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「今後の野菜政策に関する検討会」の状況について
(中間取りまとめについて)


農林水産省 生産局生産流通振興課 価格班


 「今後の野菜政策に関する検討会」については、昨年7月から、近年の野菜を巡る状況を踏まえた国産野菜のニーズに的確に応える上での諸課題を整理するとともに、それに対応した今後の野菜の生産・流通・消費対策・輸出促進策の検討を行ってきたところです。

 これまで6回の会合及び1回の現地検討会を開催し、10月には「加工・業務用野菜の生産・流通対策の方向性」の取りまとめを行うとともに、このたび、需給調整、消費拡大、輸出促進の各対策についての現状と課題・今後の方向及び産地育成対策の現状と今後の検討課題を整理した中間取りまとめを行いましたので、ご紹介いたします。

 今後、産地の実態把握及び関係者からの意見聴取等を行った上で、検討会を再開し、「持続可能な生産・流通による野菜の供給力の向上」に向けた最終的な取りまとめを行うこととしています。

今後の野菜政策に関する検討会中間取りまとめ(概要)
~持続可能な生産・流通による野菜の供給力向上に向けて~

1 加工・業務用に対応した生産流通対策の方向性

【現状・課題】
○加工・業務用の需要が全体需要の過半(55%)を占めるまでに増加する中で、加工・業務用野菜の国産シェアは7割弱に減少(家計消費用の国産比率:98%)。

【今後の方向】
○産地における加工・業務用需要対応を強化するとともに、産地と実需者をつなぐ「中間事業者」の機能を活用した供給経路を全国的に構築。

2 需給調整対策等の現状と課題、今後の方向

(1) 需給調整対策
【現状・課題】
○主要野菜の計画的な生産・出荷の推進及び価格低落時における緊急需給調整の円滑な実施の確保。

【今後の方向】
○野菜の需給調整対策に対する一層の国民の理解醸成
○緊急需給調整に関しては、土壌還元以外の有効利用の拡大に向けた対応の強化(有効利用先の開拓、飼料化に向けた研究等)

(2) 消費拡大対策
【現状・課題】
○食の多様化・簡便化、子どもの野菜嫌い等により、1人当たりの野菜消費は減少傾向。全ての年齢階層で摂取量が目標(1日350g)を下回る。

【今後の方向】
○野菜消費の減少要因への対応の推進(専門家の育成、半加工品の開発、世代別の消費拡大PR、栄養面・機能面の訴求)
○野菜の消費拡大活動における官民連携の推進

(3) 輸出促進対策
【現状・課題】
○輸送中の荷傷み等による品質劣化の防止
○アジア諸国における潜在需要の把握や新規需要開拓

【今後の方向】
○専用容器など輸出用資材の開発
○輸出先の検疫条件や潜在需要に係る調査、産地への情報提供
○新たな料理方法や食べ方の積極的な提案(生食等)

3 産地育成対策の現状と今後検討すべき課題

【現状】
○従事者の高齢化や減少等を背景に、作付面積・生産量ともに減少傾向。
○連作障害等による品質低下、補完労力不足等の課題も拡大。
○生産資材コスト、物流コストが増大し、コスト縮減に向けた取組の必要性が高まっているが、産地によっては後継者不足等により新たな投資意欲が減退。

【今後検討すべき課題】
○消費者・実需者ニーズの変化に対応した産地の再構築、経営力強化のあり方
○育成すべき産地像の明確化とその実現に向けた総合的な支援
  ・産地の経営力向上を担う組織・人材の育成
  ・補完労力の調整
  ・生産資材の円滑な確保
  ・集出荷施設等基盤的施設の整備の推進等
○野菜産地の育成に向けた「指定産地制度」、「野菜価格安定制度」のあり方

資料

今後の野菜政策の方向について
(今後の野菜政策に関する検討会中間取りまとめ)
~持続可能な生産・流通による野菜の供給力向上に向けて~
平成20年12月
今後の野菜政策に関する検討会


