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需給動向 1 (野菜情報 2014年6月号)


東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成26年4月)

野菜需給部 調査情報部


【概要】

 4月の天気は周期的に変化したため、全国的に降水量が多かったが、上中旬を中心に日照時間は平均を上回った。気温は、上旬が低めに推移したものの、中旬以降は、平年並みから高めに推移した。
 同月の東京都中央卸売市場の入荷量は、2月の大雪の影響が薄れ、回復傾向になったが、たまねぎなど一部品目の入荷が少なかったことから、前年同月をやや下回った。価格は、安値だった前年同月を上回った。
 同月の大阪市中央卸売市場の入荷量は、多くの品目が端境期となったことから、前年同月を下回った。価格は、入荷量が大幅に減少したさといもなどを中心に高値となったことから、前年同月を上回った。

(1)気象概況

 上旬は高気圧と低気圧が数日の周期で通過し、旬の半ばには北日本の太平洋側を中心に大雪や大雨となった。低気圧の通過後は、日本付近に強い寒気が流れ込んだ影響で北日本から西日本にかけて気温が平年を下回った。中旬は、高気圧と低気圧が交互に通過したが、低気圧の影響による降雨は西日本が中心で、その他の地域では高気圧に覆われ、晴れる日が多かった。北日本では、北から寒気が流れ込んだ影響から気温が低く推移した。下旬は、前半は本州南岸を低気圧が通過し、東・西日本の太平洋側を中心に雨となった。その後は、東日本から西日本にかけて広く高気圧に覆われ、北日本では南から暖かい空気が流れ込んだ影響から北日本を中心に気温がかなり高く推移した。後半は低気圧や前線に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響から東・西日本太平洋側を中心に大雨となり、局地的ではあるが降り始めからの総降水量が300ミリを超えた地点もあった。日照時間では全国的に平年を上回り、特に北日本と東日本の日本海側ではかなり多く、4月としては統計を開始した1946年以降で最も多い日照時間となった。

 旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。


(2)東京都中央卸売市場

 4月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が13万6000トン、前年同月比95.6%、価格はキログラム当たり227円、同106.8%となった。

 野菜全体の入荷量は、北海道、関東、四国および九州ものが主体となる。2月の大雪の影響も薄れ、回復傾向となったものの、たまねぎ、ねぎ、きゅうりなど一部の品目で少ない入荷量となったことから、前年同月をやや下回る入荷量となった。一方、価格は安値だった前年同月をやや上回る水準で推移した。

 類別にみると、葉茎菜類の入荷量は、上旬ではすべての品目で平年を上回り、特にはくさい、ほうれんそうが平年を大幅に上回って推移した。中旬はねぎを除く品目で平年を下回る入荷量となった。下旬はすべての品目で平年を上回り、特にはくさい、キャベツが平年を大幅に上回る入荷量で推移した。価格は、ほうれんそうは平年を大きく上回ったものの、それ以外の品目は平年を下回って推移した。なお、需要面についてみると、学校給食の再開とともに、キャベツやほうれんそうなどの引きが強くみられた。

 果菜類の入荷量は、上旬はすべての品目で平年並みもしくは平年を上回った。中旬ではピーマン以外の品目で平年を下回った。下旬ではすべての品目で平年を大きく上回る入荷量で推移した。価格は、きゅうりは月を通して平年を上回ったものの、その他の品目は月を通して平年並みもしくは平年を大きく下回って推移した。なお、需要面についてみると、1個売りや袋売りなど消費者のニーズに合わせた売り方とともに下位等級品を活用した値ごろ感のある売り方も見受けられた。

 根菜類の入荷量は、だいこん、にんじんが月を通して平年を上回る入荷量となり、特に下旬は平年を大幅に上回る入荷量となった。価格は月を通して平年を下回って推移した。

 土物類の入荷量は、ばれいしょが月を通して平年を上回る入荷量となり、たまねぎは上中旬で平年を下回ったものの、下旬は平年を大きく上回って推移した。さといもは上中旬で平年を下回る入荷量となったものの、下旬は平年を上回って推移した。価格は、ばれいしょが月を通して平年を下回って推移したが、さといも、たまねぎは月を通して平年を大幅に上回って推移した。なお、需要面についてみると、たまねぎは、北海道産の貯蔵たまねぎと佐賀県産等の新たまねぎの併売となっており、双方とも小玉傾向であった。都市部は、核家族化により小玉が好まれる傾向にあり、かえって消費者の購入意欲が高まった。

(3)4月の値動きで注目される品目

 2月の降雪の影響が残ったほうれんそうは、平年を大幅に上回って推移した(図1)。主産地の愛知産が下旬から大幅に入荷量が減少したキャベツと、中旬以降、気温の上昇とともに需要が伸びたレタスは、平年を上回って推移した(図2、3)。
3月の価格からの高値疲れと、生育が回復したはくさいは、安値で推移した(図4)。

 なお、品目別の詳細については以下の通り。

東京都中央卸売市場の動向(4月速報)

指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

農林水産省「青果物卸売市場調査」

注  :

平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。

(4)大阪市中央卸売市場

 4月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格の動向は、入荷量が3万8891トン、前年同月比93.6%、価格は、キログラム当たり206円、同108.4%であった。

 入荷量は、多くの品目で端境期となる中、生育が良好であった葉茎菜のレタスやねぎなどが前年を上回ったが、土物類のさといもなどで前年を大きく下回ったことから、野菜全体では前年を下回った。

