調査情報部
1.たまねぎ ~主要輸出先国である日本およびロシア向け輸出の減少~
5月の輸出量は前年同月比85%の32,472トンであった。これは主要な輸出先国である日本やロシア向けの輸出が減少しているためである。
1~5月の合計でも133,637トンと前年同期比83%と減少している。モンゴル、フィリピン、ベトナムなどの小規模な輸出相手国への輸出量は増加している一方、日本向けの輸出が大幅に減少していることが影響している。
2.にんにく ~過剰問題に直面する中国のにんにく業者~
5月の輸出量は前年同月比114%の97,432トンであり、好調な輸出が続いている。
1~5月の合計でも587,308トンと前年同期比133%で推移している。主な輸出先国はインドネシアやベトナム、マレーシアなどのアジア諸国である。
この背景としては、にんにく国内価格が低迷し、過剰在庫となったにんにくが輸出向けに仕向けられていることが原因の一つとして考えられる。上海農業網の2008年4月25日の記事によれば、年が明けてから、冷蔵されたにんにくの販売価格が生産コストにも満たず、著しい場合、にんにくを冷蔵庫に残したまま冷蔵庫を人に貸し、中身は借り手の処分に任せてしまう例も紹介している。また山東農業信息網2008年5月19日付レポートにおいても、2007年前半までのにんにく価格の上昇を受け、にわか業者が殺到し、冷蔵庫の拡張およびにんにくの買いだめを行ったが、販売に失敗している状況を報告している。
中国のにんにくのFOB価格をみても、2007年2月をピークに価格が下落しており、価格低迷が続いていることが推察される。
図1 中国産にんにく価格の推移
資料:
Global Trade Information Services社 ”Global Trade Atlas”および財務省「貿易統計」のデータより作成
注 :
中国のにんにくの価格は中国のFOB価格を円換算したもの。
3.ねぎ ~低迷する日本向け輸出と単価高~
5月の輸出量2,508トンのうち大宗を占める日本向けが、対前年同月比62%の2,475トンと減少しており、1~5月の合計についても前年同期比70%の13,034トンとなっていることから、引き続き低い輸出水準で推移している。
一方で輸出価格は今年の2月前後の中国の大寒波の影響により、中国国内でのねぎの価格が高騰した影響から大幅に上昇し、4月のFOB価格は149円の高値を記録した。5月になりFOB価格はかなり低下したが、昨年に比較すると中国の国内価格と同様に、引き続き高い水準となっている。
4.にんじん ~日本国以外への好調な輸出状況~
5月の輸出量は前年同月比87%の27,800トンであったが、主要輸出相手国である日本向けは同15%の934トンとなり、限定的な輸出にとどまっている。6月時点で中国側の輸出規制が一部で引き続き継続しているとの情報があり、規制による影響も一部にあるようである。1~5月計においても日本向け輸出は、すでに輸出量が減少していた前年同期比23%の水準であった。
一方で日本以外の輸出は堅調であり、136,718トンと前年同期比99%である。韓国、マレーシア、タイ向けの輸出が、単価高となり好調に推移している。特に韓国やマレーシアに対しては2008年1~5月の期間計で、日本よりも高単価の輸出が行われている。これは中国国内でのにんじんの市況が堅調であることが原因として考えられる。
5.しいたけ ~引き続き低迷する日本向け輸出~
5月の輸出量は前年同月比55%の566トンであった。これは日本向けが173トン(前年同月比26%)と大幅に減少したためである。1~5月の輸出量も同様に減少しており、他国(特に米国)向けの輸出は前年より増加しているが、日本の減少を補えるような規模ではなく、全体の輸出量は減少して推移している。
6.しょうが ~昨年増加した他国向け輸出が減少~
5月の輸出量は18,054トン(前年同月比81%)と、日本向けおよび他国向けとも前年同月比で減少している。1~5月までの輸出量についても減少しているが、これは昨年急増したマレーシアや韓国が減少したことが大きな要因である。FOB単価は引き続き日本向けの単価が高くなっているが、これは日本向けのデータには生鮮しょうがだけでなく、塩蔵および酢調整のしょうがが、同じ関税番号にくくられているためと思われる。
7.冷凍ほうれんそう ~回復基調にある輸出量~
5月単月の輸出量は日本向けの輸出量が対前年比75%の1,471トンと減少したが、他国への輸出が好調であることから、対前年比112%の3,756トンであった。1~5月合計の輸出量でみても、他国向け(主として米国)が増加傾向にある。
表1 中国の野菜輸出状況
単位:トン、円/kg
資料:Global Trade Information Services社 ”Global Trade Atlas”のデータより作成
注 :( )内は関税番号
:中国FOB価格の円換算はGlobal Trade Atlasの換算による
(トピック)中国の冷凍いちご生産・貿易事情
2008年6月15日付の米国農務官による中国のいちご生産・流通事情に関する年間報告に基づき、中国の冷凍いちご生産・貿易事情を報告する(GAIN Report, CH8048)。
中国では生鮮(一部加工向け含む)および冷凍向けあわせて年間で110万トン程度のいちごの生産が行われているが、そのうちおよそ1割が冷凍いちごの生産に仕向けられている。生鮮用のいちごはハウスまたはプラスチックハウスで栽培されている一方、冷凍向けいちごは露地で栽培されているとのことである。
冷凍いちごについては2006年(1月~12月)の需給データをみると、輸出される冷凍いちごが生産量の8割近くを占め、輸出志向型の品目となっている。輸出先国はEUが最大であり、2007年の数字で55%を占めている。次は日本で11%のシェアである。
冷凍いちごの需給に大きな影響を与えた出来事として、2006年10月にEUの冷凍いちごの主産国であるポーランドの訴えにより、中国からの冷凍いちごに対する暫定のアンチダンピング関税が課せられたことである。しかし、2007年4月にCIF価格が一定水準を下回らない(税番により765ドル/トン~921ドル/トン)という条件が付される一方、アンチダンピング関税は取り下げられた。
このアンチダンピング関税の取り下げおよび2007年のポーランドの作付面積の減少による生産量の減少によりEU向けの輸出量が増加し、2007年の生産量および輸出量は大きく増加した。2008年も引き続き増加傾向になると予測されている。
なお、冷凍いちごの輸入がモロッコやチリから行われているが、これは主としてホテル、レストランなどへ納入される高品質のジャムやヨーグルトに利用されるほか、いちご製品の輸出企業が残留農薬のリスクを避けるために輸入冷凍いちごを利用する例があるとされている。
表2 中国の冷凍いちご需給状況
(単位:t)
資料
:AIN Report “China, Peoples Republic of, Strawberries Annual 2008” 2008年6月15日付 CH8048より機構作成
注
:2007年は推計値、2008年は予想値
:いちご生産量は、ジャムなどの加工向け含む生鮮いちご生産量に、冷凍いちご製造に利用された原料いちごの数量を足したもの
表3 中国からの冷凍いちごの輸出状況
(単位:t )
資料:GTI社 “World Trade Atlas”より機構作成