野菜需給部 調査情報部
(1)平成20年10月(速報値)の動向
平成20年10月の野菜輸入量は、前年同月比90%の178,631トンであった。類別に結果を見ると、生鮮野菜では前年同月比86%の44,116トン、冷凍野菜は同91%の67,217トン、塩蔵等野菜は同108%の11,134トン、乾燥野菜は同88%の3,727トン、酢調製野菜は同89%の2,356トン、トマト加工品は同95%の13,045トン、その他調製野菜は同84%の34,462トン、その他は同145%の2,573トンとなっており、10月も引き続き低調基調で推移した結果となった。
①生鮮野菜
類別に内容を見ると、生鮮野菜は、前年同月比86%と減少基調を持続した結果となった。その中で輸入量が増加した品目は、ジャンボピーマンが同126%の1,735トン、かぼちゃが同226%の2,144トン、しょうがが同199%の1,327トンと増加している。ジャンボピーマンは、韓国からの輸入が平成19年実績で66%と大半を占めている。韓国からの輸入は、3月から7月、11月から12月に増えるが、平成20年は10月から増加傾向であった。かぼちゃは主に冬から春にかけて輸入される品目で、ニュージーランドが約70%、メキシコが約25%とこの2カ国で輸入量の大半を占めている。10月は両国の端境期であり、その間をニューカレドニア、ロシアなどからわずかではあるが輸入があり、今回の増加はニューカレドニアが昨年減少した数量を平年並みに戻したことによる増加である。しょうがは、中国が平成19年実績で92%を占める品目であり、平成20年は、1月から前年同月比50%前後の低水準で推移していたものが、8月から回復し、9月では同287%、10月では288%と増加している。反対に輸入量が減少した品目は、たまねぎが前年同月比79%の15,781トン、キャベツ等あぶらな属が同2%の6トン、ねぎが同66%の3,073トンと減少している。たまねぎは、中国からの輸入量が平成19年実績で87%を占めているが、中国からの輸入が減少して推移する一方で、米国が2月から5月にかけて例年になく日本への輸出量を増やしたものの、その後、一気に数量は減少して推移したことにより10月も前年より減少となった。また、ねぎは、平成19年実績で中国が100%を占めている品目であり、平成20年は年初からほぼ前年を下回って推移しており、10月もその傾向が継続している。キャベツ等あぶらな属は、中国が約90%を占めており平成16年に最も多く輸入された品目であるが、その後急激に減少し、平成20年は1月から10月までの前年同期比で5%と大幅に減少している(図6)。
②冷凍野菜
冷凍野菜は、10月は前年同月比91%であった。昨年が多かったことから前年と比べると9割となっているが、過去5カ年ではほぼ平年並みの動向である。輸入量が増加した品目は、冷凍えだまめが前年同月比115%の3,873トン、冷凍ほうれんそう等が同120%の1,872トンである。冷凍えだまめは、1月から10月までの前年同期比で93%となっており、表1のとおり、中国からの輸入量は前年同期比63%と大幅に減少しているものの、その他の国から輸入が行われ、全体としては小さな減少にとどまっている。冷凍ほうれんそう等は平成19年実績で中国が78%を占めている品目であるが、1月から10月までの間の中国からの輸入量は前年同期比93%となっている。今月の増加は、先月、先々月で前年比7割弱と少ない輸入量であったものが、10月に入り戻したものと思われる。えだまめに対してほうれんそうの、他国への産地移動が進んでいないのは、ほうれんそうは冷涼な気候を好むため、えだまめなどのように中国に代わって輸入が増加しているタイ、台湾、インドネシアでは栽培が難しいことが一つの要因ではないかと思われる。
③その他
その他の類別で前年と比べて異なる動向を示したのは、塩蔵しょうがが前年同月比204%の3,207トン、乾燥野菜のだいこんが同121%の200トン、かんぴょうが同120%の176トン、トマト加工品の混合野菜ジュースが同195%の213トンであった。
図4 東京都中央卸売市場の旬別入荷量及び価格動向
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、
全国生鮮食料品流通情報センター「青果物旬別取扱高」、財務省「貿易統計」
ジャンボピーマンの輸入動向
注:2008年は10月までの輸入数量である。対前年同期比102%
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、元資料 財務省「貿易統計」
韓国からのジャンボピーマン月別輸入数量
キャベツ等あぶらな属の輸入動向
注:2008年は10月までの輸入数量である。対前年同期比5%
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、元資料 財務省「貿易統計」
中国からのキャベツ等あぶらな属月別輸入数量
2008年 冷凍えだまめの国別、月別輸入実績
(単位:トン、%)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、元資料 財務省「貿易統計」
