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情報コーナー (野菜情報 2012年5月号)


野菜不足の解消策を探る
~野菜・果物の消費行動に関する調査結果から~

社団法人JC総研
主席研究員 藤本 恭展


要約】

 2011年に実施した「野菜・果物の消費行動に関する調査結果」から、日本人の野菜の摂食頻度の減少とその認識および野菜不足解消へのヒントについて、これまでの調査結果の年次推移を見ながら報告する。
 調査結果を見ると、日本国民の野菜摂食量は徐々に減少しているように見受けられる。また、自分は比較的食べている方だ、と考えている人でも、実態はそうでもないことが分かる。もっと野菜を食べるようになると思うきっかけを聞いたところ、主婦の半数以上が「手間をかけずにいっぱい食べられるレシピがわかれば」と回答している。一見、テレビや雑誌などで野菜が摂れるレシピがあふれているように見えるが、主婦の多くはそう感じていないということであり、こうしたレシピを有効に、継続的に提供することができれば、野菜の摂食量は増加する可能性があると思われる。

1.2011年調査における野菜の摂食度合に関する認識(どの程度野菜を食べているか)

 最初に主婦・単身男女別に野菜の摂食度合に関する認識を見てみよう。図1に見るように、2011年調査でのトータルで「よく食べるほうだ」と回答した人は全体の45.9パーセント、「まあ食べるほうだ」は41.3パーセントとなっており、合計すると全体の87.2パーセントの人が相当の頻度で野菜を食べているように見える。しかし、これを属性別に分解してみると、主婦の同92.2パーセントに対し、単身女性では同80.4パーセント、単身男性が同67.9パーセントとトータルよりもかなり低い割合になる。すなわち、主婦と比較すると、単身男女が野菜をあまり食べていないと感じていることが分かる。しかも、問題は2010年調査と比較して「よく食べるほうだ」と「まあ食べるほうだ」の合計が単身男女とも大きく減少していることである。

図1 野菜の摂食度合(2009→2011年推移 主婦・単身男女別)

2.実際の野菜の摂食頻度

 それでは、同様に実際の野菜の摂食頻度の2009年から2011年への推移を見てみよう。図2に見るように、「ほぼ毎日」食べる人は、主婦の76.1パーセントに対し、単身女性が57.0パーセント、単身男性が33.9パーセントと、回答者が思っている以上に低くなっていることが分かる。「週に4~5日」までを加えて比較しても、主婦と単身者、特に単身男性に大きな差があることが分かる。さらにいえば、単身男性の野菜の摂食頻度が2009年調査以降、目に見えて減少しており、単身男性の野菜離れが顕著といえるだろう。

図2 野菜の摂食頻度(2009→2011年推移 主婦・単身男女別)

3.若年層の野菜の摂食頻度が大きく減少

 今回調査において単身男性の野菜の摂食頻度が低いことが明らかだが、それでは、前々回(2009年)調査と比較して、野菜の摂食頻度がどのように変化したか、年代別に見てみよう。
 図3は、「ほぼ毎食」と「ほぼ毎日」野菜を食べる割合の推移を年代別に作成したものである。2009年から2010年にかけては、すべての年代で野菜の摂食頻度が減少している。これは、2010年の記録的な猛暑による野菜価格の高騰も大きな要因と思われる。
 2011年も東日本大震災や豪雨などの災害に見舞われたうえに、猛暑ではあったが、2010年ほどは野菜の価格が高騰しなかった。調査時点の2011年7月の総務省家計調査結果を見ても、トマトやきゅうり、ピーマンなどは前年同月に対し価格が上昇しているが、逆にばれいしょ、にんじん、たまねぎなど価格が大きく下がった野菜も多い。このため、摂食する野菜の種類に変動があったとは思われるが、多くの年代で野菜の摂食頻度が増加している。しかし、そのなかで20代以下と50代は摂食頻度が減少している。特に20代以下の減少幅は大きく、「ほぼ毎食」あるいは「ほぼ毎日」食べる割合自体もほかの年代と比較して低い。
 この設問において聞いているのは「摂食頻度」なので、これがそのまま摂食量とイコールになるとはいえないが、1回に食べる野菜の量が大幅に増加しているとは考えにくい。このことから、摂食頻度に比例して摂食量も減少していると考えるほうが妥当だろう。
 長く続くデフレ経済のなかで、物価は下落傾向ではあるものの、野菜については2010年以降、ほかの品目と比較して高騰しているイメージが強い。このことから、食費を抑えるために野菜の購買(=摂食)頻度を減らす場面を量販店などでもしばしば見かけるが、単身男性、あるいは若年層について、この傾向が顕著といえるのである。

