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需給動向


中国の品目別野菜輸出・価格動向(2009年7月)
~ 揺れ動く輸出先 ~

調査情報部



品目別野菜輸出状況

1.たまねぎ ~主要輸出先国は増加も他国向けが大幅に減少~

 7月の輸出量は、前年同月比91%の56,315トンであった。主要輸出先国の日本向けの輸出量が同110%の15,244トン、ベトナム向けは同120%の13,754トン、ロシア向けは同117%の12,289トンと増加したが、マレーシア向け輸出量が同66%の3,525トン、フィリピン向けは同71%の3,284トン、モンゴル向けは同62%の1,770トンと大幅に減少したことが全体の輸出量の減少につながった。

 7月の輸出価格は、同109%のキログラム当たり25円であった。

 1月~7月の累計の輸出量は、前年同期比111%と増加し、輸出価格は同113%のキログラム当たり27円と上昇した。

表1 中国のたまねぎ輸出状況

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による
(以下、表2~表7において同じ)

2.にんにく ~輸出価格は前月に引き続き上昇~

 7月の輸出量は、前年同月比83%の127,699トンであった。主要輸出先国であるインドネシア向けの輸出量が同52%の25,676トン、ベトナム向けは同57%の10,120トンと大幅に減少したが、ブラジル向けの輸出量が同151%の14,752トン、バングラデシュ向けが同247%の9,618トンと増加した。日本向けの輸出量は、同71%の1,312トンと減少した。

 7月の輸出価格は、同168%のキログラム当たり67円と前月に引き続き大幅に上昇した。なお、中国での国内価格も上昇傾向にある。

 1月~7月の累計の輸出量は、前年同期比109%と増加し、輸出価格は、5月までの価格が低迷したため、同84%のキログラム当たり38円と下回った。日本向けも同74%のキログラム当たり68円と大幅に下回った。

表2 中国のにんにく輸出状況

3.ねぎ ~輸出価格は上昇基調~

 7月の輸出量は、前年同月比73%の2,405トンであった。日本向けの輸出量は、同72%の2,368トンと減少した。輸出量の大部分を占める日本向けの輸出量の減少が全体の輸出量の減少につながっている。

 7月の輸出価格は、前年同月比168%のキログラム当たり104円と2月からの上昇基調が続いている。

 1月~7月の累計の輸出量は、前年同期比80%の15,146トンと大幅に減少し、輸出価格は、同95%のキログラム当たり87円と下回った。日本向けも前年同期比94%のキログラム当たり89円と下回った。

表3 中国のねぎ輸出状況

4.にんじん ~輸出量は堅調に推移~

 7月の輸出量は、前年同月比99%の44,875トンであった。日本向けの輸出量は、同113%の3,523トンと増加した。

 7月の輸出価格は、同108%のキログラム当たり41円と上回った。

 1月~7月の累計でも輸出量は増加傾向にあり、日本向けも、前年同期比118%と増加しているが、輸出価格は、同95%のキログラム当たり39円と下回った。

表4 中国のにんじん輸出状況

5.しいたけ ~日本向け輸出量は減少も他国向けが増加~

 7月の輸出量は、前年同月比153%の761トンであった。日本向け輸出量は同81%の117トンと減少したが、米国、マレーシア、タイ向けが増加したことで全体の輸出量は増加した。

 7月の輸出価格は、同82%のキログラム当たり295円と安値で推移しており、日本向けは、同69%のキログラム当たり225円と大幅に下落した。

 1月~7月の累計の輸出量は、前年同期比115%と増加し、輸出価格は、同95%のキログラム当たり272円と下回った。

表5 中国のしいたけ輸出状況

6.しょうが ~輸出価格は安値もやや回復~

 7月の輸出量は、前年同月比115%の29,966トンであった。パキスタン向けの輸出量が同80%の4,731トンと減少したが、バングラデシュ向けが同152%の3,496トン、マレーシア向けが同149%の2,906トン、アラブ首長国連邦向けが同168%の2,269トン、サウジアラビア向けが同191%の2,158トンと増加した。日本向けの輸出量は同92%の3,192トンと減少した。

 7月の輸出価格は、同94%のキログラム当たり75円とやや安値で推移したが、前月と比べると上昇傾向にある。

 1月~7月の累計の輸出量は、パキスタン、バングラデシュ、マレーシア、米国などへの輸出が増大したため、前年同期比150%と大幅に増加し、輸出価格は、同81%、キログラム当たり69円と下回った。日本向けも同87%、キログラム当たり109円と下回った。

