野菜需給部 調査情報部
12月は、西日本を中心に寒気が流れ込んだため、東日本以西では気温の低い日が多かったが、北日本は寒気の南下が平年より弱かったことから、気温の高い日が多かった。降水量は、冬型の気圧配置となる日が多かったことと、周期的に低気圧が本州付近を通過したことから、東日本の太平洋側を除き多かった。
旬ごとの概況をみると、上旬は弱い冬型の気圧配置となる日が多かったことから、北日本から西日本にかけての日本海側では、雨または雪の日が多かった一方で、太平洋側では、晴れの日が続いた。中旬以降は、冬型の気圧配置となる日が多く、北日本と東・西日本の日本海側では、曇りや雨または雪の日が多かった一方で、東・西日本の太平洋側では晴れの日が多かった。なお、中旬の前半においては、強い寒気が入り込んだため、日本海側の山沿いでは大雪となり、旬の後半は東・西日本の太平洋側の南岸沿いを動きの遅い低気圧が通過した影響で、曇りや雨の日があった。
旬別の平均気温、降水量、日照時間は以下の通り。
12月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量および価格は、入荷量が13万2000トン、前年同月比96.4パーセント、価格はキログラム当たり260円、同106.6パーセントとなった。
野菜全体の入荷量は、関東産および西南暖地の四国産、九州産を主体に出回り、だいこん、はくさいなど一部品目で前年を上回ったものの、キャベツ、トマト、なすなどにおいて、秋口の相次ぐ台風と曇雨天などの天候不順の影響から前年同月を下回ったため、月全体では前年同月をやや下回った。価格は、入荷量の減少に伴い、前年を大きく上回る品目が多く見られ、前年を上回って推移した。
類別にみると、葉茎菜類の入荷量は、上中旬はキャベツ、ほうれんそう、レタスは平年を下回ったものの、その他の品目では、平年並みもしくは平年を上回る入荷量となり、下旬は、はくさい、キャベツで平年並みであったものの、その他の品目では、平年を下回る入荷量となった。価格は、はくさい、キャベツ、レタスで月を通して平年を大幅に上回る価格で推移した。なお、需要面についてみると、レタスは、12月下旬からクリスマスなどの年末需要でオードブル等の商材として中食等が大量に使用するため、カット野菜や加工業者などの業務筋等による荷動きが活発になった。
果菜類は、ピーマンが中旬が平年を上回る入荷量に対し、トマトは月を通して平年を下回る入荷量であった。きゅうりは、上、中旬でおおむね平年並み若しくは平年を上回る入荷量であった。なすは、月を通して平年を大幅に下回る入荷量となった。価格は、なす、トマト、ピーマンは月を通して平年を上回り、きゅうりは上中旬は平年を下回って推移した。
根菜類の入荷量は、だいこんは月を通して平年を上回り、にんじんは上旬が平年を上回ったものの、下旬は平年を下回って推移した。価格は、月を通して平年を大幅に上回って推移した。なお、需要面では、鍋需要の商材として量販店などで陳列を行っているものの、現状の価格が高値基調であることから、安値時のような勢いはなかった。
土物類は、全般的に平年を下回る入荷量となった。価格は、入荷量が少なかったことに伴い、全般的に平年を上回って推移し、特にたまねぎにおいては、平年を大幅に上回って推移した。なお、需要面では、この時期になると量販店でおせち商材の売り込みが行われるため、さといもでおせち需要に合わせた出荷が行われ、入荷量が平年を大きく上回る中で、価格も平年を上回った。
なお、品目別の詳細については、以下の通り。
東京都中央卸売市場の動向(12月速報)
注: 平年比は過去5ヵ年平均との比較
資料: 東京青果物情報センター「青果物流通年報・月報・旬報」
指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省「青果物卸売市場調査」 注 :
平年とは、過去5カ年(平成20~24年)の旬別価格の平均値である。
12月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量および価格の動向は、入荷量が3万7692トン、前年同月比95.6パーセント、価格は、キログラム当たり252円、同113.0パーセントであった。
