[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準

  • 大きく

お問い合わせ

需給動向


東京都および大阪市中央卸売市場における入荷量・価格の動向
~梅雨明け後の好天と高温の影響で、入荷量が増加、
  価格は、高温による消費の伸び悩みもあり低迷~

野菜需給部 調査情報部



(1)7月の気象概況

  7月の気象は、中下旬に平年より早い梅雨明けとなった。気温の動向としては、中旬に東北、下旬に関東が平年を下回ったものの、総じて平年を上回った。降水量については、梅雨後半の上中旬は平年より少なく、下旬は、上空に寒気が入ったことから大気の状態が不安定となり、高冷地や東北ではまとまった降雨があり、平年を上回った。しかし、関東では上旬から干ばつ気味となり、降水量は平年の15%程度であった。日照時間については、東日本を中心に、上中旬が平年を上回り、下旬に入ると平年を下回った。

(2)東京都中央卸売市場
  7月の東京都中央卸売市場における野菜の入荷量・価格の動向は、入荷量が13万2千トン、前年比107.2%、価格が202円/kg、前年比87.9%であった。6月下旬から曇雨天が続いたことから、上旬は多くの品目で出荷量が伸びなかったが、中旬以降、各地で梅雨明けとなり、高温で天候に恵まれたことから、各品目とも出荷量が伸びた。出荷量の伸びに対して、消費地東京での高温により消費は鈍くなり、また、各小中学校が夏休みに入ったことから、給食向けの食材供給が止まり、各野菜とも需要を上回る数量となり、価格は低迷した。

 品目別は下表のとおり。

クリックすると拡大します。

東京都中央卸売市場の動向(7月速報)

注: 平年比は過去5カ年平均との比較
資料: 東京青果物情報センター「青果物流通年報」

指定野菜の卸売価格の推移(東京都中央卸売市場)

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

東京青果物情報センター「東京都中央卸売市場における青果物の産地別入荷数量及び価格」

注  :

平年とは、過去5ヵ年(15~19年)の旬別価格の平均値である。

(3)大阪市中央卸売市場
  7月の大阪市中央卸売市場における野菜の入荷量・価格の動向は、入荷量が3.5万トン、前年比105%、価格が196円/kg、前年比88%であった。

 上旬は、生育の遅れから出荷量の伸び悩みがみられたが、中下旬は、梅雨明け後、天候にめぐまれたことと気温が一気に高くなったことにより生育が進み、入荷量が前年より上回り、全体的に価格が低迷した。とくにキャベツ類、レタス類、きゅうり、なす、きゅうり、ピーマンが前年を大きく下回った。

 品目別は、下表のとおり。

クリックすると拡大します。

(執筆者:東果大阪株式会社 柳原孝司)

大阪市中央卸売市場の動向(7月速報)

注: 平年比は過去5カ年平均との比較
資料: 全国生鮮食料品流通情報センター

指定野菜の卸売価格の推移(大阪市中央卸売市場

※クリックすると拡大します。

(単位:円/kg)

資料:

ベジ探、原資料:全国生鮮食料品流通情報センター

注  :

平年とは、過去5ヵ年(15~19年)の旬別価格の平均値である。

需給トピックス

7月以降の肥料供給価格から見た露地野菜生産コストについて

 JA全農が6月27日に平成20肥料年度(平成20年7月~平成21年6月)の肥料価格を発表し、県渡しベースでは、平成19肥料年度に比べて最大112.5%の大幅値上げとなった(表1参照)。これは、肥料が野菜などの作物生産において不可欠であり、生産コストの2割近くを占める重要資材であることから、JA系統は肥料価格の据え置きを行ってきたものの、近年の米国などのバイオエタノール燃料向け作物の増産などによる肥料需要の増加に対し、供給が限られていることから肥料は逼迫し続けていること、加えて、原料輸出国である中国や米国が、リン鉱石の輸出を抑制したことなどから国際価格は高騰し、JA全農へ肥料を納入している肥料メーカー各社が約40~60%の値上げを要求した背景によるものである。

 平成20肥料年度の大幅な肥料価格の値上げにより、各JAや農業資材店などは肥料販売価格を大幅に値上げすることとなり、現在、関東を中心とした産地では、平成20年産秋冬露地野菜の肥料等資材の予約購買申し込み及び配送が行われているところであるが、この値上げされた新価格が適用となる。

 表2は関東地方のあるJAより聞き取りを行った価格であるが、最大で63%の値上げとなっている。一番値上げ幅の大きい苦土重焼リンを10袋購入した場合、平成19肥料年度では23,000円であったが、平成20肥料年度では37,500円(163%)と14,500円の出費増となる。

 表3は秋冬ブロッコリーにおける10a当たりの費用と収益の試算表に平成19、20肥料年度の肥料価格で試算したものである。平成19肥料年度の費用コストに占める肥料コストは16%であったが、平成20肥料年度では22%を占めるに至っている。金額ベースでは10a当たり11,080円のコスト増となっており、50aの作付けであれば55,400円の収入減となる。

 化石燃料に代わるバイオエタノール需要が今後も続くこと、リン鉱石などの肥料鉱物資源は中国やモロッコなどに偏在しているが、その埋蔵量も現在の採掘ペースでは、あと40~50年程度で枯渇する恐れがあることなどから、肥料価格の高騰が懸念される。

 窒素、リン酸、カリといった肥料の3要素については、高度経済成長期から過剰施用されてきた経緯があり、特に、リン酸固定力の強い黒ボク土のため、過去においてリン酸の増強施肥指導が行われていた関東地方の施設園芸においては、リン酸の過剰施用と土壌の富リン化が問題となっている。また、施設園芸を中心とした果菜類栽培においては、頻繁に追肥を行うことから、収穫終了後の圃場では窒素成分などの残肥が多くなっている。

 今後逼迫する肥料需要に備えて、更に肥料コストを抑えた野菜生産が必要とされることから、耕畜連携による堆肥の適正な活用や、食品産業や量販店と連携した食料残さなどの新たな肥料化と活用、土壌診断による地域土壌の性質と残肥成分の把握と減肥、作物に適した施肥技術の一層の励行が必要であろう。

表1 主要肥料品目の価格変動率

出典:JA全農「平成20肥料年度肥料価格交渉結果」より

表2 平成20肥料年度の主な肥料の農家売り渡し価格について

(単位:円/20kg)

農畜産業振興機構野菜需給部需給業務課調べ

表3 秋冬ブロッコリーにおける10a当たりの費用と収益について

(単位:円)

農畜産業振興機構野菜需給部需給業務課調べ
販売収入の1株当たり試算は11月の該当JAの平均的な価格


元のページへ戻る


このページのトップへ