行者菜
(野菜情報 2013年6月号)
調査情報部
行者菜は、行者にんにくとにらを掛け合わせた野菜です。行者にんにくは、長い栽培期間(5年間)と短い収穫期間(2週間)が短所でしたが、行者菜はその短所を補って、もっと手軽に食べられるようにと開発されました。見た目はにらとそっくりですが、根元部分にはにんにくの風味があります。また、滋養強壮の源となる硫化アリルは、行者にんにくやにらよりも多く含まれています。
強い香りから害虫がつきにくいため、ほぼ無農薬で栽培できるほか、日持ちが良く冷蔵状態で1週間から10日ほど保存できることも魅力です。
全国に先駆けて行者菜栽培をはじめた山形県長井市。その出会いは思いがけないところにありました。花作大根という地大根を復活させた同市の生産者が、平成17年に宇都宮大学で復活までの取組みを発表した際、同大学の行者菜開発グループから行者菜の話を聞き、興味を持ったことがきっかけでした。18年に「長井行者菜生産グループ」が結成され、試験栽培を開始。生産者7人、作付面積7アールからのスタートでした。3年後の21年から本格的な栽培を開始し、生産者9人、作付面積16アールに拡大しました。この年、網走市、岩手、香川でも栽培が始まり、「全国行者菜研究会」も結成。全国の産地間の連携はめずらしいことですが、各産地と情報交換を行い、共に行者菜の知名度アップを目指して取り組んでいます。
行者菜は、定植した1年目は収穫できませんが、2年目以降は次々に伸長し、夏場は刈り取り後25日ほどで元の長さに伸長します。1シーズンに2~3回の収穫が可能で、冬場には枯れますが、翌春再び芽を出し、4~5年は収穫できます。
現在の出荷先は、生協、スーパー、地元市場、直売所で、出荷期間は5~9月。25年度は、生産者18人で出荷量10トンを目指し、栽培に励んでいます。
地元を中心に、徐々に知名度をあげた行者菜。さらなる普及を目指し、24年度に「行者菜等産地化戦略会議」が発足されました。構成メンバーは、生産者、市、県、流通関係者、飲食店などです。生産・販売・消費強化に向け、地域をあげて取り組んでいます。
生産強化では、県の農業技術普及課が中心となって新技術の開発を行っています。現在は、品質向上を図るための資材活用法や通年出荷に向けた栽培体系、収穫ピークの分散方法を試験中です。また販売・消費強化では、加工品の開発、アグリフードEXPOなどのイベントへの出展、販促ツール(レシピ集、のぼりなど)を活用したPR活動なども行っています。
花作大根を復活させ、行者菜栽培のきっかけを作った一人である遠藤さんは、稲作の傍ら行者菜を栽培しています。
栽培方法は、露地とハウス。ハウス栽培は、通常より前後1ヵ月ほどの収穫期間延長になるそうです。栽培で最も大変なことは、収穫・出荷調製作業だといいます。葉のしなりを防ぐため、収穫作業は早朝に行います。その後調製し、午前中には出荷を終了します。特に生長の早い夏場は時間との勝負になるそうです。そこで遠藤さんは、予冷庫を設置しました。調製後の行者菜をここで1日予冷し、翌日の午前中に出荷することで、時間的にゆとりができたといいます。また、今年は収穫作業に専念できるよう、調製作業のために人を雇う予定だそうです。家族だけの人手では出荷できる量が限られてしまうので、今後は生産グループ共同で調製作業を行うなど、出荷体制も検討していきたいそうです。
「誰もやっていないことをやるのは楽しい」という遠藤さん。地元で年中手に入る存在にすることが目標だそうです。
生産者の遠藤さん
袋にはマスコットキャラクターとレシピが
餃子や炒め物などの中華料理をはじめ、お浸し、コロッケ、グラタンなど、和風や洋風の調理にも合い、幅広く活用できます。にんにくの風味が強い根元の部分は、生のまま小口切りにし、薬味に用いるのがおすすめです。
にらとの見分けがつきにくいですが、一度食べたら病みつきになりますよ。
①行者菜(1束)の茎の方3センチを小口切りにする。②葉はさっとゆで、3センチの長さに切る。だいこん(4センチ)とにんじん(3センチ)は千切りし、塩少々を振ってしんなりしたら絞る。③みょうが(4コ)、生姜(少々)は千切りし、きゅうりは小口切りにする。④ボールに①~③を入れ、白ごまを混ぜ、塩、砂糖(適宜)で調味して30分位漬ける。
行者菜黄金炒飯
五色スタミナ漬
お問い合わせ先、写真:長井行者菜生産グループ
(TEL:0238-84-6445)