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需給動向


東京都および大阪市中央卸売市場における入荷量・価格の動向
~上旬は生育の遅れによる価格の上昇、
中旬以降は需要 の伸び悩みなどによる価格の低迷~

野菜需給部 調査情報部


(1)10月の気象概況
  全国の10月の気象は、上旬は日照時間が平年より多かったものの、ほぼ平年並みの気象条件となった。中旬に入ると少雨高温となり、下旬も引き続き高温傾向であったものの、曇雨天の日が多かったことから、降水量は平年を大きく上回り、日照時間は平年より少なかった。

 このため月間では、降水量は平年をやや下回り、気温と日照時間は平年を上回った。

(2)東京都中央卸売市場
  10月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量・価格の動向は、入荷量が11万トン、前年比104%、価格が206円/kg、前年比94%であった。レタスなど葉茎菜類の主力産地である関東地方においては、8月下旬の降雨による生育停滞から回復したこと、また、その降雨により鱗翅目害虫の発生が抑制されたことから商品化率が向上し、下旬に向かって入荷量が伸びた。一方で、果菜類のきゅうりは、10月下旬からの夜温の低下により着果が鈍くなり、入荷量が減少した。

 品目別には、次のとおり。  

 

クリックすると拡大します。

東京都中央卸売市場の動向(10月速報)

注: 平年比は過去5カ年平均との比較
資料: 東京青果物情報センター「青果物流通年報」

指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

東京青果物情報センター「東京都中央卸売市場における青果物の産地別入荷数量及び価格」

注  :

平年とは、過去5ヵ年(15~19年)の旬別価格の平均値である。

(3)大阪市中央卸売市場
 9月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量・価格の動向は、入荷量が3.8万トン、前年比106%、価格が210円/kg、前年比95%であった。

 だいこんなどの根菜類については、産地の天候不良により肥大不足となり、出荷量は前年を下回った。

 葉茎菜類は生育が順調で、入荷量も潤沢であったが、レタスについては、産地が高温で推移したことにより、生育不良となり、入荷量が前年を下回り、価格は大幅に前年を上回った。

 きゅうりやなすなどの果菜類については、成り疲れと産地の気温低下により、下旬に向かって入荷量が減少した。

品目別は、下表のとおり。

※クリックすると拡大します。

(執筆者:東果大阪株式会社 柳原孝司)

大阪市中央卸売市場の動向(10月速報)

注: 平年比は過去5カ年平均との比較
資料: 全国生鮮食料品流通情報センター

指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

ベジ探、原資料:全国生鮮食料品流通情報センター

注  :

平年とは、過去5ヵ年(15~19年)の旬別価格の平均値である。

需給トピックス

野菜のサーチャージ導入について

 野菜の流通は、周年を通して野菜を供給するため、日本の地理的な条件を生かして、南北へと産地の移動を行うとともに、ビニールハウスなどの施設野菜作も広がっている。また、大都市への大量供給を担う産地は遠隔地に形成されている。

 このような生産流通構造にあることから、昨今の原油や肥料の価格の高騰により、加温のための燃料費、肥料費、資材費、運搬費に大きな影響が生じている。

 冬の野菜の産地である宮崎県は、温暖な気候を利用して、冬期の野菜の生産を担っている。しかし、冬期の野菜は施設栽培が主であり、また大都市から遠隔であるため、現在の原油価格の高騰は経営において大きな打撃となっている。そのため宮崎県経済連は、11月1日から冬春ピーマン、冬春きゅうり、冬春トマト、冬春ミニトマトの契約取引の一部について、「青果物燃料価格調整金(サーチャージ)制度」の導入を行うと決定した。サーチャージは、すでに航空業界においては、ジェット燃料の運賃価格上昇分を価格に反映させる方法として採用されているが、野菜では初めての試みである。

