【概要】
7月の天気は、梅雨前線と台風の影響により、上旬は西日本で、中旬は各地日本海側で、下旬は北日本で雨の日が多くなった。気温は、下旬の梅雨明け後に、ほぼ全国的に太平洋高気圧に覆われたことから、平年より高く推移した。
同月の東京都中央卸売市場の入荷量は、降雨とその後の晴天により、多くの品目でおおむね生育は順調であったことから、野菜全体では前年並みとなった。価格は、葉茎菜類を中心に強めに推移したが、根菜類などが安値で推移したため、野菜全体では前年を下回った。
同月の大阪市中央卸売市場の入荷量は、北海道産などが生育不良により入荷が伸びない中、果菜類を中心に入荷が伸びたことから、野菜全体では前年並みとなった。価格は、生育の回復により、需要を超える入荷量の増加となった品目が見られた影響から、野菜全体では前年を下回った。
7月は、上旬は5日頃にかけて、梅雨前線が本州の南海上に停滞することが多く、北日本や東日本の日本海側でおおむね晴れた。一方、西日本や東日本の太平洋側では、曇りや雨の日が多く、西日本では気温が低く推移した。6日以降は、大型で非常に強い台風第8号が沖縄の南から北上し、8日に沖縄本島と宮古島の間を通過した。その後、台風は次第に勢力を弱めながら進路を東に変え、10日に鹿児島県阿久根市付近に上陸して本州南岸を東進した。また、台風周辺の湿った南風と梅雨前線の影響で、北日本から西日本にかけても局地的に大雨となり、長野県で土石流による被害が発生するなど、各地で土砂災害や浸水害などが発生した。中旬は、日本の南で太平洋高気圧が次第に強まり、梅雨前線が日本海沿岸まで北上し停滞したため、東・西日本の太平洋側や沖縄・奄美では高気圧に覆われて晴れる日が多かったが、東・西日本の日本海側では梅雨前線の影響で曇りや雨となる日が多かった。北海道では晴れの日が多く、気温は高く推移した。下旬は、旬の初めは全国的に高気圧に覆われ、おおむね晴れたが、23日から24日にかけては梅雨前線が北日本を南下し、北日本では曇りや雨となった所が多かった。25日から26日にかけては、ほぼ全国的に太平洋高気圧に覆われて気温が上がり、猛暑日となったところが多かった。なお、21日頃には九州北部地方、近畿地方、東海地方、22日頃は関東甲信地方、28日頃は北陸地方、東北地方で梅雨明けした(速報値)。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。
7月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が12万7261トン、前年同月比100.1%、価格はキログラム当たり229円、同91.6%となった。
野菜全体の入荷量は、関東、北海道および東北ものが主体となり、一部の産地において干ばつ、長雨の影響などにより生育環境に地域差があるものの、順調な品目が多く、全体では前年同月並みの入荷となった。価格は、旬を追うごとに穏やかな下げ基調となり、品目別でも、根菜類などは気温が高くて荷動きが悪いこともあり、前年および平年を下回るものが多く、全体でも前年をかなり下回って推移した。
はくさい、キャベツ、レタスは月を通しておおむね平年を上回る入荷量となった一方で、ほうれんそう、ねぎは月を通して平年を下回る入荷量となった。価格は、月平均でキャベツを除く各品目が平年を上回る展開となり、特に、レタスは月を通して平年を大幅に上回る高値となった。高値が続くレタスは、量販店などでは2分の1、4分の1カット販売が行われ、量目を減らすことで値ごろ感を訴求する動きが見られた。
各品目とも中旬は台風などの影響から、平年を大幅に下回る入荷量だったが、下旬は平年を上回り、特にトマトは大幅に上回った。価格は、月平均で入荷が少なかったなすは、おおむね平年並みであったが、その他の品目では平年を下回り、特に、ピーマンは中下旬に平年を大幅に下回って推移した。需要面を見ると、きゅうりは、キュウリビズなどのイベントによる売り込みが行われたものの、6月までの高値の反動から需要が伸びなかった。トマトは、産地が東北および北海道に切り替わり、サラダ商材を中心とした取り扱いで安定した需要があった。
だいこんが下旬に平年を若干下回ったものの、月間では平年をやや上回る入荷量となった。にんじんは月を通して平年を上回り、特に、中旬は平年を大幅に上回る入荷量となった。価格は、両品目とも中旬以降の気温上昇から荷動きが鈍く、月を通してかなり大きく平年を下回って推移した。