2008年 冷凍ほうれんそう等の国別、月別輸入実績
(単位:トン、%)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、元資料 財務省「貿易統計」
(2)冷凍食品の動向について
平成20年の野菜の輸入動向を見ると、年明け当初より中国からの輸入が減少したことにより低調基調で始まった。さらに、1月の中国製冷凍ギョウザ事件の影響により中国からの野菜の輸入量が大きく減少し、2月、3月は大幅な減少となった。その後の経過を見ると、生鮮野菜では未だに平年の数量まで回復していないのに対して、冷凍野菜は早い段階で回復したことが分かる(図2、図3)。また、この中国製冷凍ギョウザ事件の発生により日本の食が冷凍食品、加工食品に大きく依存していることが浮き彫りになった。そこで、日本における冷凍食品の現状を社団法人日本冷凍食品協会の統計データなどをもとに見てみる。
①冷凍食品の生産量の推移について
日本の冷凍食品の生産数量を見ると急激に増加してきており、近年はおよそ150万トン前後で推移していることが分かる(図7)。このうち、平成19年実績で、85%が調理食品、7%が農産物、4%が水産物、3%が菓子類、1%が畜産物となっている。また、分類ごとに推移を見ると、農産物は平成8年と比較して110%、調理食品は111%と増加傾向にあるのに対し、水産物、畜産物は減少傾向にある(表2)。農産物のうち、野菜の増加は、にんじんが134%、カーネルコーンが211%、かぼちゃが176%、ほうれんそうが137%であり、反対に減少しているのはさといもが35%、フレンチフライポテトが56%などである。また、全体的な動向としては、調理食品のうち、フライ類は微減傾向、反対にフライ以外の調理食品は増加傾向にあることが分かる(図8)。
②冷凍食品の消費について
冷凍食品のうち最も多く作られているのが、コロッケ、うどんと続き、野菜はかぼちゃが第19位に15,826トンで入っている(表3)。順位の移動がほとんどないことや、また、同協会が実施した平成19年の消費者調査においても、冷凍食品における「冷凍室保存中」と「買い置き」の1位がコロッケ、2位がシュウマイ、3位フライ、4位うどんとなっており、これらは私達の食生活の中に定番として一定の地位を獲得していると思われる。消費量の推移(図9)を見てみると、平成9年以降も増加が続いていることが分かる。同調査で「冷凍食品のメリット」を集計した結果では、1位が「保存がきくこと」、「調理に手間がかからないこと」、「調理に時間がかからないこと」、「1人前からでも作れる」となっており、保存性、簡便性の利点を消費者が重視していることが分かる。前述で、農産物の中の野菜の増加を指摘したが、野菜は「調理に手間がかかる」、「保存性が低い」というイメージが一部であるが、一次加工した冷凍野菜はそれらを回避することになり消費者のメリットと合致することから増加傾向にあると思われた。
③冷凍野菜などの輸入について
また、消費量の中で輸入の冷凍野菜、調理冷凍食品も増加しており、平成19年実績で国内生産が占める割合は57%であり、43%は輸入に依存していることが分かる(図9)。野菜の輸入について類別に推移を見ると、平成17年までは生鮮野菜の占める割合が増加傾向であったのに対し、平成18年より減少に転じ、現在は冷凍野菜が最も多く輸入されていることが分かる(表5)。このように輸入への依存が高まっているが、同調査における「冷凍食品のデメリット」の調査結果をみると、1位「手抜きにみられる」、2位「輸入品が使われていそうなこと」となっており、輸入品への不安があることがうかがわれる。
現在の生活環境の中で、保存性、簡便性、利便性を求める消費者は多く、冷凍食品の活用は増加している。そのような中で、平成20年1月に発生した中国製冷凍ギョウザ事件により、輸入冷凍食品への安全性に対する疑念が生じた。しかし、現状としては、冷凍食品のメリットは多く、安易に変更は難しいと思われ、今後も調理食品の利用は増加すると思われた。
図7 日本の冷凍食品生産数量
資料:(社)日本冷凍食品協会「日本の冷凍食品生産高・消費高に関する統計」
表2 冷凍食品小分類品目別生産高の推移(数量)
(単位:トン)
資料:(社)日本冷凍食品協会「平成19年 日本の冷凍食品生産高・消費高に関する統計」
図8 品目別冷凍食品生産量の推移
表3 生産数量上位20品目
注:1.「その他の…」を除く
資料:(社)日本冷凍食品協会「平成19年 日本の冷凍食品生産高・消費高に関する統計」
表4 生産国別主要品目
資料:(社)日本冷凍食品協会「平成19年 日本の冷凍食品生産高・消費高に関する統計」
図9 冷凍食品「消費量」の推移
資料:(社)日本冷凍食品協会「平成19年 日本の冷凍食品生産高・消費高に関する統計」
注:「冷凍食品国内生産量」は社団法人日本冷凍食品協会調べ
「冷凍野菜輸入量」は財務省の日本貿易統計から抽出
「調理冷凍食品入量」は社団法人日本冷凍食品協会会員社のうち輸入調理冷凍食品を扱う
約30社を対象とした調査結果
表5 野菜の類別輸入動向
単位:千トン、%
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、元資料 財務省「貿易統計」