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山菜のすすめ

林野庁経営課 特用林産対策室


1 山菜とは?
 山菜とは、山野に自生している植物であって、食用に適しているものの総称です。

 日本列島は、南北に長く、海辺から高山まで複雑な地形をしており、日本に自生する植物の種類は非常に多いものとなっています。このような土地に住む日本人は、古来より自然と密接に関わり、独特の感覚や優れた技術で植物を利用してきました。山菜は、これらの日本の風土に根付いた植物の内、生活の歴史の中で、食料として吟味され選ばれてきたものだということができます。

 山菜の生育する環境は、海岸線から、都会、町の人家の近くや村の里山、高山に至るまで千差万別であり、その種類は、多種多様なものとなっています(表1)。北海道から沖縄まで全国で食べられているものを数え上げると300種にもなります。

表1 山菜の分類上の位置

資料:「山菜 健康とのかかわりを科学する」(日本特用
林産振興会発行)


 ところで、同じ食用に供している植物に、野菜があります。野菜との違いは何でしょうか(表2)。野菜は、畑で人工的に栽培される植物であり、山菜は、自然環境の中に自生している植物です。しかし野菜も、元々は野生の植物です。その野生植物を人間が長い年月をかけて利用しやすいように作り替えたものが現在栽培されている野菜です。野菜は、苦みと柔らかさ等を目安として品種改良したもので、食用にできる部分が多く、多くの種が1年草であり、播種から収穫までをその年の内に行うため、安定して食用として利用できます。

表2 山菜と野菜の区分
資料:平成14年度特用林産普及啓発事業報告書「山菜資源の活用による山村地域の振興」


 それに対して、山菜は、人の手の加わらない野生種であり、地上の葉や茎が枯れても地中の根は1年を超えて生き残り、毎年新しい茎を立てる多年草です。食用にできる部分は、柔らかい若芽や先端であることから、採取や収穫の時期は限られます。

 しかし、近年、山菜も畑で栽培されるようになってきています。セリ、ミツバ、フキ、ウド、ワサビなどの従来から栽培されてきたものや、それらに加え、最近ではタラノメ、ワラビ、ゼンマイ、ギョウジャニンニクなどがあります。これらは、栽培されるようになっても、やはり山菜と呼ばれ、販売されており、山村の振興に役立っています。


2 山菜の昔と今
 山菜は時代の変化と共に、利用の仕方を変え、食生活の中で位置づけを変えてきました。
 日本が高度経済成長をする以前、山村や農村で昔ながらの伝統的な生活を送っていた時代には、山菜は山村農村の生活には欠かせない食べ物として様々な種類のものが食されていました。茎や葉などの全草や若芽や若葉の部分を湯がいたり、あく抜きしたりして、お浸しや煮物、和え物料理に利用してきました。

 また、時には救荒植物(飢饉等非常時の食料となる植物)としても貴重なものであり、山村にとっては無くてはならぬものとして食べられてきました。

 高度成長を経て食生活が豊かになると、山菜は「ふるさとの味」や自然食品などと言われ、山村農村等への郷愁を掻き立てるもの、無農薬の安全な食品等として、また観光資源、地域特産物等の山村振興に役立つ経済的作物として、価値を見いだされてきました。

 今日では、さらに自然食品、経済的な作物としてだけではなく、健康の維持・増進に役立つ栄養食品や薬効食品としての価値が注目されています。

 主な山菜の現在の生産量は、表3のとおりとなっています。山菜はかつては、山村・農村を中心に食されてきましたが、今日では都会の人々にも食されるようになりました。山村・農村の人々が食べてきた時には、問題になりませんでしたが、山菜が注目され、山菜ブームが起き、都会から人々が山菜採りに押し寄せるようになると、たちまち乱獲により、発生地の荒廃、資源の減少・劣化などが問題になっています。それはまた山菜採りのマナーの問題でもあります。

 また、自然物である山菜は採取する時期が限られると共に量的にも限度があるので、山菜ブームなどにより需要が大きくなると、野生のものだけでは需要を賄うことができません。そのため、今日では農山村では、山菜の栽培が行われるようになってきました。


3 代表的な山菜
 山菜は、その栄養成分は野菜類と同じように、タンパク質や脂質が少なく、食物繊維が多いのが特徴ですが、野菜に比べるとミネラルやビタミン類などが多く含まれています。また、最近の研究では山菜の成分には健康を維持・増進する機能があることが明らかにされ、改めて注目されています。

 以下に代表的な山菜を紹介します。(山菜名の後の括弧内は、健康上の効用を表す。)

