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従業員食堂における野菜摂取推進活動の取組事例について

財団法人外食産業総合調査研究センター
研究員 松﨑 俊
(企業・団体等野菜等摂取普及啓発検討委員会委員)



はじめに

 生活習慣病予防の観点から野菜摂取の重要性が指摘されているが、一人当たりの野菜摂取量はまだ十分とはいえず、また野菜摂取の必要性や摂取目安の認知も十分に進んでいるとはいえない状況にある。

 そのような中、「にっぽん食育推進事業」(農林水産省補助事業)に設置されている野菜等健康食生活協議会「企業・団体等野菜等摂取普及啓発検討委員会」注1)では、企業での健康のための野菜摂取推進活動支援のために、企業・団体における野菜摂取による健康維持・増進の普及活動、野菜摂取の実態調査などを実施している。

 委員会では、平成18年度には従業員食堂での野菜摂取推進活動の方法についてまとめた「手引き」注2)を作成し、同19年度では実際に野菜摂取推進活動に取り組む従業員食堂をまとめた事例集を作成した。本稿では、この『従業員食堂における食生活改善事例』の調査内容を使い、従業員食堂での野菜摂取推進活動の取組について紹介する。


注1)本稿は、基本的に野菜等健康食生活協議会「企業・団体等野菜等摂取普及啓発検討委員会」の検討内容を基に再構成したものである。

注2)野菜等健康食生活協議会「企業・団体等野菜等摂取普及啓発検討委員会」では平成18年度に「従業員食堂における野菜摂取推進活動の手引き」をまとめた。
 これは従業員食堂での野菜摂取推進の方法について、その基本的な「考え方」をまとめたものである。従業員食堂での野菜摂取拡大の道筋・基本プランを、①認知度向上、②動機付け、③行動の3段階に分けて整理し、①では「情報提供」を、②では「イベント等の実施」を、③は「メニュー提案・食環境整備」を進めるとしている。 (http://www.v350f200.com/kigyou/pdf/tebiki.pdf


1.従業員食堂における野菜摂取推進活動の背景

1)野菜摂取の状況
  日本人の野菜摂取量は、食生活の欧米化などの影響もあり中長期的に減少傾向にある。

 その推移を食料需給表の供給純食料から類推すると、年間一人当たり供給純食料(野菜)は、昭和43年の124.3kgをピークに減少を続け、近年では100kgを割り込み、平成19年には93.9kg(概算値)となっている(図1)。

図1 国民1人・1年当たり供給純食料(野菜)の推移

資料:農林水産省「食料需給表」

 次に男女別年代別の摂取傾向について、厚生労働省の「平成18年国民健康・栄養調査」をみると、1日当たりの野菜摂取量は男女とも若年層ほど少ない傾向にある。1日の望ましい野菜摂取目安は350g以上とされていることから考えると、ほとんどの世代で野菜が不足しており、特に働き盛りの20~40代では70~100g近く足りない状況になっている(図2)。

図2 男女別年代別の1日当たり野菜摂取量

資料:厚生労働省「平成18年国民健康・栄養調査」

2)増える生活習慣病・メタボリックシンドローム
  一方で、糖尿病・脳卒中・心臓病などのいわゆる生活習慣病が増加しており、日本人の死亡原因の約6割、国民医療費の約3割を占めていて、国民・企業にとって大きな負担となっている。特に、動脈硬化を招き様々な生活習慣病を併発する可能性の高い「メタボリックシンドローム」注3)が注目されており、その予備軍は40~74歳の男性の約2分の1、女性の約5分の1に達するとみられている。

 さらに、平成20年度からは40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者への健康診断と、診断結果に基づく保健指導が、医療保険者(健康保険組合)に義務付けられた。

 これはメタボリックシンドロームの“早期発見”(特定健診)と“改善”(特定保健指導)によって、国民の健康増進と将来的な医療費削減を目指すもので、こういった一連の動きは、国民の健康維持のために直接的・間接的に求められる“企業の役割”が益々大きくなる背景となっている。

