6月は、梅雨前線が停滞したことから月を通して雨の日が多く、全国的に日照時間が平年並みから平年を下回って推移した。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、干ばつ傾向であった5月から一転、降雨に恵まれたことから、多くの品目で前年同月を上回った。価格は、入荷量の回復から下げ基調であったが、野菜全体では前年同月をかなり大きく上回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、多くの品目で前年同月を上回った。価格は、生育期の天候不良や6月前半の低温と多雨による生育不良、また、作業の遅れなどから前年同月を大幅に上回る状況となった。
上旬は、梅雨前線が西日本の南岸から東日本の南海上に停滞することが多く、活動は活発だった。このため、西日本では曇りや雨の日が多く、降水量もかなり多かった。北・東日本では、前線が数日の周期で太平洋岸に北上したため、天気は数日の周期で変化し、太平洋側では大雨となった所があった。2日から3日は、前線が東・西日本の南岸に北上して活動が活発になったため、東日本以西で雨となり、九州南部を中心に大雨となった。また、北日本でも低気圧が通過して雨となり、上空に寒気の流れ込んだ北海道地方では局地的に大雨となった。
中旬は、梅雨前線が西日本の南岸から東日本の南海上に停滞することが多く、活動は活発だった。このため、東日本太平洋側と西日本では曇りや雨の日が多く、西日本太平洋側では降水量が多かった。旬の終わりは梅雨前線が東日本の太平洋岸まで北上し、北陸地方でも天気が崩れ、平年より遅い19日ごろに梅雨入りした。
下旬のはじめには、梅雨前線が沖縄付近から本州の南海上に移動する一方、本州上空には寒気が流れ込んだ。このため、全国的に曇りや雨の所が多く、局地的に雷を伴った激しい雨となった。旬の中頃は、梅雨前線が東・西日本付近へ北上し活動が活発になり、その後も西日本の南岸から東日本の南海上に停滞した。また、26日から28日は東・西日本を中心に曇りや雨となり、特に西日本を中心に大雨となった。東北地方でも雨となり太平洋側を中心に大雨となった所があった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り(図1)。
6月の東京都中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が13万1509トン、前年同月比102.5%、価格はキログラム当たり262円、同111.7%となった。
入荷量は、関東産、四国産および九州産が主体であり、4月中旬までの天候不順から5月に入り一転して好天に恵まれたものの、雨が少なく干ばつ傾向となったが、その後の降雨により生育は回復傾向となったことから、多くの品目で前年同月を上回って推移した。
価格は、入荷量が回復した品目が多くあり、これまでの高値の反動から下げ基調が高まったものの、野菜全体では前年同月をかなり大きく上回って推移した。
入荷量は、だいこんが、5月は天候に恵まれたものの雨が少なく干ばつ傾向であったが、その後の適度な降雨により主産地の生育は回復したことから、入荷は増加し、上中旬は前年を上回ったが、下旬は前年を下回る入荷となった。にんじんは、主産地において4月の天候不順により生育に遅れが生じ、やや小ぶりで、上旬は前年を下回ったものの、中下旬は入荷が伸び、前年を上回って推移した。
価格は、だいこんは上旬が前年を下回る安値基調で推移していたものの、中旬以降は日による多少の増減はあるものの、旬を追うごとに値を上げ、前年を上回って推移した。にんじんは、上旬から中旬半ばまでは高値もちあいで推移し、その後月末にかけて日を追うごとに下げ基調となったものの、月を通して前年を大幅に上回って推移した。
入荷量は、はくさい、キャベツおよびレタスは、主産地において5月に天候に恵まれたものの、雨が少なく、干ばつ傾向で若干生育に遅れが生じたこともあったが、全体的には生育は順調であったことから、上中旬は前年を上回る入荷となった。下旬は降雨などの影響から入荷は伸びず、前年を下回った。ねぎは、干ばつによる影響から生育に遅れがみられ、細めのサイズの比率が高かったものの、おおむね生育は順調であったことから上中旬は前年をやや上回る入荷であった。下旬は入荷は伸びず前年を下回る入荷となった。ほうれんそうは、上旬は干ばつの影響で少なめの入荷となり前年を下回る入荷となったが、その後の降雨により干ばつ傾向から生育も回復し、中旬は前年を大幅に上回る入荷となり、下旬は入荷は伸びなかったものの、少なかった前年をやや上回る入荷となった。
