野菜需給部 調査情報部
平成20年11月(速報値)の動向
平成20年11月の野菜輸入量は、前年同月比82%の169,138トンとなり、低調基調が継続している。類別にみると、生鮮野菜は前年同月比74%の37,815トン、冷凍野菜は同84%の62,390トン、塩蔵等野菜は同79%の10,431トン、乾燥野菜は同81%の4,020トン、酢調製野菜は同76%の2,094トン、トマト加工品は同117%の18,342トン、その他の調製野菜は同80%の33,429トン、その他は同26%の616トンであった。
①生鮮野菜の動向
生鮮野菜は、前年同月比74%と減少し、低調基調が持続した結果となった。品目別の動向は、輸入量が増加した品目は、ジャンボピーマンが同106%の1,750トン、メロンが同110%の1,571トンであった。ジャンボピーマンは、韓国からの輸入が2007年の実績で全体の66%を占めているが、2008年は11月までで75%と大幅に増えている(表1)。輸入単価をみても2007年11月はキログラム当たり581円であったのが、2008年11月はキログラム当たり273円となっており、10月から大きく輸入量が増えていることから、円高の影響もあると思われる(図5)。メロンは2007年に輸入量が減少した米国と韓国から平年並みに輸入されたことにより前年同月比で増加したものである。一方、輸入量が減少した品目は、ねぎが前年同月比56%の2,321トン、ブロッコリーが同54%の1,050トン、にんじんおよびかぶが同65%の1,795トン、かぼちゃが同62%の4,804トンとなっている。これら以外にも中国からの輸入は多くの品目で減少している。ねぎは中国の占める割合がほぼ100%の輸入であるため、中国からの輸入量の減少がそのままねぎの輸入量の減少へとなっている(図6)。ブロッコリーは、米国からおよそ90%、中国からおよそ10%の割合で輸入されているが、中国からの輸入量が大幅に減少しており、2008年1月から11月までの間で前年同期比11%となっている。にんじんおよびかぶでは、従来より複数国からの輸入があり、近年中国の占める割合が高くなっていたものが、2008年は減少し、中国以外の国、特に台湾からの輸入が増加している(図7)。
②冷凍野菜の動向
冷凍野菜は、11月は前年同月比84%となり、2008年中で最も低い前年同月比となった。冷凍ほうれんそうはやや増加したが、それ以外の品目は全て減少した結果となった。これは2008年1月の中国製冷凍ギョーザ事件発覚によりやや減少し、その後順調に回復した冷凍野菜であったが、10月に中国産冷凍いんげんから農薬が検出されたことにより、中国からの輸入量が減少したためと思われる。冷凍いんげん豆等は前年同月比80%の2,044トン、その他の豆は同64%の645トン、ながいも等は同50%の100トンとなっている。いんげん豆等は、2007年実績で中国がおよそ67%を占めていたが、中国に代わりタイからの輸入が伸びてきている。同様に、その他の豆でも中国が2007年実績で97%を占める品目であるが、前年同期比73%と減少し、代わって米国が同377%と伸ばしている。ながいも等もやはり中国の占める割合が99%と高く、中国からの輸入量の減少がそのままながいも等の輸入量の減少へとつながった品目である。
③その他の動向
その他の類別で前年と比べて異なる動向を示したのは、塩蔵等野菜のきゅうりおよびガーキンで前年同月比57%、こなすが同50%、また、乾燥野菜のしいたけが同59%、きくらげ55%、その他調製野菜のささげ・いんげん等で52%と大幅に減少しており、いずれも中国からの輸入量の減少による。
2008年は、秋口から産地の天候不良等の影響により国内の野菜価格が堅調であったにもかかわらず、野菜の輸入が伸びなかったのは、安全性に留意した日本側の中国産野菜への忌避と2007年9月より中国山東省産のねぎ、しょうが、塩蔵きゅうり等の輸出が一時停止していること、国家質量監督検査検疫総局による一部食品会社の輸出停止等を受けた輸出緊縮によるものと思われる。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、
全国生鮮食料品流通情報センター「青果物旬別取扱高」、財務省「貿易統計」
図4 東京都中央卸売市場における旬別入荷量と価格動向
