、上中旬は入荷は伸びず前年を下回って推移したが、下旬は天候の回復により入荷は増加し、前年を上回った。
価格は、きゅうり、なすおよびピーマンは、月を通して前年を上回る堅調に推移した。トマトは、上旬は前年を下回る価格水準であったが、中旬にかけて値を上げ前年を上回ったが、下旬は下げに転じ前年をやや下回って推移した。
入荷量は、さといもが主産地の日照不足などの影響から小玉傾向であったことから、月を通して前年を大幅に下回る入荷となった。ばれいしょは、主産地の生育期の天候不順と6月下旬からの干ばつの影響により小玉傾向で、上中旬は前年を下回る入荷となったものの、下旬は後続産地の北海道産が前進出荷で入荷が伸び前年を上回った。たまねぎは、収穫は終了し、貯蔵物からの入荷となるが、主産地の4月の曇天と5月の干ばつの影響から小玉傾向であることから、上中旬は前年をやや下回る入荷となったが、下旬は入荷が伸び前年をかなりの程度上回った。
価格は、さといもが上旬は前年を下回る水準であったが、中旬以降値を上げ前年を大幅に上回って推移した。ばれいしょおよびたまねぎは、小玉傾向で入荷が少なめであったことから、上中旬は前年を大幅に上回る高値で推移し、下旬は値を下げたものの、引き続き前年を上回る価格水準で推移した。
なす、トマトは梅雨明け後の生育がおおむね順調で、入荷が平年並みから多めの入荷となり下旬より下げ基調となった(図2、図3)。
だいこんは、適度な降雨により生育が回復し中旬から下旬にかけて入荷量が増え、月末には大きく値を下げた(図4)。
ばれいしょは、後続の北海道産が前進出荷となったことから、入荷量が増え下旬にかけて下げ基調となった(図5)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万6260トン、前年同月比98.6%、価格はキログラム当たり253円、同121.6%となった。
野菜全体の入荷量は、果菜類が低温、日照不足から前年を下回ったが、根菜類や葉茎菜類の入荷が回復したことからわずかに前年同月を下回った。価格は、天候不順や台風11号の影響で入荷量が減少した品目が多くあったことから、野菜全体では前年同月を大幅に上回って推移した。
入荷量は、だいこんは主産地において作業遅れや生育不良があったものの、前年同月並みであった。にんじんは、和歌山産が早期に切りあがり、北海道産も干ばつで生育が遅れたが、青森産の入荷が増えたことから前年同月を上回って推移した。価格は、だいこん、にんじんともに入荷が不安定で、前年同月を大幅に上回った。
入荷量は、干ばつや台風11号の影響で、はくさい、白ねぎ、青ねぎ、レタスで前年同月を下回った。価格は、すべての品目で前年同月を上回り、特に、きゅうり、はくさい、キャベツ、白ねぎで大幅に上回った。
入荷量は、東北産が低温の影響で出荷量が少なく前年同月を下回った。価格は、すべての品目で前年同月を上回り、特に、きゅうり、ピーマンは大幅に前年同月を上回った。
入荷量は、九州の産地を中心に天候不良から生育が悪かったこともあり、特にさといもで前年同月を大幅に下回った。価格は、小玉傾向だったばれいしょで前年同月に比べて180%超となるなど、全体的に高値で推移した。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
9月の市場開市は23日で、休市日数は7日となっている。
学校給食も始まり、シルバーウィークに向けて外食、中食における野菜の需要も増えてくる時期であり、収穫の秋を迎え、市場も活気づく季節である。
食欲の秋を迎えるが、東北、北海道の果菜類を中心に四国や関東のさつまいも、北海道のばれいしょなどのいも類の入荷が本格的に始まってくる。果菜類は盆前に起こりがちな価格の上げ下げがなく、全般にしっかりしている。いも類は平年に近い水準まで下がるが、9月の価格は全般的に高値で推移すると予想している。
この時期は、地域特産品の野菜も入荷し、調理のプロや料理研究家にとって発見が楽しみな季節になっている。生しいたけは中国産が本格的な出回り時期で、後半には国内産も本格化する。国内産は最近、出回りが増えて、ここ数年、特別、高い商材でなくなっている。豊凶の予想は現状では難しいが、適度の降雨が望ましい。日々の変化が大きい旬の野菜については、お買い得を教えてくれる青果店とのコミュニケーションが欠かせない。