図3 野菜を「ほぼ毎食」「ほぼ毎日」食べる割合(2010→2011年推移 年代別)

 野菜の摂食頻度の2010年から2011年への年代別の全体的な変化を図4に示した。前述したように、全体では野菜の摂食頻度が増加しているが、20代以下の層では摂食頻度が大きく減少しているうえに、「週に1日未満/食べない」と回答した人が2010年の5.3パーセントから2011年には8.7パーセントと増加している。「週に1日未満/食べない」は、「月に2~3日」および「月に1日程度」、「年に数回」、「全く食べない」を合算したものであり、「月に2~3日」ですら、とても野菜を食べているとはいえない頻度だろう。こうした層が20代以下に8.7パーセントもいることは、健康維持の面で大きな問題といえるだろう。

図4 野菜の摂食頻度(2010→2011年推移 年代別)

4.「よく食べるほうだ」と思っていても実は食べていない

 図1の野菜の摂食度合と図2の摂食頻度を比較すると、例えば単身男性が、実際の摂食頻度よりも「比較的食べている」と思っている割合のほうが多いことがわかる。すなわち、実際には不十分なのに、それなりに食べていると思っているということである。図5は、野菜を「よく食べるほうだ」と「まあ食べるほうだ」と回答した人の実際の摂食頻度をクロス集計したものである。これを見ると、「よく食べるほうだ」と回答した人でも、単身男性では「ほぼ毎食」と「ほぼ毎日」を加えても74.2パーセントにしかならない。これを逆にいうと、毎日食べていなくても「よく食べるほうだ」と思っている人が25.8パーセントいる、ということである。「まあ食べるほうだ」では、単身男性は「週に4~5日」までを加えても、59.5パーセントと6割に満たないのである。

図5 野菜の摂食度合と実際の摂食頻度

 この結果からすると、野菜の必要摂取量に関する消費者への情報提供が十分かどうか、今一度見直してみる必要があるのではないか。厚生労働省のすすめる「健康日本21」で成人の1日あたり野菜の平均摂取量の増加目標値(目標摂取量)が1日当たり350グラム以上(基準値は平成9年国民栄養調査による実態292グラム)であることを知っている人は非常に少ないということが、当研究所の調査でも明らかになっている。
 表1は、自分が野菜不足と思うか、そうでないかを聞いた設問の中で、「野菜不足ではない」と回答した人に、その理由を聞いたものである。これを見ると、9番目の「野菜を1日250グラムぐらいは食べているから」(10.6パーセント)、10番目の「野菜を1日150グラムぐらいは食べているから」(10.0パーセント)の次に、やっと12番目で「野菜を1日350グラムぐらいは食べているから」(7.1パーセント)という正解の目標値が登場する。
 こうした認知度を上げていかなければ、野菜不足との認識がないまま、野菜の摂取量が減少していくことになりかねない。疾病予防や肥満防止のためには、野菜の持つミネラル等の栄養素や食物繊維の摂取が必要不可欠である。まさに、「健康日本21」でいう、国民の態度・知識・行動レベルの向上が今後さらに重要となるだろう。(※)
 実際、厚生労働省の平成22年国民健康・栄養調査結果を見ても、20歳以上の野菜の摂取量の平均値は、2003年以降では2006年の303.4グラム(/日)をピークに2009年には295.3グラムと微減、さらに2010年には281.7グラムとさらに減少している(n=7,229)。また、なかでも緑黄色野菜については、これも2006年の102.0グラムをピークに2010年調査では93.3グラムとなっており、2009年の99.1グラムよりも減少しているのである。同調査の年代別野菜摂取量を見ても、平均値の281.7グラムに対して20~29歳(n=649)の摂取量は233.2グラムと、調査した年代のなかで1番低いものとなっている。

※「栄養状態、栄養素(食物)摂取レベルの課題を解決し、目標を達成していくためには、国民一人ひとりが食行動を変容することが必要である。個人の行動変容には、態度の変容、知識の習得が関連する」(「健康日本21」ホームページから引用)