はじめに

 野菜については、農業者の高齢化等により生産面積・生産量が減少傾向で推移している一方、加工・業務用需要に占める輸入割合は、増加傾向で推移している。

 本年1月の中国産冷凍食品問題等を契機として国産野菜に対する食品産業・消費者のニーズが高まり、国内産地の加工・業務用需要への対応の強化が求められている。

 また、生産構造の脆弱化が進行している野菜産地における担い手育成、実効性のある需給調整の円滑な実施、20~40歳代の野菜の消費拡大や海外における新たなマーケットとしての輸出促進が求められており、これらの課題に的確に応えることによって、野菜の供給力の向上を図ることが期待されている。

 このような状況を踏まえ、国産野菜のニーズに的確に応える上での諸課題を整理するとともに、それに対応した今後の野菜の生産・流通・消費対策・輸出促進策を検討するため、学識経験者、生産・流通・消費関係者等からなる検討会を開催することとし、今年7月に「今後の野菜政策に関する検討会」を設置し、これまで、6回の会合、1回の現地検討会の開催等を通じて精力的に議論を行ったところである

 この間、検討会においては、喫緊の課題である加工・業務用対応強化のための対策のあり方について迅速かつ集中的な議論を行い施策の方向性をとりまとめるとともに、その後、分野別の議論を行い、需給調整、消費拡大、輸出促進の各対策について、現状と課題及び今後の方向についての整理を行った。

 また、産地育成対策については、今後の検討課題を整理し、行政に提示することとした。これは、産地育成の今後の方向の検討に当たっては、「産地」の果たすべき役割が多様化してきており、まずは、各産地の実態を十分調査するとともに、関係者の考え方の把握や必要な調整を行うことが不可欠であり、そのためには一定の期間を要すると考えられるためである。

 今後、提示した検討課題を踏まえ、行政において産地実態の把握のための調査や関係者の考え方の把握等を行った上で、産地育成対策等の今後の方向についての本検討会における議論を再開し、「持続可能な生産・流通による野菜の供給力の向上」に向けた対策について最終的な取りまとめを行うこととする。

Ⅰ 総論
1.野菜政策の意義

○ 我が国の野菜産出額は、年間2兆円を超える(平成18年:2兆574億円)。
  これは、我が国の農業総産出額の約4分の1を占めるものであり、野菜は、国民の日々の食生活において極めて重要な食材となっている。

○ 一方、気象の影響を大きく受ける野菜生産は、生産量及び価格が短期的に変動しやすく、また、価格変動が次期の作付意欲に影響することにより更に生産量を増減させることから、野菜の生産・出荷量の増減が、より大きな価格変動をもたらすという特質を有している。

○ このため、野菜に関しては、その安定的な生産・出荷を確保するための仕組みづくりとその円滑な運営が重要な政策課題であるが、その基本は、主要野菜について、産地の育成並びに需要動向に的確に対応した計画的な生産・出荷及び効率的な流通を推進することにある。

2.加工・業務用に対応した生産流通対策の強化

○ 現在、我が国における野菜の需要は、家計消費用需要と加工・業務用需要がそれぞれほぼ半数を占めており、後者がその割合を増大させている状況にあるが、家計消費用が高い国内自給率(平成17年:98%)を維持している一方、加工・業務用需要については、輸入品にシェアを奪われつつある。このため、国内産地における加工・業務用需要対応を強化するとともに生産者、「中間事業者」、食品製造事業者等が一体となって、加工・業務用野菜の安定した供給経路を構築していく必要がある。

3.需給調整対策等の的確な推進

○ 主要野菜の計画的な生産・出荷を推進するための「需給調整対策」については、対策全般についての国民、消費者の理解醸成に向けた取組みが引き続き必要であるとともに、特に、緊急需給調整については、市場隔離する野菜の有効利用に向けた対応の一層の強化等が求められる。

○ また、野菜の消費拡大については、1人当たりの野菜消費量の回復を図るべく、野菜を多く摂取できる新たな食生活を提案する取組みを積極的かつ継続的に行っていく必要がある。
  さらに、野菜の輸出促進については、高品質の国産野菜に対する国際的な評価の向上を目指し、官民での継続的な取組みの推進が重要である。

4.産地育成対策に関する検討課題

○ 多くの野菜産地が、高齢化に伴う後継者の減少やコスト縮減の困難性等の課題に直面している中で、その持続的発展を確保していくためには、担い手の経営能力の向上とともに、新たな消費者、実需者ニーズに対応した産地の再構築や産地としての経営力の強化について、産地自らが検討し、取り組んでいくことが必要となっている。

