さといもは、古くから日本人に好まれている野菜で、煮物や汁物の具材として高い人気があります。しかし、国内の収穫量は、平成18年が17.4万トンと、平成元年の約50パーセントに減少しています。国産さといもの減少した結果、輸入さといもが急増し、近年の輸入量は、毎年12万トン~13万トン(生鮮品輸入量と加工品の生鮮換算量の合計)で、そのほとんどが加工・業務用に供されています。
さといもは、食用部位によって4種類に大別されます。子芋用品種(「
埼玉県農林総合研究センター園芸研究所では、通常の「八つ頭」とは異なり大きな1個の丸い親芋を形成する系統を県内から収集して栽培しました。その結果、収集した系統は、形質が安定しておらず、通常の「八つ頭」の形態となるものが多く発生しました。その中でも、丸い親芋の形質を維持していた系統を平成14年から7系統に分け、選抜を繰り返した結果、平成17年に形質の固定度が90パーセント以上の1系統を選抜し、「丸系八つ頭」と命名しました(写真1)。
「丸系八つ頭」の親芋は丸く、重さは500~1,500グラム程度になります。一般的な「八つ頭」に比べ皮むきが効率的に行え、歩留まりが高く、加工・業務用に高い適性があります。食味も「八つ頭」と変わらず、親・子芋ともに良食味です。
埼玉県農林総合研究センター園芸研究所では、平成20年度から新たな農林水産施策を推進する実用技術開発事業「業務用需要に対応した露地野菜の低コスト・安定生産技術の開発」の中で、「大型系統利用によるさといもの多収技術の開発」に取り組んでいます。
研究内容は、「丸系八つ頭」が多収となる「栽植密度」、「生育途中での土寄せ量」、「かん水の有無による効果」を明らかにすることを目的としています。
(1)「丸系八つ頭」が多収となる栽植密度の検討
平成20年3月26日に「丸系八つ頭」の種芋を定植しました。定植時に栽植密度を変えて植えたところ、「丸系八つ頭」の親芋1個の重量は、10アール当たりの栽植密度が増えると軽くなることが分かりました(図1)。
10アール当たりの栽植密度が、2,777株の場合が、親芋換算収量が10アール当たり2,440キログラムと最大となることが明らかになりました(図2)。
(2)「丸系八つ頭」の土寄せ量と親芋収量の検討
平成20年3月26日に「丸系八つ頭」の種芋を定植し、10アール当たりの栽植密度を2,083株(当研究センターにおける、試験用の標準的な株数)とし、7月8日にさといもの畝上に通路の土を小型機械で跳ね上げました。収穫時の「丸系八つ頭」の親芋は、跳ね上げた土の量が5センチよりも10センチの場合の方が親芋縦径が大きくなり、親芋1個当たりの重量が増加することが明らかになりました(表1、写真2)。
(3)「丸系八つ頭」のかん水の有無と親芋の収量の検討
平成20年3月26日に「丸系八つ頭」の種芋を定植し、10アール当たりの栽植密度を2,083株とし、土寄せ量を高さ10センチの場合のかん水の有無による親芋の収量の違い検討しました。
「丸系八つ頭」の親芋は、1回当たり20ミリのかん水を行うことで、37パーセント増収することが明らかになりました(表2)。
「大型系統利用によるさといもの多収技術の開発」の一年目の試験結果を紹介しましたが、この試験により、「丸系八つ頭」の多収穫技術については、ある程度目途がつきました。今後は、「丸系八つ頭」の収量性を落とさず、省力化により安定的に生産する技術について検討を続けます。
「丸系八つ頭」の生産は、平成21年に埼玉県内の一カ所において試作が始まりましたが、当研究センターでは現在、この大型系統さといも「丸系八つ頭」を利用していただく実需者を探しています。興味のある方は、当研究センターまでお問い合わせ願います。