野菜業務第二部 契約取引推進課
課長代理 小松崎 幸子
1 調査概要
(1) 調査方法
平成18年11月28日(火)東京千代田区の東京国際フォーラムにおいて開催された第2回日本全国・野菜フェア会場において、当機構開設ブース来場者に対し調査協力をお願いし、その場での自記入法とした。
(2) 回答者のプロフィール
回答者は500名で、男性239名(48%)、女性261名(52%)とほぼ均衡であった。
年齢階層別では、20代が56名(11%)、30代が111名(22%)、40代が83名(17%)、50代が115名(23%)、60代が93名(19%)、70代が42名(8%)で、単純平均では44.1歳であるが、30歳代、50歳代と2つのピークがみられた(図1)。
世帯人員別の分布状況は、1人世帯が82名(16%)、2人世帯が171名(34%)、3人以上世帯が247名(49%)であった(図2)。
2 調査結果の概要
(1) 主な購入先で利用が急増する直売所
野菜の購入先について、利用の多い順に1から3までの順位を付けてもらった。その結果をまとめると、ほぼ前回調査と同様となった。1位とされた購入先として最も多かったのがスーパーマーケットで76%と圧倒的であった。以下、一般小売店が9%、生協が5%、農協などの直売所が4%の順となった。次いで2位とされたのは、小売店が38%、以下スーパーマーケットが17%、直売所が14%、デパート12%、生協が9%、コンビニ5%となった。3位とされた中では、利用が着実に増加している直売所が最も多く27%(前回23%)、小売店が23%、女性の利用が多いデパートが16%(女性のみでは24%)、生協が12%、コンビニが8%などであった。
また、総合として、購入先別に1位から3位を単純に合計して割合を見ると、スーパーマーケットの利用が35%、小売店が23%、直売所が14%、デパートが10%、生協が8%などとなった(図3)。
(4) カット野菜等の購入動向
カット野菜、セット野菜、キット野菜などは調理の簡便化、ごみが出ない、無駄がないなどの理由により、需要が増大しているものと考えられる。今回は、購入機会の増減について調査した。
―以前に比べて3割の人が増やした―
全体的に見ると、増加した人が29%、変化なしとした人が32%、減少した人が7%、もともと買わないとする人が32%であった。
男女別に見ると、男性では、増えたが31%、減ったが6%、買わないが25%であった。女性は増えたが27%で、減ったが8%、買わないが38%でどちらかというと、やはり男性の方が利用率が高い(図10)。
―1人世帯では5割増加した―
世帯人員別でみると、1人世帯では49%が増えたと答え、減ったが7%、買わないが17%であった。2人世帯では26%が増えたと答え、減ったが8%、買わないが33%。、3人以上世帯では24%が増えたと答え、減ったが6%、買わないが36%となった。世帯人員数が多いほど利用率が低い傾向がみえる(図11)。
―若い方が増加率が高い―
年代別では、年代が上がるごとに利用率が低下する傾向にある。ただし、前回の調査と同様に、60歳代については増加したとする人が30%と、前後の世代に比べて高い結果がみられた(図12)。
(5) 野菜の摂取量の現状
―7割強が300g以下―
1日当たりの野菜の摂取量を200g以下、200~300g、300~400g、400g以上の4区分に分けてたずねた。全体では、200~300gとした者が51%、次いで200g以下とした者が24%で、300~400gが19%、400g以上とした者が6%であった。望ましいとされる野菜の摂取量350gを下回るものが75%となった(図13)。
350gを下回る割合を男女別に見れば、男性は82%、女性が69%と男性の方が多い。
―男性の3割が200g以下―
これを男女に分け、世代別に見ると、男性では、200g以下としているのは概ね若い世代ほど多い結果となった。一方、望ましい量以上を摂取している世代は、70歳代が43%、60歳代が23%で、50歳代以下は18~9%と、この逆である(図14)。
(6) 野菜摂取量の現状に対する満足度
―7割強が不足と感じている―
全体では、十分満足が28%、少し不足が56%で、かなり不足が15%と7割強の者が野菜の不足を感じていた。なお、男女間にあまり差はみられなかった(図16)。
―男性は若いほど不足感―
さらにこれを男女に分け、世代別に見ると、男性では、かなり不足と感じている世代の多い順では、20歳代が38%、以後年代が上がる順に減少している。これに対し、十分満足は70歳代でいちばん多く、年代が下がるに従い満足度も下降する(図17)。
―女性は概ね2グループに―
一方、女性の場合は、かなり不足と感じているのは20代~40代では2割強なのに対し、50代以上では少数にとどまる。一方、満足はこれと逆の結果で前問と同様2グループに分かれたといえる(図18)。