5.わが国の野菜摂取量は中国の約4割、韓国の半分以下

 ところで、わが国は米飯が主食の国でもあり、世界各国の中で比較的野菜を食べているほうだと思っている人が多いのではないだろうか。
 それでは実際にはどうか。図6は、農林水産省ホームページおよび野菜等健康食生活協議会ホームページ掲載のデータをもとに、JC総研でグラフを作成したものである。このデータは、国連食糧農業機関(FAO)の農業統計データを使用しており、各国の2003年の野菜の国内消費仕向量(国内生産量+在庫量+輸入量-輸出量)-(飼料用+種子用+加工用+輸送時等の減耗量)=供給粗食料を、その国の総人口で割ったものである。ただし、廃棄される部分、食べ残し部分などは考慮されていない。
 厚生労働省の平成22年国民健康・栄養調査によると、2003年の日本人の(20歳以上)1人1日当たりの野菜摂取量は293.4グラムとなっており、乳幼児などの摂取量が含まれていないことを考慮すると、実際の摂取量はこれより少なくなると想定される。293.4グラムが上記計算式から得られるわが国の野菜消費量である284.9グラムよりも若干(8.5グラム)大きい数値であり、かつ殆ど差がないことから、この計算方式は妥当と思われる。
 図6を見ると、わが国の野菜消費量は、欧米諸国と比較して最低クラスではないものの、決して多い方ではないことがわかる。特にグラフ上でトップである中国と比較すると中国のわずか38.5パーセント、さらに韓国と比較しても、49.3パーセントと半分以下となっている。加えていうなら、パンが主食のアメリカよりも少ないのである。
 韓国では通常、焼肉料理店で焼肉を食べるときには野菜、キムチなどは無料でおかわり自由だという。また、漬物も日本のものより塩分が少なく、食べる量が日本人よりも格段に多いそうだ。日本人は戦後以降の食生活の変化でパン食が増えており、付け合せのサラダ、すなわち生野菜では野菜を大量に摂取することは難しい。ご飯食の減少は、おかずである野菜の煮物や漬物など、野菜が多く摂取できる食事の減少にもつながっている。こうした事情により、わが国では野菜の摂取量が横ばい、あるいは減少傾向にあると推測される。

図6 各国の1人1日当たりの野菜消費量(供給粗食料ベース)

6.どうすれば野菜を食べるようになるのか?

 これまで、日本人の野菜の摂取量・摂取頻度が減少していること、それが若年層に顕著であることを見てきた。それでは、日本人が今後健康に生きるために、どうすれば野菜の摂取量・頻度を増やすことができるのか、そのヒントを探してみたい。
 表3は、野菜を食べる量を増やす必要があると感じている人に、どうすれば野菜の摂取量・頻度が多くなると思うか、そのきっかけを聞いたものである。
 トップは「生鮮野菜の価格が安くなれば」で、全体の50.2パーセント、属性別にみても、主婦の56.1パーセントを始めとして数値が高い。これは天候や需給バランスとの関係もあり、生産者や流通関係者が日々努力しているものの、簡単にクリアできるものではなかろう。
 また、調査結果を見るとわが国では野菜が高いと思っている人の割合が多いが、2007年10月に農林水産省が発表した「東京および海外主要6都市における食料品の小売価格調査」の結果を見ると、日本の野菜の小売価格は高いものではないことが分かる。キャベツ・ほうれんそう・レタス・ばれいしょ・にんじん・たまねぎ・トマトの小売価格で東京とニューヨーク・ロンドン・パリ・ジュネーブ・シンガポール・ソウルを比較したものを見ると、シンガポール以外の野菜の小売価格はすべて東京より高いのである(表2)。2007年以降、天候による野菜価格の高騰や下落、円高または円安による変動はあるが、大きく変わるものではないと思われる。中国産など、安価な野菜の輸入増加による、相対的に国産野菜が高いというイメージの定着そのものが問題ではなかろうか。中国などよりも国土が狭く、人件費などのコストも高いわが国の野菜生産者は、再生産できるかどうか、ぎりぎりのところで野菜を生産して消費者に届けているのだ。
 余談だが、ジュネーブの農産物の小売価格は全体的に高い。この理由の1つとして、スイスでは国産農畜産物の価格が輸入品と比較してかなり高いことが挙げられる。それでも(スイスの)国産を購入する理由は、「これを買うことで農家の皆さんの生活が支えられ、それによって自分たちの生活が支えられているのだからあたりまえ」という意識の高さにあるという(参考文献:鈴木宣弘・木下順子共著 「食料を読む」2010年5月14日 日経文庫)。魚介類の多くが自給できないにもかかわらず、スイスの食料自給率は2008年で55パーセントと、わが国の同41パーセントよりも14ポイント高いのである。