 このような中、一部の企業では従業員の健康維持・管理の一環として、従業員食堂での野菜摂取推進活動に取り組むところも出てきた。

 以下、実際に従業員食堂での野菜摂取推進活動に先進的に取り組む事例をみていきたい。


注3)メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群):内臓脂肪が蓄積した状況(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)で、血中脂質、血圧、血糖の2つ以上の項目で基準値を満たす状況


2.従業員食堂での野菜摂取推進活動の取組事例注4)

【事例1】
「野菜をとろう運動」の実施~食堂を使った情報提供

事業所の概要
  建設機械製造メーカー大手の工場で、当事業所の従業員構成は男性(1,650人)、女性(150人)従業員数合計(1,800人)全体の平均年齢は(45~46歳)となっている。工場の勤務形態は交代制となっていて、食堂では朝食、夜食なども提供している。

食堂の概要

  • 運営形式 給食業者への委託
  • 配膳形式は提供時間帯によって代わり、朝食(バイキング)、昼食(カフェテリア)、夕食(定食)、夜食(カフェテリア)
  • 1日の平均喫食数は朝食(100食)、昼食(1,200食)、夕食(110食)、夜食(130食)となっており、全体で1,540食。
  • 座席数はレストハウス(大食堂)700席、喫茶・軽食コーナーが140席

取組の背景
  近年健康診断の結果で、糖尿病などの生活習慣病の者が微増傾向にあり、また朝食を摂取しないなどの食生活の乱れがあったため、地域の保健所の指導もあって「野菜摂取促進運動」に取り組むことになった。

取組内容
①「野菜をとろう」運動の実施
  2004年から「野菜をとろう」運動を実施しており、主に1)卓上メモ、ポスター、リーフレットでの告知、2)提供料理の組み合わせ例の展示、3)メニューカードへの野菜重量(グラム)の表示、4)麺類コーナーでのミニサラダの設置などを行っている。


②メニューカードでのカロリーの色分け表示の実施
  1998年から100Kcalごとに色分けポスターを作製し、一目で料理のカロリー数がわかる工夫を行っている。同時に、メニューのPOPカードの外枠と料理名を同色にして、メニュー選択の際に摂取カロリーが感覚的にわかるようにしている。


③その他の取組
  食生活改善の観点から朝食欠食防止の呼びかけにも取り組んでおり、合わせて朝食メニューでの野菜メニューを増やしている。

取組の効果と展望
  従来は食事バランス・カロリー摂取量・野菜量などへの従業員の関心が薄かったが、エネルギー量表示・野菜量表示・目で見る色別カロリー表示などの情報提供を行ったことで、理解・関心が高まった。特にPOPカードを見て意識的に野菜料理を選択する従業員が増えた。また。朝食バイキング(20種類の副食提供・野菜メニュー増加)の導入で朝食の大切さが再認識され、若年層(独身者)や夜勤明けの利用者が増加している。

 今後もメタボリックシンドロームなどの生活習慣病予防に伴い、野菜料理メニューをより多く取り込み食生活改善・健康維持増進運動を展開していく予定である。

【事例2】
「おかずサラダ&と具沢山味噌汁で野菜を摂る」~メニュー提案事例~

事業所の概要
  大手百貨店企業の本店店舗。食堂には自社従業員だけでなく、百貨店に出店するテナント従業員も利用している。従業員はテナント従業員も含め、男性2,500人、女性8,000人の計10,500人、中心年齢層は30歳代となっており、比較的若い女性中心の事業所である。

食堂の概要

  • 営業形式 給食業者への委託
  • 食堂は、①食事(定食)・麺類を提供するもの、②軽食・パスタ・カレー、喫茶を中心に提供するものの2つある。
  • 営業時間は昼中心に、①11:00~17:00②11:00~17:30
  • 座席数はあわせて610席
  • 平均喫食数は約2,000食であり、テナント従業員の勤務形態は不定期のため正確な喫食率は不明。周辺に飲食店が多く、喫食率は低めである。繁忙期の日曜には喫食数は約2,800食となる。

取組の背景
  取組のきっかけとなったのは、食堂が実施したアンケートで「サラダ系の野菜が食べたい」という要望が多かったことによる。その一方で、従来から提供していた野菜の小鉢メニュー(煮物など)は食数が減少傾向にあった。

