アレッタ
(野菜情報 2013年5月号)
調査情報部
アレッタは、ブロッコリーとケール(青汁の原料として用いられている野菜)を掛け合わせた野菜で、平成23年3月に品種登録されました。
なばな類に分類され、見た目は茎ブロッコリーにそっくりですが、葉も茎もつぼみも全て食べられます。
ケールの遺伝子を受け継ぐ野菜と聞くと苦そうなイメージですが、アレッタは生で食べても苦みが少なく、茎の部分には甘みがあります。また、つぼみにはブロッコリーの約3倍のカロテンやビタミンKが含まれており、体にもうれしい野菜です。
平成24年5月、三重県のJA伊勢管内で「野菜づくり研究会」が発足しました。メンバーは、同JAが新規就農者を対象に行っている「野菜塾」を卒業した15人。発足に際し、JA担当者と研究会メンバーで新たな栽培品目を検討していたところ、県内の種苗会社と名古屋市の卸売業者からアレッタ栽培の提案がありました。せっかくならば新規作物の栽培に取り組んでみようと、アレッタ栽培に挑戦することに。作付面積は約50アールでした。
アレッタは7月下旬以降には種し、20日ほど育苗した後、堆肥をたっぷり投入したほ場に定植します。そして、12月下旬以降、伸びてきた頂花蕾がピンポン玉ほどの大きさになったところでわき芽を残すように主茎を切り、収穫します(頂花蕾収穫後も側枝が次々に伸びてくるので、順次側枝を収穫できます)。収穫後は、長さを切りそろえて150グラムになるよう計量し、袋詰めして集荷場へ出荷します。現在は、名古屋市場向けに出荷しています。
初年度となる24年度は、試行錯誤の一年でした。栽培指針はあるものの、文字や写真だけでは理解できないところもあり、栽培しながら学ぶことが多かったといいます。例えば、頂花蕾収穫時に切り取る位置。この位置が高すぎると、側枝はたくさん出てきますが1本1本が細くなってしまい、逆に低過ぎると、側枝の収穫回数が少なくなります。側枝の収穫に大きく影響する頂花蕾の切り取り方法は、検討課題のひとつです。また、生産者にとって一番大変な作業となっている出荷調製作業も課題となっています。アレッタは、気温が上がりはじめる3月から4月にかけての生長が早く、この時期は収穫作業が集中し、出荷調製作業に追われることとなります。JAが推奨している収穫時間は16時以降で、集荷は翌朝となりますが、夕方に収穫して調製作業を行うと、夜中まで作業に追われることもあるといいます。生産者の作業軽減を図るため、袋詰め作業が省けるバラ出荷を試験的に実施していますが、今後は収穫時間の変更も検討しています。
このほかにも、栽培を通じてさまざまな発見がありました。この経験を次年度に生かそうと、気合い十分です。
柿と米(自家用)、産直用の野菜を栽培する玉城町の髙山さんは、約5アールのほ場でアレッタを栽培しています。アレッタは農閑期に栽培でき、定植後の栽培管理が比較的楽であることに魅力があるそうです。
はじめての栽培であるため、定植して頂花蕾が出てくるまでの期間は不安と期待で生長が待ち遠しかったといいます。しかし、頂花蕾を収穫後、側枝が次々と伸びてくると出荷調製作業が追い付かず、あんなに待ち遠しかった生長も、「もう少し待って」とうれしい悲鳴に変わったそうです。収穫のタイミングも難しく、特に生長が早い春先は、「もう少し大きくなってから収穫しよう」と伸びるのを待っていると、花が咲いて出荷できなくなることもあるそうです。
髙山さんはPRにつながればと、オリジナルのラベルシールを添付し、直売所や地元のイベントに出品しています。食べた方に「おいしかったよ」と声を掛けてもらえることが、何よりも嬉しいそうです。
生のままでも食べられるアレッタは、アク抜きや下ゆでの必要がなく、手軽に調理できるうれしい野菜です。天ぷらや炒め物、ごま和えなど、茎の甘みと歯ごたえを生かした調理のほか、お肉との相性も良いので、肉巻きもおすすめです。
①アレッタ(150グラム程)は洗って適当な長さに切り、コンビーフ(1缶)はひと口大に切る。②フライパンにごま油(大さじ1)を熱し、アレッタを炒めて火が通ったらコンビーフとマヨネーズ(適量)を加え、炒める。
お問い合わせ先:JA伊勢 経済部(TEL:0596-62-2281)