野菜需給部 調査情報部
①平成20年6月(速報値)の動向
平成20年6月の野菜輸入量は、前年比92%の193,596トンとなった。平年、前年と比べて低調基調なものの、前月5月は対前年同期比83%であったが、6月は増加傾向にある。野菜輸入全体における上半期は、過去5ヵ年平均91.5%の1,186,462トンとなった。これは過去5ヵ年のうちで最も低い水準となり、1月に発生した中国製冷凍ギョーザ問題の影響が大きかったといえる。
生鮮野菜は、6月は対前年同期比93%の54,786トンとなった。中国製冷凍ギョーザ問題の影響と昨年からの中国当局側の引き締めにより今年に入り過去5ヵ年平均(平成15年~平成19年)と比べて6割前後で先月まで推移してきたが、6月は回復した結果となった。増加した品目としては、にんじん及びかぶが対前年同期比158%の7,208トン、かぼちゃが同203%の1,872トン、にんにくが同105%の1,748トン、ジャンボピーマンが同112%の2,485トン、ながいも等が同142%の83トン等がある。たまねぎは前月では前年対比58%だったものが、平年並みまでの回復には至らなかったものの6月には同90%の25,495トンと大幅に増加した。
今回増加した品目ごとに動向をみると、にんじん及びかぶは、中国製冷凍ギョーザ問題により中国からの輸入が激減し、3月は対前年同期比17.5%、4月同1.3%、5月同14.0%であったのに対し、それを補うかたちで台湾、オーストラリア、ニュージーランドからの輸入が増えていた。中国産の減少から輸入単価は高く推移し、さらに国内における東京都中央卸売市場の価格も本年は高く推移していた。そのため6月の増加は、加工・業務用で国産の価格に耐え切れず輸入需要が増加したことが要因と思われる。たまねぎも同様の動きであり、先月は中国産が対前年同期比53.4%であったが、6月には89%まで増加した。かぼちゃは、平年5月頃より輸入量が減少するが、今年はメキシコからの輸入が後送りとなり増加につながっている。ジャンボピーマンは年間輸入量の60%以上を占める韓国からの輸入が増加したが、ジャンボピーマンの輸入単価は前年対比81%の299円であり、本年は低く推移している。原油価格上昇は韓国も状況が同じであり、来年作が懸念される。
冷凍野菜は、対前年同期比93%の67,006トンであり4月に平年並みまで回復した傾向は今月も継続している。中国のみでは同74%の25,053トンであった。中国からは品目によって動向に差があり、さといも、ながいも等及びえだまめは同50%前後まで低下しているのに対し、えんどう、ほれんそうは継続的に高い水準で輸入されており、ごぼうは、3月は同50%まで減少したもののその後順調に回復している。
その他の動向は、塩蔵等野菜は対前年同期比86%の10,654トン、乾燥野菜は同106%の4,546トン、酢調整野菜は同78%の2,572トン、トマト加工品は同86%の17,443トン、その他調整野菜は同93%の35,870トンであった。先月の動向と同様に生鮮のしょうがは同60%と減少しているのに対し、塩蔵のしょうがは同108%と増加、その他調製野菜のしょうがも同146%と増加していることから、生鮮の輸入形態から加工した状態での輸入にシフトしていると思われる。
生鮮にんじん及びかぶの輸入数量
にんじんの東京都中央卸売市場価格と
輸入量(生鮮にんじん及びかぶ)の推移
②中国製冷凍ギョーザ問題からの考察
中国製冷凍ギョーザ問題により、外食・中食における輸入野菜への依存度の高さ、家庭での加工食品の利用の高さ、また、それに含まれている輸入野菜への依存度の高さを認識させられた。
野菜の需要量に占める加工・業務用需要の割合は、平成2年は51%、平成12年は54%、平成17年では55%となっており、生産されている半分以上の野菜は、原料そのままのかたちで家庭で購入され、調理して消費されているものではなく、何らかの加工、もしくは、外食や中食といったかたちで提供されている。また、その傾向が年々増加していることが分かる。
加工・業務用需要のうち輸入野菜が占める割合は、平成2年が12%であったものが、平成12年では26%、平成17年では32%と増加している反面、家計消費用需要における輸入は伸びていないことから、加工・業務用需要に対応するために輸入野菜が伸びていることがうかがわれる。
輸入食材の流れを図1の最終消費から見た飲食費のフロー(平成12年の数値)でみると、飲食料に支出された最終消費額は80兆2,573億円で、うち食用農水産物に帰属するのは11兆3,753億円である。
また、飲食料の供給側からみると、国産農水産物10兆1,890億円、輸入農水産物1兆1,863億円、1次加工品および最終製品の輸入飲食料5兆3,401億円が直接または食品加工業、飲食店を経由して最終消費されている。このことからも、輸入農水産物が直接家庭に持ち込まれるのではなく、大半が加工された形態、もしくは、外食や中食で利用され、消費者のもとに届いていることが分かる。
外食、中食の状況を外食産業市場規模(図2)および中食市場規模(図3)でみると、外食産業は平成9年の29兆円を最高に減少傾向であったが平成18年、平成19年とわずかであるが増加している。中食は、平成18年、平成19年と増加率は低下しているものの、市場規模は継続して増加しており、需要が伸びていることが分かる。中食・外食では大量消費、一定価格の提供、他社との競争などから、コスト削減の追求が求められ、安価で安定的に大量に仕入れができる野菜の利用や、一次加工もしくは最終製品の利用が回避されないところである。国産を利用したいがすべてを国産でそろえることは難しいという実需者の声もある。
6月の輸入動向でもたまねぎ、にんじん及びかぶなどで国内の市況が高くなると輸入が増加するのは、このようなことが背景にあり、また、冷凍品でも品目によっては今回の中国製冷凍ギョーザ問題とは関係なく輸入が継続していることは、そうした状況を反映しているともいえるのではないだろうか。
現在、野菜の自給率は81%であるが、野菜の輸入量は平成17年に2,911千トンに達しその後やや減少し、平成19年度は2,506千トンになっている。国産野菜への回帰を求めて、加工・業務用へ国産を広げる事業が行われているが、以上のような背景がある中で拡充を進めるためには、消費者、実需者、生産者等が一体となって産地の状況、実需者の状況、そして消費者の状況を理解し合い、双方の歩み寄る努力が必要である。
また、家庭内消費においては、輸入が増加しても輸入野菜が増加していないことから、家庭内でもっと調理し食べることの大事さを伝えていくことは国産野菜の回帰へもつながると思われる。
野菜の需要量に占める
加工・業務用需要の割合
野菜の加工・業務用需要に占める
輸入割合
資料:農林水産政策研究所調べ
資料:
農林水産政策研究所調べ
注:
( )内の割合は、家計消費用需要に占める輸入割合である。
図1 最終消費から見た飲食費のフロー
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図2 外食産業市場規模の推移と増加率
資料:財団法人 外食産業総合調査研究センター「平成19年外食産業市場規模推計」
図3 中食(商品)市場規模の推移と増加率
資料:財団法人 外食産業総合調査研究センター「平成19年外食産業市場規模推計」