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需給動向 1 (野菜情報 2014年7月号)


東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成26年5月)

野菜需給部 調査情報部


【概要】

 5月の天気は、中旬を中心に降雨量が多かったが、高気圧の影響で東日本を中心に日照時間が平年を上回った。気温は、南からの暖かい空気の影響で中下旬を中心に平年を上回った。
 同月の東京都中央卸売市場の入荷量は、多くの品目で大雪の影響から回復基調であったが、果菜類の一部品目で入荷量が少なくなったことから、全体では前年をやや下回った。価格は、安値であった前年はもちろん、平年で見てもを大きく上回った。
 同月の大阪市中央卸売市場の入荷量は、葉茎菜類などで前年を上回ったものの、土物類を中心に入荷量が伸びなかったことから、前年を下回った。価格は、安値で推移した前年を大きく上回った。

(1)気象概況

 月を通して日本付近を低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わったが、東・西日本を中心に高気圧に覆われて晴れる日が多かったことから、降水量は少なく、日照時間はかなり多い月となった。

 上旬は、低気圧と高気圧が数日の周期で通過したが、高気圧に覆われ晴れる日が多く、西日本日本海側の日照時間は、5月上旬としては統計を開始した1961年以降最も多い値となった。中旬は、上旬同様高気圧に覆われ晴れる日が多く、旬の前半は北・東日本で南から暖かい空気が入り北日本を中心に気温が平年を大幅に上回った。下旬は、天気は数日の周期で変わり、21日は低気圧が発達しながら本州南岸沿いを進み、東日本を中心に大雨となるところがあった。北日本では、低気圧や気圧の谷の影響を受ける日が多く、曇りや雨の日が多かった。旬の終わりは、北・東日本を中心に南から暖かい空気が入り、気温が平年を大幅に上回り全国的に最高気温が30度以上の真夏日を記録するなど、各地で5月の気温の最も高い値を更新した。

 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。


(2)東京都中央卸売市場

 5月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が13万9000トン、前年同月比95.3%、価格はキログラム当たり233円、同121.4%となった。

 野菜全体の入荷量は、関東、四国および九州産を主体に出回り、主産地においては、総体的には天候に恵まれ生育は順調となり、大雪の影響から回復基調であった。ほうれんそう、きゅうりなどの品目で入荷量が少なくなったことから、全体では前年同月をやや下回る入荷量となった。価格は、平年はもちろん、安値であった前年を大きく上回った。

 類別にみると、葉茎菜類の入荷量は、上旬は、キャベツで平年を下回ったが、それ以外は、平年並みもしくは平年を大幅に上回った。中旬は、すべての品目で平年を下回ったものの、下旬は、気温の上昇とともに適度な降雨もあり、平年を上回る入荷量で推移した。価格は、ほうれんそうおよびねぎで平年を上回ったものの、それ以外の品目は平年を下回って推移した。

 果菜類の入荷量は、上中旬は、なすが平年を下回る入荷量となったが、それ以外の品目は、おおむね平年並みもしくはやや上回る入荷量で推移し、下旬は、すべての品目で平年を上回る入荷量で推移した。きゅうりは、大雪の影響で関東主産地からの入荷量が少ない中、西南暖地産が関東産の減少分をカバーしたことで、平年の1割弱程度の減少にとどまった。価格は、きゅうり、なすが月を通して平年を上回り、トマトおよびピーマンは、平年並みもしくは平年をやや下回って推移した。

 根菜類の入荷量は、中旬は、平年を下回る入荷量となったが、下旬は、平年を上回る入荷量で推移した。価格は、だいこんは月を通して平年を下回る水準となり、にんじんは上中旬で平年を下回ったものの、下旬は平年を上回って推移した。

 土物類の入荷量は、ばれいしょは、月を通して平年並みもしくは平年を大きく上回る入荷量で推移し、たまねぎおよびさといもは、月を通して大幅に平年を下回る入荷量で推移した。価格は、ばれいしょが月を通して平年を下回って推移したが、さといもおよびたまねぎは、月を通して平年を大幅に上回って推移した。

(3)5月の値動きで注目される品目

 埼玉産の入荷ピークが過ぎたねぎと、曇雨天の影響で収穫が進まなかったたまねぎは、特に強めに推移した(図1、2)。また、前年の入荷量が多かったほうれんそうおよびトマトと、2月の大雪の影響が残るきゅうりは、下げ基調ではあったが、月を通して強めに推移した(図3、4、5)。

  なお、品目別の詳細については以下の通り。

東京都中央卸売市場の動向(5月速報)

指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

農林水産省「青果物卸売市場調査」

注  :

平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。

(4)大阪市中央卸売市場

 5月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格の動向は、入荷量が4万255トン、前年同月比98.0%、価格は、キログラム当たり211円、同120.6%であった。

 入荷量は、産地からの順調な入荷となった根菜類のにんじん、葉茎菜類のはくさい、レタスなどが前年を上回ったが、生育不良で推移した葉茎菜のほうれんそう、果菜類のきゅうり、土物類のさといもなどで前年を大きく下回ったことから、野菜全体では前年を下回った。

 価格は、品薄から前年の2倍強で推移した土物類のさといもはもちろん、青果物の消費の落ち込みが見込みより少なかったことで、多くの品目で前年を上回って推移したことから、野菜全体では前年を大きく上回った。