 価格は、消費税増税後の量販店等における引きが鈍くなった中、レタスなどは、入荷量が増加により前年を下回ったが、国内産が大幅に減少したさといもや、生育が悪く小玉傾向であったたまねぎなどで前年を大きく上回ったため、野菜全体では前年を上回った。

 類別に見ると、葉茎菜類の入荷量は、生育が良好であったレタスおよびねぎが前年を上回ったが、生育不良により出荷が出遅れたキャベツを中心に、前年を下回った。価格は、引き合いの弱さから多くの品目で前年を下回った。

 果菜類の入荷量は、ピーマンが主産地の増量で前年を上回ったものの、多くの品目で前年を下回った。価格は、きゅうりが入荷量の減少により前年を下回ったものの、多くの品目で中下旬の増量から弱含みとなったため、前年を下回った。

 根菜類の入荷量は、だいこんが3月の前進出荷の影響などにより前年を下回り、にんじんが天候に恵まれたことから前年を上回った。価格は、入荷量が少なかっただいこんは前年を大きく上回り、入荷量の多かったにんじんは前年を大きく下回った。

 土物類の入荷量は、残量が極めて少なかったことから全品目で前年を上回った。特に、さといもは、輸入ものの入荷も少なかったことから、前年を大きく上回った。価格は、入荷量が少なかったことと、新ものの特売需要から、前年を大きく上回った。

 なお、品目別の詳細は次の通り。

(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美) 

大阪市中央卸売市場の動向(4月速報)


指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

農林水産省青果物卸売市場調査

 注:

平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。

(5)市場担当者から

①6月の市場開市および休市

 6月の市場開市は21日で、休市日数は9日となっている。6月は、日数が30日と少ないが、休市日数は9日で、5月よりも1日多くなる。

②需要を中心とした6月の見通し

 6月は露地栽培野菜が平野から高原へ、また関東産から東北産へと産地が移動する時期を迎える。前年は3、4月の低温の後5、6月に晴天が続き、各野菜の動きが例年と全く違った展開になった。きゅうりは、越冬作が早く切りあがり少なくなって高く、トマトは、遅れた分が集中して安くなった。量的に入荷の中心となるキャベツは、千葉産が早めに少なくなり、群馬産はやや遅れて価格が堅調に推移した。茨城産のメロンや千葉産のすいかも、期待された程多くなかった。通常、空梅雨の年は全国的に出回りが多く相場が低迷しやすいが、東北産も出遅れる等、価格の大きな崩れはなかった。

 今年は、2月における2度の大雪の後、3~5月前半まで晴天日が多かったことから、各産地とも生育が回復し、当初心配された遅れによる谷間はないと見られている。通常のタイミングで梅雨入りとなれば、5月に続いて平年並みかやや高めと予想される。

 6月に入り季節商材のうめがピークとなるが、主力の和歌山産は平年作を予想している。鳥取産のらっきょうもピークとなるが、前年を上回ると見込みである。砂丘地のものは漬けあがりがしっかりしている。えだまめは、埼玉産および千葉産のハウスものがピークとなるが、遅れ気味から前半は高めと予想される。新しょうががピークなってくるが、しょうがブームでもあることから、食べ方を提案しながらの販売が望ましい。

 スイートコーンは、山梨産に加えて千葉産および茨城産のハウスものが始まり、多くの量販店にも並ぶようになり、9月の北海道産までの4カ月間の勝負になる。特に、この時期のハウスものは味に外れがなく、シーズン初めだけに利益を減らしても買いやすい価格での販売が望ましい。シーズンの最初に購入したものの味が良いと、その後も繰り返し買ってもらえるようになることから、4カ月間店頭に飾る商材でなく、動かす商材と捉えるべきである。

 沖縄産および鹿児島産から始まったかぼちゃも、神奈川産および茨城産になっていよいよ本格的な栗かぼちゃとなるが、これらは、1株1果といった仕立ての「こだわり品」のため、市場価格は高くなる。栗かぼちゃは強粉質であること、輸入品と全く品質が違うことをアナウンスしながらの販売をお願いしたい。香川産および和歌山産の新にんにく、沖縄産のおくらもピークとなる。ズッキーニは、宮崎産から長野産へ主力産地が切り替わる。

 市場が認めるブランド野菜がこの時期入荷する。「きぬかつぎ」に利用される静岡産の「石川早生」、同 三方原 みかたがはら の「男爵」、同三島の「メークイン」で、いずれも高価格で取引される。各県各産地とも、市場でブランドとして認められるように 切磋琢磨 せっさたくま が続くが、上記のブランド野菜は、特別マーケティングに趣向を凝らさなくとも、明らかに味に違いがあるからブランドと言える。

 主要野菜を見ると、群馬産のキャベツは、若干降雪の影響が残り、潤沢とまで行かず、価格はしっかりすることが予想される。レタスは、長野産および群馬産の準高冷地ものが中心になるが、5月に続き潤沢なことから、引き続き買い易い価格での販売が予想される。果菜類ではトマトは昨年のような集中がなく、価格は、昨年より高めを予想している。一時的に各産地の出荷が重なって下げる時期があるため、店側としても状況を告知して価格を下げて売ることで、一層の消費拡大につながる。特に夏場を迎えるために、店としても商品を動かしたい思惑から、これらの取り組みに期待したい。 

(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)


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