野菜需給部 調査情報部
(1)平成20年7月(速報値)の動向
平成20年7月の野菜輸入量は、前年対比98%の195,685トンとなった。当初より低調で始まり、中国製冷凍ギョーザ事件により大幅に減少していた輸入量が、7月にほぼ回復した結果となった。生鮮野菜では未だ前年対比90%の42,488トンであるものの、冷凍野菜は同101%の76,073トン、塩蔵野菜は同107%の10,165トン、乾燥野菜は同122%の4,337トン、トマト加工品は同104%の20,901トンと増加し、また、酢調製野菜は同88%の2,789トン、その他調整野菜は同94%の38,674トン等とやや減少したものの全体合計では前年並みまで戻している。
①生鮮野菜
生鮮野菜は、対前年同期比90%の42,488トンとなった。中国製冷凍ギョーザ事件の影響により5月には同61%まで下げた生鮮野菜であったが、6月には93%と前年並みまで回復し、7月もそれを維持した形となった。増加した品目としては、にんじん及びかぶが対前年同期比120%の4,992トンと6月の同158%に継続して前年を上回って推移している。にんにくも同様であり、5月に同56%まで下げたのが6月同105%、7月同116%の2,262トンと増加している。ブロッコリーも5月には同60%まで下げたのが7月は同101%の3,808トンと回復を示した。また数量は少ないがまつたけが同125%の151トンと増加している。いずれも中国からの輸入が高い占有率を占める品目であり、中国からの輸入の回復が増加につながっている。
にんじん及びかぶの増加は、先月号にも掲載したが、国内価格が6月まで高く推移したことによると思われる。しかし、7月に入り、価格が下降したことから今後急激な増加はないと思われた。反対に減少している品目としては、ねぎは、7月は前年同期比80%の3,635トンとなり、4月は47%まで下げたが、その後回復傾向である。しょうがは、同様に回復傾向であるものの7月は同76%の1,756トンであった。さといもは低調基調が継続しており、同46%の220トンであった。さといもは冷凍野菜でも同75%と下げている。しかし、CIF単価が6月が63円、7月が81円で前年同期比145%と高くなってきており、それと併せて輸入量が回復してきているので今後増加する可能性があるといえる。
ジャンボピーマンは同84%の2,045トンと減少している。単価をみると、4月以降対前年比で80%前後と低く、特に主力産地である韓国産のCIF単価は、7月286円と昨年の352円から大きく下げており原油価格の高騰は韓国でも同じ状況下にある中、また、韓国国内でのジャンボピーマンの需要が近年増加していることから、輸出にかかるコストがまかないきれない単価の継続的な下落は今後輸入量の減少をもたらすと考えられる。
②冷凍野菜
冷凍野菜は、対前年同期比101%の76,073トンであり、平成20年になってから初めて前年を超えた。増加した品目は、いちごが同153%の4,345トンであり、86%を占める中国からの輸入が同170%と増加している。いんげん豆等が同142%の3,535トンであり、いちごと同様に76%を占める中国からの輸入が同164%と増加している。ながいも等が同134%の210トンとなり、先月の同47%から一気に増加した形となった。これも中国からの輸入が100%を占めるため中国からの輸入量の回復が増加へとつながっている。
東京都中央卸売市場における野菜の入荷量及び価格動向
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」、全国生鮮食料品流通センター「青果物旬別取扱高」、財務省「貿易統計」
注)輸入動向の詳細については、資料編2~11ページを参照してください。
(2)中国製冷凍ギョーザ事件後の意識・意向調査から
今年の輸入動向は、前年の中国側の輸出の引き締めによる減少により、年初から輸入量は低く始まっていたのに加えて1月に中国製冷凍ギョーザ事件により更に減少し、ここ数年の動向と違った動きをしてきたが、7月に入り、ほぼ平年並みまで回復している。今後の動向を実需者側の意識・意向と消費者側の意識からとらえるため、農林水産省で8月に実施した「加工・業務用野菜の取扱いに関する意識・意向調査結果」および農林漁業金融公庫の「平成20年度第1回食品産業動向調査」より実需者及び消費者の意向をみる。
加工・業務用野菜の取扱いに関する意識・意向調査結果によると、「国産野菜の使用量の1年前と比べた変化」(図1)では、増加と回答したのは52.9%であり、外食産業の方が割合が高くなっている。また理由を「国産野菜の使用量が1年前に比べて増えた理由」(図2)でみると、食品製造業では、「小売業者や顧客等から国産を使用して欲しいとの要望があったから」が66.0%、外食産業では「国産の方が外国産より品質が良いと思うから」に71.5%となり、両分野で第1位に挙げた理由は違った回答となった。
図1 国産野菜の使用量の1年前と比べた変化
資料:農林水産省「加工・業務用野菜の取り扱いに関する意識・意向調査結果」
図2 国産野菜の使用量が1年前に比べて増えた理由(複数回答)
資料:図1に同じ
また「輸入相手国・地域の検疫条件等が強化され外国産が仕入れにくくなったから」、「原油高騰により外国産の輸入コストが高騰したから」を理由とした業者はいずれも低い結果となっている。
「国産野菜の使用割合を増やす上で、国内産地に求める条件」(図3、4)では、食品製造業で最も高かったのは、「中・長期的に安定した取扱量が確保できること」となり、外食産業の「中・長期的に安定した価格で取引できること」と相違した結果となっているが、両業態でも安定した供給に関係する項目を高くしており、次の条件として、輸入野菜の特徴である、価格差、品質・規格の統一性、一次加工処理がきている。
図3 国産野菜の使用割合を増やす上で(国産のみを使用している場合は、今後も国産を
使用する上で、国内産地に求める条件(食品製造業の意識・意向))
資料:図1に同じ
図4 国産野菜の使用割合を増やす上で(国産のみを使用している場合は、今後も国産を
使用する上で、国内産地に求める条件(外食産業の意識・意向))
資料:図1に同じ
また、農林漁業金融公庫が7月に実施した平成20年度第1回食品産業動向調査結果において、「消費者および食品業界からみた食の志向について」(図5)をみると、食品業界では、マーケット拡大予想を「国産にこだわった製品」が前回調査(平成20年1月)に比べ大幅に増加している。消費者の食の志向では「国産志向」が前回調査(平成20年1月)に比べ大幅に増加している。また、「食の安全性」については、食品業界では前回と同程度であるのに対し、消費者では前回より大幅に高くなっている。「食の簡便さ」については、食品業界、消費者とも前回よりやや低下している。
図5 売上増加の製品及び今後のマーケット拡大予想(上位2つ回答、単位:%)
食品業界
現状の食の志向及び今後の食の志向(上位2つ回答、単位:%)
消費者