○ これを効果的に支援するためには、育成すべき産地像を明確化するとともに、その育成に向けて、産地の経営力向上を担う組織・人材の育成、産地の補完労力の調整、生産資材の確保、集出荷施設等基盤的施設の整備の推進等の観点からの検討が必要である。
  また、「指定産地制度」等の仕組みについても、こうした野菜産地の育成に向けて、十分機能していくよう、あり方を検討していく必要がある。

Ⅱ 各論
1 加工・業務用に対応した生産流通対策の方向性

 本課題については、本中間取りまとめに先立って、第4回検討会において「加工・業務用野菜の生産・流通対策の方向性」として取りまとめたところであり、以下においては、その概要を記載することとする。

(1) 現状及び課題
○ 加工・業務用野菜の需要は増加傾向で推移し、全体の需要の過半を占めている一方で、その需要のうち国産野菜で対応しているシェアは、減少傾向で推移している。このような中で、消費者の食の安全性への関心の高まりなどから、流通加工業者等の実需者からは、「国産野菜を使用したい」というニーズは高くなっている。
  このため、加工・業務用野菜における国産野菜の生産の拡大強化が緊要な課題と位置づけられている。

○ 野菜の加工・業務用需要の推移


資料:農林水産政策研究所
(参考)S40 ~ 60 については、農林水産省「食料需給表」、「青果物卸売市場調査報告」、総務省「家計調査」に基づき、生産流通振興課が推計

○ 家計消費用、加工・業務用の国産シェアの割合


資料:農林水産政策研究所調べ

○ 今後の国産野菜の使用意識・意向
(国産及び外国産のいずれも使用している流通加工業者)


資料:農林水産省大臣官房情報課「加工・業務用野菜の取扱いに関する意識・意向調査」

(2)今後の方向
○ 国産野菜の加工・業務用の安定供給を図るためには、契約取引等による産地と実需者の連携が必要である。先駆的な事例からみると、産地と実需者をつなぐ「中間事業者」の存在が重要な役割を果たしており、今後は、一部の優良事例にとどまらず、この「中間事業者」の機能を活用した供給経路を全国的に構築する。

注;「中間事業者」とは、産地と実需者をつなぎ、産地から買付け・購入した野菜を実需者に安定的に供給する(場合によっては選別・調製・加工等も行う。)のみならず、加工・業務用需要に対応し得る産地を育成する機能を有する者であり、産地と実需者の中間に位置する者を総称するものである

【取り組むべき事項】
①「中間事業者」を介した流通経路の構築ための支援を推進する。
・産地、「中間事業者」等に対して、生産・流通体制の変革のためのソフト面、ハード面で支援を推進する。その際に、産地に対しては、「加工・業務用は生鮮用のすそ物で対応」といった意識からの脱却、「産地間競争から産地間連携へ」という意識変革を促進する。

〈ソフト面〉
  ・加工・業務用規格の設定、栽培管理基準の策定・普及
  ・産地指導者の育成・確保
  ・低コスト流通システムの導入実証試験の実施
  ・販路開拓のための産地と実需者の交流会の開催
  ・優良事業者の事例収集と普及 等

〈ハード面〉
  ・加工・業務用に適した大規模省力機械化体系の導入
  ・コールドチェーン構築のための集出荷施設の整備 等

注;支援対象とする「中間事業者」は、食品安全に関する法令遵守を行い、消費者に対して加工・業務用野菜の安定供給を図ろうとする者とする。

②野菜価格安定制度における契約野菜安定供給事業の運用改善を検討する。

〈検討事項〉
  ・対象産地の要件の見直し
  ・取引実態を踏まえ、加入時に必要な契約内容の簡素化
  ・取引実態を踏まえ、予約申込期限等の見直し
  ・数量確保タイプの発動要件の見直し

