2月は、中旬までは冬型の気圧配置の日が多かったため、東・西日本を中心に気温が低く、下旬は、南からの暖気が流れ込んだことから各地で春一番が吹くなど、北・東日本を中心に気温が高めに推移した。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、多くの品目で生育は順調であったことから、前年同月並みの入荷量であった。価格は、果菜類を中心に前年を大幅に上回ったことから、前年同月を上回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、多くの品目で低温により生育遅れとなったことから、前年同月をやや下回った。価格は、入荷量の伸び悩みと特売などの需要が高まったことから、前年同月を上回った。
2月は、上旬が1日から4日にかけて発達した低気圧が北海道の太平洋沖に停滞し、北日本を中心に冬型の気圧配置となった。特に北日本では、1日から2日にかけて北海道を中心に暴風雪となった。その後、5日と8日には低気圧が本州付近を通過し、太平洋側でも東日本を中心に雨や雪となった。9日から10日にかけては冬型の気圧配置が強まり、日本海側では雪となった。
中旬は、日本海を11日から12日にかけて通過した低気圧が、13日から15日にかけて北日本の太平洋沖で発達し、北・東日本を中心に冬型の気圧配置が強まった。特に北日本では、14日から15日にかけて北海道を中心に暴風雪となった。その後、16日から18日にかけて低気圧が本州南岸をゆっくりと通過し、太平洋側でも雨や雪の降った日があった。日本海側では、19日から20日にかけては冬型の気圧配置となり、北陸を中心に雪や雨となった。
下旬は、22日から23日にかけて日本海北部を低気圧が発達しながら通過したため、南から暖気が流れ込み全国的に気温がかなり高くなり、九州北部、中国、四国、北陸では春一番となった。また、本州南岸を前線が通過したため、東・西日本の太平洋側でも雨となり、九州南部ではまとまった雨となった。24日から25日にかけては、移動性高気圧が通過し、雲が多いものの晴れた所が多かった。26日から27日にかけては、低気圧が日本付近を発達しながら通過したため、全国的に雨、北海道では雪となり、その後、28日にかけては冬型の気圧配置となり、北日本では暴風雪となった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は図1の通り。
2月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が11万9000トン、前年同月比99.4%、価格はキログラム当たり246円、同104.2%となった。
野菜全体の入荷量は、関東産、北海道産、西南暖地の四国産、九州産を主体に出回り、一部の品目の主要産地で低温などによる生育の遅れは見られたものの、多くの品目で生育は順調であったことから、前年同月並みの入荷量となった。価格は、はくさい、ほうれんそう、ねぎなどの葉茎菜類は、低温と2度の大雪などの影響から高値で推移した前年を下回ったものの、トマトなどの果菜類を中心に前年を大幅に上回ったことから、野菜全体では前年同月を上回った。
入荷量は、だいこんが、主要産地において低温などの影響で生育に停滞が見られ、小ぶり傾向だったことから下旬は前年をかなり下回ったが、月を通して前年同月並みの入荷量となった。一方でにんじんは、主要産地において生育は順調だったことから、潤沢な入荷となり、月を通して前年同月を上回って推移した。
価格は、だいこんが、上旬は前年を大幅に上回ったが、中旬は一時的に値を下げたものの、下旬には回復し、安値だった前年を上回って推移した。一方でにんじんは、主要産地の順調な入荷により、月を通して高値だった前年同月を大きく下回った。
入荷量は、はくさいおよびレタスが、主産地の生育は順調であったものの、月を通して多かった前年を下回る入荷量となった。一方でねぎは、昨年2月の大雪の影響で入荷量が大幅に減少し、月を通して少なかった前年を大きく上回った。またキャベツおよびほうれんそうも、上旬は前年を下回ったものの、中旬以降は前年を上回った。特にほうれんそうは、降雪の影響で少なかった前年を大きく上回った。
