12月は、冬型の気圧配置となったため気温は低めに推移し、北日本から西日本にかけての日本海側では降水量が多く、北日本から西日本にかけての太平洋側では降水量が少なかった。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、中旬までは生育期において、好天に恵まれた産地が多く、順調な入荷となったため、前年同月を上回った。価格は、上旬から中旬までは安値基調で推移したため、前年同月を下回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、多くの品目で前月の天候に恵まれ、各産地とも生育が順調で入荷が伸びたことから、前年同月を上回った。価格は、急激な冷え込みにより消費が低迷した品目も見られたため、前年同月を下回った。
12月上旬は、1日に低気圧が発達しながら日本付近を通過した後、冬型の気圧配置に変わり、日本付近には断続的に強い寒気が流れ込んだ。このため、北日本から西日本にかけての日本海側では曇りや雪または雨の日が多く、北日本から西日本の太平洋側では晴れの日が多かった。全国的に気温が低く、降雪量は5日から6日を中心に所々で大雪となり、東日本日本海側ではかなり多かった。また、北・東日本日本海側の降水量はかなり多かった。
中旬は、低気圧が日本付近を数日の周期で通過し、低気圧の通過後は冬型の気圧配置となり、日本付近に強い寒気が流れ込んだため、東・西日本の気温はかなり低く、北日本から西日本にかけての日本海側では曇りや雪または雨の日が多かった。北日本から西日本にかけての太平洋側では、晴れの日が続かず、低気圧や強い寒気の影響で、曇りや雨または雪の日があった。18日から19日にかけて非常に強い冬型の気圧配置となったため、北海道東部を中心に北日本から西日本にかけての日本海側の広い範囲で大雪や暴風雪となった。
下旬は、中頃に北・東日本を中心に強い冬型の気圧配置となったため全国的に気温は低く、北日本から西日本にかけての日本海側では、曇りや雪または雨の日が多く、北・東日本日本海側の山沿いを中心に降雪量が多かった。一方、北日本から西日本にかけての太平洋側では晴れの日が多かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は図1の通り。
12月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が13万8000トン、前年同月比104.2%、価格はキログラム当たり241円、同92.4%となった。
野菜全体の入荷量は、関東産および西南暖地の四国産、九州産を主体に出回り、中旬までは生育期において、好天に恵まれた産地が多く、順調な入荷となったが、下旬は、全国的な気温の低下により、レタスなどの葉茎菜類を中心に生育の停滞が見られた品目があったため、前年同月を上回った。価格は、上旬から中旬までは安値基調で推移し、下旬はクリスマス、年末需要に加え、生育の停滞による入荷量の減少から上げに転じたものの、野菜全体では高値だった前年同月を下回った。
入荷量は、だいこんおよびにんじんが、主要産地で生育期において天候に恵まれ順調な入荷となったことから、月を通して前年同月を上回った。
価格は、だいこんおよびにんじんが、順調な入荷により月を通して高値だった前年同月を大幅に下回った。
入荷量は、キャベツ、ほうれんそうおよびレタスが、中旬までは主産地の生育が順調であったことから前年を上回る入荷量となったが、下旬は低温の影響で生育は停滞したことから前年を大きく下回った。ねぎは、上旬は前年を下回る入荷量であったものの、中旬以降は前年を上回った。
価格は、上中旬はキャベツ、はくさいおよびレタスが高値だった前年を大きく下回った。下旬に入ると、ほうれんそうおよびレタスは、低温の影響による生育の停滞から値を上げ、特にレタスについては、高値だった前年を上回った。その他の品目は、年末に向けて値を上げたものの、高値だった前年を下回った。
入荷量は、低温の影響のあったきゅうりが、月を通して前年を下回ったものの、主産地の生育がおおむね順調であったトマトは、安定的な入荷となり、月を通して前年を上回った。なすおよびピーマンは、上旬は前年を下回り、中旬に入荷が伸びて前年を上回ったものの、下旬は再び前年を下回った。
価格は、入荷量が少なかったきゅうりが、月を通して高値で推移し前年を上回った。安定的な入荷となったトマトは、需要期である年末に向け上げ基調となったが、月を通して高かった前年を下回った。なすは、上旬は高かった前年を下回ったものの、中旬以降は上げ基調となり前年を上回った。ピーマンは、上中旬は前年を下回っていたが、下旬に大幅な上げ基調となり、前年を上回って推移した。
入荷量は、さといもおよびばれいしょが、上旬は前年を下回ったものの、中旬以降は前年を上回った。たまねぎは、月を通して安定的な入荷となり、前年同月を上回った。
価格は、年末が需要期となったさといもが、旬を追うごとに値を上げ、月を通して前年を上回り、ばれいしょは、月を通して前年を大きく下回った。入荷が安定したたまねぎは、月を通して前年を大きく下回った。
多くの品目で12月は需要期となり、11月までの安値から回復してきたが、特に、ほうれんそう、レタス、なすおよびきゅうりは、急激な温度低下の影響から下旬を中心に入荷量が減少したため、価格が上伸した(図2、3、4、5)
なお、品目別の詳細については以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(12月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
