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第9次卸売市場整備基本方針について

農林水産省総合食料局卸売市場室


■ はじめに

 卸売市場は、野菜、果物、魚、肉など日々の食卓に欠かすことのできない生鮮食料品等を国民へ円滑かつ安定的に供給するための基幹的なインフラとして、全国各地で日々生産・出荷される多種・大量の物品の効率的かつ継続的な集分荷、公正で透明性の高い価格形成など重要な役割を果たしています。
 しかしながら、消費者ニーズが多様化する中で、卸売業者や仲卸業者が出荷者や実需者からの新たなニーズに柔軟に対応することができず、近年、市場経由率の低下、取扱数量の減少、卸売業者、仲卸業者の経営悪化など卸売市場をめぐる情勢は厳しいものとなっており、このままでは、将来にわたり市場機能が十分に発揮できないおそれがあります。
 このような情勢を踏まえ、平成21年10月から平成22年3月まで、学識経験者、市場関係者等からなる「卸売市場の将来方向に関する研究会」を設置し、卸売市場に期待される役割と将来方向等について議論をいただいた結果、平成22年3月26日に同研究会の報告が取りまとめられました。
 農林水産省においては、この研究会報告等を踏まえ、卸売市場が最近の情勢の変化に的確に対応し、その機能を将来にわたり十全に発揮していく観点から、卸売市場整備基本方針の見直しを行い、平成22年10月26日に、平成27年度を目標年度とする第9次の卸売市場整備基本方針を策定・公表しました。
 今回は、この第9次卸売市場整備基本方針の概要についてご紹介します。

■ 第9次卸売市場整備基本方針の概要

1 基本的な考え方

a コールドチェーンシステムの確立をはじめとした生産者及び実需者のニーズへの
 的確な対応

b 公正かつ効率的な取引の確保

c 食の安全や環境問題等の社会的要請への適切な対応

d 卸売市場間の機能・役割分担の明確化による効率的な流通の確保

e 卸売業者及び仲卸業者の経営体質の強化

f 経営戦略的な視点を持った市場運営の確保

2 卸売市場の適正な配置の目標

・ 取扱規模の二極化が進展している中で、拠点的な中央卸売市場とその周辺市場によ  る効率的な流通ネットワークを構築。
 このため、新たに「中央拠点市場」を位置づけ、その基準を設定し、それぞれの役割に応じた整備を推進。(d)

【中央拠点市場のポイント】
1. 中央卸売市場間の機能・役割分担によるネットワークの構築を促進し、周辺市場も含めて全体としての集荷力を向上するとともに、物流を効率化しようとするもの。
2. このことにより、中央拠点市場以外の市場も、
 ・ 大ロットでの集荷が可能となるなど、安定的・効率的な集荷が可能となる
 ・ 情報受発信が円滑化し、ニーズに即した生鮮食料品の供給が可能となる
 など、機能強化と活性化を図る。
3. 以上のネットワークの構築が円滑に進むよう、それぞれの市場において、市場のあり方や運営方針等を明確化。
4. 中央拠点市場以外の市場の統合・集約を目的としたものではなく、施設整備にこれまでと同様の補助を行う予定。
5. 中央拠点市場は、ネットワークの構築に必要な駐車場や情報処理施設について補助率の嵩上げを要求。

【中央拠点市場のイメージ】

(注)開設者が複数の中央卸売市場を開設しており、当該複数の中央卸売市場を再編する計画を有している場合には、当該複数の中央卸売市場を1つの卸売市場とみなして取扱数量及び開設区域外への出荷割合を計算できる。

【中央拠点市場に係る記述(第9次基本方針(抜粋))】
第2 卸売市場の適正な配置の目標
 1 中央卸売市場
(2)大規模な中央卸売市場と中小規模の中央卸売市場との間での機能・役割分担の明確化を図り、効率的な流通ネットワークを構築するため、大型産地からの荷を大量に受け、周辺の中小規模の中央卸売市場と連携した流通を行う役割を担う中央卸売市場(中央拠点市場)において、大型車両にも対応可能な保管・積込施設、全国の産地や卸売市場との間での情報の迅速な処理を行うために必要な情報処理施設等の整備を推進すること。なお、開設者は、複数の中央卸売市場に分散して投資することにより、整備の効率性が阻害されることのないよう十分留意すること。
(3)(2)の中央拠点市場は、中央卸売市場(花き卸売市場及び食肉卸売市場を除く。)であって、当該中央卸売市場に係る中央卸売市場開設区域(以下1において「開設区域」という。)外にある複数の中央卸売市場へ出荷を行っており、かつ、取扱数量及び開設区域外への出荷割合について、以下の?又は?のいずれかの指標に該当すること。
 なお、中央拠点市場であるか否かの判断は、取扱品目の部類ごと及び卸売市場ごとに行う。ただし、開設者が複数の中央卸売市場を開設しており、当該複数の中央卸売市場を再編する計画を有している場合には、当該複数の中央卸売市場を1つの卸売市場とみなして取扱数量及び開設区域外への出荷割合を計算することができる。
   ① 当該中央卸売市場における取扱数量が、
    ア 青果物にあっては290,000トン以上
    イ 水産物にあっては140,000トン以上
    であり、かつ、当該中央卸売市場に係る開設区域外への出荷割合が、
    ウ 青果物にあっては30%以上
    エ 水産物にあっては40%以上
    であること。
   ② 当該中央卸売市場における取扱数量が、
    ア 青果物にあっては150,000トン以上
    イ 水産物にあっては60,000トン以上
    であり、かつ、当該中央卸売市場に係る開設区域外への出荷割合が、
    ウ 青果物にあっては45%以上
    エ 水産物にあっては60%以上
    であること。
(4)中央拠点市場とネットワークを構築する中央拠点市場以外の中央卸売市場については、それぞれの地域における生鮮食料品等の流通の中核として、実需者のニーズに適切に対応した機能の高度化を図り、効率的な流通の確保を推進すること。

