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加工・業務用野菜の調達に向けた取り組み

横浜丸中青果株式会社 営業推進部門 執行役員 岡田 貴浩


1.会社と組織の概要

 横浜丸中青果株式会社は、その名の通り横浜市の中央市場に位置する青果卸売会社です。1947年に創業し、横浜本場・横浜南部市場の2カ所に拠点を構え、横浜の台所の一端を担ってまいりました。年間の取扱額は約730億円で、青果卸売会社として全国4位の規模を保持しています。

 2000年には市場流通の今後や市場法の改正を踏まえ、市場外部への販売活動を行う位置づけの子会社である横浜市場センター株式会社を設立しました。

 当社は、当初、量販店中心の取引を行っていましたが、南部市場の営業拠点を中心に、次第に外食・事業給食(学校給食、社員食堂など)・加工業務企業(サラダ・総菜工場他)の顧客を拡大し、2004年の営業2名体制から始まり、2006年度には加工・業務用向け専属の営業グループを設立し、2008年現在で同グループは営業7名、業務サポート7名の計14名での体制にて業務を推進しています。

 加工・業務用野菜の営業においては、店頭小売の営業行為とは別の視点での、加工・メニュー化といった工程を踏まえた青果原料としての商品提案が必要となります。週次や月次、年間での価格提案はもちろん、安定した品質での産地リレーの形成、安全・安心の産地情報提供、旬の食材メニューの利用提案、地場野菜の集荷提案などなど、顧客ニーズは年々拡大しています。

 また、配送管理業務については、社内の物流部門を独立させて物流子会社を設置しました。神奈川県内のみならず首都圏広域へのルート配送・共同配送を行っており、現状では毎日平均約30台の車両が納品業務を行っています。さらに、加工・業務用向けの食材納入については、原料の小分け、パッキング、コンテナ詰め、カットなどの一次加工業務が発生するため、これについても子会社の管理下において順次作業員の教育・人員拡大を図り、パートを含め約50人が従事する体制を構築しています。加工・業務用分野においても年間を通じて24時間体制でのサービス対応が求められており、営業業務とは別の後方支援体制が非常に重要な構成要素となっています。

 2008年現在の加工・業務関連取引先数は約50企業となり、納品個所数は約120カ所となります。取引先の構成は、外食:事業給食:中食(コンビニなど)=3:3:4程度となっており、受注から納品までのリードタイムは基本的にD-1(発注日の翌日納品)での運用が主体となります。ただし近年では受注から納品までの時間が短縮化の傾向にあり、夜間での受注や時間指定の配送についても細かい要請があります。

2.施設投資と品質管理の取り組み

  ① 横浜フレッシュセンター
  2004年には横浜市南部市場内において、3温度帯(冷凍・冷蔵・常温)の物流センターとして横浜フレッシュセンターを開設しました(写真1)。外食店舗や食品工場への配送については、生鮮野菜のみならず飲料・チルド加工品、冷凍食品など多様な食材が含まれており、それらを一括で管理・納品する機能は大きな優位性となります。また、市場内という立地を活かして、鮮度や需給調整についても高い機能性を発揮しています。

 さらに、2006年には南部市場内の卸売場を全面冷蔵庫化し、一部を高床としてドックシェルターなどの物流設備を配置しました(写真2)。これにより、産地から予冷されて入荷する青果物について、コールドチェーンを切らすことなく顧客に届ける体制が整いました。



写真1 横浜フレッシュセンター
写真2 物流設備

 こうしたハード面の整備に伴い、入出荷時の温度管理、品質チェックなどのソフト面についても取り組みを進めてきました。外食・加工・業務用向けの納品形態(写真3)については、小分け・パック加工、コンテナ封入といった作業が不可欠となります。受注から納品までのリードタイムが短縮化しつつある現状において、作業の過程で品質や鮮度をチェックすることは非常に重要です。

 同じ青果物でも顧客ごとに品質ニーズは異なり、品位・規格だけではなく、品種・色回り・発注の単位など細かい要望に一つ一つ応えてゆくことが必要になります。青果物は加工品などのように工場製造物ではないため、各顧客企業が認識している規格や品位はバラバラです。加えて産地既定の規格や品位も独自のケースが多く、目合わせや確認といった前提作業も非常に大切です。

 加えて業務用では、加工における「歩留まり」を追求することが求められ、かつ、加工機械や作業性に適した一定品位(大きさ・長さ・太さなど)を持続することが重要です。自然物である青果物を工業的に処理していくので、自然物と工業品の接点をいかに形成・持続するかが課題となります。

 さらに店舗などへの納品を行う場合は、発注単位に合わせて小分けやパック加工を行うため、「個」や「キログラム」単位での発注に合わせて、冷蔵庫内にて加工作業を行います。