表6 中国のしょうが輸出状況

注:しょうがの輸出データには調整品が含まれていると見られる

7.冷凍ほうれんそう ~輸出量の増加~

 7月の輸出量は、前年同月比104%の3,279トンであった。日本向けの輸出量も同105%の1,379トンと若干増加した。

 7月の輸出価格は、同90%のキログラム当たり83円と安値であった。

 1月~7月の累計の輸出量は、前年同期比101%と前年並みで推移し、輸出価格は、同89%のキログラム当たり84円と下回った。

表7 中国のほうれんそう輸出状況

表8 中国の野菜輸出状況

(単位:t、円/kg)

資料:

Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータにより作成

:( )内は関税番号
:中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による
:しょうがは調製品の数字が含まれているとみられる

中国トピックス

中国の野菜供給、需要と価格変動の現状分析

 上海市農業委員会が公開しているホームページの野菜関連サイトである「上海農業網」の8月31日付けの掲載記事で、中国の野菜の需要と供給および価格の上昇の要因を分析した記事を取り上げていたので、その内容を紹介する。

1.野菜の供給状況

 中国では入手可能なデータに制限があるため、野菜生産量に代わり野菜供給量をベースとした統計データを使用している。この統計データによると、2000年~2006年の中国の野菜生産量は増加を続けている。2007年には多少減少したが、2007年の総生産量は2000年と比べ33.14%増加しており56,452万トンとなった(表1)。平均すると毎年4.17%増加している。増加の要因は明らかに、1978年に開催された第11期第3中央委員会全体会議から実施してきた「買物籠プロジェクト」(中国の副食品の供給不足を解消するために実施したプロジェクト)の野菜増産計画の成果である。同時に、収量も次第に増加している。2004年以前は、野菜作付面積の増加率は収量の増加率より高く、当時は、まだ、中国の野菜生産の増加は面積の拡大によるものであったが、2004年から土地集約型の生産が始まり、中国野菜の収量は大幅に増加した。2006年を除き収量の増加速度は、作付面積の増加速度を上回っている。

表1 2000年~2007年 中国野菜総生産量、作付面積および収量

資料:中国農業統計

2.野菜の需要状況

 野菜の需要とは、家計消費需要、輸出需要、外食需要、加工需要、損耗分、貯蔵分などを含んでいる。外食需要、加工需要、損耗分および貯蔵分などについては、データが不足しているため、ここでは、家計消費需要と輸出需要を中心に分析する。

2-1.家計消費需要

 2000年以降、中国の総人口は増加し続けており、2000年の12.67億人から2006年には13.14億人へ増加している。これと同時に、人口構成に変化が生じており、農村人口は減少し続け、2000年の80,837万人から2006年には73,742万人へと、平均すると年1.32%減少している。一方、都市の人口の増加は続き、2000年の45,906万人から2006年には57,706万人へと25.7%増加しており、年平均3.89%増加している。人口の数と構成の変化により、野菜家計消費需要も変化してきている。2000年以降、農村部の野菜消費総量は減少し、逆に都市部の野菜消費総量は増加し、年平均4.32%の増加率となった(表2)。

表2 2000年~2006年農村、野菜家計消費状況

資料:中国統計年鑑(2001年~2007年)

2-2.輸出需要

 近年では、中国の野菜輸出量と輸出金額が増加している。表3からも分かるが、中国の野菜輸出量は、2000年の269.90万トンから2006年の577.99万トンへと114.15%増加しており、年平均でも13.53%増加している。ただし、輸出量の増加率は減少傾向にある。とりわけ、2004年の輸出増加率は減少しており、その後、2005年と2006年には多少増加したものの、2003年以前の20%を超える輸出増加率とは大きな開きがある。

表3 2000年~2006年 野菜輸出状況

資料:中国海関統計年鑑(2001年~2007年)

3.野菜の価格動向

3-1.野菜価格の推移

 近年では、中国の野菜価格は上昇傾向にある。全国の野菜平均価格は、2000年のキログラム当たり1.5元(約20円、1元=13.6円(2009年9月1日の三菱東京UFJ銀行為替相場))から2007年には2.37元(約32円)へと高騰し、上昇幅は58%に達し、年平均6.75%上昇している(図)。

