独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
野菜茶業研究所
企画管理部長 望月 龍也
野菜分野においては、「健康増進型高品質野菜開発チーム」と「低コスト・省力型野菜開発チーム」を編成し、前者では高カロテノイド野菜(高リコペントマト等)、高フラボノイド野菜(カラフルポテト等)、高ビタミン野菜(高ビタミンCいちご等)、高エリタデニンシイタケ、地域特産野菜(水なす、万願寺唐辛子等、湘南一本ねぎ等)及び土壌微生物管理技術や有機質0施用技術の開発、また後者で省力軽作業化に適する野菜品種(短節間性カボチャ、短節間性トマト、短側枝性メロン等)、キャベツ・レタス・ねぎ・ほうれんそう・だいこん・にんじん等の省力機械化栽培技術、施設野菜の高温期における環境制御・管理技術等の開発に、農業研究に関わる独立行政法人、公立試験研究機関、公益法人、大学、民間企業の41機関が総力を挙げて取り組みました。
本特集では、これらの取り組みの中から、品種開発に絞って主要な成果を紹介させていただきました。これらの中には、すでに普及が始まっている品種もあれば、これから普及が期待される品種や今後一段の改良により飛躍が期待される品種もあります。短節間かぼちゃ「TC2A」は「ほっとけ栗たん」の名前で、平成19年から種子の販売が始まることになっており、北海道での産地化が見込まれています。カラフルポテトの「キタムラサキ」や「ノーザンルビー」等は、すでに北海道で栽培されている「インカレッド」や「インカパープル」等の次代品種として期待されています。ねぎ「湘南一本」は、作りやすくて食味や収量性に優れ、市場性が高い特産品として、神奈川県下で普及が見込まれています。高リコペントマト「中間母本農10号」は、糖度や食味の点で今一歩ですが、これが契機となって民間企業でも高リコペン品種の開発が進み、新たな市場としての高リコペントマトに大きな期待が集まっています。短節間ミニトマトは、まだ地域適応性を検討している段階ですが、新しい出荷・販売形態である「房取り果房」を有利に展開できる商品素材として期待されています。短葉性ねぎもまだ地域適応性を検討している段階ですが、新しい消費を開拓する商品形態として、公立研究機関や民間企業において、実用化に向けた取り組みが積極的に進められています。
このように、「ブランド・ニッポン」の成果は、着実に生産現場に浸透しつつありますが、今後これらの品種を地域における「食」と「農」の再生に役立てていくためには、野菜の生産・流通・消費の現場に携わる多くの方々に、新品種の特徴をより深く理解してもらい、私たちも気がつかない隠された魅力を発掘し、さらには新たな活用方法等を提案していただくことが重要です。農林水産省では、自給率低下が著しい加工・業務用野菜の国内産地振興に取り組んでおり、その一環として野菜生産者と加工・業務用野菜に関わる実需者をマッチングする場を数多く設定していますが、私たちもそのような場に積極的に参加し、「ブランドニッポン」の成果のPRに努めてきました。本特集もこの一助となることを期待して企画したものであり、幅広い読者の皆様からのご意見・ご提案をお待ちいたしております。
ところで平成18年度からは、「ブランド・ニッポン」の後継プロジェクト研究として「加工・業務用農産物」が始まっています。本プロジェクト研究では、近年一層その傾向が著しい「食の外部化」に伴う加工・業務用需要にターゲットを絞り、これに対応した低コスト・安定供給技術及び加工・業務需要に対応した高品質生産技術の開発を進めています。
野菜分野では、果菜類(クッキング用及びスライス用トマト、単為結果性種なしなす、業務用良食味イボなしきゅうり、短節間性良食味かぼちゃ、カットフルーツ用メロン等)及び葉根菜類(4~5月穫り業務用キャベツ、加工用ほうれんそう、漬物用だいこん、短葉性ねぎ、業務加工用大玉たまねぎ、業務用大玉レタス等)の品種と低コスト・安定生産技術の開発に取り組むとともに、これらに関わる新たな品質評価技術(食味に関わる化学成分及び食感に関わる物理特性)や安全・安心な鮮度保持・流通技術の開発に、農業研究に関わる独立行政法人、公立試験研究機関、公益法人、大学、民間企業の38機関を結集して取り組んでいます。
本プロジェクトにつきましても、研究戦略の策定には生産者や業務加工の実需者、流通関係者、消費者等の幅広い方々の参画をお願いしていところですが、研究成果につきましても幅広い方々に速やかにご紹介して行く予定ですので、わが国の野菜生産の再生・発展に向けて、積極的なご提案・ご活用をよろしくお願い申し上げます。