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需給動向


中国の品目別野菜輸出・価格動向
~2008年を振り返って~

調査情報部



Ⅰ 品目別野菜輸出状況

1.たまねぎ ~夏季の輸出量の減少~

 12月の輸出量は前年同月比132%の49,120トンであった。年間の輸出量としては前年比85%の524,434トンとなった。特に6~10月の時期の輸出量の減少が大きかった。日本向けの2008年の輸出量は前年比79%の157,599トンと減少している。

 2008年の輸出先国シェアは、日本が30%、ロシアが21%で両国で半分を占めている。

 価格については、12月および2008年はほぼ前年と同じ水準であったが、日本向けの価格は年間の平均価格で若干下回っている。これは比較対象となっている前年2007年の前半に、競合相手の米国産の小玉傾向や、中国国内の2006年の作付面積縮小により価格が上昇したことが影響しており、その時期を除いた2008年の後半は、中国側の検査強化の影響もあり、価格は昨年を若干上回って推移した。

図1 中国のたまねぎ輸出状況

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による

2.にんにく ~中国国内の需給緩和による価格低落~

 12月の輸出量は前年同月比85%の116,659トンであった。2008年の合計数量は前年比107%の1,463,326トンであった。2008年9月まではおおむね前年を上回る数量で輸出が推移していたが、10月以降金融危機の影響による世界的な景気後退の影響などにより、輸出量は前年を下回って推移した。日本向けの12月の輸出量は前年同月比108%の1,512トンであったが、年間では前年比85%の15,658トンにとどまった。

 2008年の輸出先国シェアはインドネシアが26%、ベトナムが10%を占めているが、世界貿易品目であり、上位輸出先国の占有度は低い。日本向けの輸出は全体量の1%程度に過ぎない。

 価格については、12月および2008年の平均価格は前年と比較して大幅に落ち込んでいる。これは中国国内の需給緩和によるものであり、日本向け価格も同様に大幅な安値で推移した。

図2 中国のにんにく輸出状況

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による

3.ねぎ ~減少が続く日本向け輸出~

 12月の輸出量は前年同月比57%の2,521トンにとどまった。2008年全体の輸出量についても、減少した前年と比較しても69%の30,867トンと3割以上減少している。これは主な輸出先である日本向け輸出が、中国産野菜の消費者イメージの回復が見られず需要が減退していることが大きい。また2007年の10月から2008年の3月まで行われた韓国へのねぎの輸出は一時的なものにとどまっている。

 2008年の輸出先国シェアは日本向けが90%を占めている。

 価格については、12月の価格は前年同月比70%のキログラム当たり64円であった。年間の平均価格は前年比109%の同84円と前年をかなり上回っているが、これは2008年年初の低温・寒波の影響により中国国内のねぎの価格が高騰した影響が5月までの輸出価格に反映されているためであり、6月以降は前年と同水準となった後、10月以降はさらに前年を下回って推移している。

 中国側は輸出向け野菜の検査を強化しており、コストが発生していること、生産資材が上昇したことから、2008年の収益は悪化しているものと推察される。

図3 中国のねぎ輸出状況

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による

4.にんじん ~堅調に推移していた輸出も、景気の悪化による影響の懸念~

 12月の輸出数量はほぼ前年と同じ37,120トンであった。2008年の輸出量についてもほぼ前年並みの415,801トンであった。全体的に2008年前半の輸出量は昨年を下回った水準で推移した一方、後半には上回ったため全体として前年並みとなっているが、これはマレーシアやロシア向けの輸出量が同様に変化した影響によるものである。日本や韓国、マレーシア向けの輸出数量が減少した一方、ベトナム、ロシア向けの輸出量が増加している。

 日本向けの輸出については、12月は前年同月比117%の2,546トン、2008年の累計では前年比58%の25,044トンであった。特に3~5月にかけての残留農薬問題による日本および中国側の検査強化に起因する輸入量の減少から、日本向け輸出が大幅に減少している。

 2008年の輸出先国シェアは韓国19%、マレーシア14%、タイ12%、ベトナム12%などアジア各国のシェアが大きいが、日本のシェアは大幅に減少し6%を占めるにすぎない。

 価格については、12月の価格は前年同月比56%のキログラム当たり25円であり大幅安値となっている。一方2008年の平均価格は前年比106%の同37円であった。2008年9月まで価格は堅調に推移していたが、10月以降は大きく下落している。

図4 中国のにんじん輸出状況

にんじん等輸出先国別輸出数量

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による

5.しいたけ ~減少に歯止めの止まらない日本向け輸出~

 12月の輸出量は前年同月比73%の1,385トンであった。また、年間の輸出量についても前年比52%の10,675トンと大幅な減少となった。主要輸出先国は日本と米国であり、特に日本向けの輸出の落ち込みが原因であるが、2007年の輸出数量のうち、8月、9月、11月に行われた香港への突発的な出荷が輸出量としてカウントされており、統計上の問題も影響している。