 類別に見ると、葉茎菜類の入荷量は、生育不良でほうれんそうの入荷量が前年を大きく下回ったものの、レタスおよびはくさいを中心に、多くの品目で順調な生育から前年を上回った。価格は、前年の価格が低迷していたことから、入荷量の多かったレタスは前年を上回り、そのほかは前年を大きく上回った。

 果菜類の入荷量は、生育不良できゅうりの入荷量が前年を大きく下回ったものの、気温および日照に恵まれたことから、ピーマンを中心に入荷が回復し、前年並みとなった。価格は、入荷量が伸びたピーマンは軟調となり前年を下回ったが、多くの品目で前年を上回った。

 根菜類の入荷量は、入荷が伸びなかっただいこんが前年を下回り、順調な入荷となったにんじんは前年を上回った。価格は、入荷量の少なかっただいこんが前年を大きく上回り、入荷量が伸びたにんじんは前年を下回った。

 土物類の入荷量は、降雨で掘り取りが進まなかったさといもが前年を大きく下回ったほか、すべての品目が前年を下回った。価格は、入荷量の少なさからすべての品目で前年を大きく上回った。

 なお、品目別の詳細は以下の通り。

(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美) 

大阪市中央卸売市場の動向(5月速報)


指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

農林水産省青果物卸売市場調査

 注:

平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。

(5)市場担当者から

①7月の市場開市および休市

 7月の市場開市は24日で、休市日数は7日となっている。
 東京などの関東地方の一部では中旬にお盆となること、各学校が下旬から夏休みに入ることなど、学校給食仕向けの引きが減少し、量販店などの一般家庭仕向けの引きが高まるなど、市場の環境に変化のある月となっている。

②需要を中心とした7月の見通し

 本年の梅雨も、晴天日の猛暑もあれば、終盤の寒の戻りもあるといった、大きな寒暖の差が予想されるとともに、梅雨前線の動きによっては、集中豪雨も危惧される。エルニーニョが本格化すると北冷西暑となるため、7月および8月は、主産地の東北産の入荷が減少するため、高めの相場展開が予想される。

 一方、家庭においては、下旬から子ども達が夏休みに入るため、家庭での食事回数が増える時期を迎える。夏を乗り切るためにも、野菜料理を主体にして体を冷やすとか、汗で流れるミネラルを、野菜および果物で補給してほしいところである。また、このような家族が食卓を囲む機会が増える時期だからこそ、家族そろっての食事の重要性を見直していただきたいものである。

 季節商材の「とうもろこし」は、千葉および茨城産の露地ものが主力になるが、中心の「ゴールド・ラッシュ」「味来」とも、品質は良好である。とうもろこしは、鮮度劣化が早いため、購入後は早めに調理していただきたい。今年も例年と同様、市場入荷が急増する日が何日か続くことが予想されるため、量販店においても1本100円などの特売を企画し、早めに売り切っていただきたいところである。なお、通常の売価は、150円前後と予想される。

 えだまめは、千葉産が終盤を迎え、群馬の高冷地ものが本格化してくるが、例年通りの梅雨明けになれば生育が順調に進み、スムーズな販売が予想される。空梅雨の年は、味が落ちて動きが悪くなりがちだが、平年並みに降雨があれば、関東平野産の終盤ものも問題なく、高冷地ものの販売に良いイメージを残しながら産地リレーができるであろう。

 トマトは、東北および北海道産の本格な入荷時期を迎える。梅雨入り直前の6月始めまで、産地では晴天と高温が続き、当初の生育遅れを取り戻してきた。この高温で関東産が、6月に入り一気に入荷したことからピークとなり、市場価格は低迷の時期を迎えた。今年は5月まで長く高値が続き、6月に入って低迷の時期を迎えたが、量販店では値ごろ感のある売価設定で量を動かしてほしいところである。

 きゅうりも、6月に入り入荷急増から価格を下げた。この入荷急増から、関東や西南暖地の切りあがりが早まり、後続の東北産への切り替わり時期は端境期に入り、7月には、やや高値となることが予想される。

 ほうれんそうは、関東産が降雪による不作傾向が改善されないまま切りあがり、前半は入荷が少なく高値だが、後半は業務需要が落ち着くことから、扱いやすい価格展開となることが予想される。

 キャベツは、6月前半には茨城産が急増し、千葉および神奈川産の終盤ものと重なり、価格が低迷した。後半には群馬産の高冷地ものの入荷が始まるが、関東平野の各県産の切りあがりが予想外に早く、7月にかけてやや高めに推移することが予想される。

 ばれいしょおよびたまねぎは、中間の関東産の時期に入るが、関東産は晩霜がなかったことから、ばれいしょは平年を上回る入荷量と予想される。たまねぎは3月および4月に菜種梅雨がなく、関東産は順調に入荷されることが予想される。兵庫産も平年並みであり、現状維持からやや下げながらの相場展開と予想される。

 7月の関東および東北産の夏メロンは、6月初めまでの好天が続き、結実が問題ないことから、千葉、茨城および山形産は前年を上回る入荷量と予想される。メロンは、作付けの減少が続いているが、担い手となる生産者の技術が高いことから、高品質のメロンが引き続き9月まで入荷されるであろう。高品質で潤沢な入荷が予想されることから、家庭でおいしいメロンを手ごろに購入できると思われる。

(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)


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