【概要】
9月の天気は、前線と上空に入った寒気の影響で上中旬を中心に降水量が多くなった。このため、上中旬の気温は低め、日照時間は少なかったが、下旬は、移動性高気圧に覆われたため、北日本および西日本を中心に気温は高め、日照時間は多くなった。
同月の東京都中央卸売市場の入荷量は、8月からの天候不順による日照不足や低温などにより、葉茎菜類や果菜類などで生育遅延が見られたが、全体としては前年並みであった。価格は、葉茎菜類を中心に高値基調で推移したことから、前年をかなり上回った。
同月の大阪市中央卸売市場の入荷量は、根菜類や土物類の入荷が伸びたことから、前年を上回った。価格は、需要が伸びなかった根菜類などは前年を下回ったが、品薄の葉茎菜類などが高値基調で推移したことから、前年を上回った。
9月は、上旬は、本州南岸に前線が停滞することが多く、東・西日本太平洋側では曇りや雨の日が多かった。一方、北日本と東日本日本海側では天気は数日の周期で変わったが、移動性高気圧に覆われて晴れた日が多かった。台風14号は7日に本州のはるか南海上を東北東に進み、台風の北側に停滞した前線の影響で東・西日本太平洋側は雨となった。9日には本州南東海上に抜けるとともに、10日にかけては弱いながらも移動性高気圧に覆われて、全国的におおむね晴れとなったが、上空に寒気が入ったため、強い夕立に見舞われた地域があった。中旬は、北日本では上空に寒気を伴った低気圧の影響で北海道を中心に曇りや雨の日が多く、西日本では前線の影響で曇りの日が見られ、天気は数日の周期で変わったが、東日本と東北地方では移動性高気圧に覆われる日が多かった。また、上空に寒気を伴った低気圧がゆっくりと北日本を通過したため、北海道の一部では11日に記録的な大雨となり、大雨特別警報が発表された地域があった。下旬は、本州の南海上には前線が停滞し、九州では前半を中心に曇りや雨の日が多かったが、西日本から北日本にかけては数日の周期で天気は変わったものの移動性高気圧に覆われて晴れる日が多かった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。
9月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が13万4000トン、前年同月比102.1%、価格はキログラム当たり271円、同107.2%となった。
野菜全体の入荷量は、関東、北海道および東北ものを主体に出回り、8月からの日照不足や低温などにより、レタス、トマトなど一部の品目で生育遅延が見られ、前年同月と比べ大幅に下回ったが、全体としてはおおむね前年並みの入荷量であった。価格は、根菜類などが安値基調で推移した一方で、レタス、キャベツなどの葉茎菜類を中心に高値基調で推移したことから、全体としては前年を大きく上回って推移した。
入荷量は、だいこんが上中旬は平年を上回ったが、下旬は平年を下回った。にんじんは、月を通して平年を上回り、特に中旬は平年を大幅に上回る入荷量となった。価格は、だいこんは、月を通して平年を上回って推移した一方、にんじんは、月を通して平年を下回って推移した。
入荷量は、上旬ははくさいおよびねぎが平年を上回ったが、ほうれんそうおよびレタスは平年を大幅に下回った。中旬はレタスを除いて入荷量が回復して平年を大幅に上回ったものの、下旬はレタス、キャベツなどで平年を下回った。価格は、はくさい、キャベツおよびレタスは月を通して平年を大幅に上回った。ほうれんそうは上旬で平年を大幅に上回ったが、中下旬は平年を下回った。ねぎは、上旬はおおむね平年並みで推移していたが、中旬以降値を下げ平年を下回って推移した。
入荷量は、きゅうり、トマトおよびなすで月を通して平年を下回り、ピーマンは中旬に平年を上回る入荷量となったものの、下旬は、入荷量は伸びず平年を下回った。価格は、きゅうり、なすおよびピーマンは月を通して高値基調ではあったが、旬を追うごとに値を下げた。トマトは、上旬はおおむね平年並みだったが、中旬以降値を上げ、下旬は平年を大幅に上回って推移した。
入荷量は、各品目とも上中旬は平年を上回ったものの、下旬は平年を下回って推移した。価格は、さといもが月を通して平年を上回り、ばれいしょが上旬はおおむね平年並みであったものの、その後は平年を下回った。たまねぎは上旬に平年を上回ったものの、中旬以降下げ基調となり、下旬は平年を下回って推移した。
需要が高い中、中旬までの入荷量が回復傾向にあったキャベツは、下旬の入荷量が減少したことから、月を通して上げ基調が続いた(図1)。レタスは、長野産が長雨と気温低下の影響を受け高騰していたが、消費が伸びず引き合いが弱まったため、高値の中、下げ基調に転じた(図2)。はくさいは、作付面積が増加した作型の収穫となったことから入荷量が伸びたため、高値の中、下げ基調に転じた(図3)。にんじんは、北海道産の入荷が安定して伸びたことから価格が伸び悩んだ(図4)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(9月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が4万284トン、前年同月比105.8%、価格は、キログラム当たり252円、同103.7%となった。
野菜全体の入荷量は、東北および北海道産が中心のだいこんやばれいしょ、生育が回復したなすなどは入荷が伸びたが、高冷地ものが中心のレタスやはくさいなどは入荷が伸びなかった。しかし、価格高からの集約出荷が行われたキャベツなどの入荷が伸びたことから、前年同月を上回った。価格は、需要が伸びなかったにんじんや順調な入荷が続いたばれいしょは前年を下回ったが、他の品目が前年を上回ったことから、前年同月を上回った。