表3 主な山菜の都道府県別生産量(平成16年)              (単位:t)
資料:林野庁業務資料
注 生産量には、栽培品も含まれる。


(1) ワラビ(抗酸化活性)
 イノモトソウ科。多年草で、全国の山地、草地などの排水と日当たりの良い土地に生える。葉は生長すると1mほどの草丈となる。春にこぶし状に巻いた若芽をあく抜きして食用とする。また根よりデンプンが取れ、わらび餅などが作られる。
 ワラビには発癌性物質であるプタキロサイドという物質が含まれているが、灰や重曹を用いたあく抜きをすることによりほとんどが除かれるため、通常の食用頻度では問題がない。
【あく抜きの方法】(1)ワラビがすっぽりと浸るように鍋に湯を沸かす。(2)沸騰したらワラビを入れ、すぐに木灰を全体にまぶす。(重曹でもよい。)(3)火から下ろし、落とし蓋をして、一晩置く。

(2) ワサビ(抗菌性、抗腫瘍作用、解毒作用)
 アブラナ科。多年草で、冷涼な山間部の谷間に自生している。全国に分布している。一般には根茎を辛み(辛味成分は、シニグリン)として日本料理には欠かせないものとなっている。山菜としては葉、葉柄、花蕾など全体を利用する。根茎は1年中、葉は春から秋まで採取できる。

(3) ゼンマイ(抗酸化活性)
 ゼンマイ科。多年草で、全国の山地、原野、湿地などに生える。葉に2型あり、裸葉(オンナゼンマイ)は、栄養を受け持ち、実葉はオトコゼンマイの名で胞子を付ける。高さ50cm~1mくらい。早春に葉がこぶし上に巻いた裸葉の若芽(栄養葉の葉柄)を食用にしている。

(4) フキ、フキノトウ(抗酸化作用、抗脈管形成作用、抗アレルギー作用)
 キク科。雌雄異株の多年草。平地から山地まで、湿り気の多い川岸や谷筋に生える。長い葉柄の先に丸葉をつけ、花は白または黄色の頭状花。九州から本州の山野に自生する。早春に根茎が伸びて花が咲くが、つぼみ状態の花茎がフキノトウと呼ばれる。アキタブキは、大型のフキの変種で、葉柄は2mにも達し、東北から北海道に自生する。

(5) ウド(抗酸化作用、鎮痛作用)
 ウコギ科。高さ1~2mにもなる大型の多年草。全国の山野に自生する。春に若芽や柔らかい葉を利用する。ヤマウドは、山採りのウドの意で、茎は短くあくは強いが、風味、香りともに強いのが特徴である。需要が多く、人工栽培もされている。現在流通しているものは多くは人工栽培ものである。

(6) タラノメ(糖尿病予防作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用)
 ウコギ科。タラノキの芽。タラノキは落葉低木で、草原や林道の路肩など日のよく当たる所に生える陽樹である。全国の山野に自生する。幹にはとげがあり、直立し6mの高さとなる。市場に出回るものは、多くは促成栽培のものである。

(7) アシタバ(血圧低下作用、抗腫瘍作用、脂質代謝への効果、糖尿病予防効果)
 セリ科。多年草。伊豆七島、房総から紀伊半島の海岸に自生している。高さ1m以上にもなる。柔らかい若芽から成葉まで採取できる。生育旺盛で葉を摘んでも明日には葉が出ているとの意でこの名がある。

(8) クサソテツ(別名コゴミ)(抗酸化作用)
 オシダ科。全国の山地、湿地、陽地に自生する多年草。早春の若芽は外側を綿毛が包み、こぶし状に巻いている。若芽が開きかけの時が食用適期で、あく抜きせずに利用できる。

(9) コシアブラ(抗腫瘍作用、抗酸化作用)
 ウコギ科。落葉高木で、全国の平地から高い山(2千mまで)に分布する。幹は直立し、20mにまでなり、樹皮は褐色から灰褐色を示す。若芽を食用とする。名の由来は、昔この木から塗料用の油をこしとったためとの説がある。

(10) ネマガリタケ
 イネ科。多年草。本州中部から東北地方、北海道の山地に生える。地下茎は密に分枝し、稈は高さ1~3mにもなる。雪の消えてくる頃より芽生えるタケノコを食用とする。


4 終わりに
 山菜は、山村地域の主要な産物として、経済活性化の一翼を担うとともに、山村 の人々及び都会の人々にとって多様で豊かな食生活を支える重要な食材として注目 されています。

 しかし、前述のとおり、近年、その無計画な採取等による資源の減少・劣化の進 行等の問題が生じており、山村地域の振興及び国民の豊かな食生活の実現のための 対策に取り組むことが喫緊の課題となっています。

 このため、今年3月に「山菜文化産業協会」が設立され、山村地域の貴重な資源 である山菜資源の保続・拡大や山菜の生産・消費の持続的発展とともに、山村地域 に根ざした山菜文化の普及・伝承・創造を図り、山村地域振興に貢献することとし ています。

 詳しくは、日本特用林産振興会のホームページをご覧ください。
 http://www.nittokusin.jp/16_sansai/sansai_f.html





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