12月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万9875トン、前年同月比105.8%、価格はキログラム当たり229円、同90.9%となった。
野菜全体の入荷量は、多くの品目で前月の天候に恵まれ、各産地とも生育が順調で入荷が伸びたことから、前年同月を上回った。価格は、葉茎菜類を中心に加工筋の引き合いや年末の需要により上伸した品目もあったが、急激な冷え込みにより果菜類を中心に消費が低迷した品目もあったことから、前年同月を下回った。
入荷量は、だいこんおよびにんじんとも、長崎産の生育が順調であったことから、前年同月を上回った。価格は、だいこんおよびにんじんとも、月を通して前年同月を下回った。
入荷量は、12月の急激な温度低下などにより入荷が減少する産地も見られたが、多くの品目で前年同月を上回ったものの、九州産のはくさいが阿蘇山の噴火による被害を受けたため、入荷が伸びず前年同月を下回った。価格は、各品目とも前年同月を大きく下回った。
入荷量は、抑制ものの急激な冷え込みと日照量不足による着花不良と、11月の前進出荷による端境期となったことで入荷が減少したきゅうりが、前年同月を大きく下回ったものの、多くの品目は前月までの天候で順調な生育となったため、前年同月を上回った。価格は、入荷量が大きく下回ったきゅうりが前年同月を大きく上回ったものの、多くの品目で前年同月を下回った。
入荷量は、長崎産が曇雨天により掘り取りが進まなかったばれいしょが前年同月並みとなったものの、多くの品目で前年同月を大きく上回った。価格は、多くの品目で前年同月を大きく下回った。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(12月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
2月の市場開市は20日で、休市日数は8日となっている。
2月は、1月と並んで1年のうちで最も気温の低い厳冬期に当たることから、量販店などでは、鍋物商材の提案が活発に行われる時期である。このため、はくさいなどの葉茎菜類やだいこんなどの根菜類などで活発な荷動きが期待できる。
2月は、受験シーズンで東京など大学を抱える大都市部を中心にホテルの稼働率が上がり、サラダ用の野菜の価格がしっかりする時期であるが、受験生だけでなく、円安による外国人観光客の需要も高まっている。政府観光局によると、外国人観光客は、円安の進行や平成26年10月からの消費税免除制度の拡充などにより増加傾向で、国別にみると、韓国、中国、台湾など東アジアや、米国などからの観光客が多い。特に中国は、2月19日が春節(旧正月)に当たるため、2月18日から24日までの7連休となることから、富裕層や中間層などが円安で値ごろ感のあるわが国に訪れることが期待される。外国人観光客にとって、わが国は名所の観光、家電製品などの買い物以外に、食を楽しむことも目的として挙げられるため、ホテルや飲食店などの外食産業による野菜の引き合いに期待したいところである。
露地野菜において厳冬期の2月は、低温で推移することから野菜の生育が遅く、ほ場にあるものをゆっくり出して行くといった流れで、堅調な市況となる時期だが、昨年の大雪のようなことが起きると各地からの出荷が滞り、価格は大幅高に動くと予想される。
業務筋では、台湾産レタスの先行きが気になるところである。長崎産などの加工・業務向け産地が、12月の寒波の影響で不作気味となれば、台湾産の引き合いが高まり、納入業者による臨時輸入なども想定される。はくさいは、出荷終盤に近くなるが、年内の安値反動から、少なくて高いといった展開も想定しておくべきだ。だいこんは、千葉産の春だいこんの生育が遅れるようであれば、価格は高値に転じることが予想される。
果菜類のうちきゅうりは、「恵方巻き」需要とともに、昨年の降雪で倒壊した群馬のハウスが100%再建されていないことから、高めの価格推移が予想される。トマトは、定植時期の天候に恵まれて生育が順調な中、客引きのマグネット商材としても活用されていることから、安定した需要が期待できる。ピーマンは、原油価格の低下で、農家が本格的に暖房コストをかけることができる状況となっており、安定した出荷が予想される。
業務用としては、ホテルでは、2月から春の先取りの提案が始まり、山菜のたらの芽、ふきのとう、行者にんにくなどの引き合いが強まり、価格は高めを予想している。価格高の背景には、これらの季節商材をハウス栽培により前進させていること、生産者の高齢化および減少傾向にあることなどがある。その点では、地域特産の根みつば、せりなども同様の状況と言える。千葉産を中心とするしゅんぎくも、出荷は増えておらず、高めの価格が予想される。さらに、たけのこは、終盤には熊本産や福岡産の引き合いが強くなることが予想される。なばなは、1月に続いて3月まで引き合いは強いと予想される。
輸入ものは、アスパラガスの引き合いが強まるが、米国産およびメキシコ産とも、気象の変動が激しく、生産が不安定であることに加え、円安もあって供給量が少なめで、価格は高めが予想される。かぼちゃも、メキシコ産は、仕入れ価格高騰を覚悟しなければならない。輸入ものだから安いという場面は少なくなって、安売り専門店はカット販売により、値ごろ感を持たせた販売対応を行うといった事例も多くなることが予想される。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)