 きっかけの2番目にくるのが「手間をかけずにいっぱい食べられるレシピが分かれば」であり、主婦では55.8パーセントと1番目の「生鮮野菜の価格が安くなれば」と殆ど同数の人が回答している。テレビでは毎日のようにグルメ番組が放映され、雑誌でも多くのレシピが掲載されているが、主婦の半数以上が手間をかけずにいっぱい食べられるレシピがない、と悩んでいるのである。とすれば、これを入手しやすい方法で、かつ恒常的に提供していけば野菜の摂取量・頻度が増える大きなきっかけとなるのではなかろうか。
 レシピを提供する手段は過去よりも増えているはずである。現在ではパソコンやスマートフォンも普及し、老若男女の多くが苦も無く操作している。あるいは従来からの新聞や雑誌、リーフレットという手法もある。店頭にレシピがあれば、そのレシピにある野菜を購入するきっかけにもなるだろう。行政や生産者、流通段階にかかわる多くの関係者が知恵を絞れば、その方法は無限に考えられるのではないか。
 そのほかの項目にもヒントはある。単身者では「料理に使う分だけ野菜を買えるようになれば」が単身女性の30.0パーセント、単身男性でも25.7パーセントと平均よりも高くなっている。カット野菜の需要が伸びているのも、こうした要因が大きいと思われる。国勢調査の結果を見ても、単身世帯の数は増加の一途をたどっている。生産者、流通段階の負担は増えるだろうが、こうしたニーズへの対応は今後一層強化する必要があるだろう。
 これらのきっかけを単独、あるいは組み合わせて消費者に提供することにより、野菜の消費量は増加に転じる可能性がある。手法は地域、野菜の品目などにより多様に変化すると思われるが、こうした取り組みを継続的に実施することが肝要だろう。

7.まとめ

 これまでデータで見てきたように、わが国の国民1人当たりの野菜摂取量は横ばいか、減少傾向である。短期的な野菜の高騰はあるが、その大きな理由は、食生活の変化だろう。米食中心の食事からパン食やパスタなど小麦系の食事が増えると同時に、肉や油脂などの摂取量が増え、逆に野菜の摂取量が減少しているように見受けられる。このことは、生活習慣病の増加にもつながっており、健康面での大きな課題でもある。
 また、世帯状況の変化と連動した食文化の変化も多分に影響しているだろう。かつては都市部で顕著だったが、現在では地方でも同様に、人口の減少と核家族化が進展している。これにともない、従来地域で、あるいは親から子へ、子から孫へと受け継がれてきた郷土食、伝統食、その家独自の料理・食習慣が、あるところから途切れ始めているのではないか。昔から受け継がれてきたわが国の料理は、煮る、炊く、漬けるなど、野菜を十分に摂取できるものが多かった。それが、こうした食文化の継承の切断により失われ、面倒な調理が敬遠されてきているように思える。当研究所の調査でも、「包丁の扱いは得意な方だ」という人や「野菜の下調理は苦にならない」、「生魚の下調理は苦にならない」という人が年々減少している実態がある。また、「インスタント・冷凍食品、惣菜を夕食のメインにしない」という人も年々減少しているし、これに関連して「料理に関して、自分は手作り派だと思う」人も徐々に、しかし確実に減少している(図7)。

図7 買い物・料理についての意識(抜粋)(2009→2011推移)

 デフレの進展により、牛丼に代表される外食や中食の弁当などは、かつてないほどの低価格となっている。多くの消費者が節約のためにこうした外食や中食の利用頻度を増やし、これが食の外部化、家庭での調理機会の減少につながっていると推測される。しかし、牛丼やコンビニエンスストアの弁当で必要量の野菜が摂取できるとは、とてもいえないだろう。
 脱出の見通しがたたない不景気感、可処分所得の減少や失業率の増加、勤務時間の増加など、今後もマイナス要因は多い。しかし、短期的には前述した野菜の摂取量・頻度が多くなるきっかけへの対策を行い、長期的には、国民すべて、特に若年層が食生活・食文化を見直し、野菜の摂取量を増やしていかなければ、今後、日本国民全体の健康維持が困難になるのではないだろうか。


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