 2008年の輸出先国シェアは日本が46%、米国が34%であり、この2カ国で大部分を占めている。

 価格については、12月の価格は前年同月比95%のキログラム当たり255円、年間の平均価格は前年比131%の同292円であった。ただしこの数字についても前述の香港への安価な価格での出荷が影響しており、その他の月はおおむね前年と同程度の価格水準であった。

図5 中国のしいたけ輸出状況

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による



6.しょうが ~前年に比べおおむね堅調に推移した輸出~

 12月の輸出量は前年同月比132%の23,555トンであった。2008年の輸出数量は前年比97%の265,741トンと同程度の水準であった。

 2008年の輸出先国シェアは日本が一番多く17%、パキスタンが14%となっているが、世界各国に輸出されている。

 価格については12月の価格は前年同月比78%のキログラム当たり73円、年間の平均価格は前年比124%の同82円であった。日本向けの輸出価格は平均価格より高くなっているが、これは統計上の問題から加工品が含まれているためと見られる。

図6 中国のしょうが輸出状況

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による
   :しょうがは調製品の数字が含まれているとみられる。

7.冷凍ほうれんそう ~価格の下落と米国向け輸出の増加~

 12月の輸出量は前年同月比124%の4,028トンであり、日本以外への仕向け量が増加している。2008年の輸出量は前年比109%の34,567トンであった。

 2008年の輸出先国シェアは日本が45%、米国が38%であり、この2カ国で大部分を占めている。

 価格については12月は、前年同月比82%のキログラム当たり83円、年間の平均価格は前年比88%の同91円であった。2008年は一貫して2007年より低い水準で推移した。

図7 中国の冷凍ほうれんそう輸出状況

資料:Global Trade Information Services社”Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による

表1 中国の野菜輸出状況

(単位:t、円/kg)

資料:Global Trade Information Services社“Global Trade Atlas”のデータにより作成
注 :( )内は関税番号
  :中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による
  :しょうがは調製品の数字が含まれているとみられる

中国トピックス

2008年山東省のはくさいの需給について

 1月17日付の中国農産品加工網の記事で山東省におけるはくさいの需給状況が取り上げられていたため、その内容を報告する。

 2008年は南方産地における年初の低温・寒波の影響により、北部地域のはくさいの価格が年当初からしばらくの間堅調であったことから、生産意欲が高まり、面積が増加した。また、山東省の秋~冬にかけての天候は順調であったことから、単収も増加し、面積および単収の両方の要因から生産量が増加した。

 この生産量の増加と、2008年9月に始まった世界的な金融危機の影響により、年末にかけての価格は大きく下落した。

 この記事の中にある山東省莱陽市にある会社からの聞き取りによれば、山東省で生産されるはくさいのうち、4分の3はキムチ製造工場などの加工工場に仕向けられている。これらの工場は夏7月~9月の時期以外は操業を行っている。また時期は不明であるが、一般的なはくさいの貯蔵期間の限度は4~5カ月程度としている。

 しかし、2008年の10月から販売が滞り、工場の生産量は激減している。聞き取りによれば、山東半島地区には少なくとも76の韓国資本の会社があるが、その中に撤退した工場があるとしている。

 また蒼山県の例として、同県からの輸出向けはくさいの量は、例年県全体の生産量の6割を占めているとしているが、2008年は青島、煙台、維坊などで加工品原料として海外からの需要に向けられるものは、生産量のうちのごく一部にとどまったとしている。

 価格については11月より下落しており、輸出向け需要減退の影響が推察される。

 記事の中で、中国の国内事情の変化によるはくさい価格低落への影響も指摘されている。

1.金融危機により出稼ぎ労働者が帰郷するなどして都市部の需要が減少した
2.都市住民の野菜消費が多様化し、はくさいの消費量が減少した
3.都市住民が冬季のはくさいの貯蔵をあまり行わなくなった
4.農家が目先の価格が安いうえ、貯蔵のリスクを恐れて収穫後短期間で売り渡したため、さらに暴落を招いた
5.国内の燃料価格がまだ高く、遠方に輸送して販売することが難しい

 これらの状況も影響して、はくさい価格は大幅な安値となったとしている。

表2 山東省のはくさい生産データ

(単位:千ha、千トン、トン/ha)

資料:中国農産品加工網記事および中国農業部栽培管理司データより機構作成

図8 山東省滕州野菜市場はくさい価格の推移

資料:中国蔬菜網
注 :価格はそれぞれの月の中で、一番最初に報告されている価格


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