※クリックすると拡大します。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、全国生鮮食料品流通情報センター「青果物旬別取扱高」
表1 ジャンボピーマンの輸出動向
(単位:トン、円/kg)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
図5 韓国won 為替チャート
資料:読売新聞HP
図6 生鮮ねぎの輸入量の推移
注 :2008年は11月までの実績である。
:( )内は占める割合である。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
図7 生鮮にんじん及びかぶの国別輸入量の推移
注 :2008年は11月までの実績である。
:( )は占める割合である。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
需給トピックス
野菜の輸出について
農林水産省は、わが国の農林水産物・食品の輸出促進を図るため平成17年に「農林水産物等輸出促進全国協議会」を設置し、それ以降継続的に輸出の推進に取り組んでいる。これにより平成19年の農林水産物全体の輸出額は前年比116%の4,337億円となった。現在は、「農林水産物等輸出促進全国協議会」を引き継ぐかたちで「農林水産物等輸出促進全国協議会」、「地域輸出促進協議会」が設置されており、政策目標として「輸出額を平成25年までに1兆円規模とする」と掲げ、平成21年度は21億円の予算を計上している。輸出の状況を輸出額でみると、最も多く輸出されているのは水産物、次いで加工食品となっており、野菜・果実はおよそ4.9%とまだシェアは小さいが増加傾向である(図1)。農林水産省が輸出を促進する要因としては、FTA、EPA締結に伴い、日本の農業における国際競争力の強化、また、アジアにおける中間所得層の増加による高級食材としての需要などが挙げられるほか、国内価格低迷時における新たな販路として需給調整対策の効果も期待している。
図1 農林水産物等の輸出額の内訳
資料:農林水産省「農林水産物等の輸出促進について」平成21年1月
野菜と果実の輸出量の推移
注 :2008年は11月までの実績である。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
野菜の輸出の取り組み事例としては、表1に掲げているように各県もしくは団体ごとに取り組まれており、北海道のJA帯広かわにしのながいもなどはかなりの数量を台湾、シンガポールへ輸出している。これにより作付面積、生産量も増加していることから輸出市場の可能性を感じさせる。日本が輸入する野菜の多くは加工・業務用といった大量需要を支えるための安定的な品質、量、価格の確保、一次加工による作業の軽減などが主とした目的であるが、日本の輸出農産物への輸出先国からの期待は、その高品質、安全性といったもので、「高価、高品質、安全」というイメージが外国にはある。これらは、日本の農産物は栽培技術の高さ、品種改良技術の高さに支えられたものであり、国際的に競争力がある。
表1 輸出取組事例(野菜)
※クリックすると拡大します。
資料:農林水産省 HP 参照
また、輸出される野菜のうち、2007年実績で生鮮野菜がおよそ51%を占めており、輸出先国は圧倒的に台湾が多く、次いで香港などアジア諸国に多く輸出しており、これらアジア諸国の発展により益々高品質の野菜の需要は高まると思われる。特に中国は、中間所得層が約8,000万人と言われており市場拡大の可能性は高いと思われる(表2)。
表2
輸出実績(2007年)
(単位:千トン、円/kg)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
輸出単価のFOB価格をみると、東京都中央卸売市場価格と比較して、キャベツ等では季節によっては輸出単価のほうが高い時がある。農産物の輸出については、例えば青森県のりんごが昭和初期から行っており、さらに平成に入ってからは高級りんごとして台湾に輸出がされていることにみられ、国内価格の下支えを担っているとの報告もあり、今後の更なる促進に期待する(図2)。
図2
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」
東京都中央卸売市場 市場統計情報