スティッキオ
(野菜情報 2013年7月号)
調査情報部
スティッキオは、トキタ種苗株式会社が、イタリア野菜の「フィノッキオ」を日本人のし好に合わせて品種改良した新野菜です。フィノッキオのシャキシャキ感を残しつつも、独特の香りを和らげることで、日本人にも食べやすいように改良されました。
フィノッキオは、鱗茎がたまねぎのような形に生育しますが、スティッキオは、鱗茎が細長いスティック状に生育します。さわやかなハーブの香りとほのかな甘さ、シャキシャキとした食感が特徴で、生食に適した野菜です。火を通しても食感は残るので、料理の幅が広がります。また、スティック状であるため手に取りやすく、サラダやバーニャカウダ(オリーブオイル、アンチョビやにんにくなどで作った熱いソースに野菜を浸して食べる料理)など、マヨネーズやソースを付けて食べる料理にも向いています。
JAさが中部地区富士町支所では、一戸の生産者とともに平成24年からスティッキオの水耕栽培に取り組んでいます。取引先の市場関係者から新野菜であるスティッキオの情報を得たタイミングが、管内の水耕栽培生産者が夏に栽培できる野菜を探していた時期と一致したため、すぐに栽培が始まりました。
スティッキオは、種まきからおよそ20日で定植、その後60日ほどで収穫することができます。定植は4月以降で、収穫は7月から始まり、11月ごろまでは収穫できます。生長が早いため、連続して3回は同じベットで栽培することが可能です。定植後は枯れることもなく、手間がほとんどかかりません。また、虫もつきにくく、農薬はほとんど使わずに済みます。周年での栽培も可能だそうですが、霜に弱いため、冬場の管理が重要となります。
昨年から試験的に栽培を始めたので、収穫量はまだ少なく、現在の出荷先は東京の市場のみです。市場からは、イタリア料理店向けに流通しています。
JAに出荷しない小さいものは、町内の直売所で販売しており、直売所の隣に併設してあるレストランでは、スティッキオの葉を使用したドレッシングが提供され、好評を博しています。また、地元の旅館などでの利用もあり、知名度の向上につながっています。
今後の課題は、大きさのバラつきを解消し、出荷率の向上や安定出荷を図ることです。また、福岡など新たな市場を開拓していきたいと考えています。
まずは、より多くの人にスティッキオを知ってもらうことが大切で、最終的には、大手スーパーなどでも取り扱われ、家庭でも広く食べてもらえるようになればと、夢の現実に向かって取り組んでいます。
JAさが中部地区富士町支所の水耕部会に所属している内田さんは、昨年から一戸でスティッキオの栽培に挑戦している生産者です。30年ほど前から水耕栽培を行っており、約240平方メートルのハウスを4棟所有しています。ハウスの中には6つの水耕のベットがあり、主にアイスプラントを栽培しています。アイスプラントは暑さに弱く、夏季の栽培が難しいことから、夏季の空いたベットの有効活用のために、スティッキオの栽培を始めました。スティッキオの栽培は管内では初めてのことであり、ほかに生産者もいないため、JAと共に試行錯誤しながらの挑戦です。栽培上難しいところは、スティッキオの生長に合わせた水管理と収穫のタイミングです。特に、生長にばらつきがあるため、7月ごろは収穫が遅れると抽苔してしまうそうです。初めてのことなので、難しいこともありますが、それでも作るのが面白いとおっしゃっており、生産者としての熱意を感じました。夏場の安定した収入源として、安定生産に努めています。
やはりスティッキオは、生で食べると甘みが感じられ一番おいしいとのこと。また、さっと茹でて斜め切りにし、ささみと一緒にドレッシングで和えたり、肉と炒めたりと、食感を生かした料理もおすすめです。
①スティッキオ(3本)の茎を切り落とし、約3分塩ゆでする。②耐熱皿にゆでたスティッキオを並べ、すりおろしたパルミジャーノチーズ(適量)をかける。③ちぎったバターを少量のせ、250度のオーブンで、焼き色がつくまで焼く。
お問い合わせ先:
佐賀農業協同組合中部地区富士町支所(TEL:0952-57-2111)
トキタ種苗株式会社(TEL:048-685-3190)
料理写真/レシピ提供:トキタ種苗株式会社