ごぼうは、食物繊維が多く整腸作用を助けるため、メタボリックシンドロームが気になる現代人にとって注目すべき食材です。しかし、ごぼうは、下ごしらえ(皮むき、あく抜きなど)に手間を要することもあり、消費量は減少傾向にあります。
この下ごしらえの手間を請け負っているのが、一次加工業者です。洗浄、皮むき、切断を専用機械で処理し、加工された形態でスーパーや食品加工業者などに卸しています。
ごぼうの加工・業務用需要は、用途別に求められる規格が異なり、根茎が3~4センチで棒状にカットしたものは、きんぴらごぼうやごぼうサラダに使用、根茎が1.5~3センチで斜め切りや乱切りのものは、煮物などに使用、根茎が1.5センチ以下のものは、漬物などに利用されます。
ごぼうの国内出荷量は、約13万トン~14万トンであり、主力産地の青森県が全体の29パーセントを占め、次いで茨城県が同14パーセント、北海道が同10パーセントを占めています。一方、ごぼうは年に約4~6万トンが輸入されており、輸入されたごぼうは、ほとんどが加工・業務用として使われています。
ごぼうには、長根種と短根種などがありますが、長根ごぼうは、以下の点から栽培が難しい品種です。
長根ごぼうの栽培は、根が地下1メートル程度まで伸びるため、耕土が深いほ場が必要となります。
そのため、60馬力程度の大型トラクター、ロータリートレンチャー(ごぼうの作土確保のため1メートル程度を空掘する)、ごぼうハーベスター(1メートル程度伸びた根を機械で掘上げる)などの重装備の機械が必要となり、多大な初期投資が必要となります。
一方、短根ごぼうの栽培は、根の長さが50センチ程度のため、深い耕土を必要とせず、軽微な機械装備で栽培でき、長根ごぼうに比べコスト削減および省力化が期待できます。
取り組みの背景と試験内容
当試験場では、ごぼうの国内出荷量14万トン(平成20年度)に対して4万トン以上の輸入(生鮮)があることや、不況による低価格志向の一方で、消費者の安全・安心を意識した国産嗜好も根強いことから、農林水産省の「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」を活用して、以下の3つのテーマの試験に取り組み、短根ごぼうの低コスト省力生産技術を確立し、産地の拡大および国産シェアの拡大に資することとしました。
(試験テーマ)
○短根ごぼうの機械化栽培体系の確立
○用途に応じた品種の選定と栽培方法の確立
○短根ごぼうの品質特性の把握
(1) 短根ごぼうの機械化栽培体系の確立
一般の耕種農家が所有している20~30馬力程度のトラクターが利用できる、低コ ストで省力的なは種および収穫の機械化一貫体系を確立しました。
(ア) は種作業
は種作業は、トラクター(21馬力程度)の前方に「肥料散布機」を装着し、後方に 「粒剤散布機」「畦整形板」「は種機」「マルチャー」を装着することにより、「施肥」「耕起」「畝立て」「シーダーテープは種」「粒剤施用」「マルチ」の各作業が一度に行える、機械化一貫体系を確立しました。
(イ) 収穫作業
収穫は、トラクターに掘取機を装着し、刃の部分が地下50センチに侵入・振動し、ごぼうを浮き上がらせ、収穫します。一工程で幅80センチ程度の範囲が収穫できます。
(2) 用途に応じた品種の選定と栽培方法の確立
試験栽培は131日間行い、その結果、カット用に適した品種は、根重が、1株当たり218グラムと一番重く、根茎が、25ミリと一番太い「新ごぼう」であることが分かりました(表2)。また、栽植密度は、株間、条間を広くとることにより、外側の条ほど根重が重く、根茎が太くなることから、栽植密度を変えることにより、根重や根茎が変えられることが分かりました(表3)。
本稿では、これまでの試験結果から、加工・業務用に適したごぼうの品種の選定、は種、収穫作業の機械化、カット用に適した根重、根茎のごぼうを生産する栽培方法について紹介しましたが、今後は、カット用に加えて漬け物用などの、ほかの用途に適した品種、栽培方法の確立と、もう一つの課題として、ごぼうは、品種や生育日数などの栽培方法により品質が変化するという特性があることから、栽培方法により柔らかさや、あくの強さがどのように変化するのかについて明らかにしたいと思います。