野菜需給部 調査情報部
2008年12月の野菜輸入量は、前年同月比93%の199,433トンとなった。前年を下回る傾向は続いているものの11月の落ち込みから回復した結果となった。これは、日本における当該月の野菜の市場価格が高めに推移したこと、また円高により輸入が増加したことなどが影響したと思われる。類別にみると、生鮮野菜は前年同月比90%の54,571トン、冷凍野菜は同93%の68,824トン、塩蔵等野菜は同93%の12,002トン、乾燥野菜は同89%の3,906トン、酢調製野菜は同98%の2,597トン、トマト加工品は同109%の18,170トン、その他の調製野菜は同90%の35,427トン、その他は同145%の3,936トンであった。
①生鮮野菜の動向
生鮮野菜は、前年同月比90%となったが、11月の同74%の大幅な低調基調から若干回復した結果となった。輸入量が増加した品目は、ごぼうが同110%の3,903トン、ジャンボピーマンが同108%の2,314トン、かぼちゃが同107%の13,994トン、しょうがが同129%の1,204トンであった。ごぼうは、2007年実績で92%を中国が占めている品目であり、今回の増加は中国産が回復したことによるが、残り8%を台湾が占めており2008年累計では2007年と比べて大きく増加していないものの、2008年後半から中国産の減少とは反対に増加している。ごぼうの輸入単価を12月でみると、中国産がキログラム当たり39円、台湾産が同70円と台湾産の方がおよそ80%高となっているが、中国産への忌避から台湾産の輸入が増加していると思われる。ジャンボピーマンは、韓国からの輸入が増加している。韓国産は2007年累計で全体の66%を占めていたが、2008年累計で76%と増加した。先月号に円高の影響を記載したとおり、年間のキログラム当たりの平均単価が2007年は368円、2008年は299円となっていることから輸入しやすい状況であったと思われる。しょうがは、2007年実績で92%を中国が占めている品目であり、年初より前年を下回った輸入量であったが、8月から前年を上回り、2008年累計では、前年比77%という結果になった。
輸入量が減少した品目としては、ねぎが前年同月比66%の3,191トン、ブロッコリーが同65%の1,907トン、メロンが同65%の2,114トンとなった。ねぎは2007年実績で中国からの輸入が100%占めており、12月は前年同月比66%の減少であると同時に2008年累計でも前年比68%となり、大きく減少した結果となった。ブロッコリーは生鮮の輸入量は減少している。ブロッコリーの中国からの輸入は26%を占めた2005年の16,000トンをピークとして大幅に減少しており、2008年累計では、その3%の510トンとなっている(図6)。メロンは、メキシコから最も多く輸入しており、昨年輸入量が多かったが、本年は平年並みに戻したことにより、前年比は減少した。
②冷凍野菜の動向
冷凍野菜は、12月は前年同月比93%となり、先月の同84%だったものからやや回復した結果となった。増加した品目は、冷凍えだまめが前年同月比117%の3,018トン、冷凍ごぼうが同121%の875トンであった。冷凍えだまめの増加は中国および台湾で増加したものである。2008年累計をみると、近年、冷凍えだまめは中国から最も多く輸入されていたが、2008年は台湾が台頭した結果となった。2008年累計で台湾は前年比111%の伸び、反対に中国は同65%となり、中国から産地が動いていることが分かる(図7)。冷凍ごぼうは、2007年実績で99%を中国が占めている品目であり、中国産冷凍ギョーザ事件以後の3月に前年比50%まで下げたもののその後回復を示し、2008年累計で前年比98%となった。
輸入量が反対に減少した品目は、冷凍いんげん豆等が前年同月比70%の1,686トン、冷凍ほうれんそう等が同66%の1,680トン、冷凍さといもが同84%の3,786トンであった。冷凍いんげん豆等は2007年実績で68%を中国が占めている品目であったが、2008年は62%まで減少し、2008年累計で前年比81%となった。反対に、タイは前年比115%と増加している。冷凍ほうれんそう等の輸入量の減少は、輸入数量のおよそ76%を占める中国からの輸入が前年比59%と減少したことによるが、2008年累計では前年比95%となり年間を通しての大幅な減少とはならなかった。冷凍さといもは、2007年実績で99%を中国が占めている品目であり、中国の輸入の減少が輸入減の要因であり、2008年累計で前年比85%となっている。冷凍さといもは、1996年に6万トンを超えたが、以降減少傾向にある。
図4 東京都中央卸売市場における旬別入荷量と価格動向