③産地、「中間事業者」、実需者の三者のリスク分担の位置づけ、それに対応したリスク回避措置を検討する。

 「中間事業者」を介した供給経路による流通体系が円滑に運営されるよう、産地、「中間事業者」、実需者の三者が加工・業務用野菜の生産・流通取引に係るリスクをどのように分担するのかを十分検討した上で、書面契約のひな形を策定・普及するとともに、これらのリスクを回避するための措置を検討する。

2 需給調整対策等の現状と課題、今後の方向

(1) 需給調整対策
1)現状及び課題
○ 消費者、実需者へ安定的に野菜を供給していくためには、主要な野菜の計画的な生産・出荷の推進は、重要な政策である。
  このため、国は、野菜生産出荷安定法に基づく需要及び供給の見通しを策定するとともに、毎年の供給量等の見通し及び作付面積の指標を需給ガイドラインとして策定している。
  生産出荷団体、大規模生産者等は、国の需給ガイドラインを踏まえ、主要な野菜の作付面積及び地域別出荷量等の計画である供給計画を策定し、計画的な作付け及び出荷を行っている。
  こうした一連の取組により、主要な野菜の各作期における需要見通しにできる限り対応した生産・出荷に向けた努力が払われているが、野菜の収穫量は、気象の影響を受けやすいこと等から、野菜の需要量に対して、生産量に過不足が生じることがある。

○ 特に、キャベツ、たまねぎ等流通量が多く、かつ露地で栽培される野菜については、作柄変動とそれに伴う価格変動が激しいことから、国が、価格高騰時には、出荷の前倒し、ビニール被覆等による生育出荷の促進、通常は出荷されない規格外野菜の出荷促進を行うとともに、価格低落時には、出荷の後送り、加工用販売、市場隔離(土壌還元等)を行う緊急需給調整対策を実施している。
  なお、平成19年に、生産者、流通業者、消費者等の関係団体から構成される野菜需給協議会が設置され、需給状況の広報・消費拡大に向けた取組が行われているが、同協議会に参集する関係者の理解と努力により、緊急需給調整の円滑な実施が確保されるようになってきており、引き続き、同協議会での取組の充実を図ることが今後の課題である。

○ また、緊急需給調整における各対応のうち市場隔離については、土壌還元を少なくするための更なる有効利用方策の検討や土壌還元を「もったいない」とする消費者等の考え方への対応が引き続き重要である。

○ 指定野菜の計画的な生産・出荷の推進

2)今後の方向及び検討すべき課題
【今後の方向】
○ 野菜の需給調整を円滑に進めるため、需給調整対策に対する一層の国民(消費者)の理解醸成が必要である。
  特に、供給過剰時に野菜の需給を均衡させる方策としては、関係者の連携による出荷量の調整を行うとともに、消費拡大に向けた消費者に対する情報提供等の取組にも重点を置く必要がある。

○ 緊急需給調整に関しても、迅速かつ効果的に実施する観点から、関係者の理解を醸成するプロセスの工夫に努めるとともに、ウェブサイト等も活用しつつ、消費拡大に資する情報提供の充実が必要である。

【取り組むべき事項】
① 野菜の需給状況・見通し等の情報共有
・野菜需給協議会等を活用し、野菜の需給状況・見通し等についての、消費サイドを含む関係者間でのより的確な情報共有のあり方を検討・実行する。

② 緊急需給調整に関しては、消費拡大に結びつく消費者に対しての効果的な情報提供
・緊急需給調整の円滑な実施に資するよう、緊急需給調整発動の際における野菜の消費拡大に結びつく消費者に対する効果的な情報提供のあり方を検討・実行する。

【検討すべき課題】
○ 市場隔離の際における有効利用については、産地に近い学校や福祉施設への無料提供や加工業者への出荷等の生産者ないし産地段階での取組みに止まっており、より消費拡大に結びつくよう、消費地を含めた有効利用先の開拓、飼料化等に向けた研究を更に進める等手法の開発に取り組むことが必要である。

○ さらに、需給調整がより効果的に行われるためには、生産者が公平感を持って需給調整に取り組むことができるようにすることが重要であり、需給調整未参加者に対する参加誘導策を検討することが必要である。

