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需給動向 1 (野菜情報 2014年5月号)


東京都・大阪市中央卸売市場の需給動向(平成26年3月)

野菜需給部 調査情報部


【概要】

 3月の天気は短い周期で変化し、全国的に降水量が多かった。このため、上中旬を中心に日照時間は平年並みから平年を下回った。気温は、上中旬が冬型の気圧配置であったため平年並みから平年を下回り、下旬以降は暖かく湿った空気が流れ込んだため、平年を上回った。
 同月の東京都中央卸売市場の入荷量は、2月の大雪等の影響から、関東産地を中心とした一部の品目で減少したため、前年同月をやや下回った。このため、価格は、安値だった前年同月を大きく上回る水準で推移した。
 同月の大阪市中央卸売市場の入荷量は、生育が回復した九州産地を中心とした一部の品目で増加したものの、野菜全体では前年を下回った。価格は、東京同様、安値だった前年同月を大きく上回る水準で推移した。

(1)気象概況

 3月は、上旬は低気圧が数日の周期で日本付近を通過し、通過後は冬型の気圧配置となった。特に後半は冬型の気圧配置が強まり、強い寒気が流れ込んだため、東・西日本日本海側の山沿いや北日本では大雪となったところがあった。中旬は、低気圧と高気圧が日本付近を交互に通過したことから、天気は短い周期で変化した。また、南から暖かく湿った空気が流れ込んだため、大気の状態が不安定となり、北日本から西日本にかけては降水量が多く、大雨や北日本太平洋側を中心に大雪となったところもあった。特に、東日本日本海側では降水量が平年比の236パーセントと1961 年の統計開始以降3月中旬としては最も多かった。下旬は、前半は冬型の気圧配置が強まったことから、北日本太平洋側では暴風雪となったところもあった。その後は、本州付近を高気圧と低気圧が交互に通過したことから、北日本から西日本にかけての天気は数日の周期で変わった。また、南から暖かく湿った空気が流れ込んだため、北日本から西日本にかけての気温は平年を大幅に上回った。また、東・西日本日本海側の降水量はかなり多く、特に、東日本日本海側では平年比の189パーセントと1961年の統計開始以降3月下旬としては最も多かった。

  旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。


(2)東京都中央卸売市場

 3月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が13万1000トン、前年同月比97.7パーセント、価格はキログラム当たり234円、同113.5パーセントとなった。

 野菜全体の入荷量は、北海道、関東、四国および九州ものが主体であった。2月の2度にわたる大雪の影響から、一部の品目で、関東産地を中心に少ない入荷量となったことから、前年同月をやや下回った。一方、価格は安値だった前年同月を大きく上回る水準で推移した。

 類別に見ると、葉茎菜類の入荷量は、上旬ではほうれんそうが平年を大幅に下回ったものの、それ以外の品目では平年並みもしくは平年を上回って推移した。中旬はすべての品目で平年を上回る入荷量となったが、下旬ははくさいおよびねぎが平年を下回り、それ以外の品目では平年並みもしくは平年を上回って推移した。価格は、はくさいおよびレタスが月を通して平年を下回った一方で、ねぎは月を通して平年を大きく上回って推移した。なお、需要面について見ると、サラダ商材であるレタスは、気温の上昇とともにサラダ需要が回復した。

 果菜類の入荷量は、ピーマンが上旬で平年を下回ったものの、それ以外の品目では月を通して平年並みもしくは平年を上回った。価格は、きゅうりは上中旬で平年を大きく下回ったが、下旬には平年並みの水準となった。それ以外の品目では、平年を下回って推移した。なお、需要面について見ると、きゅうりおよびトマトは、下旬は、気温が高めに推移したことから、外食や家庭でのサラダ需要が多く見受けられた。

 根菜類の入荷量は、だいこんおよびにんじんは月を通して平年を上回り、特に中旬のだいこんは、平年を大幅に上回った。価格は、だいこんが平年を下回って推移したものの、にんじんは月を通して平年並みもしくは平年を上回って推移した。なお、需要面について見ると、大雪の影響が多少残ったものの、食費の節約や春休みにより給食需要がなかったことなどにより、大幅な高値とはならなかった。

 土物類の入荷量は、太宗を占める北海道産が少なかったことから、全体的に少なめとなり、ばれいしょは上中旬で平年を上回ったものの、下旬は平年をやや下回った。さといもは、月を通して平年を大幅に下回った。価格は、ばれいしょは月を通して平年を下回って推移したが、さといもおよびたまねぎは月を通して平年を大幅に上回って推移した。なお、需要面について見ると、ばれいしょおよびたまねぎは、学校給食等の集団給食から安定した引き合いとなった。下旬は、春休みにより学校給食が休止となったが、業務筋等の引き合いが安定していたことや、早掘りばれいしょや新たまねぎといった九州産の新ものが消費を伸ばしたことから、安定した販売となった。

(3)3月の値動きで注目される品目

 2月の大雪等の影響から、関東産が入荷の太宗を占める、はくさい、ねぎ、ほうれんそうの価格が、特に強めに推移した(図1~3)。一方、本格的な出荷となったレタスと、大雪の影響の少なかっただいこんは、安値で推移した(図4、5)。

 なお、品目別の詳細については以下の通り。

東京都中央卸売市場の動向(3月速報)

指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

農林水産省「青果物卸売市場調査」

注  :

平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。

(4)大阪市中央卸売市場

 3月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格の動向は、入荷量が3万7377トン、前年同月比97.9パーセント、価格は、キログラム当たり216円、同114.9パーセントであった。