入荷量は、果菜類のきゅうりを中心に前年を上回ったが、葉茎菜類のキャベツや土物類のさといもなどを中心に前年を下回ったことから、野菜全体では前年を下回った。
価格は、果菜類のきゅうりが、順調な入荷となったことから前年を下回ったが、多くの品目で、前年が安値で推移したことに加え、11月に引き続き、入荷が伸びなかったさといもなどが、前年を大きく上回ったことから、野菜全体では前年を上回った。
類別に見ると、葉茎菜類の入荷量は、静岡、奈良および香川産の入荷が順調であったねぎは、前年を上回ったが、その他の品目については、生育不良と生育遅れなどにより、入荷量は前年を下回った。価格は、入荷量が伸びたリーフレタスおよびサニーレタスの安値に影響されたレタスが、前年をかなり下回ったものの、その他の品目は、入荷量が伸びなかったことと、前年が安値で推移したことから、前年を上回った。
果菜類の入荷量は、端境期と小玉傾向などから、なすが前年を下回ったが、その他の品目は、順調な入荷となったことから、前年を上回った。価格は、各品目が前年を上回った中、入荷量が大きく伸びたきゅうりについては、前年をかなり下回った。
根菜類の入荷量は、順調な入荷となっただいこんは、前年を上回ったが、にんじんは、関東産の入荷が伸びなかったことから、前年を下回った。
土物類の入荷量は、各品目で生育不良や小玉傾向となり、前年を大きく下回った。価格は、入荷量が伸びなかったことから、前年を大きく上回った。
なお、品目別の詳細については次の通り。
(執筆者:東果大阪株式会社 福重 博美)
大阪市中央卸売市場の動向(12月速報)
資料:農林水産省青果物卸売市場調査
注:平年比は過去5カ年平均との比較
指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場)
※クリックすると拡大します。
(単位:円/kg)
資料:
農林水産省青果物卸売市場調査
注:
平年とは、過去5カ年(平成20~24年)の旬別価格の平均値である。
①2月の市場開市および休市
2月は、1年のうちで月の日数が最も少なく、市場開市日数も、もっとも少ない20日となっている。休市日数は8日となっている。
②需要を中心とした2月の見通し
11月および12月の野菜の価格は、葉茎菜中心に平年を上回る高値となった。この高値の遠因は昨秋の定植時期の台風であり、さらに、その前の高温干ばつによるものである。果菜類の生産者は、加温コストの一層の高まりで、収益が圧縮されて苦しい状況が続いている。一方、消費地サイドでの業務納入の青果店にとっては、逆ざやとなるなど仕入れの消費者の負担が大きくなった。引き続き高値傾向で推移するであろうが、消費地の都合で年明け1月に、ある意味「リセッション」と言える一時下げの場面があると見るのが妥当である。
この冬季の気象について、暖冬ではなく、平年並の気象展開となっている。周期的に降雨日がくるものの、総じて西高東低の気圧配置から晴天が長く続いている。寒さを健康で乗り切るには野菜を食することが肝要であることを、家庭の主婦ならば心得ているはずである。厳冬になればなるほど、露地栽培の葉茎菜類は生育に時間がかかることから、3月まで価格は堅調に推移すると思われる。また、ほうれんそうやキャベツ等は内容が充実することにより、甘みなど、味が良くなることから購入の頻度は高まり、相場は堅調にする。
さらに、2月および3月は、受験シーズンであり人の移動も多くなるが、人が多くなる東京市場では、野菜価格の高まる確率が高い。ホテル等の稼働率が上がり、また決算期における会合などの業務需要がけん引すれば、野菜の価格高騰といった場面もあると思われる。昨年の年明けのレタスの高騰は、台湾産が不作で、外食産業が市場仕入れに回ったために1ケース5,000~6,000円になった。これは、一般の量販店ならば、大きく原価割れするため、仕入れは長続きしないが、業務では欠品ができないため、このような高騰市況でも継続した仕入れを行わざるを得ないためである。
2月といえば、恵方巻きで使用されているきゅうりがトピックとしてあげられる。昨年のきゅうりは、1月に高騰し、その後、暖候期の価格は、長く低迷した。今年は、昨年と逆に、1月の入りは安めとなったが、節分前の恵方巻き需要では、価格は昨年よりも高いと予想している。前年の12月前半に多く出て、その後のなり疲れが続くと予想していることによる。
(執筆者:東京青果株式会社 加藤 宏一)