価格は、はくさいは、上旬から中旬にかけて大きく値を上げたが、その後下げに転じ、下旬は前年を下回って推移した。キャベツおよびレタスは、上旬は下げ基調で推移していたが、中旬以降値を上げたものの、前年をやや下回る価格水準で推移した。ほうれんそうは上旬は安値だった前年を大幅に上回ったが、中旬は値を下げるも前年をやや上回った。下旬はやや上げ基調となったものの、高値だった前年を下回って推移した。ねぎは、月を通して前年同月を上回る高値基調で推移した。
入荷量は、きゅうりが干ばつ傾向であったが、6月に入ってからの降雨により入荷は増加し、上中旬は、降雪によるハウスの倒壊などで少なかった前年を上回ったが、下旬は入荷は伸びず、前年を下回った。なすは、月を通して前年を上回る入荷となった。トマトは、旬を追うごとに入荷は減少したものの、月計では前年同月並みの入荷であった。ピーマンは、4月の日照不足の影響で上旬は少なめの入荷となったが、中旬は入荷が増加し、前年を大幅に上回ったものの、下旬は入荷が伸びず前年を下回る入荷となった。
価格は、きゅうりは、月を通して高値だった前年を下回って推移した。なすは、月を通して大きな変動はなくもちあいで、前年並みの価格水準で推移した。トマトおよびピーマンは、月を通して安値だった前年同月を上回って推移した。
入荷量は、さといもが月を通して少なかった前年を大幅に上回る入荷となった。ばれいしょは、生育期の干ばつの影響による小玉傾向で、上旬は前年並みの入荷となったものの、中下旬が入荷は伸びず、前年を下回る入荷となった。たまねぎは、主産地の4月の曇天と5月の干ばつの影響から小玉傾向に加え、病害の発生も見られたことから、旬を追うごとに入荷は減少し、月計では前年をかなりの程度下回って推移した。
価格は、さといもが旬を追うごとに値を下げ、月を通して高値であった前年を大幅に下回って推移した。ばれいしょ、およびたまねぎは、小玉傾向で入荷が少なめであったことから、旬を追うごとに値を上げ、月を通して前年を大幅に上回って推移した。
干ばつの影響で生育に遅れが見られた、にんじんは最近の降雨により肥大が進み、夏場の主産地である青森産や北海道産の出荷量が平年より多めとなっていることから値を下げている(図2)。
高値で推移しているたまねぎについては、兵庫産が干ばつの影響で小玉傾向、貯蔵物の出荷となる佐賀産の出荷がやや少なめであることから高値で推移した(図3)。
群馬産、岩手産が生育期の干ばつの影響により小玉傾向だったキャベツは、最近の降雨で生育が回復基調にあるものの、近在産地の入荷が減少したことから下旬は価格が上向きとなった(図4)。
きゅうりは夏場の主産地である東北の産地で、一部、干ばつや雹害の影響があるものの、主産地である福島産の生育が順調で入荷が増加し、価格は平年並みで推移した(図5)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
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(単位:円/kg)
6月の大阪市中央卸売市場における野菜全体の入荷量および価格は、入荷量が3万8049トン、前年同月比103.9%、価格はキログラム当たり247円、同118.8%となった。
入荷量は、生育期に天候不順の影響があった品目で前年を下回ったが、後続産地からの出荷が順調だったことから野菜全体の入荷量は前年同月を上回って推移した。
価格は、入荷量が伸び悩んだ品目を中心に高値で推移し、前年同月を大幅に上回った。
入荷量は、にんじんが主力産地である和歌山産、兵庫産の生育不良、また、だいこんは九州産の切り上がりが早かった影響で前年同月を下回ったが、後続の北海道産の前進化と集約出荷から前年同月を上回った。
価格は、だいこん、にんじんとも、前年同月を上回った。
入荷量は、近在産地の天候不良から入荷が伸びなかった青ねぎ以外の品目で前年同月をかなり上回った。
価格は、すべての品目で前年同月を上回り、特にはくさいと白ねぎは大幅に上回った。
入荷量は、日照不足や後続産地の出遅れからなすの入荷量がやや少なめで推移した。一方、ピーマンは生育が良好であったことから前年同月をかなり上回った。
価格は、前年がやや低調であったトマト、ピーマンで前年同月を大幅に上回った。