図 2000年~2007年全国野菜平均価格の推移

資料:全国農産品卸売市場情報

3-2.近年における野菜価格上昇の要因

 前述の分析から分かることは、中国の野菜生産量は増加しており、野菜価格上昇の要因が供給側からくるものではなく、都市部の家計消費需要や輸出需要の増加にあり、これが野菜価格の上昇を引き起こす一因となっている。これ以外に、近年では野菜価格の上昇は以下の要因がある。

3-2-1.2000年~2007年にかけてのインフレ

 2000年~2007年にかけての中国のインフレ率は表4のとおりであり、特に2004年以降のインフレ率が高くなっている。野菜の名目価格(市場価格)と実勢価格(インフレによる原因を除いた後の価格)を比較してみると、いずれも上昇傾向にあるものの、実勢価格の上昇幅は減少している。このことからインフレが野菜価格上昇の一因となっていることが分かる。また、2003年以降名目価格と実勢価格の差は拡大しており、インフレが主に2003年以降の野菜価格の動向に影響を及ぼしてきたことが分かる。

表4 2000年~2007年野菜の名目価格と実勢価格の比較

資料:物価指数年鑑(2001年~2008年)

3-2-2.生産費

 野菜の生産費は、主に直接製造原価(種子、肥料、生産資材費などを含む)、人件費、設備費、土地代などを含んでいる。近年では、とりわけ肥料価格が大幅に上昇している。このほか、人件費も上昇している。2000年~2006年の野菜製造原価の変化は、野菜価格に比例している。2002年以外は正値となっておらず、製造原価の上昇が野菜価格を上昇させている(表5)。

表5 2000年~2006年 野菜製造原価の変化の価格への影響

資料:暦年の農産物コスト収益資料より

3-2-3.輸送費

 輸送費は、橋の通行料、燃料費、包装費、運転手の給与や車両の減価償却などの費用を含んでおり、近年では増加している。

 緑色通道政策(農産物輸送トラックに係る有料道路の費用免除政策)は、中国における農産物の円滑な流通を確保する上での重要な措置であるが、取り締まりの「過積載による罰金」が高いなど、具体的に運用していく中で少なからず問題がある。これ以外に、30%にも達する輸送中の野菜の損耗は輸送費を上昇させる。

 調査の結果明らかになったのは、通行料や燃料費の上昇が輸送費上昇に大きなウエートを占めている。2000年以降、中国のガソリンと軽油価格の上昇が続いていることから、輸送費の大幅な上昇が、野菜価格に大きな影響を与えていることが分かる(表6)。

表6 2000年~2008年ガソリン、軽油価格の推移

資料:新浪網
注:ガソリンおよび軽油価格の単位(kg)は、1リットル当たりのガソリン(0.73-0.76)、軽油(0.80-0.84)の比重によりkg単位に変えて表示。

4.まとめ

 2000年以降、中国の野菜供給量は増加傾向にあり、「買物籠プロジェクト」の成果が表れている。同時に、都市部の家計消費量や輸出量は年々増加し、農村部の家計消費量は年々減少している。中国の野菜需給データは、供給が需要を上回っているように錯覚させている。しかし、実際の状況は異なる。これは、需要量には、外食、加工などの需要量と損耗が含まれていないためである。しかしながら、ここ数年来の中国経済の持続的発展と生活水準の向上により、野菜の加工や外食需要量は増加しているのが実態である。そのほかに筆者が実際に調査した結果、野菜の損耗は非常に大きく、通常でも、生産量の30%に達しており、さらに多い時もある。そのため、中国の野菜はすでに供給が需要を上回る局面にあると簡単に判断できず、依然として、野菜生産の拡大は、今後の重要な農業生産における課題の一つとなっている。野菜生産を振興させることは、国民の野菜不足を解消するだけでなく、農家の収益増加にもつながる。

 2000年~2007年、中国の野菜の平均価格はキログラム当たり1.50元(約20円)から2.37元(約32円)まで上昇した。その原因は、コストの上昇、需要の増加そしてインフレの3つと総括できる。野菜価格を安定させるには、流通システムを整備し、流通コストを下げる必要がある。政府も適切に補助し、生産コストを下げることが重要であると考えているのではないか。これ以外に、政府関連部門は情報および技術サービスの向上を図らなければならない。迅速かつ健全で統一的なシステムを作り上げる必要ある。

中国トピック記事元
http://www.shac.gov.cn/zxzx/scfx/hqfx/200908/t20090831_1251906.htm



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