11月は、全国的に低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わる中、西日本を中心に降水量が多かった。気温は、北・東日本を中心に、上旬および下旬で高めに推移した。
同月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量は、各産地とも生育が順調であったことから、前年同月並みの入荷量であった。価格は、前月までの安値基調から旬を追うごとに値を上げたが、前年同月を大きく下回った。
同月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量は、前月の天候に恵まれて各産地とも生育が順調で、入荷が伸びたことから、前年同月を上回った。価格は、中旬以降の入荷の減少から持ち直しつつあったものの、前年同月を大きく下回った。
11月は、全国的に低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わった。上旬は、東・西日本太平洋側では気圧の谷や前線の影響で、曇りや雨の日が多かった。3日から4日にかけては、日本付近は冬型の気圧配置となったため、日本海側では曇りや雨または雪となり、北日本を中心に大荒れの天気となった。また、4日から5日にかけては、台風20号とその北側の前線が日本の南から北上したため、東日本太平洋側を中心に曇りや雨となった。
中旬は、冬型の気圧配置となる日が多く、北日本から西日本にかけての日本海側では、曇りや雨または雪となり、太平洋側では晴れた日が多かった。特に、13日から15日にかけては強い冬型の気圧配置となって、北日本と東日本日本海側では大荒れの天気となり、札幌では15日に25センチメートルの最深積雪となるなど、北日本では局地的に大雪となった所があった。
下旬は、前半は移動性高気圧に覆われ、全国的に晴れた日が多かった。後半は低気圧や前線が短い周期で日本付近を通過したため、東・西日本では雨の降った日が多く、西日本日本海側では降水量がかなり多くなった。特に25日から26日にかけては、前線を伴った低気圧が本州南岸を東進し、東・西日本を中心にまとまった雨となった。一方、北からの寒気の影響が弱かったため、北日本日本海側では降水量がかなり少なく、日照時間がかなり多かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は図1の通り。
11月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が12万6000トン、前年同月比100.8%、価格はキログラム当たり196円、同78.7%となった。
野菜全体の入荷量は、関東、北海道の夏秋産地は終盤を迎えたが順調な入荷となり、後続の関東、西南暖地の出荷も始まり、各産地とも生育が順調であったことから、前年同月並みの入荷量であった。価格は、前月までの安値基調から旬を追うごとに値を上げたが、台風の影響により高値だった前年同月を大きく下回った。
入荷量は、だいこんおよびにんじんは、上中旬が主要産地で天候に恵まれ順調な入荷となったことから、前年同月を大きく上回ったが、下旬は入荷量も落ち着き前年をやや下回った。価格は、だいこんおよびにんじんは、順調な入荷により月を通して高値だった前年同月を大きく下回った。
入荷量は、主産地の生育が順調であったはくさいおよびキャベツは、上旬は前年同月を上回ったものの、中下旬は多かった前年同月を下回った。主産地の生育は順調だったねぎも、月を通して多かった前年同月を下回った。一方、昨年台風と寒波の影響で入荷が少なかったほうれんそうは、月を通して前年同月を上回った。レタスは、生育は順調で上中旬は前年同月を上回ったが、下旬は多かった前年同月を下回った。価格は、各品目とも月を通して前年同月を下回る安値基調で推移し、特にはくさい、キャベツ、レタスは大きく値を下げ、前年同月を大きく下回った。
入荷量は、上旬に前年同月を上回って推移したきゅうりは、中旬以降は数量が伸びず前年同月を下回った。なすおよびピーマンは、上中旬は少なかった前年同月を上回ったが、下旬は前年同月を下回り、特にピーマンは、多かった前年を大きく下回った。主産地の生育は順調で安定的な入荷となったトマトは、月を通して前年を上回った。価格は、きゅうりおよびなすが上中旬は前年同月を大きく下回ったものの、旬を追うごとに値を上げ、下旬には前年同月を上回った。トマトおよびピーマンは、月を通して高値だった前年同月を大きく下回った。
入荷量は、さといもが生育は順調であったものの、月を通して多かった前年同月を下回った。ばれいしょも、旬を追うごとに数量は増加したものの、月を通して多かった前年同月を下回った。たまねぎは、月を通して安定的な入荷量となり、前年同月を上回った。価格は、さといもが大きな変動もなく月を通しておおむね前年並みで推移し、たまねぎ、ばれいしょが月を通して前年同月を大きく下回った。
にんじんは、上旬から中旬に向かって順調な入荷となり、その後下旬に向かって入荷量が減少したが、入荷量の減少に対しての価格の上がりが鈍かった(図2)。ほうれんそうは、昨年台風と寒波の影響で入荷が少なかったことから、特に中旬以降、気温の低下による入荷量の減少とともに上伸した(図3)。ねぎは、多くの産地が順調な入荷となる中、主産地の茨城産の入荷が伸びなかったことから、緩やかな上げ基調となった(図4)。きゅうりは、後続の宮崎産の入荷量が中旬以降減少したため、価格は下旬に向かって上伸した(図5)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(11月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