 野菜を求める声があると同時に、野菜離れも進行している状況から、利用者の興味を引くような形での提供を模索することになり、平成15年から「野菜メニューの全般的な強化」に取り組み始めた。

取組内容
①「おかずサラダ」の導入・サラダメニューの強化
  従来からの100円サラダに加え、1皿で野菜が150~200g取れるおかずになるサラダの販売を開始。女性を中心に人気が高く、残ることはほとんど無い。


②汁物(味噌汁・スープなど)の野菜メニューの充実
  定食につく味噌汁を「具沢山味噌汁(約10種類の野菜を使用)」に変更できるようにし、単品としても販売している。


③サラダバイキングの実施
  食堂利用者の増える日曜日にサラダバイキングを実施している。(160円、盛切一杯)提供の工夫としては、各野菜ごとにメニューカードを色分けし、栄養成分的な要素からアピールしている。

④小鉢メニューの充実
  定番の小鉢(80円・90円)を4種類へ増やし、小鉢メニューについてはポップカード(POP)で、その栄養的な効用をアピールしている。 また、15時以降小鉢バイキングも実施しており、常時5~6種類を提供している。

⑤料理の付け合せを工夫
  主菜の付け合せはキャベツの千切りが中心だったが、切干大根・きんぴらごぼうなども取り入れるようにしている。

⑥栄養情報の提供
  栄養情報をまとめた卓上メモを、週1回ごとに交換している。

 週間予定献立表に使用食材の栄養情報を掲示し、メニュー欄には「野菜たっぷり」「根菜たっぷり」などの表示も掲示しアピールしている。

取組の効果と展望
  野菜メニューを強化したことで、喫食者の評価が高まり、現在徐々に利用者が増加している。野菜メニューを継続して提供していくのは難しく、常に目新しく作り変えないと出食数は減少してしまう。しかし、目先が変わった野菜メニューについては出食数は増えており、これからもメニューに工夫を凝らして取り組んで行く予定である。

【事例3】 「主菜のハーフ&ハーフで野菜を摂る」
~メニューの多様化、提供形態に工夫を加えた事例~

事業所の概要
  アパレル製造・販売企業の本社事業所。従業員数は契約社員も含め約800人で、服飾デザイン・管理業務に従事する従業員のほか、各テナントに営業へ回る営業職も多い。

 健康診断結果では高脂質血症・肥満・高血圧などと判断される者も見られるようになっている。

食堂の概要

  • 営業形式 給食業者への委託
  • 配膳形式は定食・カフェテリアの折衷方式となっていて、主菜は7種類、それ以外にはパスタ・ラーメン類、カレー・そばうどん、そして小鉢メニューから選択する方式となっている。
  • 座席数は168席
  • 平均喫食数は約400食(喫食率60%)

取組の背景
  健康診断において、高脂質血症・肥満・高血圧などに判定される者がかなり見られるようになっていたことから、企業の食堂担当者の提案で2004年から「500kcal以下ヘルシーメニュー」が導入された。しかし、一日数食しか需要がなかったことなどから、主要利用者の転勤を機会に中止となった。

 その後、従業員からメニューの多様化の要望・要請があり、2006年1月から主菜のハーフ&ハーフ(後述)での提供を始めたが、結果として野菜摂取拡大につながることとなった。

取組内容
①主菜をハーフ&ハーフで提供
  現在主菜は7種類あるが、全てハーフサイズでの提供となっており、(主菜1食分380円)利用者はそこから好きなものを2つ選択することが出来る。当初はメニューのバリエーションを増やすことが目的であったが、野菜メニューを旨く混ぜることで、バランスの良い選択が出来るようになった。同じ種類を2つ重ねて選択する利用者は少なく、結果的には野菜の種類と量が増えて摂取の拡大に結びついている。


②小鉢メニューの充実化
  野菜小鉢メニューを増やしており、現在では常時7種類の野菜小鉢が置いてある。また、主菜のハーフ分と小鉢3ヶは交換可能となっていて、小鉢メニューでも選択幅が広がっている。


③その他の取組
  食事バランスガイドや、自治体の保健所から貸し出されたパネルを展示しており、栄養情報の提供も行っている。

取組の効果と展望
  対応前後の健康診断結果の比較では高脂血症の有所見率が下がっており、給食業者自身はハーフ&ハーフの取組と野菜小鉢メニューの強化が影響したのではないかと考えている。