 日本における野菜の作付面積は511,900ha(平成17年度実績)であるが、そのうちガラス室ハウスの設置実面積が36,240ha、延べ面積では49,565ha、雨よけ栽培設置実面積が7,887ha、トンネルほ場面積が44,426haである(表1)。施設栽培では、加温設備の設置実面積のうち、石油利用による加温が占める面積の割合は95%と高い(表2)。農業経営費から見ても、露地栽培における光熱動力費は農業経営費合計の6.6%となり、一戸当たり113,000円であるのに対し、施設栽培では、18.3%の754,000円で6.7倍となる。さらに地域別に光熱動力費を見ると、九州の割合が他の地域より高い(表3)。農林水産省九州農政局が作成した農業経営構成比における光熱動力費の構成割合は、露地栽培で7%、施設栽培では16%とその負担の大きさが分かる(図1)。

 また、運送料を保冷トラックで見ると、100km未満の732円に対し、1,000km以上では2,454円と3.4倍になっており、遠隔地からの運搬に経費がより多くかかっており、運送費の上昇も大きな負担となることが分かる(表4)。

 宮崎県経済連によると、冬のハウス栽培に10万キロリットル、金額にして120億円の重油が加温燃料として使われており、重油燃料の価格は平成16年5月に1リットル当たり44円だったものが、平成20年5月には1リットル当たり94円まで値上がりし、その他肥料費、資材費なども値上がりし、生産者の経営を圧迫しているとのことである。また、ピーマンを例として、100円の収入に対し、生産費が71円、そのうち重油燃料費は37%を占めており、販売経費を差し引くと農家の手取りは1円、1%にしかならないと指摘している。宮崎県経済連では独自の支援を行っているものの、今回のサーチャージ導入は、このような厳しい状況に対し試験的に導入を決定した。

 サーチャージの方法は、重油の基準価格を設定し、それに対して区分ごとに変動額を各ランクに設定付加していくものであり、重油の価格が基準価格を上回った場合に、各ランクに定めたサーチャージ分の金額を契約取引価格に上乗せして、実需者が宮崎県経済連などを通じて生産者に支払うという仕組みである。そして、この方法は必ずしも上乗せするだけではなく、原油価格が低下すれば減額となる方法であり、あくまで再生産価格の確保を目的としている。

 宮崎県経済連では、本年だけの特別措置ではなく、今後いつでも対応できるように積極的に取り組みたいとし、消費者をはじめ広く関係者の理解を求めていくとのことである。
  また、宮崎県経済連以外では、鹿児島県経済連がピーマン、トマト、なすなどに導入を検討しており、今後の動向を注視していきたい。

サーチャージの仕組み

契約取引の基準となっている「平成21年産青果物再生産価格」を基準

資料:宮崎県経済連作成資料

表1 野菜における園芸用ガラス室、ハウス等の設置実面積及び栽培延べ面積の推移

(単位:ha)

(注)トンネルには生食用かんしょ、ばれいしょを含まない。
資料:農林水産省「平成17年 園芸用ガラス室、ハウス等の設置状況」

表2 ガラス室・ハウス設置状況(栽培用)
(平成16年7月1日から平成17年6月30日までの間に栽培に使用したもの)
加温設備の種類別設置実面積 (野菜用)

(単位:千㎡)

注:農林水産省「ガラス室・ハウスの設置状況 平成17年」

表3 農業経営統計調査 平成18年 個別経営の営農類型別経営統計

単位:千円

1.露地野菜作経営

2.施設野菜作経営

表4 青果物における輸送手段別、距離別運送料

単位:100kg当たり円

注:

1

輸送距離は、調査対象集出荷場から出荷先の東京都中央卸売市場又は大阪市中央卸売市場までの距離である。

「その他」とは、航空、鉄道、自家用トラック等のことである。

資料:

農林水産省「平成19年食品流通段階別価格形成調査(青果物経費調査)結果の概要-青果物の流通段階別経費、価格形成の状況-」

露地野菜作における農業経営費の構成
割合(九州)

施設野菜作における農業経営費の構成
割合(九州)

資料:九州農政局 統計部「平成18年個別経営の営農類別経営統計(九州)」


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