11月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万7286トン、前年同月比100.5%、価格はキログラム当たり190円、同79.8%となった。
野菜全体の入荷量は、前月の天候に恵まれて各産地とも生育が順調で、入荷が伸びたことから、前年同月を上回った。価格は、前月の安値基調が中旬以降の入荷の減少から持ち直しつつあったものの、前年同月を大きく下回った。
入荷量は、だいこんが分散出荷からほぼ前年同月並みになったものの、にんじんは長崎産を中心に入荷が伸びたことから前年同月をやや上回った。価格は、だいこんおよびにんじんとも、月を通して前年同月を下回った。
入荷量は、夏秋ものの残量が多かったほうれんそうが、前年同月を上回ったものの、他の消費地との価格差がなかったはくさいは、入荷が伸びず前年同月を下回った。価格は、各品目とも前年同月を大きく下回った。
入荷量は、抑制ものの入荷が急激な冷え込みで減少したきゅうりが、前年同月を下回ったものの、多くの品目は、前月までの天候で順調な生育となったため、前年同月を上回った。価格は、各品目とも前年同月を下回った。
入荷量は、北海道産が生育良好で大玉傾向であったたまねぎが、前年同月を大きく上回ったものの、多くの品目は前年同月を下回った。価格は、全品目で前年同月を下回った。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(11月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
1月の市場開市は20日で、休市日数は11日となっており、1年のうちで2月と並んで開市日が少ない月である。
1月は、正月明けの初市からセリがスタートする。本年は4日が日曜休市に当たるため、5日が初市となる。量販店などは、上旬の初売り、成人式などの特売企画に始まり、中旬からは厳冬期の鍋物特売、下旬は節分に向けた売り込みなど、野菜に関連する販売イベントが多くなる。
平成26年は「半年(前半)高ければ半年(後半)安い」との市場格言が透徹した年であった。前半の価格高騰の場面では、卸や仲卸が逆ざやになる販売もあったと推測される。そういった収益の悪化を、市場価格が下がった局面で取り返すといったことは良くあるやり方である。安値が長く続き過ぎると、買い手にとっても安値疲れとなることから、12月には高値に転じてほしいとの希望が支配的になった。
コンビニエンスストア最大手の経営者は、「よい物はどこに置いても絶対に売れる」と月刊誌で成功体験を述べている。野菜は生活必需品であり、通常1月は苦労なく販売できる。
厳冬期になる1月は、消費者にとって、し好面では鍋などの需要が、健康面では風邪に強くなるために野菜の需要が高まるためである。果物の世界では、国が育成した新しいぶどう品種「シャインマスカット」の価値が認められて、入荷は前年の3倍、価格はほぼ前年並といった新時代を築いている。ところが、野菜では画期的な商材が見当たらない。市場としては、産地に埋もれている「売れる商材」の発掘と提案が求められている。
昨年末は予期せぬ衆議院選挙で、政治に関連するパーティーが年明けに延期されるケースが目立った。これにより、サラダやオードブル需要も年明けにずれ込むことから、ホテルや外食など業務への野菜納入は、例年の1月よりも活発になることが予想される。サラダ商材の中でも果菜類の情勢は、燃油高騰をにらんだ作付面積の減少傾向から引き合いが強まり、トマトやきゅうりを中心に高値が予想される。果菜類以外でも、外食に多く使われる野菜は引き合いが強くなるであろう。お通しのお浸しに使われるなばな、刺身のつまで使われる大葉、鍋に使われるみつばなど、1月の新年会メニューで多く使われる品目の価格も堅調に推移すると思われる。
正月に欠かせない「七草セット」は、この10年間の動向を見ると、需要、価格ともほぼ横ばいで推移している。この時期の年中行事として、気分一新で一年の計を考えるといった行事は、簡素化されることはないであろう。七草セットは、27年も例年と同じように、大分産中心(50%程度)の展開と予想される。昨年は初市が日曜日で、量販店などによる仕入れが少なく、やや盛り上がりに欠いたが、今年は問題ないであろう。七草セットに関連して、かぶ、だいこんなどの需要も期待できる。
年間を通して最も量が多く、重要な野菜であるキャベツは、1~5月まで出回るものは、寒さで甘みが強くなる。国内のキャベツ産地は、気温の上昇とともに北から南へ、平野から高冷地へとリレー販売されるが、千葉産、愛知産および神奈川産は、引き合いが強まる時期にピークとなる。多日照条件下で栽培できるこれらの産地は、キャベツ栽培に適した優良な産地である。これら産地の近くにはキャベツ品種育種の高名な種苗会社があり、生育が難しい時期も安定した生育のできる品種が提供されている。お好み焼き用の定番品種である「松波」は、関西市場での要望が強い。現代の主婦は忙しく、カットされた野菜を買う時代になっている。キャベツ1玉を消費するのに3~4日かかる。そこで、1/2カットが1玉より少し安価であれば、カットを買うことになる。簡便化が付加価値として認められているということである。
27年の野菜生産および消費が、生産者、量販店、実需者、消費者に良い年となるよう、市場も最善の努力を尽くしていきたい。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)