1 マーケティング対応型農業の実践支援
秋田県の農業は、「あきたこまち」を中心とした米を生産の中心としてきたことから、青果物の販売においては卸売市場に対する委託販売が大部分を占めるなど、「販売」よりは「出荷」という意識が強い傾向にある。
一方、食の安全性への関心の高まりや消費者ニーズの多様化、卸売市場における量販店との予約相対取引や直販の増加など、農産物の流通や消費をめぐっても大きな変化が見られるなかで、本県の産地が今後も生き残っていくために、従来の行政の枠を超えた、中長期的政策課題として、マーケティング対応型農業の集中的な実践支援とそれの全県への普及のため、次の取り組みを開始した。
① 基本方向⑤ 成果と課題
こうした集中的な支援を実施した結果、重点モデル産地においては、マーケティング志向を徐々に深めながら、消費者やマーケットのニーズに対応した商品開発や出荷の改善、量販店を重視した販売対策等の取り組みが進められるなど、成果が見られるようになってきた。
しかし、委託販売依存からの脱却、ロットの拡大、周年出荷、出荷量の安定、他産地に比べた優位性の強化などの課題も残った。
2 マーケティング対応型農業の強化
平成18年度からは、県産農産物のロット拡大や出荷期間の分散・周年化、出荷量の安定化などにより、販売力を強化するため、産地の広域的な連携を進めながら、えだまめやアスパラガス等の品目に応じた流通・販売対策への集中的な取り組みを開始した。
えだまめについては、県育成品種「あきた香り五葉」の需要開拓と、良食味の秋のえだまめ“香り豆”のシリーズ化販売について、次の取り組みを行った。
県内産地では、9月期に収穫されるえだまめは美味しいという認識だが、首都圏の消費者は、9月期に販売されるえだまめに対して産地とは逆に、「夏の残り物」というマイナスイメージを持っている。
リサーチ結果をもとに、「あきた香り五葉」は、夏の残り物ではなく、9月が旬であることを消費者に伝達するための店頭販促などの実施、効果的な販売方法を行うためのロットの確保に取り組んだ。
② 産地の広域連携による共販体制の確立④ 新たなチャネルの開拓~外食へのテストマーケティング~
「あきた香り五葉」は、ゆでて時間が経っても美味しいとの評価がある。この評価を踏まえ利用が見込まれる中食・外食などへの流通の可能性と利用拡大を検討するため、首都圏における外食店を対象に店舗でのマーケティングリサーチを実施し、その結果をもとに商品提案を実施している。
⑤ 成果と波及効果
「あきた香り五葉」は、本格的な市場投入から3年目を迎え、これまでのところ、同時期に出荷されていた既存品種より価格がやや高いこと、統一パッケージ導入による市場・量販店の認知度の向上によって産地の生産意欲も高く維持され、また、季節感を意識した統一パッケージは量販店担当者から秋の売り場づくりに貢献しているとして高く評価されている。
この取り組みのノウハウを他品目にも応用して、オール秋田の取り組み拡大のが期待される。
3 加工・業務用需要への新たな取り組み
食の外部化の進展に伴い、年々割合が高まっている加工・業務用野菜のニーズに対応した取り組みを誘導するとともに、意欲ある産地の実践に対し、集中的なサポートを開始した。
① 生産者の視点に立った取り組み4 今後の展開
秋田県では、平成19年度から、首都圏に農林水産部のマーケティング関係職員を配置し、情報の迅速な収集・伝達に努めるとともに、従来の家計仕向けの販売だけでなく、野菜の加工・業務用のニーズに応じた販売に誘導するため、意欲ある産地の実践を集中的に支援するなど「加工・業務用需要への対応」を強化してきた。また、伝統野菜の商品力の向上、販路拡大などの産地の取り組みのサポート、農業活性化の新たな原動力として活用する「あきたの伝統野菜」の販路拡大など、更なる県産農産物の販売力の向上に取り組む。
しかし、本県の青果物産地におけるマーケティング対応型農業の展開は、緒についたばかりである。これまでの5カ年の活動を基盤とし、青果物等の販売対策の一元化のため新設された「秋田の食販売推進課」を中心に、さらに発展させることとしている。