入荷量は、生育が良好だったさといもと輸入が増加したたまねぎで前年同月を上回ったが、ばれいしょは生育不良から前年同月をかなり下回った。
価格は、後続の静岡産の入荷が伸びなかったばれいしょが、前年同月比200%超と大幅に値上がりした。
品目別には次のとおり。
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
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(単位:円/kg)
8月の市場開市は23日で、休市日数は8日となっている。
夏本番となる8月は、夏休みや盆といった家庭内での消費機会が増加する時期である。
特に、盆は年末年始とともに家族や親せきなどが一堂にそろう機会であるため、家庭内需要向けの野菜が良く売れる時期といわれており、量販店などでは盆の特売企画が活発に行われる。
6月の東京市場は、需要が伸びないのに価格が高いと、仲卸や青果商などから不満の声が多く聞かれた。6月の高値の要因は、4月の天候不順による生育不良から、入荷量が伸びなかったことが挙げられる。全国を巡回指導する種苗会社の担当者からは、「天候がまともなのは関東だけ」との報告があった。しかし、関東も6月に入ってからは寒暖の差が激しくなり、生産者からは、「果菜類は樹が疲れやすくなっている」との声が聞かれる。
日照不足や低温傾向が続くと、8月の果菜類の入荷量は、全国的に前年より伸び悩むことが予想される。その後予想される展開としては、エルニーニョにより盛夏期が低温で推移した場合、生育が遅れる東北産は、暖秋暖冬で前進した関東産と年末頃に入荷が競合し、需要を大幅に超える入荷量となることから、価格低迷の可能性がある。毎回論じているが、市場の「半年高ければ半年安い」といった市場の経験則からすると、8月からは年内いっぱい安値で推移する可能性がある。
各品目の需要を見ると、葉茎菜類のキャベツは高原ものが中心の入荷となるが、梅雨前半までの干ばつの影響が残り、関東産の平野ものが切り上がると、家庭内および業務需要を満たせなくなる可能性があることから、価格は平年並みかやや高くなると予想される。
レタスは、長野産の高原ものが入荷の主体となるが、今後、まとまった雨が続く場合、品質が悪くなり、価格が高騰する可能性がある。
根菜類のだいこんは、北海道産が順調に生育していることから、価格は平年並みかやや安めと予想される。にんじんは、北海道産の入荷が本格化する。北海道産は、生育前半の干ばつから小ぶりとなっているとともに、今後、雨量が多く推移した場合、過湿による軟腐病の多発などから、8月から9月の価格は高くなる可能性がある。
果菜類のトマトは、西南暖地産が早めに切り上がるが、東北産および北海道産は順調に生育している。また、関東産の雨よけトマトについても、高温障害もなく順調に生育していることから、盛夏期のサラダ需要を満たせるだけの入荷量が確保でき、大きな価格変動はみられないと予想される。北海道JAよいち産のトマトは、味にこだわりがあって、消費者から強い支持を集めている。昨年、豪雨で不作になった青森産の「桃太郎」は、最も旬の味を楽しめることから、量販店などからの引き合いが強い。
果実的野菜を見ると、メロンは、干ばつの影響で前半ものの生育が進んだことで、需要期となる盆前後からは、入荷量が減少傾向となり、価格は高めとなることが予想される。盆明け後にピークとなる、北海道JAきょうわ産の青肉種である「らいでんクラウン」は、順調な入荷が予想される。このメロンは消費者からの引き合いが強く、量販店などには是非とも取り扱っていただきたい8月の逸品である。すいかは、8月前半に長野産および山形産の入荷がピークになるが、両産地とも、着果時期の天候に恵まれたことにより、肥大、品質ともに良好であることから、涼を呼ぶ商材として、消費者に提案していただきたい。
その他の品目を見ると、スイートコーンは、千葉産の露地ものから、東北産および北海道産に産地がシフトする。夏祭りなどのイベントでは、「焼きとうもろこし」が人気商材となっているが、実需者には是非、生鮮スイートコーンを使用した焼きとうもろこしを消費者に提供していただきたい。イベントなどで消費者がおいしいスイートコーンを食べることで、家庭でも食べたいという需要の喚起につながる。北海道産や青森産の「
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)