野菜業務第二部 契約取引推進課
課長代理 小松崎 幸子
去る平成18年2月6日(月)、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開催された第1回日本全国・野菜フェア会場において、当機構開設ブース来場者およびセミナー参加者500人に対しアンケート調査を行ったので、結果を報告する。
近年、単独世帯の増加、小家族化、女性の社会進出などにより、野菜の販売方法にも変化があらわれた。レタス、キャベツ、だいこんなどについてはカット売り、きゅうり、なすなどはばら売りの傾向が定着するとともに、カット野菜をはじめ鍋物セットなどで売られているキット野菜、カップサラダなど、少量で付加価値を高めた野菜販売が増加している。
そこで一般消費者がこのような販売方法に対しどのような評価をしているか、また日常の購買行動や野菜に対する要望などについて調査したので、その結果を報告する。
1.調査概要
(1) 調査方法
平成18年2月6日(月)東京都千代田区の東京国際フォーラムにおいて開催された第1回日本全国・野菜フェア会場において、当機構開設ブース来場者およびセミナー参加者から500人に対し調査票を提示し、その場での自記入法とした。
(2) 回答者のプロフィール
回答者は500名で、男性269名(54%)、女性231名(46%)とほぼ均衡であるが、男性が若干多いのは、セミナー参加者の多部分が、生産者、流通関係者、実需者などであり、男性が多かったためと考えられる。
年齢階層は、20代から70代まで幅広かったが、平均年齢(階層)の単純平均は43.9歳で、40歳代、50歳代でほぼ半数を占めた(表1)。
世帯人員別の分布状況は、1人世帯が21%、2人世帯が29%で合わせて半数、3人以上世帯が残りの半数で、1世帯当たりの人員の単純平均は2.3人となった。男女別に見れば、1人世帯は、男性9%に対し、女性12%と女性が多いが、2人世帯では男性ほぼ半数15%に対し女性が14%とほぼ同率、3人以上世帯では、男性30%に対して女性20%と少なかった。(表2)。
2.調査結果の概要
(1) 主な購入先の1位はスーパーマーケット、直売所も上位に位置する
野菜の購入先について、利用の多い順に1から3までの順位を付けてもらったその結果をまとめると、1位とされた購入先の中で、さらに1番となったのがスーパーマーケットで75%と圧倒的に多かった。以下、一般小売店が8%、生協が7%、農協などの直売所が4%の順となった。
次いで2番目、3番目に利用が多いとされた中では、小売店、直売所が比較的上位にきているが、どのタイプの店も均等に利用されていることが特徴的であり、補完的な役割もしくは地域的なつながりからの利用と思われる(図1)。
今回の調査で注目されるのは、首都圏にもかかわらず直売所の利用が多い点(男性のみでは32%)であった。休日の行楽を兼ね、自らが産地に出向き地域ブランド、鮮度を求める購買行動であり、今後も注目すべき販売形態と考えられる。
(2) 購入頻度は、週2、3回が一番多い
野菜の購入頻度では、1位が週2、3回で40%、2位がほぼ毎日で29%、3位が土、日のまとめ買いで25%となり、従来から言われているように、鮮度重視の購買行動が引き続き顕著であった。また、男女別でも週2、3回が男女ともに20%ずつ、次いで、男性の土日のまとめ買いが16%となり、ほぼ毎日とするものが男女ともに14%台となった。世帯人員別でも、すべての世帯で週2、3回とするものが多かったが、2人世帯では、ほぼ毎日とするものが上回った(図2、表3)。
さらに世代別に見ると、週2、3回あるいは、土日のまとめ買いとするものが50歳以下で多かった。一方、60歳代以上の世代では、ほぼ毎日とするものが多かった。社会の高齢化が進むと鮮度、価格などを吟味しながら必要量をこまめに買い整えるような消費行動への回帰も想定される(表4)。