 また、外食業務加工においてもコンテナでの納品が主流になりつつあり、その回収や洗浄についての体制整備も必要です。加えて段ボール箱からコンテナに荷姿を変える場合には、空の段ボール箱のゴミ処理の問題も発生し、対処することが必要です。近年では、衛生管理や労務管理についての情報提供も顧客から求められるようになってきました。

  ② 横浜市場センター(株)
  通常の青果物納品であるホール野菜の取引においても、カット野菜での納品が、外食・加工・業務のニーズとして高まってきています。そのニーズへの対応として、横浜市場センターが所有する野菜カット工場では、外食チェーン向け野菜カット食材、生食用パック野菜など約70種類300アイテムの商品を提供しています(写真4)。原材料は、すべて当社が供給していますので、どの産地でいつ栽培されたものか、必要に応じて栽培履歴を提供することができます。品質管理室を設け専任の担当者が徹底した衛生管理を行い、食品衛生法上の基準を満たしたレベルを維持しています。



写真3 納品形態
写真4 生食用パック野菜など

3.業務用産地の設定・契約取引における取り組み

 青果物の流通においては、まだまだ量販小売用の野菜の栽培方法や産地の戦略が大勢を占め、加工・業務用の栽培や産地の戦略については、なかなか進んでいません。

 産地側はこれまで、市場を通じて、または、産直で小売の棚に並ぶ商品作りを主としており、加工・業務用は規格外や品質が低位のものを使用するといった意識があったと思います。しかし、消費の実態としては外食・中食の比率の高まりにより、野菜類では55%以上が加工・業務用に使用されており、産地や中間流通業者としても、この加工・業務用需要をターゲットとした商品作り・体制が必要だと思料します。

 加工・業務用の食材については、以下の5点が構成要素として重要です。すなわち(1)安全・安心、(2)コスト(価格・歩留まり)、(3)品質の安定性(定規格・定品質)、(4)安定調達(定時・定量)、(5)他社との差別化です。

 これらの要素を満たす食材や産地を開発していく必要がありますが、具体的な取り組みとしては以下のような事例が挙げられます。

(1) 業務用規格の設定 
  ほうれんそうやきゅうりなどにおいて表1・表2のような業務用規格について取り組みました。出荷における選別作業の簡素化や加工歩留まりを考慮したものになっています。

(2) 品種の選定
  やはり加工での歩留まりや衛生面を考慮した品種の設定も重要な取り組みです。種苗メーカーとの連携や試験による選定は継続して必要であり、変化する加工技術や管理、味覚の傾向に合わせた品種や栽培法が必要となります。

(3) 契約取引
  一口に契約取引と表現しますが、内容としてはケースバイケースのものとなります。分類としては表3のような考え方で顧客や産地と協議しており、いかに生産者(産地)と顧客(外食・中食企業)、中間流通業者が一つのテーブルで協議するかがポイントとなります。

■表1 業務用ほうれんそう出荷規格例

■表2 いぼ無しきゅうり(フリーダム)の規格例

■表3 契約取引の分類例

4.フィールドマンの設定とトレーサビリティ

 生産者(産地)から実需者までの連携において、その情報を双方に伝達する役割を担当する人材、いわゆるフィールドマンの設定は非常に重要です。フィールドマンは、産地の生育状況や出荷の実態を実需者にレポートしたり、逆に工場での歩留まりや販売動向についての情報提供を行います。現在ではメールなどにより、即時での情報伝達が可能となっています。天候不順や病虫害の影響などについて、いち早く伝達されることにより、メニューや製造計画における変更対応が行われ、その影響を最小限に食い止めるよう協議することが可能です。

 また、栽培管理記録や流通記録を一元管理するような取り組みも始まっています。写真5のような端末機に管理記録データを入力し、は種から出荷までの栽培内容が閲覧可能になります。加えて写真6のようなバーコード付きシールで管理することで、物流履歴をデータ化、閲覧することもできます。こういったトレーサビリティについての取り組みも顧客企業からは求められており、コスト負担の問題も含めて検討していく必要があります。



写真5 管理記録データの入力
写真6 バーコード付きシール


5.国産利用率アップのための考え方

 加工・業務用の食材使用において、国産青果物が、輸入品(冷凍や加工品含む)との競合に打ち勝っていくにはいくつかの壁があります。まず大きな壁はもちろん価格です。輸入品との価格差を少しでも縮めるためには、栽培の機械化や大規模化、規格や荷姿・形態・ロット・輸送手段の見直しといった生産から流通の全面的な再構築が必要であると思われます。

 また、加工・業務用の食材においても、地場野菜や地域ブランドが注目されています。時期や量が限定される地場食材について、いかにメニューや加工計画の中に組み入れていけるかがポイントになります。

 加えて国内農業の栽培技術力を活かし、安全性や栄養価・機能成分についての取り組みが必要です。加工されることを前提とした品種選定・栽培方法の検討、流通形態の決定が求められています。弊社としても以上のような点を踏まえ、今後とも加工・業務用の商材開発、調達について注力を続けたいと思っています。



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