 一般的に野菜メニューの出食数を増やすのは難しく、とくに洋菜系のものは出やすいが、和食系は難しい傾向がある。食堂では少し目新しいサラダスパゲティとか野菜そば、レタス・海苔かけマグロ漬け丼、ポトフなどにすると出食数は増えているため、今後さらに色々工夫していく予定である。

【事例4】
「健康管理部門との連携、野菜摂取推進活動の実施」
~直営食堂における総合的な食生活改善活動の事例

事業所の概要
  衣料品・服飾雑貨などを中心に扱う総合卸売商社。従業員数は約800人で、うち女性は約7割を占めており、年齢構成では若年層が多く20代、30代が約7割を占めている。直近の健康診断結果では女性の若年層はやせ傾向で貧血、男性は脂質過多症、高血圧症など生活習慣病に関する所見が目立つようになってきている。

食堂の概要

  • 営業形式 直営
  • 食堂の営業時間は、10:00~14:00
  • 配膳形式は定食・カフェテリアの折衷形式となっており、主菜2種類、副菜2種類、汁物、サラダ、麺類、単品アラカルトから選択するようになっている。
  • 食堂規模は卓数で、50卓程度
  • 喫食率は社員食堂での喫食を義務化しているため100%

取組の背景
  従業員の健康管理に対する会社の意識は高く、健康管理部門として直営のクリニックを備えており、従業員食堂も直営で運営されている。従業員に栄養バランスのきちんとした食事を摂取させる方針から、昼食の社員食堂利用は100%となっている。

取組内容
①各種栄養情報の提供
  自作ポスターや、卓上メモでの定期的な栄養情報等の提供に加え、メニューケース前での推奨メニュー(当日のメニューのうちバランスの良い組み合わせの展示)など積極的な情報提供に取り組んでいる。


②健康診断有所見者に対して個別メニュー対応を実施
  直営クリニックから送られてくる「栄養相談連絡表」に基づき、医師の指示のもと食堂では有所見者について個別のメニュー対応を行っており、現在7名に対応している。基本的には既にある提供メニューを組み合わせているが、既存メニューで対応できない場合は別途献立を作っている。

 また、食堂の管理栄養士が、月に1回の栄養相談を行っており、個別に食事内容をヒアリングし、栄養相談を行っている。


③「社員食堂モニター制度」の設置
  福利厚生部門として食堂の担当者全員と、代表社員数名で組織される社員食堂モニター会を年5回開催している。検討内容は、食堂にかかわる全般の事項にわたり、食堂環境やメニューへ要望だけでなく、栄養情報など提供方法についても検討している。また代表社員は個人の意見を述べるだけでなく、職場での意見を集約する仕組みになっている。検討結果は社内イントラネットや食堂にある卓上メモで公開されている。


④野菜摂取推進プログラムの実施注5)
  平成17年度に野菜等健康食生活協議会が実施した事業の野菜摂取推進プログラムに取り組み、野菜を中心とした情報提供(卓上メモ、リーフレット、ポスターなど)や野菜をテーマにしたイベント(「野菜を食べて美肌になろう」など)を行った。

取組の効果と展望
  平成20年度以降の特定健診制度を見据えて、健康管理部門(健康保健組合)との連携を進め、栄養指導の機能を充実させていく計画である。平成17年度に野菜摂取推進活動に取り組んだことにより、食生活改善活動のイベントやフェアを食堂で行っていくスキルがアップした。テーマを絞り、短期集中型の情報提供を行うと効果が高いことが分かった。今後もさらに積極的な情報提供を行う予定である。


注4)農林水産省「にっぽん食育推進事業」食育啓発協議会「従業員食堂における食生活改善事例」(平成19年度)から引用、加筆転載。小稿では8事例のうち4事例を掲載した。(http://www.v350f200.com/kigyou/jirei.html

注5)農林水産省「にっぽん食育推進事業」食育啓発協議会「従業員食堂における食生活改善事例」(平成19年度)から引用、加筆転載。小稿では8事例のうち4事例を掲載した。(http://www.v350f200.com/kigyou/jirei.html


