食の外食、中食化が進む中で、加工業務用としての野菜消費量が増加しています。キャベツの加工業務用の消費割合は48%(平成17年)で、消費量の多い品目の一つに挙げられます。
このような動向に対応するため、兵庫県は、平成18年度から農林水産省の委託プロジェクト研究「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発」1系(野菜)に参画し、加工・業務用キャベツ栽培に関する試験研究に取り組んでいます。
まず、加工用のキャベツ栽培とはどういうものかを、加工業者と生産者の双方の観点から整理したいと思います。
加工業者が望むキャベツは、製品のボリューム感がある、水分の滲みだし(ドリップ)が少ない、歩留まり(入荷時の重量に対する製品重量の割合)が良い等の理由から、葉が硬く、結球内部に葉が詰まっている寒玉系が主です。また、千切りなど最終的な製品の形態に加工される前段階で、芯(結球部に存する茎部)は除去されますが、芯は作業性の面から短く、歩留まりの面から結球重に対する重量割合(以下、芯割合)が小さいものが適しています。
次に、加工業者はどのくらいの大きさを望むでしょうか。先に触れた芯抜き作業は、人手で行われることが多いようです。
その作業工程は
①キャベツを出荷容器から取り出す
②外葉を除去する
③包丁で分割する
④芯を切除する
⑤次の工程へ移す
となります。その後の加工処理においても、千切りなどでは機械を使用しますが、角切りは手作業で行われます。人手で行う工程は、取り扱うキャベツの個数がその遅速に影響します。キャベツが大きい(重い)と1玉から製品が多く得られるので、作業能率が向上します。さらには千切りに加工したとき長い繊維が多くできるという利点もあり、加工用では家庭消費用よりも大きなサイズが望まれます。
一方、生産者は家庭消費用のM、Lサイズ(1~1.3kg)が中心となるように品種や栽植密度などを決めています。しかし加工用に特化した契約栽培では、加工業者が望む家庭消費用よりも大きなサイズ(以下、大玉)が中心となる生産方式に転換する必要があります。また契約栽培ではkg単価が設定されるため、生産者の所得を増加させるためには、単収の増加と生産費の低減が必要です。単収の増加やキャベツの大玉化には肥大性の良い品種を用いることが有効です。ほ場での栽植本数を少なくすることでキャベツを大玉にできますが、これは同時に種苗費の低減と作業時間の短縮を図ることになります。
以上のことから、加工用キャベツ栽培とは、「肥大性が良く加工用に適する品種を用いて、栽植本数の適正化により、大玉キャベツを低コストで多く収穫する栽培方法」と考え、試験研究を進めています。
以下にこれまでの研究成果の一部を紹介します。まず、加工用に適する冬期収穫用品種を選定する試験を行いました。品種の選定基準は、第1に肥大性が良いこと、第2に芯が小さく加工用に適することとしました。その結果、多くの品種で肥大は良好でした。しかし芯の大きさは品種によって異なり、結球重2kgで収穫した場合、芯割合は2.9~4.8%、芯の長さは5.8~9.6cmと品種間差がみられました。
そこで、図2に示すように芯が小さい「夢舞台」を冬期収穫で加工用の有望品種として選定しました。
(芯割合 2.9%、芯の長さ 5.8cm)
(芯割合 4.5%、芯の長さ 9.6cm)
次に芯の大きさについて、結球重との関係を調査しました。図3のように、芯割合は結球重が大きくなるにつれて減少し、2kgを超えるとほぼ3%以下に安定しました。したがって、大玉のキャベツを加工用に供した場合、作業能率の向上とともに加工歩留まりの向上にも有効であることがわかりました。実際に大きさの異なるキャベツを加工業者において千切り加工したところ、2kg以上で歩留まりが高くなるという結果を得ました。
ただしキャベツが大きすぎると、加工用の機械に適合しないことがあります。また、芯抜きなどの人手による工程が作業者の負担になり、生産者の収穫作業が重労働になってしまいます。これらのことを考慮した上で、目標とする結球重を設定し、栽培方法を決定する必要があります。現在、他の作型についても加工用に適する品種の選定と、選定した品種の大玉化に適する栽植本数などの試験を進めています。
低コスト化に向けては、キャベツ栽培で多くを占める収穫・出荷の作業時間の短縮が必要です。そこで図4に示すように、大型容器を利用した効率的な収穫出荷体系に関する試験も実施しています。ほ場からのキャベツ搬出に用いた大型容器を、そのまま出荷に利用できれば、ダンボールへの詰め替えと比べて10aあたり14時間短縮できると試算しています。しかし、現状では大型容器の受け入れ可能な出荷先が少なく、多くはダンボールが用いられています。今後、加工用キャベツ栽培の推進を図るためには、関係者が共同して低コスト型流通体系の拡充に取り組む必要があると考えます。
※ 好評を得ています「加工・業務用野菜の品種及び技術研究最前線」の第1弾の連載は、今月号で終了いたします。第2弾の連載を20年度後半に予定していますので、引き続きよろしくお願いします。