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、全国生鮮食料品流通情報センター「青果物旬別取扱高」
図5 韓国からのジャンボピーマンの輸入動向
図6 生鮮ブロッコリーの輸入動向
図7 冷凍えだまめの輸入動向
注:( )の数値は占有率を示すものである。
上部の数値は合計輸入量である。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
2008年の輸入動向をみると、年初より輸入量は低調で始まり、2008年を通して低く推移した結果となった(図1)。2008年累計で前年比90%、およそ25万トンの減少となった。2008年における国別の輸入量の占める割合は、中国が51%、米国が21%、ニュージーランドが5%、タイが4%となっている。タイは、2007年と比べると輸入量が110%増加しており、中国から産地が移行していると思われる。2008年の中国からの輸入量は、前年比81%およそ26万トンの減少となっており、2008年全体の輸入量の減少量とほぼ同じであることから輸入量減少の主な要因であると思われる。
全体の輸入動向と中国からの輸入動向を図8および図9で見ると、連動していることが分かり、中国の増加とともに2005年は2,911千トンとピークを迎え、その後中国の減少とともに全体の輸入量も減少し、2008年は累計で2,258千トンとなった。
中国からの輸入が2008年年初から低調で推移したのは、中国側による輸出規制が2007年9月から開始され、山東省のねぎ、しょうが、塩蔵きゅうりなどで一時輸出を停止した影響によるものと考えられ、その後は、2008年1月に発覚した中国産冷凍ギョーザ事件によりさらに落ち込むこととなった。月別に中国の動向を見ると、1月の中国産冷凍ギョーザ事件の発覚以後2月、3月と大幅に低下、その後回復傾向にあったが、10月に冷凍いんげんで残留農薬が検出された影響で11月に再びやや減少している。12月にやや戻したものの年間を通して前年を上回る月は一度もなかった。中国からの輸入を類別に前年と比較すると、生鮮野菜が73%、冷凍野菜が83%、乾燥野菜が94%、酢調製野菜が80%、トマト加工品が92%、その他調製野菜が86%、その他が84%となっており、生鮮野菜の減少が大きいことが分かる。生鮮野菜の輸入量を最も輸入が多かった2005年と比較すると49%と大きく減少しており、以前は生鮮野菜が冷凍野菜のおよそ2倍輸入されていたが、2008年では生鮮野菜、冷凍野菜とほぼ同じ量となっている(図9、図10)。
品目別に見ても前年と比べて大きく減少したものは生鮮野菜であり、さといもが前年比56%、しいたけが同47%、えんどうが同27%などと減少している。生鮮野菜以外では、塩蔵等野菜のらっきょうが同74%、その他調製野菜のアスパラガスが同71%となっており、これらの品目はいずれも中国からの輸入が主であるため、中国からの輸入の減少が直接輸入量の減少につながった。
2008年を通して、全体的に輸入量が減少した中で増加した品目は、生鮮野菜ではメロンが前年比118%、ジャンボピーマンが同103%、セルリー同108%、冷凍野菜ではばれいしょが同102%、塩蔵等野菜ではしょうがが同132%等がある。生鮮メロンはメキシコからの輸入が減少していたが、平年並みに回復したことによる。ジャンボピーマンは韓国からの輸入量が同117%と大きく伸びたことによる。セルリーは2008年は米国から100%輸入しており、米国からの輸入が増加した。冷凍ばれいしょは、冷凍野菜のうち37%を占める品目であり、中国からの輸入が前年比82%と減少したが、80%を占める米国からの輸入が増加したことによる。塩蔵しょうがは、中国とタイが主な輸入国であるが、2008年はタイが前年比168%と大きく増加し、反対に中国が同90%と減少した(図11)。塩蔵しょうがの動向を見ると、2006年までは中国が最も多い輸入国であったが、その後タイが最も多い国となり、2008年実績ではタイの占有率は70%となった。
図8 日本における野菜の類別輸入量の推移
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
図9 中国からの野菜の類別輸入量の推移
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
図10 中国からの月別類別輸入状況
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
表 中国からの主な違反及び監視強化品目
資料:厚生労働省HP
図11 塩蔵しょうがの輸入動向
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿 易統計」