(3) 購入の単位、レタスはホールで、きゅうりはバラで
野菜の販売方法について、ホールかカットやばら売りが良いか、についてたずねたところ、
(1) レタス、キャベツなどについては、原則丸ごとが良いとするものが78%、カットしたもので良いとするのが22%であった。
世帯人員別に見ると1人世帯ではホールとカットが拮抗しているが、2人世帯、3人以上世帯では、いずれもホールを選択した割合が大幅に上回った(表5)。
(2) きゅうり、トマト、なす、ピーマンなどは、袋、パック入りが良いとするものが39%、ばら売りが良いとするのが61%となった。
世帯人員別でも、すべての人員で、ばら売りがよいとするほうが多かった(表5)。
(3) たまねぎ、ばれいしょ、ねぎなどは、袋、パック入り、束が良いとするものが55%、ばら売りが良いとするのが45%と約半々となった。
世帯人員との関係でみると、1人世帯では、ばら売りがよいとするものが多い。一方、2人世帯、3人以上世帯では袋、パック入りがよいとするものが多数を占めた(表5)。
以上の結果から、レタス、キャベツについては、世帯人員との関係から、人員が多ければ多いほど丸ごと買って必要な分だけ順次使用する方法が一般的と思われるが、次に述べるカット野菜の利用アンケートの結果でも、2人世帯と60歳代や若い世代はカットが良いとしていること。現実に、キャベツの入った野菜炒めセット、惣菜としてのサラダ、コールスローなどの消費も確実に増加していることから、購買行動として、キャベツなどは使い勝手もよく、ある程度日持ちもするので、土日などのまとめ買いではホールで購入して利用すると、調理時間の無いときや補足的な利用として、カットされたキット野菜、サラダなど用途に合わせた購買行動がとられることになると考えられる。
次いで、きゅうり、トマト、なす、ピーマンなどについては、カットした場合、劣化が早いことと、量的にも1、2個で十分必要量を満たすこと。特に生サラダや付け合わせなどでの利用が多い、きゅうり、トマトなどは使う分だけ購入することが鮮度の面からも、使い勝手もよいためと思われる。
一方、たまねぎ、ばれいしょ、ねぎなどについては、貯蔵性があるため半数以上が袋詰めでもよいとするが、保管スペースの問題もあり、今後少人数世帯が増加すれば、ばら売りの利用も増えるのではないかと推測される。
(4) カット野菜を使う、使わないは半々
カット野菜、カップサラダなどについて、始めによく使うか、使わないかをたずね、次いで、それぞれの理由を上げてもらった結果、よく使うとした者が43%、使わないとした者が57%となった。
男女別に見ると、男性は使う、使わないがそれぞれ半数ずつであるが、女性は使うが35%と少数であった。また、世帯人員別でみると、1人世帯では3分の2が使うと答えたのに対し、2人世帯、3人以上世帯では使うとしたものが少数であった。
「便利」で約半数、次いで「無駄が無い」、「手ごろ」であった。一方、使わないとした者の理由で一番多かったのは「価格が高い」で、男性で顕著であった。
その他、使わないとした理由で具体的に記述された主なもので、「鮮度に対する不満」と「衛生面・安全性に対する不安」が多くあり、次いで「栄養に関する心配」、「自分で調理する」、「必要が無い」などとする意見もあった(表6、7)。
また、使うと答えた者の理由での1位は
(5) 野菜料理は、生野菜サラダ、煮物、野菜炒めが上位
家庭での野菜調理で、よく作る料理8種類について1~3までの順位を付けてもらった結果、1番よく作る料理とされた中で順位付けをみると、1位が生野菜サラダで138%、次いで煮物の21%、野菜炒めが3位で20%、4位以降が温野菜サラダ、鍋物で、ジュース、漬物、鉄板焼きであった。