(2) 消費拡大対策
1)現状及び課題
○ 主要農産物の消費動向をみると、肉類・油脂類の消費が増加している一方で野菜の消費は減少傾向で推移しているが、野菜は、豊富な栄養素が含まれ、ビタミン、ミネラル、食物繊維等健康の維持増進にとって重要な栄養素等の供給源である。しかし、全ての年齢階層で摂取量が不足していることから、国民1人当たりの野菜の消費量の拡大は重要な課題と位置づけられる。

○ 野菜の消費量の減少要因は、最近の消費生活の動向やアンケート調査から分類すると、①食生活の多様化、②食の簡便化、③「野菜を食べているつもり」という意識、④子供の野菜嫌いが挙げられている。

○ 主要農産物の消費動向


資料:農林水産省「食料需給表」

○ 一日に野菜から摂取する栄養素の割合


資料:厚生労働省「平成17年国民健康・栄養調査報告」

○年齢階層別野菜の摂取量


資料:厚生労働省「平成18年国民健康・栄養調査報告」

○1人1年当たりの野菜消費量の推移


○嫌いな食べ物上位10品目と回答割合(小学校)


(独)日本スポーツ振興センター「平成17年度児童生徒の食生活等実態調査報告書」

2)今後の方向
○ 前記に示した野菜の消費量の減少要因への対応を基本に、①食生活の多様化・簡便化に対応した消費拡大、②野菜消費に関する意識改革の推進、③野菜栄養面、機能面からの普及啓発の推進等を図ることとする。
  なお、その際、官民一体的な野菜の消費拡大活動を行うことが重要であることから、野菜消費の拡大に向けた民間企業の取組への環境整備を図る。

【取り組むべき事項】
①食生活の多様化・簡便化に対応した消費拡大
・野菜のおいしい食べ方を普及する専門家の育成や野菜売り場等での普及啓発(レシピの提供等)を行う。
・家庭で簡易に調理できる半加工野菜製品の開発や外食・中食における野菜を利用した商品開発を推進する。

①野菜消費に関する意識改革の推進
・全ての年代で野菜が不足している現状を周知する。
・野菜の摂取目標量の普及とともに、対象の世代ごとに適した普及啓発を実施する。
・特に若者向けには、健康維持のためにも若年期のうちから野菜を多く摂取して中高齢期に至るまでの健康維持を図るライフスタイルをビジュアルでわかりやすく提言する。
・子供への食育体験を引き続き普及する。

③野菜の栄養面、機能面からの普及啓発の推進
・研究機関との連携を図り、野菜の機能性等の情報を収集整理し、食品事業者等の民間企業や学校関係者等への一層の提供を図る。

(3) 輸出促進対策
1)現状及び課題
○ 農林水産物の輸出促進については、世界的な日本食ブームやアジア諸国の所得水準の向上を好機にとらえ、「攻めの農政」の重要な柱の一つとして、我が国の高品質な農産物の輸出促進に向けて、輸出先のニーズに応じた戦略的な取組を実施しているところである。

○ このような中で、野菜の輸出については、これまで台湾向けのながいもが中心であったが、近年は、香港向けのいちごや中東向けのメロンなどの果実的野菜の輸出が増加傾向となっている。

○ しかし、一方で、輸送中の荷傷み等による品質劣化が起こりやすく、専用容器などの輸出用資材の開発などが緊要の課題とされる。また、一部品目では、需要が伸び悩んでおり、生食の習慣の少ないアジア諸国における新たな料理方法や食べ方の積極的な提案等が必要となっている。

○生鮮野菜の輸出額及び輸出量の推移


○ 生鮮野菜の輸出先別輸出額シェア(平成19年)


資料:財務省「貿易統計」

2)今後の方向
○ 「我が国農林水産物・食品の総合的な輸出戦略」(平成20年6月)における「野菜の輸出の拡大に向けた工程表」に基づき、輸出の重点個別品目と重点国・地域を明確化し、品目別の戦略的な取組を実施する。

【取り組むべき事項】
①輸出先の検疫条件(植物検疫、食品検疫等)に応じた輸出用野菜の確保
・輸出先の検疫条件に関する情報を産地等に提供し、特に、輸出先と我が国の残留農薬基準等が異なる場合には、産地等に対して、輸出先の検疫条件にあった栽培管理の遵守等について、十分な助言を行う。

