1月は、冬型の気圧配置が緩んだため、中旬以降は全国的に気温が高く、低気圧の影響で西日本日本海側を中心に降雨量が多かった。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、多くの品目で生育は順調であったことから、ほぼ前年同月並みの入荷量となった。価格は、初荷直後は高水準で推移したものの、高値疲れなどから中旬以降下げ基調に転じたものの、前年同月を大きく上回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、多くの品目で低温により生育遅れとなったことから、前年同月をやや下回った。価格は、入荷量が伸びなかったことに加え、特売などの需要が高まったことから、前年同月を上回った。
上旬は、3日にかけて強い冬型の気圧配置となり、日本付近には強い寒気が流れ込んだため、全国的に気温が平年を大きく下回った。4日から6日は冬型の気圧配置が緩み、気温は平年を上回る所が多くなった。7日以降は冬型の気圧配置となり、日本海側では曇りや雪または雨の日が多く、太平洋側では晴れの日が多かった。
中旬は、はじめ冬型の気圧配置となり、14日から15日にかけて低気圧が本州南岸沿いを発達しながら東へ進んだため、全国的に天気が崩れた。その後は、冬型の気圧配置は続かず、低気圧が日本海を短い周期で通過し、日本海側では曇りや雪または雨の日が多かったが、太平洋側では晴れの日が多かった。北海道では旬の前半は暖かい空気が流れ込み、気温が平年を大きく上回った。
下旬は、冬型の気圧配置は長続きせず、低気圧が数日の周期で本州付近を通過した。このため日本海側では、曇りや雪または雨の日が多かったが、降雪量は少なかった。太平洋側では晴れの日が少なかった。26日から27日の低気圧の通過時は、日本付近に暖かい空気が流れ込み、北・東・西日本の気温は平年を大きく上回った。30日は低気圧が本州南岸沿いを北東進したため、ほぼ全国的に雨または雪となった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は図1の通り。
1月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が12万2000トン、前年同月比99.6%、価格はキログラム当たり257円、同106.0%となった。
野菜全体の入荷量は、関東産および西南暖地の四国産、九州産を主体に出回り、年末年始の低温などによりだいこん、きゅうり、なすなどの一部の品目で生育の遅れから入荷が伸び悩んだものの、多くの品目で生育は順調であったことから、ほぼ前年同月並みの入荷量となった。価格は、初荷直後は高水準で推移したものの、高値疲れなどから中旬以降下げ基調となったが、野菜全体では前年同月を上回った。
入荷量は、だいこんは、12月下旬からの低温の影響で生育に停滞が見られ、1月中旬以降は前年同月を下回る入荷量となった。にんじんは、主産地の生育が順調で、正品率が高く潤沢な入荷となったことから、月を通して前年同月を上回った。
価格は、だいこんは、上旬が前年を下回ったものの、中旬以降は入荷量の伸び悩みから前年同月を上回り、上げ基調で推移した。にんじんは、主産地から順調に入荷したものの、月を通して夏場の高温、少雨の影響から小ぶりとなり、高値だった前年同月を大きく下回る安値基調で推移した。
入荷量は、はくさいは、主産地において順調な入荷となったものの、月を通して多かった前年を下回る入荷量となった。ほうれんそうは、12月下旬からの低温の影響により生育に遅れが見られたものの、徐々に回復し、旬を追うごとに数量が伸び、1月は月を通して前年を上回る入荷量となった。キャベツおよびレタスは、主産地で一部のほ場に病害が発生したことで、中旬は前年を下回る入荷量となったものの、下旬は前年を上回った。
価格は、はくさいおよびキャベツは、月を通して高値だった前年を下回って推移し、ほうれんそうおよびレタスは、上旬は前年を大きく上回る高値基調となった。中旬以降は入荷量が伸びて値を下げたため、前年同月を下回った。
入荷量は、きゅうりは、上中旬はおおむね前年並みであったが、下旬は前年を下回る入荷量となった。なすは、主産地で12月下旬からの低温により肥大に停滞が見られたことから、月を通して前年を下回る入荷量となった。トマトは主産地において、生育はおおむね順調であったことから、中旬で前年を下回ったものの、月計ではおおむね前年並みの入荷量となった。ピーマンは主産地において病害虫の発生もなく生育は順調であったことから、月を通して前年を上回る入荷量となった。
価格は、きゅうり、なすおよびトマトは、月を通して前年を上回って推移した。ピーマンは、上旬は前年を大幅に上回って推移していたが、中旬以降は安定的な入荷により下げ基調に転じ、前年をやや上回った。
入荷量は、さといもは、上旬で前年をやや上回る入荷量となったものの、これまでが前進出荷であったことに加え、大玉の発生が少ないことから、中旬以降は少なかった前年を下回る少なめの入荷量で推移した。ばれいしょは、中旬で前年を下回る入荷量となったものの、月計では前年を上回る入荷量となった。たまねぎは、月を通して安定的な入荷量となり、小玉で少なかった前年同月を上回って推移した。
価格は、さといもは、旬を追うごとに値を下げたものの、月を通して前年を上回った。ばれいしょおよびたまねぎは、安定的な入荷により月を通して前年を下回った。
下げ基調の中、神奈川産が生育停滞で小ぶり傾向となっただいこんと、愛知産が花とびや着果不良となったトマトは、価格が上げ基調になった(図2、3)。一方、茨城産の入荷量が伸びたはくさいと、千葉産が潤沢な入荷となったにんじんは、安値基調となった(図4、5)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(1月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