(7) 野菜摂取に関する今後の意向
―増やしたいは8割―
全体では、増やすとしたのが78%、変化なしが22%で、減少させるがわずかに0.4%であった。男女別では、増やすとしたのが男性71%、女性84%、に対し、減少させるが男性のみ0.4%であった(図19、図20)。
(8) 野菜消費拡大戦略
野菜の消費が伸びず、1人当たりの年間消費量も米国に抜かれて久しく、その差はますます拡大している。一方、今までの調査結果では、もっと野菜を食べたいと言う希望がかなり高いことがわかった。そこで、どのような活動が野菜の消費拡大に効果があるかとの設問も設けた。
(9) トレーサビリティ、ポジティブリスト制度の認知度
消費者の関心の高い、食品に対する安全性に関連して、「トレーサビリティ」、「ポジティブリスト制度」の認知度について聞いた。
(1)トレーサビリティ
全体では、内容まで知っているが51%、名前だけ知っているが25%、知らないが24%であった。男女別で見ると、内容まで知っているが男性61%、女性42%、名前だけ知っているは、男性22%、女性27%、知らないは、男性17%、女性31%となり、女性の認知度が低い。また、年代別では、男女ともに若い世代ほど認知度が高い結果となった(図22)。
(2)ポジティブリスト制度
昨年5月から施行された「残留農薬等基準ポジティブリスト制度」についての認知度は、全体では、内容まで知っているが44%、名前だけ知っているが27%、知らないが28%であった。男女別で見ると、内容まで知っているが男性56%、女性34%、名前だけ知っているは、男性22%、女性32%、知らないは、男性22%、女性34%となり、前問と同様に女性の認知度が低い。また、年代別では、男女ともに高年齢世代ほど低い結果となった(図23)。
3 まとめ
昨年の秋以降好天に恵まれ、重量野菜を中心に安値傾向が半年も続いている。加えて、今期は観測史上まれな暖冬であったことから、鍋物需要の減少も大きく影響した。旬の美味しい野菜を沢山食べていただくことが需給安定の要であるが簡単には食べていただけない。
ところで、今回の調査結果をもとに産地として、野菜の販売戦略を考える上で重要と考えられる点をまとめてみると、販売先については、まず圧倒的な販売量を誇るスーパーマーケットの動向が重要であり、当該店舗等の販売戦略、方針を把握した上で、提案型の生産、供給体制等の整備が求められる。次いで、鮮度、目新しさなどから直売所の利用が急増しており、これにも目を向ける必要がある。また、今後は、地産地消の観点からも、学校・病院などの集団給食への供給もひとつの方向性であるといえる。
今後の家庭内での野菜調理の意向については、半数以上が、「増加する」または「増加させたい」としている一方で、カット野菜等の購入動向は、以前に比べて3割もの人が増やしたとしている。家庭内調理は増やしたいが、余り手間をかけたくないとの意向が表れている。
野菜の摂取量では、300g以下であるとの認識を示した者は7割強。特に、200g以下であるとの回答は、女性の40歳代以下と男性で、それぞれ3割もあった。この結果を反映し、野菜摂取量の現状に対する満足度も7割強が不足と感じており、今後は、8割の人が摂取を増やしたいとの意向であった。
すなわち、調査結果では、「もっと野菜を食べなければいけない」と言う認識がかなり高いことがわかった。
しかし、現実には野菜消費量は年々減少し、歯止めがかかっていない。この状況から抜け出すのは容易ではない。機能性とか健康維持のための恐怖型普及も大事ではあるが、手間はかかるがコミニュケーションの場として、食育の場として多様な調理方法がある野菜料理、もちろん自らの手で栽培することも含めて「大変だが楽しい」と言う視点も重要である。
アンケート調査結果でもわかるように、今後、消費を伸ばすには、高齢世帯はほぼ充足しており、若者世帯に対する販売戦略が要点となる。女性では40歳代以下の世代に、特に若い世代には、対面販売が有効である。具体的には、平日は、短時間に望ましいとされる摂取量を確保できる野菜の調理法、加工度を高めた食材または製品の提供と休日に向けたレシピの配布を、土日などはそのレシピに基づいた実演販売などの工夫が考えられる。例えば、だいこん丸ごと料理、浅漬け、お味噌汁の具、煮物などを作るには、面取りなど包丁の使い方、煮かたなどさまざまな食育の推進が必要となろう。
米国において、ファイブアデイ事業が成功した1要因として、カット野菜や、すでに洗ってあるほうれんそうを袋に詰めることなどが野菜の消費量増に結びつくとの考え方の下に、野菜を入手できる状況が改善し続けることによって、消費量が増加したとされている。我が国においても食生活の変化に合わせた野菜の開発と提供のあり方が主要な課題となろう。