さといもが上中旬で平年を下回ったものの、下旬はおおむね平年並みの入荷量であった。ばれいしょ、たまねぎは月を通しておおむね平年並みの入荷量であった。価格は、さといもが月を通して平年を大幅に上回って推移した。たまねぎは、前月までの高値の影響もあり、平年を上回って推移した。ばれいしょは、上旬は平年をやや下回ったものの、中下旬にはおおむね平年並みの価格で推移した。
上旬の入荷量が少なかったレタスは、気温高によるサラダ需要もあり、高値で推移した(図1)。ほうれんそうは、群馬産の高冷地が大雪の影響から入荷量が伸びず、下旬に向かって続伸した(図2)。群馬産の入荷が少なかったなすは、中旬までは高値で推移したが、下旬は栃木産の入荷が増えたことで下げ基調となった(図3)。業務需要により、6月が高値基調となったはくさいは、高値疲れと長野産が順調な入荷となったことから、下げ基調に転じた(図4)。
なお、品目別の詳細については以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(7月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」 注 :
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が3万6787トン、前年同月比100.3%、価格は、キログラム当たり208円、同90.8%となった。
野菜全体の入荷量は、北海道産などにおいては、生育不良による小玉傾向などが見られたものの、果菜類を中心に入荷が伸びたことから、前年同月並みの入荷となった。価格は、入荷量が前年同月並みとなる中、生育の回復により、需要を超える入荷量の増加となった品目が見られた影響から、前年同月比を下回った。
前月までの出遅れていた分が入荷したレタスは、前年を上回る入荷量となった一方で、ほうれんそうは、天候不良から前年を下回る入荷量となった。価格は、入荷量に対して需要が少なかったことから、すべての品目で前年を下回った。
きゅうりが福島産の出遅れなどの影響で入荷が伸びなかったが、他の品目は、順調な入荷となったことから、前年を上回る入荷量となった。価格は、入荷量の増加により安値基調となり、入荷量の少なかったきゅうりも、他の品目の価格安の影響を受けたことから、すべての品目で前年を下回った。
各産地とも順調な生育で入荷が伸びる中、北海道産が生育不良となったため、すべての品目で、前年を下回る入荷量となった。価格は、北海道産の品質が低下したことと、気温高により需要が鈍くなったことから、すべての品目で前年を下回った。
後続産地である兵庫産の入荷が伸びたたまねぎは、前年を上回ったが、他の品目は、主産地の九州産が生育不良や掘り取り作業遅れから、前年を下回る入荷量となった。価格は、前年が高値で推移したばれいしょは前年を下回ったものの、他の品目は、品質の高さや需要の多さから、前年を上回った。
品目別の詳細は以下の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(6月速報)
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。
9月の市場開市は23日で、休市日数は7日となっている。
新学期が始まり、学校給食向けの仕入れが再開する時期である。また、下旬の23日は秋分の日で、彼岸の中日となることから、量販店の特売なども活発に行われる時期である。
秋に入り、スーパーなどの量販店は、季節感のあるきのこ類、土物類および根菜類の仕入れを増やすなど、秋らしさや新学期の弁当メニュー提案など、季節の変化を消費者に訴求しながら、目先を変えて商品を買ってもらおうとする。現実には、9月の野菜産地は北海道、東北および高冷地ものが中心である。夏秋の果菜類のピークはまだまだ続き、トマトやえだまめなどはますます味が充実する。
市場に目を向けると、上記の通り、まだまだ夏秋野菜の入荷が続き、北海道産、東北産および高冷地産の野菜が多く入荷されている。夏秋の産地を一年一作という視点で見ると、夏野菜本来の時期に入荷する、東北および北海道のピーマンの味は格別である。市場として、これら季節感のある野菜についても買参人である仲卸やバイヤーだけでなく、消費者などに対しても、ホームページ上などで紹介をしている。
