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「ブランド・ニッポン」開発品種(4) 短節間性かぼちゃ「TC2A」

北海道農業研究センター
寒地地域特産研究チーム 杉山 慶太


短節間性かぼちゃのメリットとは
 普通のかぼちゃは、植え付けてからつるがどんどん伸びて、畝を超えていきます。一方、ブッシュタイプと言われるかぼちゃがあります。このかぼちゃはつるが生育の後半になってもほとんど伸びず、株もとで茎葉が上に立ち上がって密集します。

 私たちの育成した短節間性のかぼちゃ「TC2A」は、およそこの中間の形態で、つる伸長は生育初期から中期にかけてゆっくりと進み、節間が詰まり、ブッシュ型の草姿を示します(写真1)。しかし、開花期頃から徐々につるは伸長して普通の草姿になります。普通品種に比べて、短節間性の良さは、栽培がしやすいというメリットばかりでなく、果実の品質にも大きく関わっています。普通のつるの場合、実は株を植え付けているマルチから外れて土の上に着くことになります。また、普通の品種は1株から1果のみではなく、2果、3果と果実がなります。全て同じ時期になるとよいのですが、最初になったものと後でなったものでは受粉の日が大きくずれてしまいます。そのため、一斉収穫をすると、成熟の不均一な果実が含まれてしまいます。その点、短節間性のかぼちゃは、雌花が株もと近くに開花して(写真2)、基本的には1株に1果しか着きませんので、収穫する時はほとんどが同時期に結実した果実となります。これは、特に安定した品質のものを供給することが求められる総菜需要においては、とても重要なことです。このほかできた果実の多くはマルチにのっているため、泥が付いて汚れることも少なくて済みます(写真3)。



写真1 短節間かぼちゃ「TC2A」の草姿写
写真2 「TC2A」の雌花の着生株もとに着生



普通の品種は土の上になる
短節間性品種はマルチの上に着生
写真3 かぼちゃの着果の様子

 また、このタイプのかぼちゃは密植ができるため、単位面積当たりの収穫果数、収量が多くなっています(表1)。さらに、普段は定植後に必要となる摘心、整枝の作業がほとんど不要であり、収穫時間も普通草姿の品種に比べて短時間で済むことから、省力的で、生産コストを下げることが可能になると思われます。

表1 短節間かぼちゃ「TC2A」の収量と省力性

収量は平成16~18年平均、作業時間は平成17年、18年平均

 ただ、短節間性であるためのデメリットもあります。果実が着生して果実が肥大を始めるときに、風などによって果面に傷が付いたり、つるに巻かれて凹んだりする可能性があります。このような果実は表面にコルク層ができて、その部分は苦みをともなうため、加工調理の際には表皮を剥がなくてはなりません。しかし、このような果実は決して多くはないので、短節間性であるメリットの方が大きいといえます。

新しい品種「TC2A」の果実
 「TC2A」は平成18年度に新品種登録出願した、北海道農業研究センターと株式会社渡辺採種場との共同で育成した品種です。

 果実の大きさは1.6~2.0kgであり、果形は果実の先端が凸となる偏円から心臓形です(写真4)。この凸の部分に果肉が詰まっており、果実全体で果肉の部分が多くなっています。このため、扁平の品種に比べて加工用としての歩留まりが良いのです。果皮の地色は濃緑で、生食用としての販売においても見栄えが良く目立ちます。また、果肉色は濃黄~橙色で濃い色をしており、カット販売でも目を引くものと思われます。この果肉の色は、煮物などの料理をした場合にも、明るい橙黄色を保ち、彩りとしても映えます。最も重要な味についてですが、果肉の質は高粉質であり、乾物率は非常に高くなっています(表2)。また、糖度も高く、甘みが強くなっています。このため、現在のかぼちゃの肉質に求められているホクホク感をもっており、食味も極めて優れています。この食感と味は、消費者に満足いただけるものと思います。また、加工・業務用としても冷凍、総菜、ペースト、スープなどの利用において素材の美味しさが生きてくるものと思います。さらに、日持ち性については、普通の品種と同等以上であり、収穫後低温下では年内まで保持できます。


写真4 「TC2A」の果実
 
表2 「TC2A」の果実品質


 昨年11月、北海道農業研究センターで新品種の紹介と試食会が開催されました。この中で、「TC2A」は、そのまま蒸したもののほか、グラタン、デザート等(写真5)の料理が出され、いずれも好評を得ました。特にシェフからは、味の良さ、色合い、料理のしやすさから、いろいろな料理に利用できると、展示作物の中で大変高い評価をいただくことができました。



蒸したときの色合い
料理の例
写真5「TC2A」の試食会

種子の販売と市場性について
 「TC2A」は、種子「ほっとけ栗たん」という名前で、平成19年から種子の販売が開始される予定です。栽培における省力性ばかりでなく、果実品質が良いという従来にない特徴も有しており、前述のように、肉質、糖度、果皮、果肉、色等から市場性は抜群と思われます。また、尻部が凸状となっているため、他の品種と差別化した販売も可能です。

適応する地域と作型
 主として北海道、東北の春播き露地移植地帯に適します(その他の国内各地でも栽培可)。

栽培についてのポイント
 播種から育苗までは通常どおりですが、畝幅は普通の品種の約半分程度として密植します。定植後は摘心をせず、そのまま伸ばします。また、側枝の除去や誘引作業もする必要がありません。開花時期からつるが伸長してきますが放任します。ただし、うどんこ病には抵抗性をもたないため、通常のうどんこ病防除は必要です。

 収穫時期は札幌市で開花から45~50日程度です。株もとの葉が枯れあがってきたら早めに収穫しましょう。

※次号では、短節間ミニトマトをとり上げる予定です。



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