価格は、はくさい、キャベツおよびねぎが、月を通して高値だった前年を下回り、レタスが、前年の大雪などの影響から、月を通して前年を大きく上回った。ほうれんそうは、中旬以降、降雪で高かった前年を下回った。
入荷量は、きゅうりおよびなすが、上旬は主要産地において1月からの低温と曇天により前年を下回ったが、中旬以降の入荷量が回復したことで前年を上回った。トマトは、主産地の生育が順調であったが、上旬は多かった前年をかなり大きく下回ったものの、中旬以降は前年並みとなった。ピーマンは、主産地において病害虫の発生もなく生育は順調であったことから、月を通しておおむね前年並みとなった。
価格は、きゅうりおよびなすが、上旬は安値だった前年を大きく上回ったものの、中旬以降は下げ基調に転じ、下旬には前年を下回った。トマトおよびピーマンは、月を通して前年を上回った。
入荷量は、さといもが、上中旬で前年を上回ったものの、下旬は少なかった前年並みで推移した。ばれいしょは、月を通して前年を下回った。たまねぎは、安定的な入荷となり、月を通して小玉で少なかった前年を上回った。
価格は、さといもが、大きな変動もなく下旬に前年を下回った。ばれいしょは、月を通して安値だった前年を上回った。たまねぎは、大宗を占める北海道産が計画的な出荷により安定的な入荷となったため、月を通して前年を下回った。
静岡産および香川産が降雨と病害により入荷が減少したレタスと、熊本産が減少したトマトは、高値推移となった(図2、3)。一方、千葉産が増加したにんじんは、安値基調となった(図4)。新ものの鹿児島産が伸びたばれいしょは、下旬に入り上げ基調となった(図5)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(2月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」
注:
平年とは、過去5カ年(平成22~26年)の旬別価格の平均値である。
2月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万4264トン、前年同月比94.4%、価格はキログラム当たり221円、同107.8%となった。
野菜全体の入荷量は、葉茎菜類が干ばつ傾向による生育遅れ、果菜類がなり疲れにより入荷量が減少したことから、前年同月を下回った。価格は、入荷量が伸びなかったことに加え、活発な需要があったことから、前年同月を上回った。
入荷量は、だいこんおよびにんじんとも、多くの産地で入荷が減少したため、前年同月を下回った。価格は、だいこんが、中旬の安値の影響から前年同月を下回り、にんじんは、高値の前年同月を大きく下回った。
入荷量は、多くの品目で干ばつ傾向による生育遅れなどにより前年同月を下回ったが、春玉の入荷が伸びたキャベツと、順調な入荷となったねぎは、前年同月を上回った。価格は、入荷が伸びたキャベツおよびねぎが前年同月を大きく下回ったものの、入荷が伸びなかったほうれんそうおよびレタスは、前年を上回った。
入荷量は、多くの品目でなり疲れによる着花不良から、前年同月を下回ったが、千両系が順調に入荷したなすは、前年同月をやや上回った。価格は、全ての品目で前年同月を上回り、特に気温上昇で需要が伸びたトマトは、前年を大きく上回った。
入荷量は、前年より越年量の多かったさといもが、前年同月を大きく上回ったものの、長崎産が減少したばれいしょは、前年同月を下回った。価格は、多くの品目で前年同月を大きく下回る中、品質の良い新ものの入荷が伸びたばれいしょは、前年を上回った。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(2月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成22~26年)の旬別価格の平均値である。
4月の市場開市は22日で、休市日数は8日となっている。
4月は上旬が入学、入社などの新たなスタート時期に合わせた特売企画、中旬は産地の入れ替えが進むことから、春もの産地の売り込みを兼ねた均一販売企画、下旬はゴールデンウィーク直前の特売企画など、量販店などではさまざまな販売企画が実施される。