入荷量は、レタスなどが低温の影響を受け、入荷が伸びず前年同月を大きく下回ったが、キャベツは高値による集約出荷から、ほうれんそうは生育の回復や後続産地の入荷が始まったことから前年同月を大きく上回った。価格は、入荷量が伸びなかったレタスなどは前年同月を上回ったが、順調な入荷となったねぎは前年同月を大きく下回った。
入荷量は、9月の天候不良による樹勢不良により着花数が減少したことにより、トマトなどは前年同月を大きく下回った。露地ものの順調な入荷に加え、施設ものの入荷が始まったなすは、前年同月を大きく上回った。価格は、入荷が伸びなかったトマトなどは前年同月を上回ったが、8月の高値反動から大きく値を落としたきゅうりは、前年同月を下回った。
入荷量は、だいこんおよびにんじんとも、北海道産などの生育が順調であったことから、前年同月を上回った。価格は、入荷量が伸びたことと需要の伸びが鈍かったことなどから前年同月を下回った。
入荷量は、冷蔵入庫量が前年並みで順調な入荷の兵庫産に加え、北海道産の入荷も順調であったたまねぎが、前年同月を大きく上回った。宮崎産の入荷が伸びない中、輸入ものである中国産の入荷が減少したさといもは、前年同月を大きく下回った。価格は、たまねぎは入荷量が多かったことから前年同月を大きく下回り、さといもは、入荷量が伸びなかったことから前年同月を上回った。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(9月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
11月の市場開市は21日で、休市日数は9日となっている。
11月は、関東近在ものの秋冬野菜の入荷が本格化する時期であるとともに、上旬と下旬に連休が入り、紅葉などといった秋の行楽シーズンの中心になることから、10月に引き続き、各量販店の特売などが活発に行われる時期である。
かつて、冬の準備に忙しい11月は物入りなことが多く、末端消費が鈍くなることから、青果物の価格が安くなりやすいとされた。しかし、現在は、冬の準備も前倒し傾向にあることや、食欲の秋に代表されるように、さまざまな秋の味覚の味が楽しめる時期であることから、末端消費は安定している。むしろ、税金、公共料金、授業料の支払いなどで忙しい4~6月の方が、可処分所得が減ることで末端消費は厳しいのではないか。
野菜の中心産地は北から南へ、高原から平野へとバトンタッチの時期である。野菜メニューもサラダから煮物、炒め物が主流に変化し、10月に続き鍋物需要も旺盛だ。茨城のはくさいや愛知および千葉のキャベツは定植についても問題なく、10月後半には高値が続いた重量野菜も平年並みに下がり、食卓の担当者である主婦にとっては、経済的な負担が少なくなることから、安定した家庭消費需要が見込めそうだ。 だいこんについても、北海道が終盤となる中、関東への橋渡しの東北産が不作気味で、秋冬ものの千葉が出始めの上旬まではやや高めの展開だが、関東産が出そろう後半には急落すると予想される。
秋も深まるこの季節、野菜を十分に摂取することで健康で冬を越せる。ニュースに絡む情報番組では、各野菜の効用についての情報が流されるであろう。がんにかかりにくくなる生活の基本は野菜食だが、具だくさんのみそ汁を毎日飲むことで簡単に達成できる。全般的に野菜高騰の時は、近在ものであるこまつななどのアブラナ科野菜の価格の下げが一番早い。他の品目よりも値ごろ感のあるこまつなは、量販店からの引き合いも安定しており、学校給食もこまつなの使用頻度は高いことから、需要が堅調な品目である。
果菜類では、きゅうりは抑制の無加温ものが切り上がりに向かうが、関東の促成、半促成産地では、2月の大雪被害から100%回復しているわけでなく、出回りの少なさから高めの水準を維持することが予想される。この時期の高値は、荷動きを悪化させることになるため、市場では価格の動きが激しくなることが予想される。トマトは東北産が切り上がり、関東の抑制ものと東海の促成ものが入荷されるが、促成ものが夏秋もののような味の深さが出にくいことから、市場の価格は農家の期待に反して低迷しがちだ。
全国的に天候が乱れてもきっちり栽培できるのがかんしょで、全国の量販店では店頭に芋焼き器が設置され、季節を演出してくれる。ここ2~3年は新しい「べにはるか」さらに「シルクスイート」の登場で、圧倒的首位「べにあずま」の時代は終わりに近づいてきている。それぞれの品種に特長があることから、かんしょを販売するに当たっては、調理法の提案や消費者のし好性を反映した売り方が求められる。地方品種の「安納芋」は甘味が強いことから、普段使いのかんしょというよりは、より甘いかんしょが食べたいという消費者向けとなる。
地方品種では青森産の赤かぶが活発に入荷する。赤かぶと言えば山形の伝統野菜である「温海かぶ」だが、温海かぶは産地内流通がほとんどのため、市場で見かけることはない。しかし、青森産の赤かぶは市場流通商材であるとともに、値ごろ感のある商材である。赤かぶの漬け方としては、簡単に漬けられる甘酢漬けを提案するとよいであろう。産地における降雪前の風物であり、消費地でもその香りを楽しんでほしい。近在産地の茨城では、聖護院かぶは貯蔵食であり、ひと冬の間納屋で保存され、煮物で食される。だいこんでは味わえない、優しい味が感じられることから、冬の商材として消費者に提案をしていただきたいものである。
今年の盆明け後は残暑がなく、秋冬作の育苗については全国的にスムーズにできたと推測され、トマトは九州産を中心に11月には遅れることなく活発に入荷することが予想される。活発な入荷と10月までの高値の反動により、11、12月の市況は低迷といったことも考えられる。11月の連休、12月の年末商戦といったイベントにおける特売による需要喚起に期待したいところである。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)