②海外市場の実態調査による新たな輸出先の開拓及び品目の拡大
・輸出の拡大が期待される主要品目について、輸出先国における潜在需要や小売価格を調査し、産地等の関係者に広く情報を提供するとともに、輸出重点国、地域の明確化と工程表の策定により、品目別の戦略的な取組を実施する。

③産地・業界関係者の輸出意欲の向上
・輸出に意欲的な事業者や先駆的に輸出に取り組んでいる事業者に向けて生産・流通・販売・広報等における課題及び対応方策等を整理した「輸出実行プラン」の普及・啓発により、農業者等の輸出意欲の向上を図る。

④荷傷み、鮮度低下防止のための流通技術の開発及び普及
・輸出先国の流通形態に適した輸出向けの包装資材等の開発、普及を支援する。
・産地が鮮度低下防止のための集出荷・予冷貯蔵施設等の産地における整備を支援する。

⑤野菜の新規需要を開拓するための効果的なPR・販売方法の検討
・他国産との差別化を図るためにポスター、パンフレット等の広報資材により広報活動を行うとともに、多様な料理方法や食べ方を海外の展示会や見本市で積極的に提示する。

3 産地育成対策の現状と今後検討すべき課題

(1) 現状
○ 野菜産地においては、従事者の高齢化や減少等を背景に作付面積・生産量ともに減少傾向で推移している。

○ 連作障害・気候変動等による品質低下や、補完労力の不足といった問題を抱える産地も出てきており、将来の産地のあり方の検討が必要となっている。

○ また、肥料等生産資材コストの増大が進む中で、コスト縮減に向けた新たな技術の開発、普及を進めていく必要があるが、産地によっては、高齢化や後継者不足からこうした取組に対する投資意欲の減退が見られる。

○ なお、物流システムの発達を背景に、これまで、野菜産地の消費地からの遠距離化が進んできたが、近年における物流コストの増大の下での収益確保に向け、遠距離産地におけるコスト削減への取組の必要性も指摘されている。

○野菜の作付面積・生産量の推移


資料:農林水産省「食料需給表」、「野菜生産出荷統計」、「地域特産野菜の生産状況」平成18年は概算値

○野菜農家の労働力


資料:農林水産省「2005年世界農林業センサス」

○野菜指定産地と東北、九州の野菜指定産地数の推移


(2) 今後検討すべき課題
○ 従事者の減少や高齢化が進行する中で、野菜産地の担い手の経営能力の向上は、産地の持続的な発展を確保する上で引き続き必要である。

○ また、野菜産地の実態を見ると、①大規模・大量流通産地、②少量・多品目産地及びこれらが連携した産地群、③地産地消に重点を置く都市近郊産地、④供給能力が弱まりつつある産地等がある。こうした産地の多様性の下で、新たな消費者・実需者ニーズに対応した産地の再構築や産地としての経営力の強化を図り、これを野菜産地の持続的発展につなげていくためには、それぞれの産地が自らの特性を十分に理解しつつ、今後の方向性を主体的に検討、選択していく必要がある。

○ こうした産地の取組を効果的に支援するためには、「産地」の果たすべき役割の多様性やその変化に十分留意し、また、各産地の実態や関係者の考え方を幅広く把握した上で、

① 今後、育成すべき産地像を明確にするとともに、
② 育成すべき産地像の実現に向け、生産・流通・販売の各段階における対策をソフト、ハード両面で総合的に検討していくこと

が必要である。

○ その際、特に、産地の経営力の向上を担う組織や人材を育成する観点が重要であるとともに、産地の補完労力の調整、肥料その他生産資材の円滑な確保、さらに、効率的な流通体系を支える集出荷施設その他の基盤的施設の整備の推進等の観点からの検討が必要である。

○ また、野菜生産出荷安定法に基づく「指定産地制度」、「野菜価格安定制度」は、長年にわたり、国産野菜の安定的な生産・出荷を確保する原動力となってきており、野菜の高い国内自給率の維持にも大きく貢献してきたものと評価される。これらの仕組みが、加工・業務用を含めた消費者・実需者ニーズの変化、多様化に柔軟に対応できる野菜産地の育成に向けて十分機能していくよう、そのあり方について検討していく必要がある。



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