4月は、年度初めを迎え、社会人や学生生活のスタートの時期であり、学校給食の再開も重なることから、消費地を中心に需要は一気に高まる。この需要は、ゴールデンウィークまで続くことが見込まれる。給食需要は、市場でも大きな比重を占める。学校給食は、正しい食事から生活を改善するという運動である。地域の食材中心に調理するという取り組みを行っている、長野県上田市立真田中学校は、全国の学校給食現場にとって、優良な事例である。同校は、生徒の食に関する調査を実施し、給食の献立を改善するとともに、年1~2回、生徒だけでなく保護者も参集して食のフォーラムを開催するなど、食育を充実させている。
近年、社会の二極化などが多く叫ばれているが、野菜などの食の世界でも、こだわりと低価格、おいしさと簡便化など二極化が顕著となっている。産地手取りを向上させるためには、こだわりを持った消費者においしさを求めて指名される野菜を目指す必要がある。今後の産地における販売戦略は、メディアなどを活用し、生産情報だけでなく調理事例や健康効果などを伝えることが今まで以上に重要になると思われる。
とはいえ、簡便化や低価格といったキーワードも無視できない。今後、食はますます簡便化に向かうことが予想される。これは、核家族化や一人暮らし世帯の増加と、より一層の女性の社会進出により、家庭内における調理に割く時間はますます短くなるためである。このため、電子レンジなどの活用やサラダなど、野菜を簡単に食べられるメニュー提案も産地には求められる。低価格志向への対応として、量販店などで行われる2分の1カットや入り数の変更などにより、値ごろ感を出した販売が有用である。しかし、これらの販売は、量販店などの野菜仕入れ量が減少してしまうことから、産地としては、店頭での販売促進などを強化し、より多くの消費者に購入してもらう必要がある。
4月の中心商材は、何といっても神奈川産の「春キャベツ(春玉系)」である。1年中出回るキャベツであるが、神奈川産の春キャベツは旬の味そのものである。東京を始めとする関東の住民は、近くに大きなキャベツの産地があるということで恵まれている。
お好み焼きのキャベツならば愛知産の寒玉キャベツがおすすめである。は種から半年以上も極寒のほ場で生育するため、甘みと栄養価は年間で最も高い。お好み焼きのソース製造業者は、この時期甘さ控えめのソースを出荷するとされるほど、寒玉キャベツは甘い。
本来、4~5月はキャベツの端境期であり、この時期は、前年の8月には種した愛知産の晩生種「冬のぼり」と、9月末には種した神奈川産の早生種「金系201」の両品種が安定供給に寄与している。今年は順調に入荷していることから、市場価格の高騰といった場面はないと思われる。
そのほか、4月の野菜と言えばそら豆、クリーンピース、スナップえんどうの豆野菜が挙げられる。関東でのグリーンピース(実えんどう)はいろどり商材として用いるか、「豆ご飯」といった程度だが、関西では、「醤油豆」にするなど副菜の切り札として利用されている。関西市場では、和歌山産「碓井えんどう」の入荷が大宗を占めている。碓井えんどうは非常においしいものの、グリーンピースを食べ慣れている関東の消費地では、色あがりが悪いと判断されるかもしれない。
そら豆は全国的に露地栽培で、気象による入荷の変動大きい。それでも4月は鹿児島産のピークとなり、5月中旬まで多くの量販店で豊富に出回る。連作の難しさや、収穫作業の手間、食習慣の変化などから、この10年入荷量は半分に減ってしまった。また、時期による味の差が大きく、味の良しあしを消費者は外観から判断できないことなどから、売り場での人気が低下しているため、市場価格は下がり気味である。旬の味であり、栄養価も高いことから、量販店などでの売り込みを強化してもらいたいところである。
スナップえんどうは、豆野菜としては入荷量が横ばいから微増で、価格もしっかりしている。鹿児島産、愛知産、近在産地と3つの入荷の山があり、産地リレーはスムーズでなく、市場でひっ迫することがある。近在産は、近くの直売所でもどっさり売られているが、鹿児島産、愛知産は少量が陳列される程度である。スナップえんどうの魅力は、ゆでるだけでもおいしく食べられるし、みそ汁の具として使ってもおいしいなど、使い勝手のよいところである。
これら以外にも、福岡産、三重産のなばななど、おひたし用の野菜がそろう時期であり、春にしか味わえない品目を健康生活に役立てて欲しいものである。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)