8月は本来消費地の夏枯れというべき消費のリセッションに見舞われ、価格が低迷に向かいがちである。学校給食が休みに入り、お盆休みや夏季休暇で帰省するなどして、東京の人口が減ってしまうからだ。例年、「暑すぎて来店してもらえない」などの声が聞かれ、価格が落ち込む時期でもあるが、直近の8月上旬は前年より高めに推移した。全国的に猛暑となって生育が鈍り、出回り不足になったためである。外国人の観光客が多く、都内のホテルの稼働率が上がっていることなども、野菜の価格を押し上げている一つの要因になっている。
農家サイドでは、8月から9月前半は秋冬野菜のは種時期である。まき時の狂いが全体の生産工程に影響をきたし、不作につながることもある。猛暑が長く続けば、不作の要因となり年末の出回りにも響く。
だいこんは、引き続き北海道のピークであるが、高温障害なども見られ全般に不作と予想され、特に、本州の高原産は遅れると予想している。コンビニのおでんもスタートし、場合によってはかなり高値となる可能性もある。にんじんは北海道の十勝が干ばつで不作気味である。にんじんは、高値の年と安値の年が交互に訪れる傾向が強いため、今年はやや高値傾向と予想される。
キャベツは、群馬産を中心に、東北産の動向が鍵を握るが、東北産が干ばつで全国的に不作気味で、引き続き高値傾向と予想している。はくさいは、主力の長野がひょう害でダメージを受けており、引き続き高値傾向とみている。
ほうれんそうは、前半の高温の影響の反動で月末から10月には安値になる可能性がある。標高が200~300メートルにある岩手の産地は、猛暑により生産が難しかったため、関東の高原産地の出荷が本格化するまで高値傾向が続くとみている。
ねぎは、遅れた東北産の入荷が急増し、8月までの高値はないと見込んでいる。ブロッコリーは主力の北海道産、長野産の作柄が悪く、入荷減の価格高が続くと予想している。一方で、氷詰めで出荷される長野産は高くても納得できる高品質の仕上がりである。レタスは、高原レタスで後半にひょう害があり終盤まで高値が見込まれるなか、後続の主産地である茨城産が遅れていることから、9月いっぱいは高値を見込んでいる。
なす、きゅうりは適度な雷雨があって、生育は順調ではないかと予想される。いずれも体を冷やす野菜であり、残暑になれば荷動きは良好と予想される。
消費地の景況観では、円安や原油価格の下落などで企業の収益は向上している。株価もこの10年では最も高値で安定しているが、実際のところ庶民にはお金は回っていないとされる。野菜は庶民の食べ物であり、買いやすいレベルで供給されるべきものである。現状は卸売市場に外国産が潤沢に入って国内価格を冷ますといったことは期待できず、ややもすれば価格は必要以上に上がってしまう傾向がある。地域のレストランなどへ納入を専門とする青果店は苦しいところである。都心部のホテルに納入する青果大手によると、日本に観光に来た中国人は食欲旺盛で、ホテルからの需要は高まっているとのことである。しかし、景気の回復はまだら模様で、全国各地に及んでいる訳ではないようだ。
最近、CMではポリフェノールやビタミン類など、本来、生鮮野菜や果物で供給できる物をわざわざ健康食品で食べなさいとうたっている。それらの機能成分はピーマンやなす、トマト、かぼちゃ、さらにポリフェノールはごぼうやカラーピーマン、ビーツなど身近なところに供給源はあるものである。景気の良しあしの差があることに触れたが、野菜、果物への知識の差が健康生活を送れるか否かの分かれ道にもなっている。地域の青果店こそ、健康を売ってくれる人だと再評価されても良い。夏で疲労した体を、野菜・果物を沢山食べることで癒してほしいものである。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)
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指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
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