・ 中央卸売市場の再編(地方卸売市場への転換を含む。)について、第8次基本方針と同様の再編基準を設定。(d)

3 卸売市場の立地、施設の種類等に関する基本的な指標

・ 市場施設の計画的な整備、効率的な利用等について引き続き記述。特に、コールドチェーンシステムに係る施設の計画的な整備、加工処理機能の強化に係る施設整備等、市場の有する機能の拡充・強化に関する記述を充実。(a・e)
・ 温室効果ガスの削減に向けた計画的な取組等環境問題への対応に関する記述を充実。(c)

【コールドチェーンシステムに係る記述(第9次基本方針(抜粋))】
第3 近代的な卸売市場の立地並びに施設の種類、規模、配置及び構造に関する基本的指標
 4 施設の配置、運営及び構造に関する事項
(1)卸売市場におけるコールドチェーンシステムの確立に対する生産者及び実需者のニーズへ早急に対応するため、低温の卸売場や荷さばき場、温度帯別冷蔵庫等の低温(定温)管理施設を計画的に配置すること。また、中央卸売市場においては、卸売業者や仲卸業者のコスト負担、地域性等を勘案した導入の効果や必要性等を考慮しつつ、中央卸売市場ごとに数値目標や方針を策定すること。

4 取引等の合理化及び品質管理の高度化に関する基本的な事項

・市場流通の効率化や市場取引の活性化について引き続き記述。
 書類の提出や報告義務の見直し等の事務の簡素化の徹底等について新たに記述。(b)
・トレーサビリティの確保やHACCPへの対応に関する記述を充実。コンプライアンスの徹底について新たに記述。(c)

【事務の簡素化及びトレーサビリティの確保に係る記述(第9次基本方針(抜粋))】
第4 取引及び物品の積卸し、荷さばき、保管等の合理化並びに物品の品質管理の高度化に関する基本的な事項
 1 取引の合理化に関する事項
(4)迅速かつ機動的な取引による実需者のニーズへの的確な対応と卸売業者や仲卸業者の負担軽減を図るため、法令に基づかない事前承認や各種書類の提出・報告の義務付けについて、その必要性を十分に検証し、事務の簡素化の徹底を図ること。また、生産者から実需者に至るまでの流通全体を通じた情報技術の活用や様式・書式の統一等による事務の効率化に向けた取組を推進すること。
(9)卸売市場においては、原産地表示の徹底等により公正な取引を推進するとともに、生産履歴情報等の適切な確認・伝達による消費者の信頼の確保に努めること。また、食中毒等の食品事故へ適切に対応するため、生鮮食料品等の仕入先及び仕入日、販売先及び販売日等の入出荷に係る記録の作成・保存を適切に行うことにより、トレーサビリティの確保に努めること。
 なお、その際には効率化を図り、コストの削減に最大限努力すること。

5 卸売業者及び仲卸業者の経営近代化の目標

・ 卸売業者及び仲卸業者の経営規模の拡大への取組の推進等について引き続き記述。
 加工処理、情報受発信等の機能や経営体質の強化に関する記述を充実。(a・e)

【加工処理等の機能強化に係る記述(第9次基本方針(抜粋))】
第5 卸売業者及び仲卸業者の経営の近代化の目標
 3 卸売業者及び仲卸業者に共通する事項
(1)大規模小売業者、専門小売業者、外食産業事業者等のニーズへ適切に対応し、経営体質の強化を図るため、加工処理機能、貯蔵・保管機能及び輸送・搬送機能の強化に取り組むこと。

6 その他

・ 開設者、卸売業者及び仲卸業者等が一体となった経営戦略の策定、経営戦略的な視点からの市場の運営体制の整備等について新たに記述。(f)

【経営戦略の策定等に係る記述(第9次基本方針(抜粋))】
第6 その他
1 中央卸売市場においては、開設者及び市場関係業者が一体となって、卸売市場全体の経営戦略的な視点から、それぞれの卸売市場の位置付け・役割、機能強化の方向、将来の需要・供給予測を踏まえた市場施設の整備、コストも含めた市場運営のあり方等を明確にし、経営展望を策定するなど、卸売市場としての経営戦略を確立する。
 また、中央卸売市場の運営に当たっては、経営の視点を導入し、卸売市場全体としての意思決定を的確に行うことに十分留意する。その際、独立性が高く、経営責任の明確化や自主性の拡充等が期待できる地方公営企業法(昭和27年法律第292号)に基づく事業管理者等の活用も視野に入れて対応する。また、開設者は、施設の整備と維持管理、市場関係業者への指導監督にとどまらず、市場関係業者と一体となった市場運営に対する取組を行う。

■ おわりに

 卸売市場整備基本方針は、今後の卸売市場の整備及び運営の指針となるものであることから、この基本方針に沿って、卸売市場の計画的整備及び運営が推進されるよう、関係者の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

※ 卸売市場整備基本方針の全文は、農林水産省のホームページで見ることができます。
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/sijyo/info/index.html


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