1月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万3153トン、前年同月比98.8%、価格はキログラム当たり233円、同103.6%となった。
野菜全体の入荷量は、多くの品目で低温により生育遅れとなったことから、前年同月をやや下回った。価格は、入荷量が伸びなかったことに加え、特売などの需要が高まったことから、前年同月を上回った。
入荷量は、だいこんおよびにんじんとも、長崎産の生育が順調であったことから、前年同月を上回った。価格は、だいこんおよびにんじんとも、月を通して前年同月を下回った。
入荷量は、多くの品目で低温による生育遅れなどにより前年同月を下回ったが、春玉の入荷が伸びたキャベツや、下旬に生育が回復したレタスは、前年同月を上回った。価格は、多くの品目で前年同月を大きく下回ったが、上旬が高値基調であったほうれんそうおよびレタスは、前年を上回った。
入荷量は、多くの品目で低温による着花不良から、前年同月を大きく下回ったが、日照量に恵まれて着花が良好となったピーマンは、前年同月をやや上回った。価格は全ての品目で前年同月を上回り、特に節分需要となったきゅうりは、前年を大きく上回った。
入荷量は、北海道産および長崎産の入荷が減少したばれいしょは、前年同月を下回ったものの、多くの品目で前年同月を上回った。価格は、多くの品目で前年同月を大きく下回った。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(1月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
3月の市場開市は22日で、休市日数は9日となっている。
3月は暖候期に入り、春ものの産地からの入荷が始まることだけでなく、ひな祭り、彼岸、卒業シーズンなどのイベントが多い時期であるため、量販店などでは、月を通してさまざまな販売企画が実施される時期である。
2月までは料亭や旅館などで、高級食材として用いられるたけのこは、3月から4月上旬にかけて市況が落ち着くことで、消費および利用のすそ野が広がる。3月は飲食店での需要が高まり、4月にはもう一段市況が落ち着くことで、量販店などでも売りやすい商材となる。3、4月は門出の季節であり、進学や就職などの新たなステップを踏み出す子どもたちも多い時期である。消費者に対して、子どもたちがたけのこのようにすくすく真っ直ぐに育つことを願いながら食べるという、たけのこの意味合いを前面に出した販売促進を行っていただきたい。
3月は全国的に風が強い時期であり、風の度合いによっては、ほ場のねぎの葉が損傷し、春ねぎや5月から始まる初夏ねぎまで少なくなりがちだ。多雨となれば、6月の新たまねぎが過湿条件により、品質に大きな影響が出ることになる。キャベツやはくさいなどは、強風の下で晴天少雨となった場合、地温が上がらず生育が遅れて入荷量が伸びないため、価格は高値圏に張り付く可能性がある。一方で果菜類を見ると、12月から重油などの燃油価格が下がり始め、昨年よりもハウスの設定温度を高くできたことで、3月の出荷のトマトなどは昨年を上回る出荷が予想される。
冬春野菜の売れ筋品目であるいちごは、かつて『絶対売れる商品』で青果部門の売り上げの柱であった。現在では、『絶対に必要な商品』に成長した。これは、量販店などにおける消費者向けだけでなく、スイーツ向けなどの業務筋における需要が伸びているためである。従来のショートケーキだけでなく、タルトやロールケーキなど、さまざまなスイーツが売れており、スイーツが売れることでいちごの需要はより高まっている。なお、JA全農調べ(平成26年産)によるいちごの全国の品種構成は、「とちおとめ」30%、「さがほのか」16%、「あまおう」13%、「紅ほっぺ」9%、「さちのか」8%で、作付面積は2518ヘクタールである。
3月は暖候期に入り、過熟による鮮度低下を防止するため、いちご生産者は厳冬期よりも若どり気味のカラーチャートにより収穫を行うことで、入荷量も増加する。これに対し、ひな祭りやホワイトデーなど、女性向けのイベントが多いことからスイーツ需要は旺盛であり、クリスマス時期と同規模の需要が見込める。いちご生産者は、クリスマス需要、正月需要、2月のバレンタインデー、3月のホワイトデーおよび卒業式、4月の入学式、そして5月のゴールデンウィークまで、たくさんの需要が見込めることから、最後まで収穫の切れ目がないように、6月までの長期出荷に向けた肥培管理を行っている。とはいえ、4月以降は気温高になり、早い産地では5月に出荷終了となるなど、春夏産地への切り替わりも徐々に始まる時期である。
26年の新しい現象として、あまおうの大玉果における香港向け輸出が伸びている。これは、福岡県のセールスプロモーションの努力が実った結果と言える。果実では、ももの大玉果が香港への出荷が伸びて東京市場で払底し、輸出業者による高値買いが話題になった。かつては、輸入野菜の増大により市況低迷が続いた時期があったが、野菜、果実の輸出が、東京市場や大阪市場などの価格を押し上げるといったことも起こりうる。これも、保冷技術の進化や航空便による物流時間短縮の成果だ。昼過ぎに大田市場から羽田空港へ運ばれ、その日の夕刻に香港の店頭に並べられるといった状況であり、都内の量販店に卸すのと変わらない感覚で流通している。
そういった香港などアジア圏との結びつきは、観光面でも見られるようになっている。湯布院の高級旅館には、香港からのお客様が非常に多いとのことである。これは、LCC(格安航空会社)で九州上陸後、まず湯布院にやって来て一泊し、レンタカーで阿蘇山方面を巡って帰るというパターンなどであり、これらの旅行者が旅館などに宿泊することで、新たな外食需要が発生する。これらの需要に対応すべく、市場経由の新しい供給ルートが確立されつつある。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)