 入荷量は、生育が回復したトマトが前年を上回ったが、土物類のさといもなどで前年を大きく下回ったことから、野菜全体では前年を下回った。

 価格は、秋冬ものと春ものが重なったにんじんなどが、入荷量の増加から前年を下回ったが、国内産が大幅に減少したさといもや、掘り取り作業が進まなかったばれいしょなどが、前年を大きく上回ったため、野菜全体では前年を大きく上回った。

 類別に見ると、葉茎菜類の入荷量は、生育の回復と、高値基調からの集約出荷が進んだねぎは、前年を上回ったが、気温の低下により入荷量が減少したレタスなどは前年を下回った。価格は、葉ものを中心に軟調に推移した影響から、レタスおよびはくさいが前年を下回ったが、ねぎなどの前年が安値で推移した品目は、前年を上回った。

 果菜類の入荷量は、生育が回復したトマトは、前年を上回ったが、日照不足の影響を受けたきゅうりは、前年を下回った。価格は、入荷量が大幅に伸びたトマトは前年を下回ったが、入荷量の少なかったきゅうりなどは、前年を上回った。

 根菜類の入荷量は、秋冬ものと春ものが重なったにんじんは前年を上回ったが、産地の入荷量減少が響いただいこんは、前年を下回った。価格は、入荷量が減少しただいこんは前年を上回ったが、入荷量が多かったにんじんは前年を下回った。

 土物類の入荷量は、価格高により集約出荷となったばれいしょは前年を上回ったが、他の品目は前年を下回った。価格は、入荷量が伸びなかったさといもを中心に、すべての品目で前年を上回った。

 なお、品目別の詳細は次の通り。

(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美) 

大阪市中央卸売市場の動向(3月速報)

指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

農林水産省青果物卸売市場調査

 注:

平年とは、過去5カ年(平成21~25年)の旬別価格の平均値である。

(5)市場担当者から

①5月の市場開市および休市

 5月の市場開市は23日で、休市日数は8日となっている。上旬はゴールデンウィークで連休となるため、最終日の6日は臨時開市となっている。

②需要を中心とした5月の見通し

 豆野菜は引き続きピークであるが、大相撲の夏場所が千秋楽を迎える下旬には、そらまめからえだまめに需要の中心がシフトする。量販店等としては、夏の到来をお客様にお知らせしたいところである。東京は、ちょうど町会の祭りシーズンで、ビールのつまみ需要などにより、えだまめの需要が高まる。今年は、関東のハウスものの始まりが遅く、少なめと予想されるため、高めの状況が続く見込みである。スナップえんどうは、愛知産がピークの後半となり、福島産の出荷が始まる。消費を促すためにも、4月の少量パックから、食べ応えのあるサイズの販売を期待したい。

 5月には山菜類が終盤を迎え、季節商材の出回り時期を迎える。らっきょうは6月がピークだが、ゴールデンウィーク明けから鹿児島産が始まり、月末には鳥取産もピークを迎える。作業性や漬け上がりの歯応えなどで、鳥取産の価格優位性は揺るがないと思われる。静岡産の葉しょうがは、夏の到来を香りで告げてくれる。葉っぱは特別食べるものでないが、香りで食欲を高めてくれる。さらに新しょうがも本格化するなど、野菜の漬けものを趣味とする人にとっては、忙しいシーズンの到来である。

 レタスは、準高冷地ものがピークとなるが、気温次第では、一気に関東産が終盤に向かう可能性もある。高冷地ものは、定植のズレから5月は例年ほど多くなく、高値傾向と予想される。関東のブロッコリーも苗不足から、出回り量は前年の80~90パーセント程度と少なく予想される。東京市場は、西の産地からも入荷するため大きなマイナスにはならないが、価格はその分高くなると予想される。

 5月の気温は、時に盛夏のような高温になって、果菜類全般の生育は停滞傾向となりやすい。西南暖地は夜温が高くなると、なす等の生育が停滞傾向となる。関東産は雪害の影響から全般的に遅れが予想される。特にきゅうりは、関東産の無加温ものが大幅に少ないことから、安定した供給のためにも、東北産の早まりを期待したいところだ。価格が高く推移しすぎると消費者が買い控えることから、価格の暴騰を警戒したいところだ。トマトは、九州産の生育が早まっており、関東産との競合による低迷はないと予想される。気温が上がることにより、サラダ商材である果菜類は売れ筋アイテムとなるため、安定出荷に期待したいところである。
 重量野菜では、キャベツは新ものとなるが、高原ものの遅れが予想される中、千葉産と高原ものとのはざまに出荷される、茨城産の動向が気になるところだ。高原もののスタートが遅れる年は、終盤まで価格高で推移する確率が高まる。たまねぎは、佐賀産のピークとなるが、3月の天候は大きな乱れがなかったことから、平年作と予想される。ばれいしょは、長崎産が今のところ平年作で、出回りについては、梅雨が早まらない限り順調と予想される。

 一方、果実的野菜では、春メロンがピークを迎える。5月前半は熊本産が中心で、関東産の生育は問題ないが、ゴールデンウィーク中は少なく、ゴールデンウィーク明け頃からピークになってくることが予想される。すいかは、千葉産のハウスものの出荷開始が、5月下旬と平年よりやや遅いことから、4月に続き、熊本産が中心となることが予想される。いちごは、東北産が本格化してくるが、気温が高ければ九州産は切りあがり早まると予想される。2月の降雪の影響が大きく残る関東産は、5月にやや少なくなる心配がある。

(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)


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