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生産者と連携した使用野菜の全量国産化への取り組み

株式会社 リンガーハット
PRIR部広報担当 堀江 純平


 株式会社リンガーハットは、20年以上も前から自社の商品に使用するキャベツを国内産地との契約栽培により調達している。さらに、使用する野菜の全てを国産野菜に切り替えようと意欲的に取り組んでいる。この取り組みは、多様な食事ニーズに応えたフードサービスの提供や環境問題への配慮など創意工夫を生かした事例として、本年4月の「第17回優良外食産業表彰事業」の国産食材安定調達部門において農林水産大臣賞を受賞した。

会社の概要

 当社、株式会社リンガーハットは、昭和37年に長崎県で創業しました。現在は、長崎ちゃんぽんの専門店「リンガーハット」を450店舗、とんかつの専門店「はまかつ」を110店舗展開しております。特にリンガーハットは、昭和49年の開店以来全国に展開しており、それまで長崎のローカルな料理であった「ちゃんぽん」と「皿うどん」を全国の皆様に数多く食していただいていると自負しております。


現在の「リンガーハット」

 株式会社リンガーハットは、20年以上も前から自社の商品に使用するキャベツを国内産地との契約栽培により調達している。さらに、使用する野菜の全てを国産野菜に切り替えようと意欲的に取り組んでいる。この取り組みは、多様な食事ニーズに応えたフードサービスの提供や環境問題への配慮など創意工夫を生かした事例として、本年4月の「第17回優良外食産業表彰事業」の国産食材安定調達部門において農林水産大臣賞を受賞した。

契約取引の開始

 当社は、昭和61年に開始した熊本県の伊佐津有機農法研究会との契約栽培を皮切りに、当社グループで最も多く使用する野菜「キャベツ」の契約取引を全国約20カ所の産地と行っています。現在では、年間使用する約6,100トンの「キャベツ」をすべて国内の契約栽培により確保しています。また、年間約4,000トン使用する「もやし」は全量、当社工場で栽培しています。

国産化への想いと壁

 キャベツ以外の野菜の「コーン」「たまねぎ」「にんじん」「きぬさや」「にら」「ねぎ」などは、国産品を使うとコストと調達量の問題があり、これまでは外国産を使用してきましたが、昨今の食の安全・安心の問題、食料自給率の問題、環境・フードマイレージの問題、農業就労問題を考えた時に、国内のお客様にご愛顧いただき育てていただいた食の企業として、日本のおいしい食材を見直し、少しでも日本の農業に貢献できればとの想いから、今回、わが社は「キャベツ」「もやし」以外の野菜に関しても全て国内の産地から調達することとしました。

 しかし、現実問題として、コストと調達量の問題が予想以上に大きく難航しています。

 例えば、これまで中国から調達していた「きぬさや」は、国産の「オランダさやえんどう」に変更予定ですが、調達を担当する当社購買部の調べでは、現在の国産「オランダさやえんどう」の国内総生産量は約50トンであり、当社は最低でも年間約250トンが必要になります。必然的に国内の総生産量の5倍の量を新たに国内の産地で生産していただく必要がでてきました。その時、まず生産の依頼をお願いしたのが、前述しました当社が約20数年取り引きをしているキャベツの生産団体の皆さんです。

 しかし、キャベツの生産団体の皆さまですから、早々簡単に生産の承諾をいただいたわけではありません。生産リスクの問題が多々あります。しかし、長年お付き合いいただいている生産者の方々との信頼関係により、試験栽培に至っております。現在は試行錯誤の試験栽培から本格的な栽培へとなんとか移行し、今年の秋より全量を国産野菜で調達できる目処がたちました。



茨城中央園芸のキャベツ
茨城中央園芸の皆さん


南阿蘇の収穫予定のキャベツ
南阿蘇有機の会の皆さん


JA上益城の生産者の皆さん
佐賀バルーンキャベツの皆さん

国産だから提供できる新鮮さ

 今回、当社が外国産から国産に変更する予定の野菜の総量は年間で約2,500トンになります。これまで外国産の野菜は、小さくカットされた冷凍野菜でした。今回国産に替わり、冷凍ではなく生のフレッシュ野菜を使用できる事になりました。よって野菜のカットも一つ一つを大きくカットすることができ、店舗で商品にした時に野菜の本来のフレッシュ感や甘味をお客様に感じていただけることになります。ただし、野菜を工場で一時加工する際、野菜のへたを取ったり、野菜をカットする機械が新たに必要となりました。外国産のメリットは、購入コストはもちろんですが、加工がしっかりされていることです。国産の野菜を外食で使えるようにするには、工場にしっかりとした加工技術のある設備投資を行う必要があります。当社では、以前より工場で使用する機械設備を自社の生産技術部門で内省化し経費低減に努めてきました。今回新たに工場に増設する加工ラインも同様です。すべては、お客様にリーズナブルでお値打のある商品を提供する為です。今後、この工場での加工技術を高め、外国産の加工食材に対抗できるように努めます。