大田市場では「地場野菜コーナー」が設置され、産地県内のみで流通するものが東京市場に並べられることにより、意欲的な小売商が仕入れ、消費者に商品として紹介している。このような取り組みは、市場が単なる物流センターではなく、いろいろな売り手である産地が、いろいろな地方野菜を紹介し、買い手である仲卸やバイヤーがそれを発見するという、マッチングの場としての機能である。特に、季節感のある伝統野菜としては、「大長なす(熊本産の長さ60センチ程度の長なす)」や「
生産者に目を転じると、8月の盆前後から9月の初めごろは、秋冬野菜の育苗および定植時期である。早いものは盆前後から定植作業が進んでいるが、苗半作というくらい、苗の良しあしで収穫が左右されることから、健苗作りに産地および生産者は懸命に取り組んでいる。しかし、育苗は、作り手の技術だけでなく、猛暑や台風などの雨風の影響を受けやすい。この時期の気象動向に大きく左右されることから、各産地とも気象の変化に敏感であるとともに、市場も産地気象について注視しているところである。また、関東では8月末から一斉に稲刈りが始まり、晴れの日は米に集中するなど、農家は多忙で、果菜類などの収穫や秋冬野菜の定植作業は後回しになりがちである。特に、秋雨が長く続くと、果菜類の入荷減はもちろん、秋冬野菜は大幅な作業遅れとなるため、秋冬期の市場入荷が、大幅に遅れる恐れもある。
需要を含めた状況で見ると、当初、今年の夏の気象について、長期予報ではエルニーニョによる冷夏で、夏もの商材は売りにくいことが予想されていた。しかし、7月に入り、平年並みの夏予想に切り替わった。そのような中、8月上旬前半の台風12号がらみで、高知県および徳島県に大雨の被害が出たが、これは、太平洋高気圧が東にずれた影響と解説されている。一方で関東地方は、高温注意情報が発令されるなど、地域によって気象が複雑化している。関東地方では、熱中症対策に関連する商材の売り込みが盛んであり、涼を呼ぶサラダ商材だけでなく、スタミナ料理としての炒めもの野菜の売り込みも盛んに行われている。
今後、残暑の終わりが早いか遅いかによって、果菜類のスムーズな切り替わりと秋冬野菜の入荷時期が大きく変わってくる。理想としては、9月上旬の半ばで平年並みに秋らしくなれば、その後の波乱は最小限に抑えられると思われる。8月後半に、寒気が本州付近に南下して雷雨が続けば、高冷地もののレタスの収量が減少し、9月初め頃の価格は、一時的に高騰の場面も予想される。また、関東などの秋冬野菜においては、は種および定植が計画の100%に届かないことも予想される。消費地での悪天候は、量販店への客足に影響があるため、需要の減退も想定される。
厳しい残暑が9月第2週目まで残る場合、東北産および北海道産の野菜も前進し、品薄となる時期が予想されるため、8月が入荷集中で安値となった場合、反動により高値になる可能性もある。さらに、きゅうりを中心に西日本への転送が多いことから、高値の崩れはなく、11月いっぱいしっかりとした価格展開が予想される。需要面では、残暑によるサラダ商材の売り込みなどもあり、量販店では、夏と秋が同居した販売提案も予想される。
トマトは、北海道産および東北産を中心に順調に入荷されている。盆前後に入荷が集中して安値となれば、9月上旬ごろに品薄になり、価格暴騰も予想される。これに対し、極端なピークもなく、なだらかな入荷状況となった場合、9月は平年並みかやや高めと予想される。また、きゅうりと同様に、西日本への転送も多くなることが予想される。
ばれいしょは、北海道産が本格化する時期だが、本年は、6月から7月が干ばつで推移し、7月下旬に入り、ようやくまとまった降雨があった。そのため、男爵を始めとして、前半は小ぶりなものの入荷が予想される。たまねぎは、府県産の品質が今一歩であったため、北海道産への期待が高まる。北見地区が本格化する10月以降は、量的に安定して価格も落ち着くことが予想される。しかし、9月までは中国産の食材を敬遠する動きが強いこともあり、国産への人気は、より高い見込みである。量販店では、前述の通り、9月第1週以降、季節感を重視した品ぞろえで消費者に訴求するとともに、学校給食からの注文も多くなり、引き続き価格は高値傾向となることも予想される。
葉茎菜類では、ほうれんそうが品質の良い北海道産および高冷地産が価格をけん引していくことから、やや高めと予想される。ねぎは、東北産の作付増大からやや安めと予想される。キャベツは、7月まで安値で推移したが、東北産も小玉傾向ながら、安定した入荷が予想されるため、引き続き9月以降も基本安めの状況続くと思われる。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)