3.取組事例のポイント

①事業所の総務等担当者の理解・イニシアティブがポイント
  食堂施設で取り組みを進めるには、総務等担当者の許可・理解が不可欠であるため、食堂での野菜摂取など食生活改善の取組に果たす総務・人事の食堂担当者の役割は大きい。

 そのため、担当者自らが積極的にイニシアティブを発揮している場合は、取組に大きな効果が期待でき、また、取組を給食業者に任せている場合でも、総務担当者がその必要性を理解している場合は、円滑な実施が可能である。

 紹介事例についても同様のことが当てはまり、総務担当者が積極的なほど様々な取組が効果的に実施されていた。

②できることから始めることが重要注6)
  紹介事例の多くは情報提供・イベント・メニュー提案などのいくつかを組み合わせて、取り組まれているが、最初はやり易いこと、簡単なことから始めることが重要である。

 多くの事例で共通して実践されている取組(実施し易い取組)には次のようなものがある。

・卓上メモの有効利用
  紹介事例のほぼ全てで、卓上メモを使った情報提供を行っており、効果を上げている。テーブルに設置する卓上メモは食堂利用者に訴えかけるには、もっとも身近なツールであり、工夫次第では効果的な情報提供が可能である。


・小鉢メニューの利用
  これもほとんどの事例で、野菜摂取推進メニューとして取り入れられている。

 サラダバーや、ヘルシーメニュー等を新たに導入しなくても、既に納豆・豆腐等を提供している小鉢コーナーで、野菜メニューを増やすことで、効果が期待できる。


注6)同上「従業員食堂における野菜摂取推進活動の手引き」参照


4.従業員食堂における野菜摂取推進活動の今後の課題点・重要点

①食堂利用者の最終的なスキルアップ、意識向上が重要
  最終的には、このような取組を通じて食堂利用者が、一人で上手に野菜摂取ができるようになることが重要である。

 そのためには、食堂での取組は、できることから始めながら、徐々にその種類・幅を広げて取組を連動させていくなどの工夫が必要である。

 例えば、利用者に対して、まず、1)野菜摂取目安(1日350g以上)の認知度を上げるような情報提供を行い、次に、2)利用者自身の動機付けのために定期的にイベントを実施する。その上で(又は平行して)、3)メニュー提案等・食環境整備に取り組んでいくなど、段階的な取組も考える必要がある。注7)

②野菜摂取推進活動への総務担当者の理解向上
  前述したように、企業食堂での取組を進めるには、総務部門の食堂担当者の許可が不可欠であるため、食堂での野菜摂取推進活動を円滑に実施していくには、その必要性も含め推進活動自体への総務担当者の一層の理解と関与が重要である。

③既存の社内組織との連携
  「健康管理部門」「安全衛生委員会」「食堂運営委員会」など健康と食生活にかかわる既存の社内組織と連携し、野菜摂取の推進について検討していくことで、“食生活改善”“野菜摂取”への全社的な認知度向上が期待できる。

 特に特定健診・特定保健指導が始まったことで、指導業務の一部を給食企業を含む外部に委託することも考えられ、これまで以上に密接な連携が求められる。

④中小食堂施設への保健所などの継続した支援
  食堂での各種取組には幅広いスキル(効果的なPOPの作成、イベントの実施など)が必要なため、人手が限られる中小施設では取組が難しい事が予想される。

 そのため、取組の裾野を広げ、野菜摂取推進活動を拡大していくためには、保健所などが継続的に支援・指導をしていく体制を、引き続き強化していくことも重要である。

 以上、野菜等健康食生活協議会「企業・団体等野菜等摂取普及啓発検討委員会」が19年度に作成した「従業員食堂における食生活改善事例」を使って、従業員食堂における野菜摂取推進活動の取組を紹介してきた。

 委員会では今後、19年度紹介事例のその後のフォローと共に、特定健診・特定保健指導がはじまった20年度にどのような取組がはじまったかの新規事例の把握を行い、事例集の改訂を行う予定である。

 このような資料が利用されることで従業員食堂での野菜摂取推進の取組が、今後さらに発展的に展開・波及していくことを期待したい。


注7)同上「従業員食堂における野菜摂取推進活動の手引き」参照




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