次いで2番目,3番目によく作る料理とされたものを、同じように順位付けすると、1番とされたのは野菜炒め、2番が鍋物、3番が煮物となった。第1番から3番目までを総じてみれば、最も作られるのは生野菜サラダの27%、次いで野菜炒め21%、以下が煮物20%、鍋物15%、温野菜サラダ10%、漬物4%、ジュース2%、鉄板焼き1%となった。
また、総合の男女別では、生野菜サラダ、鍋物料理は、男性が多く、女性では煮物料理、温野菜サラダが多く、野菜炒めでは男女ともに同率であった。男性の場合は、簡単に調理して野菜を食べたいという傾向が、女性の場合は一手間かけることにより、栄養を無駄なく、なるべく多くの野菜を摂ろうとすることが伺える(表8)。
(6) 野菜に対する要望は、鮮度、味、価格
野菜に対する不満、こんな野菜が欲しいなど自由回答を求めたところ177件の記入があった。
1番の関心は、鮮度、味、旬などで58件(33%)、次いで価格が30件(17%)、3番目が新野菜で28件(16%)、4番目が安心・安全で25件(14%)、5番目が国産等表示に関することで12件(7%)、6番目が包装・量で10件(6%)などであった(図3)。
3.あとがき
最後に、本内容のアンケートを実施するに至った背景と、設問の意図等について若干述べてみたい。
先ごろ公表された総務省統計局の平成16年全国消費実態調査で、生鮮野菜の購入先動向の1世帯、1ヶ月当たりの支出金額は5,901円で、この額は10年前の平成6年の、7,739円を24%も下回る額であった。
また、昨年の東京市場の青果物取扱額も26年ぶりに5,000億円を割ったことが大きく報道された。特に、6月以降の野菜相場の不振とともに、レタスをはじめキャベツ、だいこんなど春、夏秋ものを中心に数度にわたり産地廃棄などの出荷調整が行われたことは記憶に新しい。
この10数年来、野菜価格の低迷が続いている。その主要因として、デフレの長期化、安価な野菜輸入の増加などが上げられている。加えて女性の社会進出や少子化、高齢化の進展などにより、野菜の消費も、外食や中食による摂取が増加し、家庭内調理においても利便性や簡便化が求められ、その結果として、野菜の消費形態において定時、定量、定質、定(低)価格のいわゆる4T志向が強まっていることも一因と考えられている。
一方、消費者行動も所得階層による差が縮小し、いずれも必要最小限のものしか買わないといった傾向が強まっている。はくさいの例を上げるまでもなく、ほかの野菜や果実でも半分やカットしたものなど少量パックの商品や付加価値の高いブランド野菜、高糖度トマトは平台や棚フェースも広く備えられ、価格が若干高めであってもよく売れている。安ければ量の売れる時代ではなく、言わば、売り手市場の段階から買い手市場へと大きく変化した。
このような消費動向を見ると、加工・業務用はもちろん、一般消費も家庭内でのストックが減少したため消費がかなり硬直的となり、気象条件がよい場合には、即野菜価格の低落という状況になる。特に、気象変動の影響を受けやすい露地野菜のレタス、キャベツなどに顕著である。今回調査を試みた動機の1つに、「入荷減の単価安」の状況が続いているのはなぜだろうということと、「野菜はホールでなければならないのか」であった。前段については、加工・業務用野菜は固定価格が一般的で、スーパーも小売価格を下げても売れないことなどからと考えられる。後段は、カット野菜などの流通が増加すれば結果的に都市部に非可食部分を持ち込まないで済み、ゴミ回収処理費、環境保全、輸送コストの削減など多くのメリットが想定されるからである。
調査結果については、既述のとおりであるが、消費者の野菜に対する要望は、安心・安全はもとより、価格、食味、鮮度に関して多く寄せられたことは、常日頃からの購買行動とともに非常に関心の高い事柄であることが再認識させられた。
今後も、加工・業務用野菜の需要動向とともに、消費者の購買行動を適宜調査し、時系列的な観点からも注意深く動向を把握し適切な情報提供に努めて参りたい。