青森県では、夏季冷涼な気象や豊かな水資源、生産力の高い農地、蓄積された生産技術などを活用して、消費者が求める安全・安心で良質な農産物を生産し、「売れる商品」として積極的に売り込んでいく「攻めの農林水産業」を強力に推進しています。
青森県では、6月から11月の期間に1カ月以上収穫できるいちごのことを「夏秋いちご」と称しており、その用途は、主としてケーキなどの業務用となっています。これまで、その大半は輸入品で占められていましたが、需要者側には、国産品に切り替えたいという意向があります。
このため、県では、夏季冷涼な気象が生産に適し、高収益も期待できる夏秋いちごを平成19年度に戦略作物(県が特定の品目を指定し、集中した施策の投入により生産拡大を図る作物)として位置付け、全国有数の夏秋いちご産地となることを目指して平成20年度から各般の取り組みを展開しているところです。
今回は、夏秋いちごを取り巻く状況と産地づくりに向けた県の取り組みなどについて紹介します。
いちごは、「とちおとめ」などの冬から春にかけて生産される「一季成り性品種」と、夏から秋にかけて生産できる「四季成り性品種」に大きく分けることができます。
四季成り性品種のいちごは、夏秋期に生産できるものの、一般的に日持ちが悪く不揃いなことなどから、あまり栽培されてこなかった経緯があり、このため日本国内では、6月から11月の期間がいちご生産の端境期となっています。
しかし、いちごはケーキに使われるなど年間を通して需要があるため、この期間は、外国産のものが年間3,000トン以上輸入されている状況にあります。
しかし、製菓業界など需要者においては、安全・安心などの観点や腐敗などが少なく歩留まりが高いことから、輸入いちごに替えて国産のいちごを使用したいという意向が強くあります。併せて、いちごを夏場の生食用として、本格的に販売することを検討するところも出てきています。
このような中、民間企業や国・県の試験研究機関により次々と四季成り性品種が開発されており、食味の優れた品種も増えているところです。また、夏秋いちごの生産は、全国的に増加の一途をたどっています。
四季成り性品種の作付面積は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センターが平成16年に行ったアンケート結果によると、全国で50ヘクタールに留まっていましたが、本県が各都道府県に依頼して行った調査結果によると平成21年には約85ヘクタールとなっており、5カ年間で約1.7倍に拡大しています。
現在、主な産地は、北海道がトップで全体の約半分を占めており、次いで青森県、長野県、宮城県となっているところです。
夏秋いちごを栽培するには2つの方法があります。一つは一季成り性品種を利用する方法で、もう一つは四季成り性品種を利用する方法ですが、夏秋いちごの品種は、四季成り性品種がそのほとんどを占めています。
この四季成り性品種は、全国どこででも栽培することができますが、気温が高い地域では高品質ないちごを生産することが困難となっています。これに対し、青森県は、夏季冷涼な気象条件と多様な地域性を持っていることから、四季成り性品種を利用した夏秋期のいちご生産に適した地域であり、夏秋いちごの一大産地を形成できる可能性を有していると言えます。 そこで、県では、他県に先駆けて生産の拡大を進め、全国的に生産や販売をリードできる産地となることを目指し、平成20年度から「『夏秋いちご』日本一飛躍産地育成事業」を主体として、ソフト・ハード両面から次の取り組みを展開してきました。
これらの取り組みの結果、生産者および生産希望者に対する情報伝達・指導体制が整備され、関係者の関心が高まったほか、高温対策や日長コントロール対策など栽培技術上の課題の段階的な解消が図られ、栽培面積の拡大と販路の開拓が進んでいるところです。
具体的には、平成21年度の栽培面積(収穫面積)は、平成19年度に比べ3.7ヘクタール拡大して13.4ヘクタールとなったほか、平成22年度からの収穫開始に向けたハウスの整備が各地で進みました。
また、首都圏のテーマパークや市場、県内ホテルなどへの出荷が、新たに開始されたところです。
今後、青森県が全国有数の夏秋いちごの産地となるためには、栽培面積の拡大とともに生産者の栽培や出荷などに係る技術を向上させ、生産量の増大とロットの安定確保を図ることが、最も必要となっています。併せて、一定の太い販路を確立させ、将来を見据えたブランド化に係る検討にも着手することが求められます。
そこで、県では、平成22年度から新たに「夏秋いちご産地強化プロモート事業」を主体として、産地の強化・拡大に向けた意識啓発、生産振興策の推進、県産夏秋いちごのブランド化の推進に取り組むほか、生産・出荷施設などの導入に係る経費に対して4分の1以内での補助も実施することとしています。
季節ももうすぐ6月を迎え、本格的な夏秋いちごの出荷の時期となります。県では、関係機関・団体と連携し、良品安定生産に向けて積極的・スピーディーに対応していきたいと考えております。
また、県では、本県の農業関連のホームページ「アップルネット」を通じ、月1回、「夏秋いちご通信」を配信し、夏秋いちごに係る旬の情報も提供しているところです。関心のある方は、是非一度ご覧になってください。