全使用野菜国産化への第一歩

 このほかの野菜も含め、全使用野菜国産化の第一弾として、「ギョーザ」を平成21年4月より全店販売することができました。この「ギョーザ」は、使用する野菜が国産であることはもちろんのことですが、「ギョーザ」の皮に使っている小麦に国産の米粉を配合したことにより、これまでよりも上質かつ、おいしい「ギョーザ」になり、お客様からご好評をいただいております。

 「ギョーザ」の販売と時を同じくして、「ちゃんぽん」「皿うどん」を主力とした商品全てを国産野菜にした店舗を鹿児島県と静岡県の約20店舗で先行展開しております。また、7月からは、先行販売エリアを熊本県と千葉県まで拡大し、現在約50店舗(7月1日段階)にて販売しております。お客様からは、野菜が新鮮で美味しくなったとご好評をいただき、先行販売エリアの店舗では実施前と比較して1割~2割の売上が上がっております。今後は、本年の秋に国産野菜の調達が全店舗分そろい次第、全国展開の予定で考えております。



長崎ちゃんぽん
長崎皿うどん

契約取引が安定した調達とコストの低減につながる

 さて、ここでどうしても避けて通れない問題が調達コストの問題です。現在、通常のレギュラーちゃんぽんは450円で販売しております。野菜をすべて国産で調達した場合、概算で一杯当たりの材料原価が100円程上がってしまいます。これをそのまま価格に反映すると、お客様にご迷惑をおかけすることになります。当社では、工場・店舗の体制を見直し、無駄を省いた経営努力を行い、価格を大きく上げることなく提供できるように考えております。先行販売店舗では、一杯当たり40円から50円の価格アップで現状販売しておりますが、一杯当たりの野菜の増量とスープの改良を行い、値上げしてもお客様が納得し満足していただくよう努力しております。現段階では価格に対してのお客様からの不満はほとんど無く、今後の売上の推移を確認する必要があります。

 今後、国内の外食企業と日本の農業・水産業・畜産業が連携していくには、企業側の理解と努力も必要です。先ほどの工場における加工の話は一例ですが、外食企業には日本の生産者と協調し、お互いに成長するといったスタンスが必要です。そういった観点からも、外食産業と国内生産者との契約栽培の取引は、安定的な調達とコストの低減につながります。当社が、使用する野菜をすべて国産野菜に切り替えることができるのも、契約栽培の取り引きがあってのことです。

契約取引を継続させるためのポイント

 最後に、企業側と生産者側が契約取引をうまく行っていく上でのポイントを上げますと、まず、年間の契約取引金額と取引量を契約通り双方が守ることは当たり前のことですが、生産者の方は、例えば、ある野菜の生産量が年間100あった場合、その内50を価格が固定している契約栽培の企業へ、そして残りの50を価格が変動する市場に出す、このバランスを考え年間を通じて作物ごとに固定収入と変動収入の計算をしっかり立てる。どちらかに比重が大きすぎるとリスクが高まります。成功している生産者の方々はこのバランスを綿密に考え取り組んでいらっしゃると思います。また、企業側と生産者が双方にコミュニケーションを活発に取る必要もあります。企業側は産地を訪問し、成育状況をしっかり確認し、予定量が確保できない場合は早めにリスク対応を行う。また生産者は、企業側の加工工場や、自分以外の契約産地を訪れてほかの産地の方々と情報交換を継続的に行う必要があると思われます。いずれにせよ、この音頭は企業側が先導し、生産者を巻き込む必要があります。当社でも年に数回、契約産地の皆さんに当社の工場に来ていただき、工場見学はもちろん、情報交換会と慰労の会食会を行っています。すべては野菜を供給していただいている生産者あってのことと思っているからです。

 今回、当社は使用する野菜の国産化を通して、今後益々日本の生産者の皆様と手を取りあい、「強い国内農業体制の構築」と「国内の食料自給率向上」に微力ながら貢献していきたいと考えています。


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